Monday, March 26, 2018

阿弥陀南稜で7名がロープにつながって遭難…の感想

■ 引用

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滑落に伴う雪崩に埋まり死亡か

25日、長野県の八ヶ岳連峰で7人が滑落し、3人が死亡、4人がけがをした事故で、死亡した3人は滑落した際に起きた雪崩に巻き込まれ死亡した可能性があることが警察への取材でわかりました。
警察は、けがをした人から話を聞くなどして当時の詳しい状況を調べています。

25日、長野県の八ヶ岳連峰にある標高2805メートルの阿弥陀岳で、男女7人のパーティーが滑落し、神戸市の会社員、亀石安央さん(48)と、京都市のアルバイト従業員、山下貴久子さん(39)、兵庫県伊丹市の建築士、中澤恒雄さん(63)の3人が死亡したほか、4人が重軽傷を負いました。
警察の調べによりますと、7人は阿弥陀岳の標高およそ2600メートルの「P3」と呼ばれる地点付近の急な斜面を登っていた際、斜面を300メートルほど滑落したということです。
その際、死亡した3人は滑落した際に起きた雪崩に巻き込まれて雪に埋もれ、窒息して死亡した可能性があることが警察への取材でわかりました。
また、けがをした1人は医師に対し、「滑落した際、7人はザイルでつながっていた。先頭の人が足を滑らせて落ちた」と話していて、警察によりますと、現場にはザイルが残されていてその一部は切れていたということです。
警察はけがをした人から話を聞くなどして当時の詳しい状況を調べています。
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山岳ガイド「大雪で不安定か」

長野県の八ヶ岳連峰で7人が滑落し、3人が死亡、4人がけがをした事故について地元の山岳ガイドは「現場は、先週の大雪で足場が不安定になっていていつもより危険な状態だった可能性がある」と指摘しました。

八ヶ岳のふもとの長野県原村で山岳ガイドをしている石川高明さんは、25日事故が起きた阿弥陀岳の南側にあるP3と呼ばれる地点付近のルートは何度も登ったことがあるということです。
このルートは、「とい」のような形の傾斜が60度ぐらいの氷と雪の壁になっていて、登山専門サイトで「この時期のおすすめルート」として掲載されるなど、登山者が多く訪れる場所で、石川さんは、「首都圏から近いこともあり、冬山の初心者が登山の練習をしに訪れる昔から人気のコースだ」と話しました。
そのうえで石川さんは、「本来であれば3月は雪が固まっていて登りやすい時期だが、先週大雪が降ったことで、足場が不安定になっていていつもより危険な状態だった可能性がある」と指摘しました。
また、けがをした人が医師に「滑落した際、7人はザイルでつながっていた。先頭の人が足を滑らせて落ちた」と話したことについては、「状況はわからないが、通常は安全確保する人と登る人の2人でザイルをつなぎ、ほかの人は、1人が落ちても引きずられないよう、岩場などで待機するので、そういう状況ではなかったのかなという推測しか出来ない」と述べました。
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現場付近 去年は早大生が滑落死

7人が登っていた阿弥陀岳の南側の「P3」と呼ばれる標高およそ2600メートル付近の岩場が切り立った尾根では、去年2月にも早稲田大学の登山サークルに所属する大学生4人のうち2人が滑落し、20歳の男子学生が死亡しています。
地元の山岳ガイドは、現場付近で滑落やなだれによる事故が多発しているとして、登山者に注意を呼びかけていました。
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■ 感想

昨日の遭難、阿弥陀南稜 P3らしい。

阿弥陀南稜は、本チャンルートです。ルートに7名の大所帯で行くこと自体が、登山前遭難、です。遅くなるからです。しかも、7名がロープにつながるって、ロープの出し方を分かっていない人のやり方です… 沢などでフィックスを張って、タイブロックやユマール、プルージックで登るときの方法で、阿弥陀南稜を登ろうとしたのでは?

私は、前の会で、同じく7名の大所帯で、2月厳冬期の阿弥陀北稜に登ろうという計画書が出て、そのリーダーは、阿弥陀どころか、普通の赤岳でも下山で息切れして、きちんとは登れていない人だったし、7名の大所帯だと遅くなるので、危ないと登山前に進言しました。結果的には、プロのガイドが敗退を決定した強風下の中、強行して登って、凍傷者3名。これも、行く前から遭難が見えていた山でした。なんだかデジャブー感あります。

トップはリーダーが務めていたと思いますが、20代で楽勝で登ったところは、40代、60代と年を重ねると、鍛えていない限り、困難になります。たとえ、フリーをやっていても、ゲレンデが主体で、アプローチがごくごく近いことが多いため、必然的に”歩き”が弱くなります。

クライミングジムでも、全身に疲労がたまると、ムーブの出が悪くなります。つまり、アルパインというのは、要するに肉体的に全身疲労した状態で、登攀するっていう話です。

だから、若い時が有利で、長時間の歩きが、そう疲れもしないため、登攀も、さして危険とも怖いとも思わない訳ですね。私も、初めて三つ峠の天狗岩(初心者向きゲレンデ)を登った時は、これの何が難しいの?くらいな感覚でした。前穂北尾根も同じです。登攀はあっけなく、2峰ではロープ要らないなーと思ったくらいです。

アルパインでどれくらい危険を感じないか?というと、アイスですが、ジョウゴ沢の核心部大滝は、フリーソロしちゃっています。今考えると、師匠が怒るのは分かる。もろい岩で、落ちたら大怪我してしまいます。が、登攀そのものは簡単なので、ロープ要らないなーと感じてしまいました。

アルパインの登攀は、フリーのようにロープの保険やしっかりした支点=ボルトの保険を積極的に利用して、ギリギリに迫る登攀とは全く違います。気軽に落ちることは許されません。

余談ですが、疲労した状態を作ってからクライミング練習する、というのを、世界クラスの男子選手などは、されています。あくまで疲労した状態で…というのが肝心。

フリーの作法では、体は常にフレッシュな状態で登ります。肉体を最高の状態に持っていくことも、オンサイトするための、ひとつの作戦だからです。

例えば、ラオスはクライミング合宿という趣ですが、大体のクライマーは、フリークライミングの人たちなので、2日登って1日休む、または3日登って1日休む、です。
(ちなみに私はアルパイン出身なので、5日連続登って疲れた…なので、高難易度のは登りません、登れません)

どれだけ連続で登れる力があるか…1日の中での持久力や、数日にわたる登攀など、どれだけ疲れていても、登れるかという、別の要素が、アルパイン、特に登攀ルートでは必要になります。

ついでに言うと、アルパインでは落ちたら死が待っています…この事例のように。

余談ですが、65歳だった師匠は、毎年、体力の定点観測のため、阿弥陀南稜に登っていたそうですが、60を超え、阿弥陀中央稜に替えたそうです。

若いころには何ともなくても、年齢を重ねると、長いルートは堪える。

つまり、阿弥陀南稜は、長さが核心のルートです。

Sunday, March 25, 2018

山という意思決定システム

■ カルチャーショックだった洋上研修

中学のころ、洋上研修に行きました。そこで分かったこと。

海の上で、どう行動すればよいか?は、海のコンディションとお天気と星が決めるということ。

何時に起きるべきか、いつ食事をするべきか、どう食器を洗うべきか?どう進行すべきか?

すべて、自然の掟通りで、迷うことはない。

そのことに感動しました。

私は、”命令に従うのが嫌”なのではなく、”理不尽な命令に従うのが嫌”だったのです。

■ 山に従い、人に従うのではない

同じことが山にも言えます。

山では、山の合理性があり、それに従えば、誰しも、ほぼ同じ意見になります。尾根を読めば、進路が分かります。天気を読んで、進行すべきか、すべきでないか分かります。

合理的なロープワークというものも、あります。

2級程度のところでは、コンテなど意味ないな。ロープを出すならスタカットで出しましょう。

例えば、今日遭難のニュースを聞いた、積雪期の八ヶ岳阿弥陀岳でのことです。御小屋尾根に中央稜から転進で来ていた、登山者に会ったのです…彼は伝統がある会の出身でした。

その日は、翌日がマイナス35度の寒気が入る日で、前線通過は12時頃。午後から下り坂。この予報を聞いただけで、山が「今日は11時まで登りで、あとは下ってね」と言っているなーと分かります。

彼に「今日はどういう予定ですか」と聞かれ、「11時まで頑張ってあとは降ります」と答えると、そうですよね、という答え。

一方、私が連れていた初心者の人たちは、なんで11時で引き返すべきなのか、わからないので、不満だらけでした… こういう人たちは、登山前から遭難予備軍です。

山が語ることを聞く、というのは、そういうことです。

私は、長年のリーダーがした判断と異なる判断をすることは、ほとんどありませんでした。

しかし、山の言うことではなく、

俺の言うことを聞け、

という人とは、まったく意見が合わないことが多かったです。

そういう人は山を見ていない。

みんなに、俺を見てほしい人なんだろうな。

Friday, March 16, 2018

”山”という地理システム

昨日、山を知らない人に、山のことを説明した。

■ グループ内小分けシステム & ストリート番号システム

日本では地理システムは、”グループ内小分け”システム。大阪市という大きなグループの中の、中央区の中の、河原屋町の中の、2番の中の・・・1の場所というふうに地理を把握する。

一方、アメリカをはじめとして、外国では、”ストリート番号システム” ハミングウェイ通りの130番なら左側、131番なら右側。ストリート番号が1だったら開始部。番号が上がれば上がるほど、長い道。 

ちなみに、ストリート番号システムは、かなり分かりやすい。それと比べると、日本のグループ内小分けシステムは分かりづらい。3-4-1なんてどこかってどうやって分かるんですか?と良く外国人に聞かれる。

GPSは言うまでもなく、緯度と経度のグリッドシステム。

■ それ以外???

それ以外に、空間認知システムがあるのだろうか???

あるんですね~!

それが尾根と谷です。

山をする、ということは、尾根と谷システムをマスターするということです。

尾根は登れば登るほど一つに収束します。谷(沢)は登れば登るほど、分岐が出てきます。尾根は起伏がありますが、谷(沢)は、下る一方です

というわけで、尾根と谷を見ていれば、山では、自分が大体どこにいるのか分かるわけですね♪ 

というわけで、山が分かるようになる、というのは、”尾根と谷システム”のマスターということです。

新たな思考回路、新たな地理システムの獲得ということなんです!

でも、このことを誰も言わないから、山が魅力的な活動にならない。

人の後ろを歩くのが山だって思っている人が多くて困ります。