Monday, June 1, 2015

危険に対する感性の差

■ 感覚の差

今日は夫は高熱出して会社を休んで寝ている。平日、山に泊りで出かけたのは、夫の方も、出張で留守だったからで、いくら私が暇人で夫が優しく送り出してくれても、なかなか5連チャンまではさすがに通常はやらない(笑)。

5月の最終週は紆余曲折を経て、このような忙しい結末になった。

思うに私は比較的色々な人と山行出来ているのは、相手を信頼することができるからではないか?と思った。 信頼してこない人を自分の命を懸けてまで、連れて行きたい人はいないのではないだろうか?

≪まとめ≫
・連れて行ってもらうなら、信頼する
・信頼できないなら、最初から一緒に行かない
・Trust But Check

■読図リスクに対する感性の差

週末予定より忙しくなったのは、当初一緒に行く予定だった人と、道迷いリスクに対する感性が合わないと思い、山行はキャンセルさせてもらったのだった。

私は、自分で山を見て、判断しようとしない人とは、山には行けない。というか行ってもタノシクナイ。山は道を見出しながら歩くのが楽しいのだから。

山にピンクテープをてんこ盛りにする人は、読図能力が欠けているからだ。読図ができれば、沢にテープが要るはずがない。まして歩いて戻れる沢ならなおさらで水流そのものが道だ。

それは、クライミングでのプロテクションと同じで、必要もないところに、中間支点を取りたがる感性は、5m毎についている赤テープと同じだ。

私はどこをどう行くのかは自分で決めるような山が好きで、サイズは小さくても、そういう山がとても楽しいので、沢にテープを付けると言われた時点で、感性が違いすぎて、一緒には歩けないと思った。

■ クライミングメイトvsザイルパートナー

私はアルパイン1年生として去年は過ごしたのだが、みな勘違いしているのは、

 ザイルパートナー vs トレーニングメイト

だと思う。ほとんどの人は、ザイルパートナーが必要なのだと勘違いしている。言葉の響きがいいからなのではないだろうか?

ザイルパートナーには命を預けるが、クライミングメイトには預けない。フリーのゲレンデでトップロープするのはクライミングメイトのほうだ。

■ 自分の山

私はたぶんすでに自分の山がある。ホントは誰だって、それが普通だ。ほとんどの人がはっきりと自覚していないだけで。自分の山をしたいと言う思いがあるのが普通だし、そこを尊重してくれない人はパートナーであってもなくても、そもそも友人とは言い得ないかもしれない。

これは一抹の懸念として思うのは、男性は一般に、女性のパートナーを求めるのは、

 自分の山>相手の山だからでは、ないだろうか?

その点には、かなり不安を覚える。日本社会では女性は従順を求められているからだ。

また別の点として、女性の意見を軽んじる、経験の浅い者の意見を軽んじるということがある。

先輩やベテランではなく、同レベルの人たちが特に不安だ。なぜなら、私が危険を察知しても、同レベルなので、私の意見を聞き入れない。 たとえば、私がだらりんビレイを指摘しても、指摘を聞き入れない。それは私に権威がないからで、当然だが、そういう意味ではベテランは指摘を聞き入れる。

今回も先行パーティのビレイに不安を感じたら、「差し出がましいが」と断ってビレイポイントを指導してくれた。これが私の指摘だったら先行パーティは無視するだろう。

また、ベテランに向けて、中間支点を取ったほうが良い、と言うと、ちゃんと取ってくれた。リードはけっこうアップアップなので、そういうことを言うのは、セカンドの務め、だ。

しかし、現実は、自分は相手の安全を気を付けてみてあげようと言う気がないのに、自分の身の安全を相手が保証してくれないと言って、必要以上に文句を言う人が多い。自己責任の真逆だ。

■ 山が合う

結局、色々考えると山が合う、というのは大事なことだ。山が合えば、ポリシーが合わなくても、とりあえず山行は成立する。例えば沢がしたい、と言っても、沢にも色々あり、

  • 登攀的な難しい沢をしたい人
  • 好みの場所を集中的にしたい人
  • ウォーターウォーキング中心にしたい人
  • 易しい沢を中心に、地域的な好みは後回しにしたい人
  • 自分の家の近所から遠征してまではやりたくない人
  • 北アの沢など大きな沢しか興味がない人
  • 自分の研究対象の沢しか興味がない人

などいる。 完全に趣味が一致しなくても、たとえば、ある人が地域研究的な沢をしていて、その沢が、たまたま1級程度の易しさだったら、初心者向けの沢をしたい人は同行できる。

岩も同じで、
  • アルパイン用にフリーをしたい人
  • フリークライミングだけを究めたい人
  • 手軽なエクササイズとして楽しみたい人
  • 100%安全を求めたい人
  • 死のリスクがある山も甘受できる人
  • まだアルパインの憧れが強いような人

などなど、色々な人がいて、100%好みが一致しなくても、一緒にフリークライミングを愉しむことはできる。マルチピッチは考え方が似ていないと、多少フリーのゲレンデクライミングより組むのが難しいと思う。

■ 矛盾する行為の例

それはなぜか?というと危険に対する考え方が異なるからだ。危険についてどう考えているのか?は、ルートを登るのを見ていても分かる。

≪例1≫
例えば今回は、7.3㎜という、その1本に2人ぶら下がったら(レスキューではありうる)大丈夫なのかしら?という細さのダブルロープを使っていた人たちに出会った。つまり安全性より軽さ重視という意味だ。(それもその軽さが必要なような山に行く場合の話だ)

しかし、プロテクションの取り方を見ていると、必要のないほど多数のカムを50cmごとに入れていてあり、びっくりした。いくら、私がビビりでも50cm上のカムは多すぎると考える。プロテクション(ランニングとも言う)は大事だから、必要のないところで浪費すると、本当に必要なところで不足して取れなかったら困るからだ。

つまり、そのようなランニングの取り方自体が、登攀力不足を如実に語ってしまう。(ルート相応の登攀力がないのに、リードしているのは、それはそれで命知らずとも言える。)

つまり、こうした矛盾点が、命が惜しいのか?惜しくないのか?なんとなくはっきりしない、首尾一貫しないものを感じさせる理由だ。

≪例2≫
また、別の件では、トラバースのロープジャムの件があった。トラバースでリード中は、あまりロープがタイトだと、引かれて落とされてしまう。

なので、緩めに出すのは普通だけど、緩めどころか出ている分の倍以上出していて、見ていて、ロープの意味がないなと思った。落ちたらロープが出ている分の距離落ちてしまう。その時は木の内側を通っていなかったので、立木による墜落停止も期待できず、完全にカムだけに衝撃荷重がかかることになり、もともと細くて伸びの大きいロープだったので、下にバンドでもあると、打ち付けられて、グランドと同じことになってしまう。岩で5mも落ちるとショックだが、その時の様子では20mくらいは余分に出ていたので、半分にしても10mは落ちてしまうような様子が見て取れた。がそれでもビレイヤーは不必要にロープを流し続けていた。

ベテランは何も言わなかったのは、よそのパーティであるし、そこは易しいピッチだったので、そのようなピッチで落ちないだろう…指摘して、まごつくほうが危険が大きい、ということだろうと想像した。

■ベテランから盗むと言うこと

ベテランのトラバースの支点の取り方を見ていると、単純に真横に流れ、ビレイしていても、弛みは最小で済み、屈曲が強すぎて、流れなくなることや、岩のスキマに挟まってロープが流れなくなる、ことはなかった。

この対比は非常に印象的だった。私がセカンドで登るときは、まったくタイトに引きすぎたりせず、安心。

トラバースでは、移動するスピードより、速くロープが引かれると、逆に落とされるのに、ガンガン引いてくる人がいて困る。何が危ないかが分かっていない人はトラバースで引いてくるのだ。ベテランは分かっているので、トラバースでタイト目ロープはない。けどだらりんも厳禁。ちょうど良くが非常に重要なのだ。

この人と同じ人ではないが、以前ベテランと沢に行き、同様にビレイが上手だなと思ったことがあった。まだ何も分かっていない頃だ。それはきつすぎず、ゆるみすぎずロープが邪魔にならないから。

それでも垂直での登りは、ベテランはセカンドを大して気にせず、ビレイはタイトではなく、懐でだらりんとしていることが多い。

セカンドなんて直上であれば、落ちても大した距離ではないので、だらりんとしているのは、問題ない。最初に山を教わった三上ガイドとは、登攀でパートナーを組んだ経験はないが、彼もそういう意見だったし、また師匠も私とアイスに行くときセカンドがタイト気味ということはない。このベテランも同じ考えだった。

≪まとめ≫
・トラバースは中間支点次第では、ビレイにならない
・直上のセカンドのビレイはシビアではない
・トラバースではタイトに引かない、ゆるませすぎない。調節細かく。

■ リードの命知らず

一方、翌日の沢ではトラバースの中間支点では、私の方が冷や冷やさせられる番だった。沢というのは、直上する登りよりもトラバースが多い。

トラバースは一般に落ちれないものだ。沢は岩と違い、沢床は完璧に岩であるのだから、グランドしたら岩とけんかだ。岩なら土や樹木があっても、沢床は必ず岩盤だ。

で、トラバースの一ピン目をベテランがなかなか取らないのだった。なので勝手に自分で取った。

■ ゼロピン目

1ピン目のランニング支点は、リードクライマーではなく、ビレイヤーのプロテクションだ。

つまり、リードクライマーが落ちたとき、ビレイヤーが、アンカー - ビレイヤークライマーとぶら下がることを防ぐのが目的。

こういう言い方をするのかどうかは不明だが、ディレクショナルアンカーという言い方をするのかもしれない。

ちょっと難しいので図説する。●はビレイヤー ☆はランニング支点 〇はクライマー

≪トラバース ゼロピン目あり≫          ≪ゼロピン目無し≫

ビレイヤー        クライマー      ビレイヤー   クライマー
● ---- ☆ ----〇         ●--------〇

進行方向は、右。落ちると・・・


●---- ☆                 ● ビレイヤーは直接引かれ荷重を抜くのに苦労する
        |                  |
        |                  |
        |                  |
        |                  |
        〇                  |
                            〇 

この1ピン目のことを 

 ゼロピン目

と呼ぶ人もいるそうだ。

つまり、クライマーを守るものではないからだ。右のゼロピン目無の例のようになると、何が大変か?と言うと、落ちたクライマーの復帰とビレイヤーの自己脱出だ。 

1ピン目ありであれば、クライマーが気絶していても、荷重を抜くことがしやすい。ビレイヤーが自己脱出できないと、落ちたクライマーを何ともしがたい。

昨日の沢では、難しくはないが、落ちたら下まで落ちれてしまう高さでのトラバースが多く出てきた。このトラバースでは、早く1ピン目を取ってくれないかしら…と思ったので、先に1ピン目はアンカーと兼用で取ってしまった。(一応聞いてから) ビレイする側の私の心の安心のためだった。

■ そのフォールが大事につながるフォールかどうか?の見極め

クライマーは登攀力があれば、易しい箇所ではランナウトするのは、平気だ。プロテクションは普通はリードの人の為なのだから、要らないと思ったら、取らなくても良い。ビレイヤーがどうこう言う問題ではないと思う。

しかし、トラバースでのランニングは違う。セカンドもトラバースではだいぶ落ちるので、落ちる距離を考えながら、中間支点を作らないといけない。そうは言っても、自然の環境の中では、欲しいところに必ずランニングに良い支点、つまり沢の中では立木…など…があるわけではないので、セカンドのほうも、今落ちたら自分がどうなるかを考えつつ、登らないといけない。

そういう思考回路が働くことがアルパインに対する適不適と言う気がする。

落ちていけない場所で落ちる=落ちたとき助けられないところで、あるいは落ちたとき、ロープに振り子のように振られて、岩にぶつかるようなところで、気弱になって落ちてしまってはいけない。何を掴んでもいいから、決して落ちないと言うのが大事だ。

そのフォールが大事につながるフォールなのかどうか?を見極める力が必要だ。逆に言えば、落ちても怖くないとか怪我しないところなら、大ランナウトしても大丈夫だし、ロープさえ出さないかもしれない。

■ 危険の感覚

今回は、二人のベテランと一緒だったが、非熟練者を連れて行く側の負担が少ないのは、やはりボルトのプロテクションの整備されている小川山だと感じた。

もちろんクライミングは比較にならないほど、小川山のほうが難しい。しかし、小川山は下手くそに登って、仮に落ちても平気だ。実際1フォールして、ごぼうした。

フォールしても平気なのは、もちろん技術のしっかりしたベテランにビレイされていて、セカンドだからというわけで、だらりんビレイの人にビレイされていくリードだったら、同じ小川山でも危険だ。

小川山などのボルトルートは、ビレイヤーがしっかりしているという前提で安全が担保されている場所だ。

一方、沢のほうは連れて行く側の負担は非常に大きい。リードはクライミングそのものとしては、易しいが、ランニング支点の取り方など、経験に負うことが多く、突っ込んだ後で、やっぱり駄目だった、と言って引き返すことが難しいのが沢だ。1つめのランニングが取れていない段階で、クライムダウンではビレイにもならない。リードしていても墜落は数メートルのフリーとはわけが違う。

ただ同じ小川山でも、クラックは違う。今回は、たまたま二日目はセレクションに行ったので、ボルトルートで、しかも、たまたま渋滞していたので、その日はそれで終わりだったが、クラックは、そう言う意味では、小川山であっても、沢と変わりがない。プロテクションは、自分で設置するものだからだ。

なので、リードクライマーの力量がなければ、クラックは非常に危険になる。ビレイヤーのビレイの稚拙は、落ちれないので、実は大して比重がないのは、沢と同じだ。沢もリードクライマーへのビレイが上手での下手でもどうせリードする人は落ちれないので関係がない。セカンドのビレイの稚拙は非常に問題になるが。

そう言う意味では、クラックも沢もベテランと初心者と言う組み合わせしか許容できない山行スタイルだ。

これがボルトルートなら、ビレイヤーがしっかりしていれば、リードクライマーが多少落ちるタイプでもなんとかなる。

ボルトルートを避けて、クライミングを上達する道はない、とすれば、やはり、ボルトルートにきちんと安全に行けるようになるには、リードクライマーへのビレイがきちんとできる人材になるしか選択肢はない。

フリーのボルトルートで信頼できるビレイヤーであれば、どうせ落ちれないとはいえ、沢やクラックでもリードクライマーは、より精神的ゆとりをもって登れるはずだ。


≪まとめ≫

  • 小川山ボルトルート 落ちながらリード可能
  • クラック  どこにあるクラックでもリードは落ちれない
  • 沢     リードは落ちれない フォローも落ちれない
  • トラバース リードは落ちれない フォローも落ちれない
  • 沢&クラック リードのビレイの稚拙の比重は小さい
  • ボルトルートのリード ビレイヤーのビレイの稚拙の比重が大きい
  • クラックの安全性は、リードクライマーの力量次第

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