Friday, November 27, 2015

読了 ジョン・クラカワー 『空へ』

ちょっと前に図書館から借りてきた本を読み終わった。なんだか一気に読んでしまった。

”エベレスト”というと、言葉自体が、やっぱり、”山煩悩”な雰囲気をまとっている。日本で言うと、”富士山”、と同じだ。

富士山の山小屋に勤めていた人が、「富士山は、お祭り」と言う・・・私は富士山に6月に登っているけれど、お祭りの富士山は知らない。

”お祭りのエベレスト”が具体的に本当はどんなことなのか?知りたい人に、良い本だと思う。

映画『エベレスト 3D』では、隊長のロブ・ホールが、登頂制限時間リミットの14時を大幅に超える15時すぎに顧客のダグさんが山頂を目指したい!というのに、同意したことになっていた。それは情に流されたということになっていたが、こちらの記述ではそれは憶測でしか分からない。

映画で見たときと違う印象を持ったのは

・ダグさんは確かに郵便局員だが、他の隊員と比べて明らかに”クライマー”であり、”ベテラン登山者”であり、”自立した登山者”で、”手のかからない客”だった。

・ロブさんは、10回以上もダグさんに電話を掛けて、エベレスト遠征を誘っていた

こと。 登りたかったダグさんの山煩悩に、隊長が情に流されたという構図とは、すこし力バランスが違うようだった。

登らせたい思いと登りたい思いはマッチしているようだったし、どちらも熟練の登山家であり、クライマーだ。なのに、どちらも、14時で降りると言い出さなかったのは、単純に高所で判断力がオカシくなったためなのだろうか・・・。

登山では、”一番弱いメンバーがパーティの実力”と言われる。それで行くと、難波さんは、日本に伝えられているよりも、弱いメンバーだったようだった。

アイゼンでハシゴを歩くのに成れておらず、3回転んだのは、映画ではベックさんだったけれども、実際は難波さんのようだった。難波さんはアイゼン歩きやクライミングは、そうやっていなかったのかもしれない。ヒラリーステップでは10mの垂壁の登りがあるそうなのだが、最後は後続にお尻をプッシュしてもらっている。

でも、そんな高所でのクライミングなんだから、どんな経験があっても体力がおぼつかないのかもしれない・・・。

ベックさんが視力を失ったのは、雪目ではなく、レーシックの手術のせいのようだ。高所に行く人はレーシックしない方が良いかもしれない。

また、ロシア人ガイドのブクレーエフさんは、この事件後、顧客をおいて一人で先に降りたと言って批判を浴びていますが・・・

私の知っているリーダーはいずれもしっかりした人たちですが・・・山岳会では、あまり危険がないと見なしたら、さっさと降りて、ゆっくりの人には付き合わないリーダー多数。幼稚園児じゃないんだから、危険がない箇所くらい、自分で歩きな、って意味ですね。

私もそうされて別に平気なのですが・・・。そうしては、いけないタイプの人がメンバーにいたら、後ろを歩くか、少なくともその人が目に入る距離にいます。・・・例えば、くたびれてヘロヘロになっているオジサンとか・・・どちらにせよ、下山口で合流するし、パーティは一つなので一人で先に行ってもあまり合理的ではない。

早く歩くのは、急かしたい気持ちが表れているわけですが、本当にバテている人は、急かしても歩けないと本には書いてあります。やっぱりバテが遅さにつながるようだと、やっぱり身の丈以上の山ですね。

ので、ブクレーエフさんへの批判は、あんまり登山を知らない人の完全外野の意見だな~と思いました。

■ 公募登山の関係性

驚いたのが、こうした公募登山での、リーダーとメンバーの関係性です。

リーダーと各メンバーは信頼関係でつながっているけれど、各メンバーはみな初対面で、互いでロープで結びあうでもなんでもないのです。なので、メンバー間の助け合いは期待されていません。

そこは、一般的な登山と全然違います。メンバーは他のメンバーを助けることが期待されているからです。

例えば、疲れたメンバーがいれば、ザックを持ってやったりします。

それは、運命は一蓮托生と言うところがあるからですが・・・たとえば、誰とでも最初はあるので、友達になりながら、山に行くのでも、最低限すべきことというのはあります。

初心者の間はあまり分からないですが、ゲレンデから入って山に行くという流れはお見合いです。

 1)ゲレンデクライミング → 2)ロープワークやビレイの確認 → 3)山

例えば明神主稜程度の山に行くのでも・・・最初は三つ峠のゲレンデで互いのロープワーク理解度を確認し合い、その後フリーのゲレンデに行って、互いにどれくらい相手のクライミング力に期待してよいか、確認し合ってからしか、本番の山には行かない。それでも、ゆとりを見て、一人でも行けるようなルートに一緒に行くのですが・・・。 エベレストほどの大きな山なのに初対面!

やっぱり、ある程度トレーニングで大よその実力を分かりあっている仲間と行く方がどんな山でも安全だよな~と思いました。

誤解の無いように言っておくと、互いを知りあうのは、実力程度のところに行く、ためです。今の実力でどこなら行けるか?と考える。

”今の実力で行けるところ”を少しずつ、上げて行くのが山。なので、実力を客観的に見極める必要があります。

そういう意味ではエベレストに登る実力、というのは、難波さんは既に6大陸の最高峰を登っていたから、素人目には一番資格がありそうですが、そうではなかったことが意外でした。

また、公募メンバーは、ガイドとシャルパにすべてをお任せしなくてはならず主体性や積極性を発揮してはならない、ということでした。それは登頂へのエネルギーを温存するためです。

平たく言うと上げ膳据え膳で、「あなたは勉強だけしていればいいのよ」という受験生と同じ状態です。

そんな山、なんだか全然楽しくなさそう・・・ 

山には色々ありますが、やっぱり自分の力で楽しく登るのが一番安全なのだな~というのが感想でした。






クリックアップvsグリグリ2

■ グリグリ2 か クリックアップか

私にはフリークライミングで高難度を登るってのはありえない感じですが・・・とはいえ、今登れている易しい課題を粗形態→精形態にする必要はあり・・・それには岩場に頻繁に行って、繰り返し登っていないといけない。

 ので、繰り返し登る=ビレイヤーに負担

というわけで、グリグリ2か、クリックアップを買うべきかもしれないのですが・・・

うーん、どっちがいいのでしょう?
                          ロープ径
グリグリ2  185g 12150円     8.9~11mm
クリックアップ 115g 11880円   8.9mm~10.5mm

ちょっとクリックアップが軽い。ロープ径は変わらない。11mmを使っている人はみたことがないしなぁ・・・。

不安な人にビレイしてもらうには、こういう機会があると良いと聞く・・・でも、使い勝手に癖があると聞いている。 見た目でどういう状態かすぐ分かると言う意味では、クリックアップはよさそう。

グリグリだと、ロックしているのかどうか、いまひとつよく分からない。でも、使っている人が多いのはグリグリ。

またロープとの相性もあるそうで、今使っているロープと相性が悪かったら困るなーと言うことになる。

まぁどちらにしても、買うことになったら、きちんと使いこなせるようにならなければならない。

クライミングは難しい

■ 粗形態

今日は素晴らしい晴れ。 山に出かけたくなる快晴だ。ところが週末の立山は雪らしく、室堂から高原バスで立山に行ける見込みが薄く、予定はキャンセルした。今回は夫と山に普通に登ってこよう。

昨日はジムに行って、今度はボルダリング壁ではなく、リード壁をやっていたんだが・・・うーん?

なんだか、どうやってクライミングを学ぶか、方針が混乱中。

リード壁では、垂壁でスイスイと登れる壁があり、それを洗練させていく計画なんだが・・・

 5.8特に問題なし
 別の5.8特に問題なし
 5.9のみどり 一か所悪いが問題なし
 別の5.9 レイバックのような体制からガストンへ移るところが安定せず毎回違うムーブになる

正解は何か?と考えず、どうすれば切り抜けられるか?と考えるように

とアドバイスを受けたんだが・・・ 毎回切り抜けてはいるんだな。でも、いつも違うムーブになったりして、それがなぜなのかはよく分からないのだが、やっぱり後のほうのムーブの方が良いような気がする。

後の方になると、疲れているし、最初はギリギリ感があるが、あとの方はもう、できる、登れると言うのは分かっているので、そうツライ感じはしないからだ。

しかし、ムーブの洗練と言う意味だと、足を覚えて毎回同じムーブを繰り出したいなという気になれないんだけど・・・

私にとってはまだ、型の反復ムーブとしてはフリを使って登るだけの5.8で十分なのかもしれない。

ムーブが固まっていない段階を 

 粗形態

と言うらしいが、このサイトによると、

 0)できない段階  全然分からない状態、なんとなく分かる状態の2通り

 1)上手くないけどできる段階 まぐれの一発 10回やれば数回できる

 2)上手くできる段階 粗形態の完成 10回やれば、9~10回できる

 3)自動化  ブランクがあっても忘れない

とあり、これによると、やっぱり繰り返しの回数が足りていないような気がする。

1つの課題を、10回登ったかと言うと登っておらず、今回は5本ずつくらい登ったんだが・・・。

やっぱり1本を10回ぐらいずつ登った方がいいのでは?

まぁ易しいのは、すぐ飽きてしまうのだが、飽き=慣れ、なのかもしれない。

■ テニス部の思い出

私は中学ではテニス部にいたのだが、テニスでは、素振りでラケットの振り方を身に着ける・・・が、その振り方を身に着けるのに周囲の人と比べ、長い時間がかかったな~と思う。

だから、クライミングは余計時間がかかるような気がする。そもそも、山のためのクライミングだし。

バレエは特に基礎が重要で、変な癖を付けない(間違ったフォームを精形態にしない)のが重要なのだが、それには、考えながらやるといいと言われる。

バレエは気を付けるべきことが頭にすべて入っているから、考えながら、動作を繰り返すことができるんだが、それがないのがクライミング・・・。

■ まとめ

とりあえず、昨日ならった注意点のまとめ。

1) 手、足、足= 基本だが、キョン足を使うと 足が節約できる 足の節約は重要

2) 正対の時は、重心移動してから立ち上がる 持ち手の下にスタンスを求め腰を移動する

3) 対角線バランスの時は、足が正対と逆 (こっちはできる)

■ 2点バランス

ハシゴを登るのは2点支持だそうです。うー?そうなのか?なんだか私には3点支持に思えるのですが・・・

http://www.f5.dion.ne.jp/~mitsu_g/report1.htm

やっぱり分かるようでわからないクライミング・・・

色々な教え方があるようで、混乱するので、そもそもあまり身についていない時点では、あんまり深く考えない方がいいのかもしれません。

というより、ホントにジムに行った方がいいのかなぁ・・・ 

またジムのクライミングに疑問を感じてしまうのですが・・・何しろ岩場とは感覚が全然違う上、あまり足を使えている感じが分からない・・・。

やっぱり12ヶ岳の岩場を登り込んだ方が良いのではないか?と思ったりしてしまいました(笑)。


Wednesday, November 25, 2015

山では知的怠惰厳禁

■ やっと寒く・・・


今日は甲府は寒い。やっと干し柿作りができる!と喜んでいる人は多いのではないだろうか?

今年は、干し柿の品種の、百匁柿は豊作らしいが、お天気が秋らしく乾燥せず、干すに干せなかったのだ。

今日は我が家でも、買ってあった百匁柿をたくさん、つるした。

百匁柿は高級柿で、干していない状態でも1つ100円もする。

山梨は、外からの情報が入らないし、自分のところの情報も外へ出て行かない、孤高の土地柄で、その影響か、良さをよく知られていない。

冬にお天気が異様に良いこともそうだし、干し柿が長野のものなどと比べて異様に大きく、おいしいこともそうだ。

自然を起点にするものは、流行がなく、陳腐化の影響を受けづらい。

■ 中高年登山というジャンル

無名山塾の、『岩崎元郎校長の決定版 登山学―ヤマケイ・無名山塾カルチャー教室リーダー養成講座より』を図書館で借りてきているので、パラパラとめくっている。

最近、山には、”中高年登山というジャンル”がある、ということを理解した。

いわゆる”中高年登山スタイル”で登っている登山者は、いわゆる山ヤとは、全く違う価値観で動いている人たちだ。

私は40代で、中高年というくくりに入る。しかし、現代の60代以上の人たちがやっている登山と、私の山はまったく違う。同じ山に行っても行動様式が全く違う。

それで改めて、この本を読んでみたのだが、視点的に同じ問題意識に基づいていると感じたが、驚愕しているのは、2002年と言う古さだ。13年前だ。13年も前から続く問題だったのだ。

問題意識は、易しい語り口で語られてはいるが、何に基づくかというと、

 誰もリーダーとなりたがらない = リーダー = ババ引きのババとなっている点

だった。中高年登山は、リスクを取りたがらない、楽しいだけ、受け取るだけ、というスタイルだ。

そうなった歴史的経緯は、

 登山者増加
  ↓
 スキル不足の危ない登山者増加
  ↓
 アブナイからお金を払っても、しっかりしたリーダーに着いた方がいいですよ
  ↓
 ガイド登山ではなく、なぜか団体ツアー登山になってしまった = かけ違い
  ↓
 ”危ない”部分は正せず、ツアー登山増加
  ↓
 依存性 & 無謀性 増加
  ↓
 結果として、毎年 中高年登山者の遭難増加

となっているらしい。言い出しっぺは岩崎元朗師匠だったようなのだ(笑)。

したがって、現在、登山ジャンルとしての”中高年登山”は、かなり高リスクジャンルに入っている。

この本の奥付を見ると、発行は2002年で、連載はその頃だから、すでに13年ほど昔に問題意識となり、その反省はおそらくないまま、永久的にリスクが温存されている状態と思われる。

2002年時点で50~60歳だった人は、13年後は63~73歳となる。73歳はおそらく多くの人が現役を退きリタイヤしていると思われるが、63歳はまだ健在と思われる。

10年あれば相当な経験が蓄積できると思われるが・・・。 

(楽しい)&(受け取るだけ)が、一つの物事の陽の局面とすると、陰の局面は、(無謀)&(依存) だ。

誰も無謀登山、依存登山を推奨した訳ではないのに、歴史経緯的にこうなってしまった・・・ということが、人間の近視眼を物語るものであろう・・・。登山のマイオピアだ。

■ 下部組織にハイキングの会

山岳会に、60代以上の登山初心者が増えて、山岳会が山岳会ではなく、ハイキングの山しかできない状況に陥ってしまうのも、今に始まったことではないらしい。

岩崎さんの本では、山岳会に別組織としてハイキングの会が立ち上がった、という状況も書かれている。

登山、ではなく、中高年登山というジャンルの登山を志向する人が増えた結果、ハイキングの会が必要になったということなのだ。

前穂北尾根に行きたい人と、大菩薩嶺に行きたい人では、話が全然かみ合わないからだ。

それは当然の流れだと思う。一つの団体で済ませようとする方が無理があり、その無理がどう反映されるか?というと、山行が危険になる、ということだ。

つまり、大菩薩嶺でハイキングすることが登山だと思っている人を、前穂北尾根に行くような世界に連れて行ってはいけないのだ。

しかし、日本では悪平等主義がはびこっているので、一つの団体だと切り分けが難しくなるのだ。

やはりアルパインを志向する本来の山登り、オーソドックスを行く人たちと、中高年登山は、混ぜてはいけないのだ。

■ 正確にリスクを見極められなくなっている

一方、アルパインクライミングについても、山の人たちの間でも誤解は深い。

例えば、ロープワークについては、ロープと言うのは、初心者ほど必要なギアだ。ロープは文字通り命綱なのだから、落ちる可能性が大きい初心者ほど必要なのは道理だ。

しかし、山の世界ではなぜか、ロープがいる=本格的、イラナイ=初級という思い込みが根強く、初心者の人ほど、ベテランがロープ無しでは通らないような、危険な一か八かをロープもつけずに行っている。

それは、頑固な思い込みによるもののようだ。(そして人は誰でも年を取るほどに頑固になる)

そのような思い込みの一つに、クライミングは危険、というものがある。 おかしなことに、クライミングより、むしろ危険な沢登りで、そう発言する人がいたりもする。

沢は外的危険が大きい。外的危険は、人間がコントロールできない危険だから、外的危険が大きいことは、より危険だということだ。

アイスクライミングについても同様の誤解が根強い。現代はアイススクリューなどのプロテクションが発達したので、沢登と比べるとアイスの方が格段に安全だ。

何より大切なのは、プロテクション・・・中間支点やアンカーで、沢ではハッキリ言ってプロテクションは取れないと思った方が良い。

滝の中では、自分でプロテクションを設置することは、ほぼできないし、あってもハーケン(錆そう)や、木の根だったりだ。

フリーのクライマーから「滝って何でプロテクション取るの?」なんて不思議そうに聞かれる・・・そりゃそうだよな~と思う。あんなの、プロテクションのうちに入らないかもしれない。

■ 鳥瞰図を持つこと 全体像をつかむこと

先日のことだが、山で軍手をしていたら、おじいさんから「山で軍手をしてはいけないよ」と注意を受けた。

山では木綿ではなく化繊・・・というのは、言われることだが、焚火をするなら軍手がないと何もできない。化繊ではあっという間に火がついて燃えてしまう。

ウエアも同じで、火の粉が散るようなときは、木綿のシャツ一枚上に羽織って、化繊のウエアを火から守らなくてはいけない。

しかるに、「山で軍手をしてはいけない」というのは、そのおじいさんのやっているレベルの山では真実だが、道なき道を行き、焚火で暖を取り、調理をするような山では、全く反対のアドバイスが的を得ることになる。

山では、基本的に年功序列は成立しない。山をより深く理解している方が、アドバイスを与えることが良いのだが、これは基本的に日本人が感じる文化的快適ゾーンではない。

それは、クライミングにも、テント泊にも、読図にも言える。

全体像をよりよく知ろうと努力をすることで、本を読むだろうし、より経験の大きな者を探したりもするだろう・・・何より、よく意味を考えるようになるだろう。

日本では知識偏重と言われるが、それは、思考を伴わない単一の知識の受け売りが危ないという意味だ。

経験への強すぎる依存も見受けられる。

知識を軽んじ、経験を重んじるのは、たぶん、背後に思考の怠惰がある。どちらも思考という努力を放棄している点、単純さ、盲信を後押ししている点が知的怠惰なのだ。

そういう意味で知的怠惰を起こさないことが、山では安全につながる、と感じた。

Tuesday, November 24, 2015

楽しい湯河原幕岩クラック講習



このような大快晴
■ 初めての湯河原幕岩

クラック講習に行ってきました。

友人が出るという、菊地敏之さんの講習に誘ってもらいました☆

菊地さんは、アルパインの人にはおなじみの方です。

クライマー御用達本の著者。

有名人に合うので、ちょっとドキドキ?

と思いきや、なんだか初めてとは思えないほど、リラックスしてしまいました・・・すいません。

初めての湯河原だったので、”湯”河原と言うくらいだし、温泉がいいのかな~と温泉宿での休養をセット☆

・・・したつもりでしたが、温泉旅館はどこも満員で、マンダリンハウスと言うペンションに泊まりました。なんと、幕山公園まで車で2~3分でした。

■ 1日目

公園入口のベンチ ここで待ち合わせよう
今回は、1日目クライミング、2日目講習会、3日目 観光、の予定。

1日目は10時ごろに幕山公園に到着の予定でしたが、御殿場で東京方面に向かう高速道路に乗ってしまい、あえなく撃沈・・・。

小田原でスタバ休憩・・・ 結局東京方面からの人と同じように海岸沿いの道路を使って湯河原幕山公園へ・・・。

駐車場が一杯で上に停めれなかった・・・。

正面壁遠景 梅林の向こう側です
支度して、正面岩壁に着いたら、10:50でした。

公園入口には、

 トイレ
 自販機

があります。

正面岩壁は、公園入口から見えていますので、誰でも行くのはできますが、梅園を通ると、かなり草ぼうぼう・・・。

入り口でベテラン風のクライマーがいたので、「あれって正面壁ですよね?」と聞くと、「登山道一本目を左」と教えてくれました。

入口付近の看板
一本目左・・・と思って細い踏み跡をたどると・・・別のクライマーが戻ってくる・・・彼はボルダラーでしたが、ボルダ―を探していたようです。どうも正面壁の道からボルダ―に行けるみたいですね。

No3クラックのある岩
しっかし、草ぼうぼうで、草の棘だらけになった・・・(汗)

久しぶりの再会に喜ぶ間もなく、ハリネズミのようないでたちで、ご対面・・・

「まずは毛づくろいから・・・」(^^;)。

着いた場所は、コナンの前でしたが、No3クラックの方に、仲間はいましたので移動しました。

ご夫婦で登られている方たちです。羨ましいですね♪

No3クラックには取り付きで観察中でした・・・これがそうなのかなぁ~とトポと見比べです。

私もトポを用意して行きましたが、トポって、色々と情報が抜け落ちている部分があるので、よく分からなかったりします。

あれがきっとベビーピナクルだろう・・・とか・・・。 岩場の写真をネットで拾ってくる、ということも良い手ですが、登っている人が間違っていることもあります。

この日は、久しぶりの再会を喜んで、

 No3クラック 5.9
 コナン 5.9

をそれぞれリード、トップロープで登りました。

No3クラックは、私は取り付いてみたものの、最初のテラスから一段上がるところで、すぐにパンプしてしまいました。

ムーブが分からないで、耐えている時間=パンプ。

こりゃマズイ、1本目で”本日お終い”になっては・・・とすぐに降りて、パンプを取りました。

要するに岩を見る目がまだできていないので、こうなってしまう訳なんですよね・・・

このように初見ルートで3分の1も行かないで、下りなくてならなくなる私でも三つ峠はリードでき、人を連れて行けるくらいの段階です。(ま2回目からリードしていますが)

No3クラックを下から見る
一回目はこれが越えられなかった
それを思うと、クラックの5.9をリードして、登れるということは、



 ・確実に落ちない一歩を出せるほどにムーブが読め、洗練されている
 ・確実にプロテクション(カム)を取れる
 ・落ちそうになったら敗退できる

No3クラック登攀中
ということで、とてもすごいことです。これをリードできる人と、トップロープで登れるだけの人との実力の距離は非常に遠いです。

私はまだカムのサイズやセット、及びクライミング技術の問題で、リードはできない。
コナン

この日は、取り付きの偵察やアプローチもあり、早めに切り上げました。


コナンを含む岩取り付き付近から全景
コナンはとってもクラックらしい感じ

















■ 楽しく宴会

しとど庵は廃業していましたが、オーナーさんの好意でテント泊。と言っても贅沢キャンプです。

今回は、シチュー&米から炊くご飯。 コッヘルを用意したら、卓上コンロの五徳よりもコッヘルが小さく結局炊けず、普通に山用ガスコンロを使うことになりました・・・。

ワインは2本も開けて、皆で乾杯。 おつまみに、生ハム&モッツァレラ &クラッカー。 プチトマト。

温かい飲み物で締め、温泉のこごめの湯に入ってお終い。

こごめの湯は7時以降行くと500円で入れるので、ちょうど良かったです。

テント泊とはいえ、街灯もついているし、寝るだけなので気楽で、今回はぐっすり熟睡してしまいました☆

■ Day2

二日目は朝から、ホットケーキで大フィーバー。ホットケーキを焼くフライパンが最初チタンだったので焦げてひやりとしましたが、アルミホイル&蒸し技で、ふんわりホットなおいしいホットケーキを頂くことができました♪ しかも生クリームつき!バクバク食べてしまった。

コーヒー&紅茶で締めて、サクッと岩場へ。 しとど案には15人の団体様で、山岳会も入っていました。

15人は多いですね~。岩でもアルパインでも、大人数はあまり小回りが効かず、効率も落ちます。

私的には岩もアルパインも山も、4人がベストです。

4人なら、二人パーティ× 2組。 一人がけがをしても、一人が付き、一人が救援に走っても、あと一人余るので、ゆとりができます。

これが二人だと、クライミング系だと写真が取れないんですよね。クライミングは、3人がいいです。
二人だと順番がすぐ回ってきて、くたびれるってのもありますし。

二日目は、講習日だったのですが、講師到着前に、団体のクライマーが出発して、焦りました。

公園ガイドの札を付けたおじさんによると、これからの季節、クライマーが100人くらい訪れ、岩場は早いもん順の取り合いになるのだそうです。

神奈川って言えば、なんとなく岩っていうイメージがあります。・・・がなんとなく、事故が多い県ってイメージもあります。

No3クラックに移動して、

 ベビーピナクル
 No3クラック
 

またNo3クラック 回数こなすとこなれてきました・・・
を登りました。片足スメアの課題です。ベビーピナクルの方は、典型的なクラック登りでした。こっちを数やれば良かったかなぁ・・・。

私は新しい課題に取り組むよりも、回数をこなす方が今の時期に合っているので、No3をもう一回。

べぴーピナクルというのは、この小さい角っこのことです
そっちはリードできる人たちは、隣の凹角ハングを1回で、日没・・・暗くなるギリギリ本日終了。

楽しいクライミングデーでした。楽しく、かつ考え方などが勉強になった。

自分への信頼を高めていこう!と、やっぱり思いました。

■ Day3

マンダリンハウスと言うお宿に予約を入れていましたが、今回は、クライミングがメインだったので、お宿の印象は薄い。

お食事が一杯でお腹いっぱい・・・朝の朝食がすごく量が多かった。ハワイ風のお宿でした。

翌日は、また幕山公園へ行き、幕山に登り、桃源郷エリアなど、登山道から見える範囲で偵察。


山としては見るべきところが少ない、近所のウラヤマ風のところでした。 まぁ標高も626mですしね~。展望が良いかと言うと、んー。登山道の途中の方が開けている箇所がありました。

山頂付近から懸垂して岩場にトップロープを張る、というのはなさそう・・・。

このような小さい山であるにも関わらず、遊べる岩が一杯で、それがすごいです。

桃源郷
ここはクライマーを歓迎するように、駐車料金を300円くらいとっても良いので、少し整備したら、もっと地元にも恩恵があるようになる気がしました。

小川山なんて、駐車場名目で300円かかりますが、それで文句を言う人、いませんしね。

最近はクライミングは大衆化し、岩場を一部の愛好家だけが利用する・・・というスタンスよりは、時代を先取りし、共存共栄を図るほうが、時代の流れにマッチしているように思いました。

岩場が荒れているわりに、クライマーは花盛り。

登山道は、閑古鳥が鳴いており、山頂には山ガール風のウエアを着た中高年カップルがお弁当を食べているだけでした。

いや、私も夫も中高年ですが・・・スイマセン・・・ただ明らかに山ガールウエアの奥様が年輩でびっくりしたんです・・・旦那さんはどこ吹く風で普通のウエアでした。626mだったら、ウエアは普通の服で十分ですしね。で、神奈川って都会なんだなぁ~を感じさせられました。

帰りは、厚生年金会館の温泉、ニューウェルシティいずみの湯に立ち寄りました。設備が整っているクアハウス風の施設で、お食事もでき、化粧水やせっけんなどのお化粧品も揃っているのでおススメです。5時間まで駐車無料。 湯の方は、源泉はちょっとで塩素の湯ですが、体の汚れ落としを目的にした場合、源泉はあまり重要ではないかと・・・。 1000円です。ここは朝まで過ごせるらしい。

そうこうしているうちに、2時、帰らなくては、と芦ノ湖経由で帰りました。お天気がイマイチだったので、富士山が見えず残念でしたが、見えたら非常に良いシーニックドライブだったような?

夫と走って、また思い出が一つ増えました♪ ここ2年ほど、忙しく、夫と過ごす休暇が削られがちだったので、また二人で思い出の山を作りつつ、登って行きたいと思いを改めています。

須走、富士吉田、三つ峠、甲府と順調に帰り、スタバで休憩して(また~)、帰宅は19時。

湯河原方面は、冬にはお世話になりそうです。甲府は真冬での登れる岩場もありますが、課題が面白いかどうか、講習があるかどうかも多少課題になります。

まぁ私は地元の岩場を大事にするように言われているので、兜山で成長するのが良いのかな、と思っていますが・・・。うちから30分ですし。

というわけで、夫にはカメラマンとして活躍してもらい脇役でしたが、わたしにとっては得るものが多い、楽しい週末でした。


 

≪参考情報≫
・しとど庵 廃業中
・テント泊一泊 1500円
ゆとろ嵯峨沢の湯 温泉、レストラン、バンガロー
・こごめの湯 19時以降 500円
・いずみの湯 22時間営業 休憩所あり 5時間まで駐車無料

≪関連記事≫
湯河原の講習で思ったこと

http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-773363.html

同行者の記録

確実さを求めること

■ 墜落を止めてもらう経験を積む

私はクライミングに関しては、死と直結するので、例えば、ノットが曖昧とか、不確実なまま進むのが、嫌だな~という感覚があった。

ビレイは特に・・・だ。 落ちるというより、墜落しても止めてもらえるという確信が必要だ。

相手が、わたしをきちんとビレイできるかどうか、分からないままに進むのは不確実性を含んでおり、一か八かの一種だと思う。

それは、初心者同志はお互い様。

なので、互いをビレイし合い、落ちる経験を積めば、相手が確実にビレイしてくれるかどうか分かる。


わざとだ、と分かるのは、そんなところで落ちるようなクライマーではないからだ。

わざと落ちる=パートナー候補。候補生でない人と結び合っている時に落ちて余計なリスクをしょい込んでも仕方ない。

先輩が自分のビレイで落ちたら光栄と心すべし。

・・・というわけで、私も同じようにすべきだと思う・・・のだが、先輩と私の違いは、私が初心者であること。

先輩のように、しれ~と安全そうな場所で落ちれない・・・どこなら落ちていいんだ?

人工壁に行くということも、なかなか、遠くから来てもらっている人とはない。最初から、岩となると、結果としては落ちないところしか登らないとなる。

外岩=落ちない、となるので、いつまでたっても、ベテラン以外は、リードのビレイを任せられる人が出てこない(汗)。

ので、私が絶対に落ちないところしかリードできない。

結果、連れて行ける岩場が非常に限られてしまう。

■ 人工壁

ということで、本来は人工壁は、クライミング技術を高めるところ、というよりも、大概のビレイを確認し合うところ。

ということなのだが、前の会の人は、初心者過ぎて、そこらへんも分かっておらず、先輩にトップロープを張ってもらい、ビレイしてもらって、登るのがクライミングと思い込んでいる状態から、全然進まなかった(汗)。

何しろ入会年度では、より後輩にあたる初心者の私にトップロープを張ってもらおうとしていたくらいだからなぁ・・・(ため息)。

自分にビレイヤーとしての責務があると考える、という段階が無いと、何年たっても、ずっとお願いしまーす、で、自立しない。

お互い様が成立しないのだ・・・。

先輩は落ちないからロープは持っているだけでいい、というセリフ自体が、周囲のクライマーを戦慄させ、自分は無責任ビレイヤーでーすと自ら発言しているような状態なんだが・・・(汗)。

■ 魔がさす = 「ま、いっか」

今回のクライミングで、一度、クライマーが一ピン目を取る前に草で滑って落ちてしまった。

ロープを結び合っていた二人は、いつもリードし合っており、夫婦クライマーなので、互いに相手を危険に陥れたいと思ってやったことではない。夫婦でなくても、そんな人はいないとは思うが。

ただ、初めて取り付くときは取った1ピン目だったが、2回目、3回目のリードだから、気が緩んで、取らなかったのだ。1ピン目、リングボルトだったし・・・。

また、お手本をしてくれる、ベテランは、1ピン目が遠い。 それは、ベテランは、その課題を何回も、それこそ何十回も登って、慣れているからだ。

しかし、クラックなどで、カムでのピンの取り方も学ぼうとしている初心者の場合、そういう姿を目の当たりにした場合も、支点を取る事に対して、「ま、いっか」という気持ちが働く。大げさかな、とおもtってしまうのだ。

「ま、いっか」は色々な所で入り込む。 でも、入りこませては行けない場所が1ピン目だ。

■ 1ピン目

こちらが1ピン目の重要性が述べられている記事。

1本目の中間支点

私は、

 1ピン目はビレイヤーの為

と自覚しているので、クライマーが取らなくても、自分で勝手に1ピン目はクリップしている。

ダブルの時は少々特殊で、カラビナを別々にして、両方のロープに1ピン目をクリップしている。

シングルでもダブルでも、クライマーが自分で支点を取ったら、落ちてもそのピンが止めるので、ビレイヤーが取ったピンは外しても構わない。

(でもカムなら私は残しておく。カムは外れる可能性があるからだ。)

■ 転落と滑落

今回、転落が起きた、ビレイポイントは立てる場所だった。足場も別に悪くはなかった。

それでも、あわや・・・というところで、悪いことが起れば下まで落ちれてしまうところだった。

そう思ったのは監督者も同じようで、慌てて、体を張って止めに入っていた。

転落と滑落は少し違う。

人間の体は転がる形だと傾斜があまりきつくなくても、コロコロと転がれてしまうのだ。転がると加速がつく。

私は転落経験と滑落経験がある。

どちらも8m落ちたが、転落だと頭を打って、大事に至る可能性があったし、実際、1週間は打った頭が痛く、2週間は響いて走ることができなかった。それでも岩に行った私はエライ!と思う。

しかし、ラバーソールが滑ったために滑落しただけの滝場での滑落では、同じ8mでも滑り落ちて、足で受け止めただけなので、どこも打たず、別に心理的にも強い影響は出なかった。

もちろん、滑った後は慎重になり、滝の落ち口付近の傾斜が変わるところでは、念のためトップに
「ちょっとコンテ」とお助け紐でつながってもらったが・・・。

あの転落と滑落は、わたしにリスクの違いを実感させるために起った事件かもしれない。

山で、頭を下にして落ちるということは、ほとんど死を意味するのだ。アンコントロールを意味するからだ。

それはただズリズリと墜ちた程度の経験の人にはわからないかもしれない。

滑落と転落はだいぶ違い、でんぐり返しで転がると、どこまでも落ちれ、大きな怪我につながる。

■ 気を緩めてはいけない箇所

今回は、1ピン目に「ま、いっか」が入り込んだ。そして、ヒヤリハットが起った。

その他、決して「ま、いっか」を入り込ませてはいけない箇所はどこだろうか?

1) パートナーチェック 

2) 1ピン目

3) 終了点の、架け替えなど、何か作業をするときの、セルフビレイ

4) 懸垂の下り始めのセットのチェック、テンションのチェック

5) 核心部へ入る前の、カム固め取り

6) 登り始めのロープジャムの解消

7) 懸垂のすっぽ抜け防止のチェック

8) マルチプル懸垂での、下降器を外す前のセルフビレイ

9) フリーでのヘルメット (頭を下にする可能性があれば被った方が良い。ベテランは被らない)

大抵は立てる場所でのセルフのように、一見別にイラナイように見えたりする。

■ ベテランは例外扱い

また、ベテランと初心者は違う

そこは、ベテランには、何百回というクライミングの実績の積み重ねがある。そこは全く違うと思った方が良い。

ベテランだって経験を積んでいる段階では、同じように臆病に安全対策を施してきて、その結果、ヘルメットをかぶる必要が無くなる程度まで成長した、ということなのだ。

そうした例外は、何十年のキャリアの上にある特権、と思うべきなのだろう。

■ 大げさすぎる安全対策

逆に初心者時代は、大げさすぎる安全対策をしがちだ。

ゲレンデでのフリーなら大げさでも特に問題にならないので、大げさな位でもよい。

例えば、流動分散に使う、二つのペツルボルトに対して、安全環付カラビナを使うなどだ。

これは大げさで、ロープは下にしか魅かれないので、パワーポイント以外はストレートゲートビナで十分だとされている。

逆に安環付きを常に持ってくる習慣が、ストレートゲートビナの軽視につながると良くない。安環付は中間支点には使えない。なので、長いルートへ行くアルパインでは、逆に中間支点が欲しいときに安環付では、転用できなくて、困ってしまう。

担げる重さという限りある資源を有効に安全の向上へ回すためには、不利だったりもするのだ。

もちろん、ペツルの課題をゲレンデで登るときには関係ない話だ。

他に初心者を思わせる大げさな支点としては、前に見た例は、トップロープの支点に2枚の安全環付ビナを互い違いにして使っていたが、そもそも支点にしている木が直径5cmしかないもの。その5cmの立木の後ろに、大きな太い立木があったので、本末転倒になっていた・・・(^^;)。

安環2枚にしても、立木が折れてしまっては意味がないので、安環2枚の余裕があるなら、太い立木にスリングを掛けてくれたほうが良い。

■ 力加減が分かるのがベテラン

そんなこんなで、結論すると、初心者は力を抜くところと、抜いてはいけない箇所が分からない。

力を抜いては行けないところで抜き、入れすぎのところで入れてしまう。

そういう時代は誰にでもあり、それは色々と考えたり、経験を蓄積したりして、ちょうど良い加減を覚えていく、ということになる。

それは、説明されることがとても少ないがために、よく分からないのだ。

ただ大事なことは、

 「こんなところでは落ちない」という考えを前提にした行為は危険

ということだ。

”こんなところで落ちる”のが初心者であるのだから。 

次に問題になるのは、初心者の目安は何年目か?ということであるが、それは登山頻度が異なるからには、人によってまちまちだ。

岩を舐めている間、山を舐めている間は、脱初心者から程遠いかもしれない。




湯河原でのクライミングで思ったこと

週末は楽しく過ごした。

■ 確実性を高める=クライミング

この週末、もっとも素晴らしかったのは、

  クライミング=確実性の積み上げ結果である

ということが再確認できたことだった。

私には、クライミングは山の延長として最初からあった。遊歩道クラスの1級から、二本足歩行の2級、3点支持の3級、そしてバランス感覚が必要な4級、それがさらに困難になり、落ちる可能性が排除できなくなると、ロープが必要になり5級になる。だから、ロープを出さない5級はない。

アルパイン1年生として過ごした山岳会1年目は、どの程度からロープを出すか?を研究して過ごした。その疑問は登山を始めてハイキング道しか歩いていないころから、持っていた疑問だった。

 1)落ちる可能性がある
 2)落ちたとき、怪我の可能性がある

平たく言えば、穂高クラスの一般縦走路クラスでは出さない。それを超えると出す。

落ちる可能性は人によって違う。何度も同じところを通っていれば、慣れ、が発生するからだ。

しかし、慣れが発生していないような人がロープを出すべき場所で出さず(例:ジャンダルム)、いちかばちか登山をしており、それを自慢話の種にしている。それが今の山の世界だ。

登山が、度胸試し、あるいは、強運比べ、になっているのだ。それが山で遭難事故が絶えない一つの遠因になっている。

と確信できるのは、雨量50ミリ、視界50mしかない日に、制止も聞かず稜線へ出ていく人たちを現実に山小屋のバイト中に見たからだ。

特に中高年は、そうした価値観が強く、雷が鳴っている中で歩いたことが、なぜか自慢につながっている。その時はたまたま運が良かっただけなのに、だ。

その価値観は、クライミングにも持ち込まれ、ロープを出す技術がなかっただけなのに、ロープを出さなかったことが武勇伝になってしまう。

■ ある経験

私は今冬3月ジョウゴ沢に行った時、核心部の大滝でロープを出さなかった。師匠には叱られ、だいぶ反省した。

出さなかったのは、私自身もクライミングに不安を感じなかったため、もあったが、1番の理由は、状況に流されたことだ。

トップがロープの出し方を知らないで行ってしまった。本来滝下で、メンバー全員でロープを出すか出さないか相談しなければならない。そのまま行ってしまったのは、私がリーダーをしていたのに、メンバーにリーダーへの敬意を欠いていたからだ。文化的精神的問題だ。

計画書、ギアの指定など私が行ったし、ルートを提案したのも私だったのだから、リーダーは私だった。彼はダブルロープを1本持ってくるように指示したのに、持ってこなかった。本来なら、そこで敗退にすべきだった。このパーティはメンバーの構成に問題があったのだ。

大半の男性初心者は、大抵は、登れるか登れないかだけが敬意の対象になる。その判別も素人っぽいが、その判別で判断する習慣が抜けないと、問題は他にもある。

当の自分が他のメンバーにより大きなリスクを負わせてしまうのだ。

男性初心者は、自分が落ちることなど想定もしておらず、自分が落ちた場合、メンバーは救助しなくてはならないことを考えていない人が多い。山を怖いとは思っていないのだ。

登れるからロープが要らない、という山野井さんクラスのカッコよさを、アルパインを初めて1年もたたず、ロープを出す出し方もいろいろあるということをまだ学んでいない人がやろうとする。

ロープの出し方を学んでいない証拠に、沢でまったく同じことを再現していた。つまりザックの中にロープを入れたまま核心部に取り付こうと再度していた。

それでは、トップはロープに守られていない。つまり自分が平気そうだと思ったらロープは出さないでいいとおもっているのだ。しかも、その予測でさえ不確実で数歩で落ちていた。

こういう人と一緒に山に行くことは、他の人に取っては、爆弾を抱えていることで、一緒に行く方がむしろ遭難救助に遭遇する確率は高まってしまう・・・。

トップが”俺にはロープはいらないから”という考えのために出さない箇所で、落ちてしまう可能性がより大きいのは、本来ロープ出すべき場所をトップの怠慢のために出さずに通らなくては、ならなくなるメンバーの方だ。

トップがより大きなリスクにメンバーを晒している。

そのことは各種の遭難事件が、過去に多数の実験で証明している。たとえば出すべき場所で出さなかったとき落ちるのは、出さなかった張本人のガイドではなく、より技術の未熟な顧客だ。

アルパインでスタートした人が良く起こす、このような勘違いは、ロープを出さないで済ます方がかっこいい、というもので、それをまだ5.10代さえもまともに登れないような、下積みも実績もない時代にやってしまい、たまたま運よく怪我がなく過ごしたことを武勇伝にしてしまう。

早期に考えを正さないと、次のグレードでは、落ちて大怪我をしてしまう。

考え方が問題だから、グレードがどうであれ、いつかは落ちることになっている、ということが分からない人が多い。

私はそうした危険な思想の人たちに山岳会で取り囲まれていたので、尊敬しているクライマーに、

 確実性を積み上げることがクライミングの神髄だ

と言ってもらって、自分の感性にお墨付きをもらったような気がした。山に一か八かはない。クライミングにも一か八かはない。

■ 基礎固め

私は、まだ”いわゆる5.9アンダーの人”(=初心者という意味)なので、今は、外岩で5.7とか5.8をたくさん登り込まなくてはならない。

それは、やっている本人にも明らかで、他の人にも明らかだ。易しい課題をたくさん登り込むことで、基礎力が作られる。

それなのに問題は、フリー出身の人(あるいはジム出身の人?)は、

 すぐにもっと難しい課題へ行くべきだ、とすること

だ。でも基礎力がないのに、その上に積み上げられるはずがない。

私は中高はテニス、大人になってからはバレエをやっていたのだが、どちらも基礎練習が一番好きだった。テニスなら素振り、バレエならバーレッスン。クライミングは、基礎レッスンに値するものが、人工壁なのだが、素振りやバーレッスンに値する良質な基礎課題が、ボルダリングブームでとても少なくなってしまったのかもしれない。

指力を使って、ギリギリを乗り越える、という遊びが主流で、岩場での確実な登りのために基礎的なムーブを洗練させることを主眼にした課題がとても少ないのだ。おそらく今リード壁があまり流行っていないということもあるのだろう。

ということで、わたしに必要なのは基礎固めである。でも、それは、1年以上前からずっとそう思っていることだ。

■ 経済的苦痛の解消

今身近にあるボルダリングジムに毎日通っても、基礎固めにはならないのではないか、と思うのが、ボルジム通いを躊躇する理由だ。

しかし、それでも行かないよりは行った方が良いのは道理なので、その程度の動機に月1万円近くの金銭的負担を背負うのが非常に苦痛だ。なぜなら、そのお金があれば、毎週外岩に通え、その方がうんと力になるだろうからだ。

この苦痛を解消する最も良い手と思えるのは、夫にビレイヤーを買って出てもらうことなのだが…、今回は夫にはクライミングってこんなことだよ、ということを見学してもらった。

トップロープのビレイくらいは誰でもできることなので、夫にお願いしたいのだ。

■ 幕山公園

今回は、初めての湯河原幕岩。幕山公園は、荒れていた。

正面壁にたどり着いたら、途中の梅園が草ぼうぼうで、すっかり草のとげまみれになった。岩場は取り付く課題を見つけるまでが難しいし、そこから核心だったりする。

が、そういうことを含めて楽しいと思えるタイプの人の方が好きだ。連れて行ってもらえば、確かにアプローチは楽だが、山と言う感じが薄れる。

一緒に行ってくれたモウアラさんたち夫婦と登ると、ビレイは出番なしだ。特にリードは二人でビレイし合った方が慣れていて安心だろうと、私もよほど疲れていそうでなければ、申し出ない。

ビレイヤーのニーズのために呼んででもらっているわけではなく、とてもありがたいと思っている。

まぁ異性のパートナーと一緒の場合は、ビレイヤーが必要だからね、というのは、本来の恋人への配慮もあるので、必要なことだ。

ちゃんとした山ヤ同志だと、誰と組んで、誰と山に行っても、そんな言い訳はしないで済むのだが、下界の論理(男女が一緒にテントに寝るなんて)とかをクライミングが大衆化するつれ、山に持ち込む人が増えたのだ。

ちゃんとしたアルパインの人ならは、男女の差別はない。もちろん、区別はあるが。

■ キャンプ?

幕山公園は、キャンプサイトがないのがネックだ。

しとど庵は廃業しており、キャンプは駐車場を利用するだけで、あまり快適ではないし、逆に自然サイトにあるような清々しさもない。管理人のおじさんはむしろ面倒を抱えて迷惑そうにしていた。

ただ安くつくのがメリットか。

私たち夫婦は、今回は2泊でもあったので、1泊はしとど庵でテント泊、2泊目は近所のペンションで1泊2食付にしたが、一番合理的なのは素泊まりかもしれないと思った。

ペンションでの一泊二食にあまり価値は感じなかった。食事は近所でできそうな普通の生活が身近にある土地柄だし、コンビニも豊富だからだ。

特に海産物の食事に価値を見出す人で無ければ、食事が特に美味しい土地柄とは思えなかった。温泉も半分は、塩素の湯で、源泉かけ流しを求めるなら、要注意。

これはどこも同じだが。歴史ある温泉街ではあるが、都市化しつつあり、基本的に温泉宿としてお得に楽しむのには、あまり向いた土地ではなさそうだった。

まぁこれは黒川温泉などで、私たちの期待レベルが高くなっていることもある。

http://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/19489/19489.html

■ アプローチ

行きは小田原経由、帰りは箱根スカイライン経由で帰ったが、御殿場ー湯河原間が既に都市化しており、渋滞が気になる。高速道路も渋滞しそうだった。箱根スカイラインは有料だったが、スムーズだ。

芦ノ湖と箱根は、通り過ぎただけだが、ウンザリするような観光地だということが分かった。箱根には行くまい、と思った。

■ 幕山

帰りに、幕山を登って帰った。幕山は600mそこそこの山で、山の雰囲気としては、近所の裏山だった。イノシシが穿り返した跡がたくさんあった。登って降りて1時間ほど。

初めての岩場や初めての土地に行ったら、最初に高台に登って全体像を把握しておくと良いと思う。

小川山でもそうして、とりあえずカモシカ登山道を歩いておいたことが後で、岩場にスムーズに取りつくのに役立った。

岩場ではあまり地図読みはイラナイが、それでも、例えば、八幡沢がどの沢なのか分かっていれば、八幡スラブには取り付きやすい。最悪は沢を遡行すれば辿り着けるだろうと分かるからだ。

今回は幕山公園では、正面壁と桃源郷は登山道から分かった。茅ヶ崎ロックは分からなかった。悟空スラブへ行くにはかなりアプローチで苦労しそうなことが分かり、あまりそそられない。

湯河原みたいな遠い岩場でわざわざ易しいスラブへ行かなくても、近所に小川山や十二ヶ岳の岩場があるからだ。

■ 恵まれている山梨

今回、関西からのクライマーと合流して、やはり、山梨は岩場に恵まれていると思った。

十二ヶ岳の岩場
三つ峠
兜山
太刀岡
甲府幕岩
小川山
瑞牆
昇仙峡
湯川

とこれだけでも、相当数になる。甲府幕岩はまだ行っていないのは、パワー系と聞いているからだ。昇仙峡は最近注目を浴びているようだが、エリア不明。でも古い岩場で、往時の昇仙峡開拓団の人は知っている。

これ以外にも金峰山や乾徳山も登山体系には載っている。もしかしたら岩殿山にもあるかもしれない。

山梨が恵まれていないのは、全国的なブームの外にあること、ジムとクライミングインストラクターだろうか(笑)?山梨のクライミングジムはレベルが高いので、こういうとジムのオーナーには心外かもしれないが。ジムは現在4つもある。

でも全国的なクライミングブームの枠外にあり、定期的に講習を行っているガイドさんは都会では普通のようだが山梨では見たことがない。

山梨は大体において、全国レベルの20~30年前を走っている。旧世代と新世代との価値観の乖離も大きい。基本的に情報が入ってこないし、新しいことに興味がないのだろう。

それは何かに集中する、例えば子育てとか、受験勉強とか、スポーツとか、そうしたことには向いているが、情報がないために客観的に位置づけるということは苦手だということだ。

例えば、いかに外岩に恵まれているか?というようなことだ。日替わりで行ってもかなりの岩場に行けるんだが(笑)。

全国的に見れば、本場と言ってもいい土地柄だよな~と改めて感じた次第だった。

これからは岩と言うよりはアイスのシーズンインだが、アイスにも恵まれている。


Friday, November 20, 2015

岩を予習中

■ 連休のクライミング予習

明日は初めて、湯河原幕岩に行くので、楽しみにして予習しています。

どこを登ろうかな~♪ ルンルン♪

5.7以下 アップ用?
  アッチョンブリケI 5.5
            Ⅱ 5.4
5.8 
 おせっかい 5.8+★
 サムシング 5.8 +

5.9
 小ハング右凹角ルート 5.9★★
 エミリー 5.9 NP
 No.3 ルート トラッドフリー
 馬が踊る 5.9 2P ★
 逃げるロバ 5.9 
 ポニーテール5.9 ★★
 コナン 5.9+ ムーブを読む、初めてのリード
 
5.10代
 No1ルート 5.10A ★★
 小ハング左凹角ルート 5.10b/c ★★
 ジムシー 5.10c ★

≪参考サイト≫
http://www.ne.jp/asahi/gamera/climb/sr-g.htm#yugawaramakuiwa
 
■ 自分で行く = 予習する

行くのは、講習会です。

 講習会に行く=利用する側に主体性がある。

・・・というところが、ガイド登山であれ、山岳会であれ、連れられ登山の対極にあるような気がします。

講習会に出る人こそ、主体的に登山を学ぼうとしている人のような???

つまり、自分が教えてもらいたいから、講師にお願いするという感性なので。

そういう流れだと人は予習します。

私も今まで、山岳会の先輩や師匠に岩場に連れて行ってもらっています。それは 1点で正当化できます。いや、1点でしか正当化できません。

 初心者にとっては、正しい判断をするための情報(知識、見識)がない

つまり、先輩でないと、判断できないことがあります。初心者は、自分がどのような場所が今のスキルで適した場所なのか?その判断のための情報がない、です。

その場合、適した場所を提案してもらい、連れて行ってもらうしかありません。それがいわゆる経験なのです。

■ 連れられ登山

 連れて行ってもらう=ただついて行く

になってしまうケースは、力関係が逆転している場合、おかしなことになります。対等のパートナーだとどちらが連れて行ってもらう側かは双方に明らかなので、大体同じくらいに互いにメリットがあるように調整する気持ちが自然と働くはずです。

私もたくさん、連れて行ってもらっており、本当にありがたいことだな~と思ったりするのですが、初めて行った屋根岩2峰から、ちゃんと地図やトポを調べていっていました・・・それは、前に連れて行ってくれた人がいたからです。

最初はトポって何?状態でした。何を知らないのかも知らない状態では、やはり教えてもらう必要があります。

岩も、一般登山同様、自分で行くのと、先輩に連れて行ってもらうのは、大違いだな~と、あらためて感じています。

やっと登りたい課題を整理していくほどに成長したってわけですね~

このような予習ができるまでに、つまり補助車が外れるまでに、だいぶかかったのです。1年10か月です。

それはまぁ仕方がない部分もあります。登れる壁自体がほとんどなかったので(笑)。

相方と行っていたときは、一度先輩に連れて行ってもらった、ずっと同じルートに行っていました。まぁ、そこしか二人でつるべで登れるところがなかったんですから仕方ないですね(笑)。

私は山岳会を退会した今、自分が依存症に陥っていたことに、今となって気が付きました・・・

どこへ行くか?先輩が提案してくれていました。きっと、先輩は、初心者でも登れそうなところはどこか・・・という発想をしていたでしょう、自分が行きたいところ、ではなく・・・。

もし、山岳会に入ったままだったら、ずっと気が付かないまま、連れられ外岩で終わり、ということになっていたかもしれない。

岩に行くということは、トポを見るということですが、さてどれに登ろうか?と言う時に、

 今〇〇を練習したいから、××に登る

という発想になかったのです。

たとえば、

 ・易しい岩場で基本動作に習熟したい → 十二ヶ岳ゲレンデ
 ・ロープワークに習熟したい → 三つ峠でマルチ

というように、何をしたいか?で選ぶべき場所が違ってきます。

それは、経験を積まないと、どこの岩場が何の練習に適した岩場かが何も分からないので、最初のうち、連れて行ってもらう状態なのは、仕方がないことなのですが、そこから自立する、という段階に移行するか、しないか・・・ それが大問題です。 

いったいどうしたら、このような転機が訪れるのでしょうか???

 何年たっても、何10年経っても移行しない = 不良債権化 

だからです。

私にとってきっかけは、山岳会の退会と退会について背中を押してくれた、モウアラさんとの出会い、その他岩場での人との出会いです。

■ 岩の予習の仕方

1) 岩場へのアプローチを調べる
2) 岩場のトポを用意する
3) 課題の情報を集める もしくは、推奨ルートを探す 
4) 自分のスキルで登れそうな課題を探すか、トップロープが登らなくても張れる課題を探す

■ 仕方がないけれど

自立しようという心は、一体何で生まれるのでしょうか・・・

岩場に連れて行ってあげたいな~と思う人はいるのですが、なんとなくまだ資格に達していないような気がします。

リードの条件は、本人が落ちるか落ちないか察知できる、ということだと以前読みましたので・・・。

でも、私も十二ヶ岳の岩場に初めて行った時に、リードフォローの手順やロープワークに基本的な問題はなかったとはいえ、先輩をひっぱったり、ローワーダウンで出しすぎたりもしていますし、人工壁に通っていたとはいえ、自分が十分岩場デビューする資格があったかどうかは分かりません。

とはいえ、その時点で、ビレイは出来ていたし・・・人工壁での練習を否定する人もまだいますが、人工壁でないとビレイの確実性は高められません。

さらに言えば、ルートに行くには、その前にきちんと地図読み力と体力が、最低レベルでクリアできていないとダメなのですが・・・山岳会に来た時点で、私は厳冬期黒戸尾根は済んでおり、テント泊単独縦走も4泊5日で済ませ、地図読みもすでに講習会に何度か出て、コンパスと地図を持ってこないという段階は過ぎていました・・・。冬靴もっていない、ということもなかったのです。

地図を持つとか、テント技術とか、雪とか、縦走登山での基本をおろそかにして、岩に先に行ってしまうと、登山者として大事なことがおろそかになり、その人を将来危険に陥れてしまいそうな気もしないでもないです。

とはいえ、人に厳しく自分に優しくはなりたくなく、私自身も、初めて十二ヶ岳の岩場に行った時は何も知りませんでしたし・・・。

でも、連れて行ってもらって、2回目はリード&ロープワークは教える側、3回目はつるべでしたけれど・・・。

≪こうするのがイイのでは?案≫

 1) 二人組 + 先輩 で連れて行く  = つまり、次回は二人で登りなーって意味

 2) 初回から、二人組で自立できることを目指した指導をする
     一回リードフォローで登ったら、二人でつるべをさせる

 3) 次のステップへつなげる何かを行う 例: 下見など


こうして考えると、山岳会も、パートナー候補と二人一組で、入会してもらうのが一番いいのかもしれません。

私は会の中では、パートナーが見つからず(かなり頑張ったなーと自分でも思うのですが)、退会しましたので。

≪頑張った歴史 その1≫

  1. 2014年8月23日 奥秩父 太刀岡山左岩稜 先輩が指導してくれた
  2. 2014年8月13日 三ツ峠マルチピッチ 自主トレつるべ 初めてのダブル
  3. 2014年7月13日 小川山 春のもどり雪 自主トレ つるべ
  4. 2014年7月12日 三つ峠 マルチピッチ クライミング 自主トレ つるべ
  5. 2014年6月29日 小川山 八幡沢 春のもどり雪 自主トレ つるべ
  6. 2014年6月22日 十二ヶ岳の岩場 自主トレ つるべ
  7. 2014年5月25日 小川山八幡沢 春のもどり雪 先輩が連れて行ってくれた
  8. 2014年4月13日 残雪期 蓼科山 個人山行
  9. 2014年4月6日 八ヶ岳 南沢大滝 アイスクライミング トップロープ

クライミングではなく、本チャンへの移行(岩グレード≠ルートグレード)がスムーズにいかなかったケース。

≪頑張った歴史 その2≫

  1. 2015年6月14日 丹沢 本間沢 
  2. 2015年6月13日 奥秩父 ナメラ沢 (L)
  3. 2015年5月5・6日 某所 クライミング
  4. 2015年4月26日 三つ峠 クライミング 
  5. 2015年4月19日 某所クライミング 
  6. 2015年3月22日 ジョウゴ沢から硫黄岳 (L)
  7. 2015年2月28日 八ヶ岳 南沢小滝 アイスクライミング (L)
  8. 2015年1月11日 チョキ (L)
  9. 2014年6月3日 人工壁

クライミングの基本(リードするまえにアンザイレンするということ)が疎かだったケース。

こうして振り返ると、クライミング&縦走登山の基本が基本的に十分摺合せ出来ている、ということが大事だと思います。

ルートに出る前に、しっかり摺合せしておかないといけませんね。 

Thursday, November 19, 2015

トレーニングでボルジムへ

■ 理想の一日は疲れる?!

今日は、理想の一日を過ごした・・・はずなんだが、なんだか疲れたなー(とほほ)。

朝から歩荷トレ。その後、ボルジムへ。

その後、普通にボルダリングしたのだが、今日は久しぶりだったせいか、主婦業と両立したせいか、エライ疲れた。

■ 今日のメニュー

今日はムーブの基本が学べると言われている6,7級の課題から取り組む。 黄色課題の足限定だけに習熟する作戦。

というのも、いつもムーブ解決する前に、腕力が尽き果ててしまうから(笑)。今までは、それで持久力UPに取り組んでいたのだが今日は持久力は後回し。

普通のボルダリングというのは、どうしても、外岩と、どうつながっているのか、よく分からない。

でもムーブは習得したい。黄色の足限定課題は、ムーブ習得に向いている、と聞いたので、それを主目的にした。

まず2本はアップ。6本やって、大体全部登れたが、ムーブが一部不明な時は、イチイチ悩まず解決してもらって登った。そもそも解決力がないんだから、教えてもらう方が早い。

1本目: 前はできた課題なのに一撃ならず。立ちこみ系。2回目で成功。
2本目: ステミングの後、手に足立ちこみ。普通の人は届く一手が届かないが、2回目でなんとか。
3本目: ギリギリ一撃
4本目: 2トライ目で登れた。
5本目: まったくムーブ不明で教えてもらったら、できた。横の立ちこみと正面の立ちこみ。
6本目: 2トライ目で登れた。

これを2巡しようとしたら、だいぶ疲れていて、3本目で、めんどくさい・・・と感じることを発見し、2巡目はやめ、グレードを下げることにした。めんどくさい=ヤル気減退、だからだ。

ワンランク易しい課題へ。全部登れるから6本次々やって、7本目で、もう指が開いてくることを感じたので、もう終わりモード。

これで2時間。あと30分はオマケ。

少し休憩して、腕を追いこむためトラバースへ。トラバースは持久系だから。今までは3回はできたのに、今日は一回でもうギリギリ。残りは、まだ疲れていない体のために、かぶっていない壁までとし、2回。

・・・ということで、トータル 2+6+3+6+トラバース50手=18課題くらい???

ボルダリングの課題は、短いので量が数えづらい。ルートなら大体何ピッチ登ったかで量が計れるんだけど・・・。

今度から手数を数えよう。平均5手としたら、100手くらいになることになる。まぁノルマ消化かなぁ。

今日はリード壁はしなかった。意識したのは足。

■ ムーブの習得が分からない

正直言って、ボルダリングが、私の楽しい外岩の何に役に立つのか、やっぱり、さっぱり、よく分からない(笑)。

ボルダリングの壁はかぶっているので、腕力はつくんだけれど。でも、いつも、外岩でもアイスでも、もっとムーブが繰り出せたらいいね、と言われるため、そうか、と思い、

ムーブ習得=人工壁

かなぁ・・・と観念している。

でも、観念しても、やっぱりよくは分からない・・・。

アルパインのベテランは、外岩の5.10代くらいはスイスイ登る。それにジムの壁も上手に登る。

それを見ていると羨ましいなぁ~と思うけれど、ジムをカンバって、外岩が登れるようになるとは、到底、思えず・・・。ジムのお兄さんだって外は外だという。

でも、そのお兄さんだってインドアジムも外岩もすごく上手なのだ。

それに意味が分からなくたって、体はなんとなくでも、色々な情報を蓄積しているらしく、私は5.9はオンサイトできるようになったし、それに、不思議なことに最近は、前に登れなかった被ったハングが越えれるようになった。すごく不思議だなー。

別に、何か真剣な努力をしたわけではなく、ある日突然、登れるようになったんだけど。

(登山やクライミングが特別な努力だという指摘は、この際、除外)

ジムに行っていても、この課題が登れるようになりたい!という強い気持ちが湧くことはない・・・し、ボルダリングして、凄く楽しかった~満足~、という気分にも、実はなかなかなれない。

一つ一つの課題で使っているムーブが、なんていうのなのか?自分でもイマイチ分からないし・・・。

例えば一回目で墜ちて、2度目で登れた時、なんで登れたのか?も、よくは分かっていない。

どういう時にどういうムーブを繰り出すべきなのか?というのは、さらに全然わからない。

・・・というわけで、クライミングの才能がありそうには、自分では到底思えない・・・(^^;)。

■ アルパインの人とフリーの人

しかも、周囲の男性クライマーを見ていても、アルパイン系の人は、みなあんまりジムには熱心ではない。

でも、フリーが上手な人は、間違いなくジム通いしている・・・(汗)。

アルパインの人はみなジム通いが苦手で、しかも、男性でも、グレードを聞いてみると、わたしと大して変わらなかったりして、他人事ながら、自分を棚に上げて、うーん、みんなもっとクライミング力上げた方がいいんじゃないの~と思ったりする。 背が高い分、有利だから、私と同じくらいなんて、おかしいなーと思ったり(^^)。

でも、確かに、登りを見ていると、3点支持は安定していて上手だな~と思う。大体アルパインの人は、みなスラブに強い。

でも、フリーのムーブはまだまだだな~と素人の私が見ても分かる(笑)。

フリークライマーの凄い上手な人を見てしまって、目が肥えてしまったのだか、フリーが上手な人というのは、分かるんだな~。

でも、自分はその”上手”組には入っていない。それも分かる。

上手組でない、という自覚がアルパイン系の人には、みんなある。私にもある。

だから、「クライミングまだへたっぴ」なんて言われると、「よくぞ分かってくれました!」とうれしくなったりしてしまう・・・(笑)

そうなんですよ!私くらいのクライミング力は、クライミングのうちにさえ入っていないんですよ!

しかも、下手だという自覚があるのに、インドアジムでのクライミングへの情熱というのは、なんだかイマイチ火がつかない。

それでいて、沢やら、バリエーションルートやらで、かなりの悪場は、すでにこなしているので、外では、それなりに強かったりする。

大体私の沢デビュー、2級の滝からだし・・・あれはスタンス極小で悪かった。

アルパインの人は、悪い条件には強い…のは、アルパインって、たぶん、いっつも条件が悪いからだと思う。

沢の岩はぬめっているし、岩に地衣植物が着いていて滑りやすかったりするし、イマイチ、フリクションが・・・という条件下にあることは結構多い。

私もアイスでも、滝の氷が薄くて下でじゃーじゃー流れているのに登ったりしている・・・(汗) そういうのは、登れるのに、垂直のツララは登れない・・・。

結局本番に強いということになるんだが・・・いいことばかりではなく、フリーなのに、すぐAゼロしてしまう。

もっと自分に厳しく追い込まないと、クライミングは上達しないのに、落ちないように登る癖がついているのが、フリーとは対極になってしまっているのだ。

結局、最初は、補助的手段に頼って、徐々にフリー化して行く・・・という登山史と同じ流れを、登山者の個人史でもやってしまう・・・

つまり、最初は先輩に連れて行ってもらうからセカンド、トップロープで登る、次にAゼロで登る、次にリードで登る・・・だ(笑)。

墜ちれないから・・・とは言うものの・・・トップロープで登れたら、当然すぐリードできると思っているのがアルパインしかしない人だったりもし、すーぐリードする気でいるんだが(私もそうだった・・・笑)、リードは、途中で色々作業があるので、トップロープとは大違いだと、初心者の時点では、まだ気が付いていなかったりするだけだ(笑)。

ただリードするだけじゃなく、オンサイトは、さらにタイヘンで、ルートファインディングやムーブ解決不要で、すんなり登れないといけないから、トップロープで登れたグレードが、ハイ次!と、オンサイトできるわけではない、ということにも、単純に気が付いていなかったりもする。

山の世界では、ちょっとだけ他の人より登れる人が先にリードして、フィックスを張ってくれるのだが、フィックスで登れるのと、リードが雲泥の差、ということに、まったく気が付かないのがアルパインでフォローで登っている間だ。

フォローで登っていると、精神的負担ゼロなんだが・・・フォローとリードの雲泥の差にはなかなか気が付かないんだな。

そこら辺の理解が難しいのがアルパインで、5.9のクラックと言うと、5.9=易しいからクラックに触ったことがなくても、のぼれるんじゃね?という印象になる・・・

けれど、どっこい、5.9は全然難しいノダ!5.12くらいはジムで登っていないと、5.9のクラックで、何があっても決して墜ちない人、フリーで登る人には、そうそうなれない。

それに、なにしろ、プロテクションが皆無なのだ!クラックは!クラックでトップロープを張ってくれる人は本当にすごいと思う。

登山のヒストリーが飛躍的に伸びたのは、フリーが出てきて、皆が登れる力を付けたから、と言われている。

それは、墜ちることが可能になって、いや墜ちても生きていることが可能になって、挑戦する幅が広がったからだと言われている。

・・・ということは、本当はフリーの時は落ちるまで登らないと、せっかくフリーをしている意味がないといえば、ない。・・・んだが、なかなかそういう風に思考を切り替えるのは、難しい。

墜ちるのが嫌なのだ。それほどまでに。

逆に、フリーやスポーツクライミングで、落ちる癖をつけてしまうと、安易に墜ちて危ない、とも、言われている・・・。

確かにフリーの人は、アルパインの人と比べて、安全管理に関する意識が非常に低い。ノットも支点もあまり研究していないし、敗退の技も身についていない。(でも登れるから、超危ない)

・・・というような事情を総合すると、5級ではなく、その上の、5.12とか5.13で決して落ちれないクライミングをやっている、世界の最先端の方たちって、ホントにすごいな!と思う・・・

でも、そういう人たちもボルダリングであくせくして、クライミング技術をあげたのだろうか?

なんだか、そうとは思えないなーと言う気がするんだけど・・・。

ということで、ジム通いは、やればやるほど、高難度マルチをやる人って本当にすごいナーと思う。

私は平均的な人なので、自分自身としては、5.10Aがリードできるようになれば、まず満足、と思っているのだが、それはあと1グレードアップぐらいなので、それだとボルダリング課題に落とし込めば、6級、せいぜい5級とかでしかなく、ボルダリングでは、4級以下でないと、全然クライマーとは言えないと言われているので、まだクライマーにさえなっていない(^^;)。

・・・まぁ、結論はボルダリングって難しい~って話でした。

ああ~疲れた~。


Wednesday, November 18, 2015

スロー&ステディ=安全

■ 幸せは小さなところに転がっている

今日は雨・・・昨日はなんだか、ほっこり満足感に満たされた。

普通に岩トレしただけ、だけど、その”小さな、些細なこと”が、とても幸せだった。

友達が「チャレンジアルパイン借りてきて~」と言う。そういうのも好ましい。

岩トレしませんか~というので、来てくれたことも、とても好ましく、他の人にも声を掛けたが、来た人はいなかった。

来た人がいなかったのは、”予定が合わない”だけで、別に大したことではないが、岩トレは相手がビレイやロープワークが確実で、互いにミスをカバーし合える仲、関係性でないとできない。

だから、山ヤを目指している人にとっては貴重な機会だ。その関係性がここちよかった。

■ 当たり前

友達は、大きな山自慢をする人ではないし、怖いときは怖いという。互いに無理を要求していない。

彼は初めての岩場だったが、普通にマルチの壁をリードしていた。そこは私も初めてでもリードしたような場所だから、彼だって出来て当然で、ごく普通の対応をしてくれただけだけれど、ごく普通が本当に山の世界では得難いことだと分かってきつつある・・・。

ロープワークやビレイも含め、出来て当たり前のことが出来ていて、ストレスがない、ということは、山の世界では本当に得難いことなのだ。

当たり前が心地よかった。 

まぁ、私が初めてでもリードするくらいの壁なので、彼がオンサイトできるのは普通だが、とても安定感のある登り方で、見ていて安心。

易しい壁であっても、例えば、女性の後輩にオンサイトさせられるか?というと、行くと本人が言っても、させられない。

まだ人工壁で5.7で落ちる人には自分が落ちるかどうか、察知せずに墜ちる、不意墜ちの危険があるからだ。一度トップロープで登ってもらってから、ならいいけど。

男性でも、リードの心理的負担が苦手そうだったり、せっかく登れても、作ってくれる支点が怪しげだったりしてはセカンドが危険に晒されてしまうし、クライミング経験が浅く、ちょっと太っていて、私がビレイで墜落を止めれない可能性があると、私がリードするほうが総合的に見て、安全だと判断してしまう。

どちらがリードするのが全体として安全かしら?と見たときに、私の方がむしろ安全な関係性との相手では、終始緊張して、相手の安全を見守ってやらなくてはならないので、イコール関係ではない。つまりパーティとして見たときは、実力拮抗型ではない。

■ 大人は何倍も時間がかかる

イコール関係と言っても、最低限の一番易しいところが普通にリードでき、トップロープが張れさえすれば、いいだけのことで、それはそんなに高い要求ではない。

たぶん、10代の男性として、クライミングをスタートしたような人たちは、1か月ですぐマスターしてしまうような程度の話だろう。

大人になると1年10か月かかる(笑)が、時間がかかっても、できるようにはなるし、時間は、充分あるのだし、時間がかかることは、問題ではない。

それより、必要な時間をかけないことが問題だ。みなせっかちすぎるのだ。

山の安全に必要な態度は、

 段階的に成長する

ということで、それはせっかちとは逆行する価値観だ。急いではならぬ。しかも、歩みを止めてもならぬ。

■ 充足と感謝

昨日は、過去の自分を振り返って、友達と個人で岩トレができるレベルに到達したことについて、感謝の気持ちが一杯に湧いてきた。

色々な人の助力あってこその、今、だ。師匠にはとても感謝している。山岳会の先輩にもとても感謝している。

与えらているという運命の流れにもとても感謝している。

それは、いつも、私がヨガを教えるときに感じる気持ちだ。

そういう感謝の気持ちがわいてこない山もある。

■ 山を辞めたくなる時

このまま、このような山行に付き合っていたら、死の危険に晒されるのかもしれないと感じる山行もあるし、出来て当然のこと、例えばビレイができていないとか、そういう点が見えて、これに一緒に行っていたら、殺されてしまうかも・・・と危機感がビンビンになってしまう山行もある。

そういう時は山を辞めたくなる。

人の心と言うのは、私がコントロールできることではない。自分のことは自分でコントロールできるが、あぶないビレイを改めない他人はコントロールできないし、その人のビレイで登らなければならなくなることがあるかもしれないと思うと、気分が暗くなる。

こんな調子でやっていてはいつか死ぬ、と感じると、”山は、もう辞めた方がいいよ”という、山からのメッセージかもしれない・・・、と思う。

楽しいはずの山が、ギリギリスレスレの山になってしまう・・・のは、人の心が山行を作り出すからだ。

■ 気分=未来予測

人間と動物の違いは、未来予測だ。動物は完全に”今”に生きていて、人間と違い、知感できる時間のスパンがすごく短い。動物にとっては、今日は今日だけしかなく、明日は知感できないのだ。

だから、喜びも悲しみも長続きしない。動物は完全に今に生きている。赤ちゃんも、だ。

人間は、時間と言う感覚を持つため、未来を予測し、未来の予測が現在の自分に影響を与える。

未来が明るいと感じることは、希望を感じることだし、未来が暗いと感じることは、絶望ということだ。

希望を感じれば、人間は行動し、絶望すれば死に至る。すべてが観測、予測、つまり、主観に寄っている、ということなのだ。

登山や沢、クライミングは、危険を含む遊びで、その危険をリスク回避するためには、段階的ステップアップが必要だ。

なのに、段階的ステップアップの行程・・・成長するためのベルトコンベアーに乗っていない、と感じさせられると、そのベルトコンベアーから降りなくては・・・と感じさせられる。

■ ヤマには順序がある

山には順序というものがある、とベテランは言う。

その順序が分かりやすく示されることがあまりないのだが、例えばこういうことだ。

阿弥陀北稜に行きたければ、最初は中央稜、その前は赤岳。赤岳に登っている間に、広域概念をマスターしていなくてはならない、していない場合はずっと赤岳・・・赤岳に行けたら、ちゃんとクライミングジムに通ってクライミング力をアップする。

まずは遊歩道の山から登って体力をつける。何時に登頂して、何時に降りるか?経由地点は何時に経由しているべきか?そうしたことが自分で判断できるようになるのが大事。一般ルートの山に登るということは、山の広域の概念を把握するためにやることなのだが、山が楽しいと普通は自然とそうなるはずだ。

例えば、八ヶ岳に一回行って気に入った私たち夫婦は、八ヶ岳の全体の図をずっとトイレの壁に張っていた。

北アに興味がわいたときは、北アの全図を壁に張っていた。計画書を書くときに、概念図を書くこともあり、それは役に立つけれど、そうでなくても、地図を勝手に見たくなったのだ。

そういう風に一般登山者としてマスターすべきことをマスターしている、ということは、バリエーションへ行く前には、普通のこと。

それがない人がメンバーにいると不安に襲われる・・・。一番弱い人がそのパーティの実力と言うのが山の掟だからだ。

何年も登山をしていて2万5千の地図を持ってもいないし、知りさえもしない人がいると不安に襲われる。

その人のレベルの山しかできない、ということと同じ意味だからだ。

そうでなければ、つまり地図読みが必要な山にそのままの状態で行ったりしていれば、山の順序を逸脱している、というサインだ。つまりとっても危険だということだ。

■ けっきょくは価値観の差

そうした、山の順序を外すという、逸脱がなぜ起こるのか?と考えると、多くの人は、その順序を踏まずに、つまり実力UPという手続きを踏まずに、山に行くこと=幸せ、と感じているようだ。

それは本人にとってもとても危なく、、死の危険がある山をしたがっている、という意味なのだけど・・・。

手っ取り早い成功、インスタントな成功を求めている、ということになる。

そういうインスタントな成功を求めるのは、80年代的な価値観、高度経済成長期の価値観のように思える。努力なしにみなが勝ち組になれた時代だった。

数を追う登山、つまりどうせ行くなら、たくさん行った方が得、という考え方や、標高を競う登山、つまり、どうせ登るなら高い山を、という思考、グレードを競う登山・・・も同じかもしれない。

皆が穂高に行くから行きたい!という思考は、隣の誰かが部長になったから、俺も部長にならねば、という思考と何か違うのだろうか?

下界ではそうしていても、ラットレースに参加しているだけで、死なないが、山でそうした思考を展開すると必ず死が待ち受けている。

何個も山に行っても、内容が薄ければ、みな同じような印象の山になってしまう。一つ一つの山を印象深く覚えていない。

もし自分にそれが起りそうになったら、それは良くない兆候だ。

もちろん、百名山してもいいのだが、一つ一つ丁寧にこなして行った結果としての百なら、安全でもあり、そして意味もあるだろうが、目標としての百は危険だ。スタンプラリーと言われるが、やはりスタンプラリーにしてしまうと、実力が伴わなくなってしまう。

■ スキルアップはマナー 

山のサイズで、どうだ!と自慢したかったら、エベレストに登るしかなくなる。が、それができないと、山の数で他人にどーだ!と言いたくなるのかもしれない。

山には他人との競争はイラナイ。

だから、基本的に、ドーダ理論で登る人は山ヤではない。

私は日本の山の自然が美しいと思う。

その山に安全に登るのに、技術が必要なら、身につけなくてはならない。

だから、身に着けようとして、そして、それは時間がものすごくかかる・・・けれども、登山をしているなら、常により安全をめざす必要がり、そのために自分自身のスキルを伸ばそうとするのはマナーだ。

安全のためだから仕方がない。

スローなステップアップ・・・そうやってやるべきことをすべてやっても、危険をゼロにできないのが山。





Tuesday, November 17, 2015

8回目の十二ヶ岳の岩場でアイゼントレ

■ 進歩に感動

今日は、アイゼントレで十二ヶ岳の岩場へ行ってきました☆



私の初めての岩の岩場です。 

初めての岩は、2014年1月19日でした。

御坂山岳会へ、入会希望者として顔を出して、まだ2回目の例会、先輩が「じゃアイゼントレね!」って感じで、例会で急に発案して決まったのが、このアイゼントレでした。

つまり、新人さんどれくらい登れるかな~という新人さんいらっしゃいイベント。

1年10ヶ月、2年弱で、自分と同等くらいのスキルの人と一緒なら、自分でトップロープが張れ、岩トレ主催できるようになりました。

なんだか振り返ると、センチメンタルな気持ちになります。あの頃は、まったく世間知らずだったなぁ・・・と。

初めて岩をしてから、半年後くらいの10月5日に、一緒に組みましょう、と言ってくれた人がいたので、その人と一緒に岩に行った時は、5回目の十二ヶ岳の岩場でしたが、まだ初心者の域を出ていなかったからなのでしょう・・・なんと山岳会の仲間が4人も駆けつけてくれました。

お月見山行のために空けてある日でした。

当時、私はマルチピッチを身に着けているプロセスの途中で(今もですが・・・)、まだ初心者の”初”のあたりでした。

この時は、翌日にナメラ沢を予定していたのですが、行かなかったのです。それは、まだなんとなんとなく、行くべき時期ではないという気がしたのでした。それを裏付けるかのように雨でした。

今年は、その当時は行くスキルが身についていないと自分で判断したナメラ沢は、3回も行って、一回は人を連れて行っていて、さすがに3回も行けば、十分習得した、という感じがします。

十二ヶ岳の岩場については、初めて岩場に連れて行ってもらった1回目から、パートナーを連れて行ったのが3回目、初心者を初めて連れて行ったのが5回目…。

それから、ほぼ丸一年・・・他の岩場にも色々行ったので、十二ヶ岳の岩場自体は、8回目ですが、その8回目で先輩に連れて行ってもらったときにした内容を、経験者の介添えなしで実行できるようになった。一巡した感じがあります。

すごい進化だ。

入り口には新しい目印がでていた
■ 今日のメニュー

今日は、初めて岩場に連れて行ってもらった時と同じく、マルチの壁でアイゼントレ。その後、ショートの壁でクライミング練習。

マルチの壁はリードフォローではなく、フィックスロープにした。フィックスをユマールで登ったが、ロープの伸びの分があるので、ロープに頼るクライミングは、ロープに頼らず登るのよりも大変で、ユマールがあるほうがむしろ大変だった(汗)。

これは、普通に手を使って自分で登るほうが、びよよんと伸びつつテンションをかけかけにしたロープを引っ張るより、登りやすく素早いと思った。

このフィックスを張るために、最初はクライミングシューズで、リードフォローで登った。その後、二人で懸垂で降り、それぞれのロープにユマールを付けて、2回ずつアイゼンで登った。

初めての時より、大変だった・・・(笑)。

その後は、ショートの壁で、一番易しい壁をリードフォローで登り、二人で支点を確認。トップロープ支点にして下りる。

その隣の被った壁で、エイドの練習。

相方は初めてだったので、あくせくしていた。私は、2度目だったので、1回目よりはスムーズにアブミに乗ることができた。

トップロープ支点を隣に移し、隣のラインをトップロープで。どんどん支点をずらしてゆき、とりあえず核心部を越える、という課題でそれぞれトップロープ。5本登ったところで、雨が降ってきたので、本降りになる前に撤退。

合計、今日はそれぞれ8本登ったので、いいペースだろう。

それに互いに、よく登れ、テンションが無く、ギリギリ感はないクライミングだった。

フリーの時は、本来はもっと追い込んだ方が良いとは思うが、まぁこういうエンジョイクライミングな日があっても良い。




8時半集合、9時すぎ登り始め、15時ちょっと前に雨がぱらつき撤退。帰宅17時。

お天気は曇りのち、ぱらつき。本当は、明日に予定していた岩だったが、今日へ繰り上げて正解だった。富士山は朝から厚い嵩雲を被り、帰り際になっても、その嵩雲は取れなかった。

ザックはわざと重くして行き(14kg)、今日は冬靴でアプローチは歩いた。

  1. 2015年9月16日 十二ヶ岳の岩場 (L) 案内役
  2. 2015年7月12日 十二ヶ岳の岩場 アブミ練習 メンバー
  3. 2014年10月4日 十二ヶ岳の岩場 マルチ・ショートピッチ 自主トレ リーダー
  4. 2014年9月4日  十二ヶ岳の岩場 ショートピッチ クライミング メンバー ホッとした
  5. 2014年6月22日 十二ヶ岳の岩場 自主トレーニング もうつるべ
  6. 2014年5月18日 十二ヶ岳の岩場  マルチピッチ入門 4ヶ月後、もうリード&教える側
  7. 2014年1月18日 十二ヶ岳の岩場 アイゼントレーニング
≪ヤマレコ≫
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-773360.html


Monday, November 16, 2015

クライミングギアの重さ

■ クライミングギアの重さ

クライミングギアの重さは計ったことがなかったので計ってみた。(全部 g)

ハーネス岩用 372  ハーネスその他用 520
PAS 130
確保器セット 294
ビレイグローブ 57
ケブラーコード 20

カム 2個 326
ぬんちゃく7本まとめて 740g
流動分散セット(カラビナ2、安環1、スリング1) 180

ロープマン、タイブロック、カラビナのセット 228

エイト環セット 294

岩装備は合計してもあまり意味がない。持って行くものをケースバイケースで変えているからだ。

■ スリング

スリングは増えているが、持って行くものはケースバイケースで決めている。

トップロープ支点が太い木と分かっている時のために長いスリングを買ったし、沢のときは長くて細いスリングと細引きを輪にしたものにしている。ナイロンは水を吸って重くなるので持って行かない。

60のダイニーマスリングは、残置ハーケンが出てくる岩用。
ナイロンの太いのはめっきり出番がなく、簡易ハーネス用。
ナイロンの120は、セルフ用。


■ カラビナ

カラビナは、ナス型が最低1つは必要。HMS型はクローブヒッチするのに必要。普通のストレートゲートのビナの方が、ワイヤーゲートやベントゲートより、汎用性がある。ベントゲートはぬんちゃく以外で、凄く助かったなーと思ったケースはない。

小さめの安環付ビナは、セルフを取るのに使うが、ノットが出てくるときは使えないし、中間支点にももちろん使わない。

オーバルはレスキューでしか出番がない。

ので、本当は一番汎用性があるのはストレートゲートのビナのように思うのだが、なぜか最初に購入した枚数より少ない数しか残っていない・・・どこへ行ったんだろう・・・。

この中には拾ったビナがもう2枚もある。それらは紛失したのより高そうだ・・・

そう言えば、スリング2本も残置を回収したもの。

■ 岩セットのザック

通常の山がチャレンジではなくなってきたせいか、初心者の頃と違い、ザックの重さをはかることが無くなった。

それは良くない習慣かもしれない。

前の相棒が、岩に行き始めてザックが重くなり、縦走が楽になったと言っていたのだが、それが分からない。

それで、計ってみたら、岩ザックも別にそんなに重くないと思った。

1)ヘッドライト、救急セット、レインウェア
2)レスキューシートにもなるグランドシート
3)ロープ シングル、クライミングシューズ2足、
4)水2リットル

を入れて、ザックを背負ってみた。 13kgしかなかった・・・(汗)

これだと、1時間くらいのアプローチを背負ったとしても、あまりトレーニングにはならないのでは?

テント泊縦走でも、実は15kgはなかったのではないだろうか???

やはり、客観的に計測可能でないと良くないなと思った。

前に後立を縦走した時は、常時15kgくらい背負っていた。

今では15kgが重い。ということは、かなりヤバい。

久しぶりのアイゼントレ予定

■ 明日の準備中

明日は久しぶりにアイゼンを履く。5月の連休がアイゼンの最後の出番だから、5月2日から履いていない・・・とすると、大体半年・・・。

半年って短いようで、長い。今年は夏は短かった。大体、夏の暑さで体調を壊して、秋は調子が悪いのだが、秋と言っても、それは9月の話で、9月と11月は2か月も違う。なのに、それを秋は大抵引きずり、寒さに当たってから、本調子になる・・・という繰り返しを毎年しているような気がする。

秋は、例年雪を先取りしに行くのだが、今年は先取りではなく、名残を惜しむ山をしたような気がする。

■ 12月のための山

12月はもちろん、大事な山行としては、お正月がある。・・・と言っても、今年はお正月山行は、大きな山にする予定はなく、夫と行く山にする予定。貴重な休暇が無駄になるのに、去年で懲りてしまったのだ。

どちらにせよ、アイゼントレが必要なので、今年は、気の早いことに11月からアイゼントレ。と言っても、まぁそんなにすごいことをする予定ではないが。

ただアイゼントレっていうものは、毎年毎年同じことをやっておくことに意味がありそうな気がする。

例えば、私は朝に太陽礼拝を必ずすることにしているが、毎日同じ時間に同じことをしていると見えてくるものがある。

山では、何かあった時のトレーニングよりも、何かを起こさないためのトレーニングのほうが重要なので、そういう意味で、やっぱりアイゼントレが一番重要かな~と思ったりする。

滑落しなければ、レスキューはないのだから。

■ ユマール

今日は、お給金でユマールを購入した。片手8900円 ×2で、2万円ほど。

正直、セカンドでユマールを使って登らなければならない山に行く予定はない。

ユマールより先にフリーを頑張れ!というのが筋のような気がする。




その上、私が行きたいアルパインルートは、クラシックルート。三級、4級が主体で、基本的に5級は稀なので、それくらいは登れよ!ってレベルだ(笑)。

・・・ということは、あまり頻繁に使う道具ではないだろうし、私のような初心者レベルの人は、ユマールを買うより、1ヶ月ジム通いしたほうが有効なお金の使い方かもしれない・・・とも考えた。

が、例えば、私がガマルートを練習したい時、夫が使えそうだな~と思ったので、購入に至った。なにしろ、夫はまったくクライミングなんてしたくないのだからして。

基本的な悩みは練習に付き合ってくれるビレイヤーがいないことなので。

■ さっそくチェック!

しかし、取説を見ていたら、ちょっと謎が。ユマールって、右と左をセットで使うように習ったんだが・・・

この図だと、足も腰へも右のユマールに結わえてあるんだけど・・・?



別の使い方もあるのだろうか?

■ ユマール

実はこの器具、ユマール と言ったが、商品名はアセンジョン。

本当は、アッセンダーというのが、総称だが、ティッシュのことをクリネックスと言うように、ユマールも総称になってしまっている。

アッセンダーの中には、

簡易アッセンダーの タイブロックやロープクランプも含まれる。もちろん、ただのスリングだって、プルージック登攀ではアセンダーになりうる。私は片方スリング、片方ロープクランプで、宙吊り登り返しをすることが多い。

ユマールは、昨日見た『エヴェレスト 3D』にも出ていた。 顧客たちはフィックスされたロープを、ユマールで登る。この図、マンガの岳とか、別の物でも一般登山者の目に着く箇所に出てくる定番なのに、高所登山の経験がある友人が知らなかったんだが、なぜなんだろう?

フィックスロープで使うユマールは、自己確保のカンタン版、という感じなのだが、映画では、2回ほど、転落者が出ていて、後続者を巻き込んでいた。それじゃ自己確保になっていないんじゃないかと思ったりもしたんだが、どうなんだろう??? ペツルは苦情を寄せないのか?

印象に残ったのは、ダグさんが自ら確保を外して、ルンゼのトラバースから、谷底に身を投げるところ・・・あのシーンは誰も見た人がいないのだから、フィクションだと思うが、フィックスロープに、ぶらんぶらんと揺れるユマール・・・がとっても、印象的。悲しく切ないシーンだ。

明日はユマーリングで、アイゼントレ予定。

ロープ径が重要だが、

8mm ~ 13mm

とある。

イマドキ、13mmのロープなんて見ない。

シングル 9㎜後半

軽量シングル 9㎜前半

ダブル 8㎜中ごろ

くらいが標準的だが、ダブルの7.5㎜だとこの器具は使えないので、いくら軽量化したくても、あまり細すぎるロープだと、今使っている器具が使えなくなることがあるので、要注意だ。

ユマールは、登る、ということから見ると、多少、邪道な気がするが、高グレードの登攀では、世界のクライマーたちも使っている。

もしトップだけがロープワーク”高速化”の練習をしたくて、セカンドはさっさと登ってほしいというケースが出てきた場合にも使える。



Sunday, November 15, 2015

エベレスト 3Dを観ました

■ エベレスト3D

先週は、お給金がでたのだが、マネージャが「エベレスト3Dはみましたか?」なんて言う・・・

「今週末で上映終わりですよ」 などと言われ・・・早川町紅葉&温泉 → エベレスト 3D、になってしまった・・・(^^;)。 ま、いっか~

■ 700万円

「700万円あったらエベレストに登れるよ~」なんて、よく言われる。その700万円と言う価格の、引用元は、これに違いない!と思った・・・。

アドベンチャー・コンサルタント社の公募登山が65000ドルだったことだ。

ニュージーランドのツアー会社だった。

■ 判断の良否が議論のテーブルに

私は高所登山には興味がない・・・。・・・のは、日ごろ低血圧で、酸欠などには、ひときわ弱そうなのと、あまり名誉を追うような登山は、素人っぽく見えるので、したくないな~と思っているからだ。

玄人好みなのだ(笑)。富士山もキライだし、槍穂も派手だから、という理由で、あまり好きではなかった(一応、登山者として滝谷などリスペクトしている)。

ので、エベレストは、”高所遠足”、と言われるくらいだし、興味がないのであったが、今回映画を見て、

 判断の良否

が生死の分かれ目であるところが、やはり一般の人を含む我々登山者をとらえて離さない面だな~と思った。

山は、誰が登るかで、安全度が違うものなのだ。エベレストは、その点が特にシビアにでる、というわけだ。誰にでもその仕組みが分かりやすい、のであるし。

なので、登山の判断を考えるという点で見ても損はない、と思った。

■ 1996

1996年のエベレストの大量遭難は、登山史に残る大遭難のようで、この『エベレスト3D』以前にも、映画化されているそうだ。

でもって、これは、たぶん、登山者なら知っておくべき、遭難劇のように思える。

山の大小はあれど、判断は判断で同じで、安全のためには、質的に良い内容の判断をするべきで、その質の良い判断がどういうものか?ということが、この遭難から学べるからだ。

遭難劇の詳細はウィキペディアに記載がある。

■ ロブ・ホール派 vs スコット・フィッシャー派

公募された登山隊にも、二つの系統があったようだ。対比を明確にするために単純化していることにご容赦いただきたいが・・・

 ホール派: 誰でもOK派。
 フィッシャー派: 登山は自己責任派。実力がないと参加させてもらえない。

映画の最初のほうで、混雑という問題が挙げられる。

昨今、混雑は、エベレストだけの問題ではないかもしれない・・・槍穂も混雑がすごいらしく、また、ジャンダルムも同じように混雑しているらしい・・・確かに今年の夏、重太郎新道では、「えっ?こんなよろよろで歩くの?」というような人がたくさん歩いていた・・・。上から人も降ってくる。

その混雑問題を緩和するため、両隊は、協力し合うことになるんだが、タイプが違うと言って、最初からあまりフィッシャー側は乗り気ではない。

■ ロブ・ホール

で、映画で描かれている内容にあくまで絞ると・・・

ターンアラウンドポイント、つまり、時間リミットが午後2時登頂、なのに、リーダーのロブ・ホールさんは、弱いメンバーのダグさんが、3度目のエベレスト登頂で、「今度こそ」と言うのに対して、情に流されてしまうのだ・・・。

ダグさん、3時過ぎているのに、稜線はまだ先だった。16時頃にまだ山頂にいることに・・・。

これは、ごく普通の山でも、とっても遅い。16時だったら、山小屋に入ってギリギリ叱られない、というレベル。

その判断をしたのが、人情派のリーダー。

■ 同じ天候、同じ日の同じ条件でも無事だった人もいる

ロブ・ホール隊の中でも、ちゃんと普通に降りてきた人たちもいる。

タイムリミットの14時を下回る、13時登頂にしたたものの、混雑のために登頂を断念した人たち(ハッチソン他)だ。

八ヶ岳も同じで、わたしと夫も遭難があった日、山にいたが登頂は最初から目指さず、悪天候から逃げるようにして山を下りている。

弱気の判断が山では必要だなと思うんだが・・・。

■ 難波康子さん

難波さんは、ホール隊の顧客、つまり、山頂を金で買う側として参加しているのだが、なんと、最終キャンプまでたったの300m手前で力尽きてしまったのだそうだ。なんと惜しいことだろう。

感想リンク

■ ベック・ウェザーズさん

同じ顧客のベックさんは、難波さんと同じく死んだと思われて置き去りにされているのだが、なんと、自力でキャンプに到着。

それでも死んだとみなされているのだが、国に残した家族の働きかけがあって、ヘリ下山し、一命を取り留めている。

難波さんが亡くなってしまったのと対照的に奇跡的にしぶとく生き残っている。雪目になったらしく、行動不能で逆に体力が温存されたのかもしれない。

登山の成功とは、ピークハントではなくて、生きて下山するまでと言われる。

生きて帰る、ことを最優先とすると、体調が悪化したら、待機させる、山から降ろすということを最優先するように思考回路を切り替えなくてはならない。

体調が悪いのに登る、ってのは、ナシだ。 山から元気をもらうのではなく、山は元気な時に登るもの。

■ 関連本

この登山では、リーダーはどちらも亡くなっている。

ロブ・ホール隊に顧客として参加していたジャーナリストが書いた暴露本。



逆の立場、スコット・フィッシャー隊にいたガイドが反論として書いた本。

一方を聞いて、沙汰するな、と言われるので、この2冊くらいは読まないと、全容は客観的にはつかめないだろう・・・。




■ 生還本

奇跡の生還をした、ベックさんの本は、アマゾンによると評判は今一つ悪い。どうも、プライベートな個人の人生に与えた影響の方がメインの記述の要であるからだ。




ということは、大衆が聞きたいことを書いているのは、ジョン・クラカワー本、ということになる。

■ 映画の予告編

こちらは興味がわいた人へ・・・。

 エベレスト3D オフィシャルサイト

映画自体はすごく良くできていると思った。前に見た、トンデモ登山映画(『岳』とか、『バーティカル・リミット』)とは、格段に違う。登山をする人が見ても、変なことがでてこない。

ユマールも普通だったし、ピッケル、アイゼンも普通。あんまりピッケルを活用しているようには見えなかったが・・・



■ 同じ遭難の別の映画

この遭難は何度も映画に描かれているらしい・・・


■ 7回登頂した人

知らなかったが、日本人でエベレストに登頂した人はいっぱいいる。

中には7回も登った人もいる。なんとカメラマンの方で、他の人の登頂に付き合って登っていたら、7回になってしまった、ということのようだった。

つまり、欲に付き合っていたら、欲がない人のほうの登頂回数が増えてしまったということだ。あれま!

■ 映画の効用

こういう映画は、たぶん、皆で見ると良いと思う・・・というのは、判断が映画の感想から伺えるからだ。

人は、どうしても、自分と似たキャラクターに、自分を重ねてしまう・・・

どのキャラに自分を重ねるのか、それが今の自分であるとも言えるかもしれない。

ちなみに私が共感してしまったのは、

ベースキャンプで、隊をサポートするヘレン・ウィルソンのアシスタント役の若い女性。

ベースキャンプでの交信では、必要最低限のことしか言わない。しかし、その言葉の間ににじみ出る情感が、山を分かっている者には重くのしかかる・・・

その辺の押さえた感じが印象に強く残った。




登山計画を立てるプロセスの考察

■ 登山計画から始まる夢

≪登山計画≫

   ↓

≪登山実行≫

   ↓         → 計画とのかい離 = 遭難

≪登山記録≫

という簡単な行程になる。

■ 登山計画の立て方

私がやっている方法ですが・・・

≪地図を見る≫

 ↓

≪ルートに赤線を引く≫

 ↓

≪距離と標高差を見る≫

 ↓

≪コースタイム見積もり≫ 基準: 300m 1時間 

 ↓

≪コースが含まれる、もっと広い山域の概念を掴む≫ 
  
 ↓

≪アプローチ試算≫  Google先生で車、もしくは駅の所要時間計算 

 ↓

≪過去の記録検索≫ 要点を探る

です。

■ 要点の把握

・危険個所はどこか? 

   ・早出早着
   ・危険個所は、下山行程で通らない
   ・急な方を登りにする
   ・迷いやすい箇所  緩やかな尾根 
   ・人的要素  

・核心は何か? 

   ・体力
   ・アプローチ
   ・重量
   ・地図読み
   ・ルーファイ
   ・テント泊技術
   ・虫
   ・日焼け
   ・空腹
   ・水
   ・クライミング
   ・転滑落
   ・疲労対策

などなど・・・色々あります。夜間視力は加齢とともに衰え、見えない=リスク計算ができないので、夜間行動はできるだけ避けます。

■ ベテランの知恵? 

私がベテランに教えてもらいたいなーと思っていることは、こうした計画を立てるときの計画の立て方です。

きっと他にも色々と手段があるはず・・・

■ 山行のための山行

例えば、〇〇山に行きたいとなった場合、計画をしていると、その山に必要なスキルが未習得だった、という結果になる場合があります。

 例: 北岳バットレス第四尾根に行きたい

その場合は、行けないのはなぜか?要素に分解します。

1)本チャンで、5.9がムーブ解決せず登れるためには、外岩TRでは5.11くらい必要
 
 → フリークライミング

2)本チャンで、13ピッチが時間内にこなせるには、ルーファイ、ロープワークの慣れが必要

 → ルーファイ  もっと易しい岩場でルーファイ力を磨く
 → ロープワーク 三つ峠 60~80ピッチを経験する

3)行動のスピードが必要

 → 一緒にテント泊縦走をして行動スピードのすり合わせをする

これらの習得をまとめると、習得に1~3年程度はかかりそうですから、目標の山がどれだけ大きい山か?ということが分かると思います。

そういう風に山を登ると、登れた時の感動はひとしおです。そういう感動こそ、山で得るべき感動。

ちょっとずつ、そういう感動の山を増やしましょう~。

■ 年間スケジュール

そうなると、年単位の努力スケジュールに乗っている必要があるわけです。

登ろうと思っていきなり、5.11が登れればそりゃ楽ですが。私なんて、5.7(誰でも登れる)から、5.9へ行くのに、一年半はかかっています。

おまけに体力というのは、水もので、すぐなくなります(--;)。

体力は基本なので、基本がないと・・・残念賞ってことになりますから、そうならないようにする、ということで、トレーニングの山が必要に。

でも、そういう風に山を組み立てることで、

 山が生きがい

になる、ということは間違いないです。

■ 山行前のシミュレーション

あと、カンフル剤的に役立つのは、山行前のコソ錬です。

コソ錬って、コソッと練習することですが、

 ・ノット

 ・テントの組み立て

 ・ワカン、アイゼンの履き方

 ・ガス、コッヘルのリハーサル

 ・新しい靴の履きおろし

などです。

食当になったら、コソ錬して、皆に食べさせる食事を一回は自分で食べ、必要な鍋のサイズくらい、シミュレーションしてこなくては、山に対して、礼儀を欠いたことになります。

なぜなら・・・山でいきなり本番は何事にもないからです。

テントを張るにも、一回家でやってみると、色々分かります。・・・というか、山が好きな人は、テントを買ったらうれしくて、早速テントを張ってみたいと思うハズです。

そうすると、色々と課題が見えてきます。たとえば

 ・このテントを張るのに、どれくらいのスペースが必要か?とか
 ・ガイラインの先に何を付けるか?とか

すべてのことが、他のギアにも言えます。

 ・ワカンを買ったら履いてみる → バンドが長かったから切る

 ・確保器を買ったら、取説を見てロープを通してみる 

そういうことが積み重なって山力へ。








Saturday, November 14, 2015

読了 『体の力が登山を変える』

■ 平均点が失墜している現実

この本は、登山をして、だいぶ体力がついたな~と感じるのと、一般に言われている

”体力がある”
”体力がない”

ってだいぶ、実感との乖離があるなーと思ったので読みました。

ちなみに私の体力は、40代の女性の平均です。

その体力は、

中高年を主体とした現代の山の世界では・・・ → ダントツに体力がある

アルパインクライミングの世界では・・・ → 全然、体力不足

になります(^^;)。

具体的には・・・

≪一般コースタイム6時間の尾根≫
中高年登山者  7時間   登山人口の79%な感じ
中高年の健脚者 5時間          5%
私          4時間20分       5%
30代男性      3時間30分      10%
アルパイン     3時間          1%

というような現実です。たぶん、昔は、一般コースタイムは5時間くらいだったのが、現代的事情を反映して、6時間に設定されているようなことになっています。

まるで日本社会の縮図のようです。

≪関連記事≫
ペースの見積もり
一般登山者の山、山屋さんの山

■ 運動の目的

一般的に言って運動の目的は、健康増進です。

で健康増進のためにすべきことは、各年代で異なります。

 20代以前の体を作っている時期 = 高負荷をかけて、限界を伸ばす

 30代~50代 = 獲得した体力が落ちないように維持をする

 60代以上 = 衰えを緩やかにする世代

です。30代以上にとって、やせ我慢をして負荷を増大させるのは、健康増進にとってはまったく合理的な戦略ではありません。 30代~50代は節制を身に着ける世代。

60代以上になると、体に故障を抱えていることが普通になるので、定期的な健診を受けて、故障の早期発見につなげる世代です。

つまり

 20代 = どんどん大きな山を目指す世代

 30~50代 = 自分のペースで、無理せず登る世代

 60代以降 = 衰えを緩やかにするために山に登る世代

です。どんどん大きな山に登るにしても、最初は小さな山でスタートでしょうから、他の世代と交流することもあるでしょう。

例えば、大学生は北岳バットレス四尾根にいきなり登っても懲りて帰ってきて終わりでしょう。でも、30~50代は、コツコツ自分のペースで積み上げた結果の山が四尾根と言うケースに限って登るべきでしょう。60代であれば、長く岩登りを続けてきた人だけがクールダウンくらいの気分で登る場合に限って登る山でしょう。

20代であれば、体調が少し悪くても山に行っていればそのうち治るはありかもしれませんが、不調の予防が目的である他の世代では、体調が悪いことはそのまま山に行かないことを意味するべきでしょう。

運動に対する心の在り方が年代によって変化するように、登山に対する心のあり方も、年齢相応に変えていくべきでしょう。

■ 自然を楽しみながら、体を上部に保つ

この本の終わりの方の記述です。

1.自分の現在の健康状態を正しく把握する

2.自分の特性に合わせて、段階的に鍛錬する、あるいは維持する

3.継続的な活動計画を立てて、実践する

4.繰り返し(定期的に) 健康状態をチェックする

5.不調が生じたら、一旦回復に専念するが、活動可能になったら、負荷量を調節して、速やかに活動を再開する

■ 近郊登山

つまりホームベースの山を持て、ということのようです。

・一日つぶさないで取り組める
・天気が多少悪くても予定通りこなせる
・いざという時のバックアップが得られやすい
・そこそこ標高差があり、道が整備されてる

・時間の短縮を図る
・歩荷をあえて増やす

・遭難防止になる

登山の実力は、好天の環境で予想通りのルートを踏破したという経験よりは、いざという時にどこまで耐えられるか、どんな環境までなら切り抜けられるかというところにあります。

登山の実力をつけるためには、「どの山頂を踏むか」だけでなく、どう登るかにこだわる必要があります。

・・・とあります。

一番弱い人がそのパーティの実力です

■ 一番弱い人がそのパーティの実力

一般にリーダーとなる人の思考は、

(メンバーA) + (メンバーB) + (メンバーC) + (メンバーD) = (パーティの実力)

というものだと思う。

例えば、

・メンバーAは、若くて担げるし歩ける。 メンバーB,C,Dの分を少し担がせよう。
・メンバーBは、突破力があって登れる。核心部はメンバーBにリードさせよう。
・メンバーCは、地図読みができる。よし、先頭はメンバーCに歩かせよう。
・メンバーDは、歩けず担げず、読図もできないが、このメンバーが揃えば、なんとかなるだろう。

と、このように考える。各メンバーのスキルを持ち寄れば、全体として一つの完成した岳人ができる、という発想だ。

つまり、この例だと、メンバーA+B+Cで、一人前。 メンバーDはゴマメ。

パーティの実力は? 

 (一人前) - (メンバーDの実力不足分) = (パーティの実力)

だ。分かりづらいので、暫定的に、数値を与えておくと、100の実力が必要となる山に対して、

 (メンバーA+B+Cの実力の総和)=120 (メンバーDの実力) = 80
 
 120-(100-80) = 100

となるわけだ。 100だからギリギリ行けるだろう、という判断になる。 

■ 一番弱いメンバーがパーティの実力

山の掟は、色々あるが、

 一番弱い人がそのパーティの実力

というものがある。

これは山の必然で、弱い人にはどんなに強い人が無理を強いても、無理は無理。

その無理が限界を超えると、機能停止に陥るので(一度夫はGWの仙丈ヶ岳でそうなった)、結局は無理を強いないことがパーティ全体のメリットに利することになる。

となると、上記の思考は覆されることになる。

実は パーティ全体の実力は、単純にメンバーDの実力 = 80 のほうなのだ。

これは、歩く速度にすると分かりやすい。

メンバーA、B,Cがいくら早く歩いても、メンバーDが到着しなければ、パーティが到着したとはみなされない。

■ 地図読み特例

ところが、なぜか地図読みや、突破力には特例を設けてしまうのが、人の情、だ。

地図読みはメンバーのうち一人が確実なら、あとのメンバーは後ろをついて歩くだけで歩ける。

しかし、この戦略が、ピンチに弱いことは、各種の遭難事例で明らかだ。

その地図読みできるメンバーが行動不能に陥ったら?途端にパーティ全体が行動不能に陥る。

こちらの遭難事例の反省でも出ていたが、

 各人一人一人が登山に必要なすべてのスキルを身に着けようとしていることが大事

だ。

まったく地図読みができない人を地図読みの山にいざなうのは、その人を危険に陥れる行為であるので、自粛しないといけない。

逆に地図読みできないのに行く人は、自分がどのような立場であるのか(相当なチャレンジ、あるいはゴマメ、お試し体験)を自覚していないといけない。

■ クライミング特例

この特例は、突破力にも適用されるようだ。 だれか一人、突破力のある人がいれば、その人にリードしてもらえば、他のメンバーは確保付で通過すればよい、という考えだ。

これも、地図読みと同じで、それぞれのレベルで良いから、全くできないというのではなく、少しでもできるように努力をしている、という状態であることが山の基本だ。

最低限、自分で自分のケツが拭ける、くらいはマナーとして身に着けている状態でなくてはならない。(スイマセン、汚い言い方で、でも先輩がそう教えたんです・・・^^;)

自分のケツが拭けるとは、 自分のセルフビレイが取れて

 自分の安全は自分で確保できる

ことを意味し、懸垂下降が必要な山でいきなり懸垂の仕方を習うことではない。もしそうだったら、その人はまだその山へ行く最低限の要件を満たしていない。

■ 歩荷力特例

これは、歩荷力にも適用される特例のようだ。歩荷力が無くなったら、無くなったなりの小さい山に行くか、歩荷しないで良いように軽量化するか、食べるものをドライフーズに変えるかすればよい。

無理して大きい山に行きたいのは、なんでなんだろうか?

 行きたい山ではなくて、行ける山に行く

と言うのが山の掟の一つにあるんだが・・・

■ 運転特例・美人特例

他には運転特例、がある。運転をしないと言う特例だ。私は運転特例をありがたがるタイプではない。

あとは、美人特例。 男性クライマーが女性クライマーを好きになってくれると、色々なことが免除されるようだ。例えば、ロープワークゼロで何年もずっとセカンドでバリエーションに行きつづける、など・・・。

この特例は、普通の山でも同じで、そういう立場に長くいた女性は、自分が他のメンバーの危険を察知してやる立場にあるとは、想像もつかない。かしづかれるのに慣れてしまっているのだ。

例えば、男性でロープワークの経験が浅いメンバーのノットをチェックしてやる必要があるとは、気が付かない。

登山歴30年で自分で懸垂で降りてくるのに、あとのメンバーのノットを見てやる、ということは全くできないというか、しない。しないのは、自分はその役目があるとは考えていないことを意味する。

■ 楽しいことがなぜか苦い薬になっている?

山をしているのに、

・地図読みしないで済ませよう
・クライミングしないで済ませよう
・基本のノットを知らぬ、存ぜぬで済ませよう

というのは、そのようなスキルが不要の山にしか行かないということを意味する。

ということは、山岳会に入らなくてもいける山でいい、ということを意味する。

じゃ入らなくてもいいのでは?

にもかかわらず、山岳会に入る、ということは、その人の真の動機は、なんだろうか?

■ 楽しい

でも、私が思うには、

・地図読みは楽しい
・クライミングも楽しい
・ロープワークも楽しい

全部楽しいんだけど・・・。

なんでみんな楽しいことから逃げ回って、人にさせて山に登ろうとするのか?

そこのところが謎だ。

≪山の掟≫
・一番弱い人がそのパーティの実力
・コンパスの使い方や地形図の読み方など基礎的な技術を、各人が身に着け、個人レベルで安全な登山ができる事が大事
・自分の安全は自分で確保する
・行きたい山ではなく行ける山に行く

Friday, November 13, 2015

下山遅れのタイムリミットを何時に設定するべきか?

■ どこから下山遅れか?

山岳会のもっとも重要な機能は、

 山行管理

だと言われている。 どういう意味か?と言うと、

 帰ってこなかったら遭難と認知してくれる

と言う意味だ。

ところが困るのが、

 下山連絡がめんどくさい

こと。 これが嫌で、山岳会に入らない若い人は多い。山で怖い目に遭ったことがないと、たぶん、探しに来てもらえないかも?という不安は一生分からないに違いない。ちなみに私もビバーク経験はない。

■ 下山遅れと遭難の切り分け

それはともかく、待たされる側になると、困るのは、下山遅れだ。 

 下山が遅れているだけなのか?それとも、本当の遭難なのか?

そこが分からないと、捜索開始すべきなのか?そうでないのか?分からない。

■ 夫の心配

先日は、15時下山完了のところ、下山連絡を夫に入れたのが、21時過ぎ。

 普段 (夕方、遅くとも19時ごろには連絡) → 先日 (21時)

これには、彼もびっくりしたようだ。

実は下山した尾根の末端(17時)でも携帯電話はつながらず、2時間の林道歩き中もつながらず(19時)、車回収の2時間の待ち時間でもつながらなかった(21時)ので、車に乗ってすぐ下山連絡したら、そうなってしまった・・・。

したがって、夫は、「ただいま!」と帰ってくると思っている時間に「今、下山した!」と言われ、面食らっていた。

そりゃそうだよな~ 夫を責めるわけには行かない。

■ 下山遅れ通知を何時に設定すべきか?

そこで、安全登山にとって最大の課題となるのは、

 下山遅れ通知を何時に設定すべきか?

ということだ。

ヤマレコでは、下山遅れ通知システムを使うことができる。

この時間を過ぎたら、下山遅れという下山遅れの時間を設定することができる。

しかし、問題は、何時間の遅れを下山遅れ通知の時間と設定すべきか?ということだ。

■ 山の掟

最低限明らかな所から、出発すると・・・

日没前に下山を終える計画を立てる

が、山の掟、だ。 ここで足並みがそろわない山ヤはいない。

ところが、どの地点を”下山”と解釈するか?の解釈は大いに違うことが起りうる。

≪下山の解釈≫
あ) 尾根の末端
い) 林道歩きが終わった地点
う) 携帯電話の電波が入る安全圏

他にも、小屋がアタック基地になっているようなロケーションでは、小屋も下山地点とみなされるかもしれない。小屋まではアプローチ、という認識になるからだ。暗くなる前に小屋に入りましょう、と小屋も言っている。

例えば、上高地から、涸沢へ入り、北穂に登るとする。 どこが下山ポイントだろうか?

A) ベースの涸沢
B) 横尾からは車道なので、横尾
C) 上高地バスターミナル

の3パターンくらいは、容易に考え付く。意見は様々だろう。

ここで、何が安全か?の議論は難しい。

しかし、安全な順に並べなさい、と指示されたら、100人が同じ順番になる。つまり、

安全 → より一層安全
 A)<B)<C) 

の順で、より安全だ。これは間違えようがない。同じことが、あ)い)う)にも言える。

安全 → より一層安全
 あ)<い)<う)

■ 歩行終了、という観点で切り分ける案

登山者の率直な気持ちとして、電車に乗れば一安心、とか、車に着いたら一安心、ということがある。もう歩かないからだ。

 歩く=登山、という認識だ。つまり

・車を降りて歩き出し=登山、
・車に乗っている区間=アプローチ

この案で行くと、車を使う訳でない林道歩きは、非アプローチであり、登山の中に含まれる。

下山口を林道ゲートとしていれば、日没前に、林道歩きを終わり、車の前に着いていなくてはならない。

車が置いてあるポイントを下山口とするのは、非常に明快な分け方に思える。車というポイントに固定されるから、誰にとっても分かりやすい。

■ 駅

一方、電車派の人は、街灯がある街中の道でも、歩かねばならず、昨今は、山間部は過疎化が進み、下界と言えども、SOSが聞き届けられる環境か?つまり携帯が入るか?というと怪しい。

SOSが聞き届けられる環境か?どうか?ということは、単純な1点にかかっている。

 携帯電話が通じるかどうか?だ。

しかし、携帯電話が通じる地点で下山完了とするのは、あまり現実的でない。携帯電波が入る場所が事前に特定できないし、キャリアによっても違うからだ。

電車はの人は、おそらく遅くとも、駅に着いたら、家に電話を入れるであろう。

■ 携帯が通じる時刻を想定する案

通常は、車に乗るのであれば、車で走り始めて、1時間以内程度には、携帯電波が届く範囲にいるだろう・・・

下山完了時刻 + 1時間 = 推定 下山連絡時刻

つまり、林道ゲート15時であれば、

 15時 + 1時間 = 16時ごろ 下山連絡

となる。 大体、私の場合は、このような下山連絡時間で、今まで来ている。会に属していたときも、うっかり忘れたりしても、遅くとも19時くらいには、下山連絡をしていた。

■ 緊迫性の検討

雪山で遭難した場合、一泊のビバークは、生死を左右する。

学習院大学の阿弥陀岳での遭難では、ワンビバーク後、パーティが分かれ、1日遅れの阿弥陀山頂から、下山したメンバーが残りのメンバーが下山してこないのを通報した。

メンバーが業者小屋テントに帰還した時刻   18:00
他のメンバーの下山遅れが心配になった時刻 19:45
外部と連絡が取れた時間              21:40
救助要請                        23:06

実に救助要請まで、5時間かかっている。今回の下山遅れ時間と同じくらいの時間だ。

日本では夜間救助はないので、例え18:00に救助要請したとしても、もうワンビバークは避けられない。

ということは、雪の山では、当日に救助開始される下山遅れは、何時になるのだろうか?

山小屋では14時には小屋に入ってしまうんだが、テント泊では14時行動終了では、寒くて、ちょっとしんどいかもしれない。

もちろん、夏山や秋山では、雪山と同じ緊迫性はない。真夏なら一晩ビバークしても、死に至ることはめったにない。

しかし、下山連絡の緊迫性が

 緊迫性 低い    →      高い
   夏山 <春山 < 秋山 <冬山   

の順であることに、異議を唱える人は、珍しいであろう。

つまり、夏山より春山が春山より秋山が秋山より冬山がより切迫している、ということだ。

■ 予備体力

予備体力と言うのは、普通に歩く体力とは違う、ピンチの時の体力のことだ。

予備体力は、20代で通常の4倍、40代で2倍、60代になると1倍と言われている。これも絶対的な体力の予備は、各個人によって異なるが、

 予備体力 高い → 低い

 20代 > 40代 > 60代

であることに異議を唱える人は少ないだろう・・・。 

■ 山のスタイル

どこを下山と解釈するか?ということは、実は山のスタイルと密接に結びついているかもしれない。

アルパインスタイルは、山頂にちょっとタッチして、さっさと山を下りてしまうので、せわしない登山として、よく山旅派の人から非難を浴びている。もっと山を味わったら?という訳だ。

たしかに、その指摘も良く分かる。しかし、それは、アルパインの人が目指している山が、山旅派の人が目指している山とは、まったく危険の度合いが異なるからだ。

山の隔絶度 (安全圏から遠い山・携帯電話が入らない山)
山の困難度 (転滑落リスクがある山、バリエーション)

が高い山がアルパインの山で、

山の隔絶度が低い = ゲレンデ
山の困難度が低い = 一般ルート

となっている。

登山の初心者は、転滑落リスクを取ることができないので、勢い、転滑落リスクがない、バリエーションルートを目指すことになると、山の隔絶度が高いところが必然的に残る。

高齢者も同じで、転滑落リスクを最小化したバリエーションルートを目指すことになり、それは、山の隔絶度が高い、ということになる。

山の隔絶度が高い場合、万が一がより許されないのは、予備体力がより少ない、とされるほうだ。

■ まとめ

鉄則: 日没までに下山完了

要素:

 (安全)        →    (より安全)
尾根末端 < 林道ゲート < 携帯の電波圏
涸沢    < 横尾     < 上高地

 (緊迫性 低い)    →   (高い)
夏山 <春山 < 秋山 <冬山 

 (予備体力 高い)  →   (低い)
 20代 > 40代 > 60代

(下山連絡時間) = (下山時間) + (1時間)

これらを組み合わせると、落としどころが見えてくるのではないだろうか?

≪参考≫
下山遅れ事例 三嶺下山遅れ
教訓が書かれている