まだ、引き続き、クライミングシステムの基本中の基本である、
スタカットをどうやって理解するか?教えるか?
ということを考えたいと思います。
- 一方が登っている時は一方が確保する
- 確保ゼロの瞬間を作らない
■ なぜ師匠はいきなり流動分散を作らせたか?
私は去年の6月に師匠に天狗岩で出会いました。岩場で、剣で落石で亡くなった人を偲んでいたら…、下からひょっこり、おじさんクライマーが現れたのです。新人の若い男性にクライミングの仕方を伝授中でした。
「お、こんなところにいるとは、さてはクライマーだな」
「流動分散を作って見せなさい」
「うん、合ってる。けど間違ってる。ダメ。」
「うちは新人大歓迎だよ。気が向いたら連絡しなさい」
師匠は、なぜいきなり、見知らぬ他人に流動分散を作らせたのか?
今では分かります。その人の理解度を見るのに一番簡単だからです。
三つ峠ですが、
「スタカットを分かるために行くところ」ではなく、
「スタカットが分かってから行くところ」
ですね。 最低スタカットが分かっていないと、本人が死ぬかもしれません。
実質は師匠も天狗岩に新人を連れていたように、講習会や山岳会でスタカットを教えるために行きますが、それだと大変リスクが大きいです。岩場にいる時点では、何も分かっていないからです。
一方、今年7月にあった山岳部の学生さんたちは明らかに違い、「スタカットを分かるために来ている」のではなく、「スタカットはすでに分かっていて、穂高・剣の練習のために来て」いました。
私も、岩場に初めて行った4月の時点で、スタカットについては、すでに理解済でした。一緒に行った相方は分かっていませんでした。ので、相方は目を話すことができない人でしたので、3人でないと危なかったのです。私は、自分が教わる側でもあり、見張りでもありました。
■ 何が良かったのか?
1)易しいルートで、スタカットを経験したこと
私は三つ峠より、より易しい(つまり歩けるようなところで)ルートで、スタカット(マルチピッチ)を経験しました。金ヶ窪沢などです。つまり
・確保ゼロの瞬間をいかにつくらないか?とか、
・懸垂下降をする(敗退の練習)
などです。最初はそれこそ、黒富士で、1ピッチのみの登攀です。自然地形の中で、覚えるのが重要なのではないか?と思います。私の初めてのルートは、アイスのルートで、広河原沢左俣ですが、ここは、前穂北尾根より危険だし、スタカットが必要な区間が長いです。それにアイスなので、かなり危険です。
2)めちゃくちゃ本を読んだこと。
私もですが、相方もそうだそうです。 読みたくなりというよりむしろ、読まずにはおれない、というくらいの情熱で、非常に強い興味を持って、技術系の教科書を読み込みました。
たぶん、精読で5回くらい、拾い読みだと20回くらいは、それぞれの本を読んでいると思います。
本を読めば、自分が何が分かっていないのか、分かります。
- スタカットの理解、
- 支点作成、
- 基本のロープワーク
については、自分で家で独習できます。というか、人が教えようとしても教えられないもの、かもしれません。
おススメの本は 菊池敏之さんの『ハイグレード登山技術』です。 ハイグレードと書いてありますが、普通のスタンダードな技術が述べられています。もっと良いのは 『最新アルパインクライミング』なのですが、この本、手に入りません。手に入る中では『ハイグレード・・・』になります。
下記です。この本、3年前の、2011年1月に購入して、今では、へたってボロボロになっています。
初めて読んだときは意味が分からないのでつまらなかったです。
講習を受け始めてすぐ、2度目の精読をし、さらにその後、疑問がわくたびに精読し、最近、5度目の精読を終わりました。
5度目は、今回自分が教える側として読みました。何回読んでも、ホントに良い本だと思います。
が、読む人の理解度によって面白さが変わる本で、一回目は「ふーん」くらいしか思いませんでした。
■ 古い情報<正確な情報
クライミングの技術は古い新しいがあるそうですが、中身は同じです。
古い人 = ブーリン 新しい人=エイトノット
古い人 = 確保器をもっていない 新しい人=確保器を持っている
などで、仕組みは変わりません。
古い人 = クローブヒッチをマスト結びと言う、ムンターを半マストとかイタリアンノットとか言う
で呼び方が違うだけで、やっていることは同じです。システムは全然同じです。
その辺は、多種の本を読めば分かります。現在最新のクライミング技術(といっても昔と一緒です)は
アルテリアのホームページ
に行けば、載っています。
■ クイズ
ある人のスタカットの理解がどれくらい進んでいるか?というのは、もしかしたら、簡単な質問のチェックシートで分かるかもしれません。
ロープを携帯するときに、キンクを避けるには
A ループにして携帯する
B 振り分けで携帯する
これからスタカットで登攀しようとしています。岩場について最初にすることは
A ロープからキンクを取る
B アンザイレンする
岩場をみるとどうもルートが屈曲しているようです、
A シングルでいく
B ダブルで行く
登りだしました・・・次は
A 1本目のランニングをビレイ点に掛ける
B 1本目は比較的近くに取る
C 易しい箇所であれば、1本目は遠くても良い
ビレイヤーがアンカーに体重を預けています
A ああ怖い!アンカー壊すなよ
B しっかりしたアンカーのようだから、安心だ
C すごいなぁ・・・高所恐怖症じゃないのかな
登りながら気に掛けることは?
A ロープの長さ
B 次のビレイ点をどこにするか
C 屈曲
D ランナウト
E 登って楽しいなー
ランナウトって何ですか?
A 走り疲れてくたくたになること
B 支点が信用できないこと
C 今落ちたら死ぬこと
D ビレイヤーから最終支点までより、最終支点から自分に出ているロープが長いこと
伸びるロープ
A アブナイ
B 安心
セルフに落ちる
A 安心
B 痛い
終了点に来た。最初にすることは
A メインロープでのセルフビレイ
B ランヤードでのセルフビレイ
ランヤードでセルフを取っていれば
A 2個もイラナイ
B もう一つ必要
支点を作りたいです。岩場には終了点がありました。普通に流動分散でよさそうです
A 支点は2か所以上から取る
B パワーポイントは安全環付のHMS式カラビナにする
C 心配だから、遠いけど、もう一か所から取ったら、広角になった。
次にすることは
A コール
B ロープアップ
ロープアップの次にすることは?
A セカンドの確保のセット
B コール
セカンドから登りにくいから、ロープ出してと言われた。出しやすいビレイは
A ATCガイドのビレイ
B ムンターのビレイ
つるべとは
A 同じ人がリードする
B セカンドだった人がリードする
つるべのときロープは
A 裏返す
B 裏返さない
懸垂下降の時、気を付けることは
A 落石を起こさない
B ロープを岩や立木にひっかけない
C 長さが届くかどうか
D ロープそのものを落とさない
E 支点をセルフの支点と別にする
F 早く降りる
・・・・こんな調子に永遠に続きそうです・・・(^^;)
クイズを作ってみましたがどうでしょうか?きっとベテランからは、指摘やアドバイスが、たくさんもらえそうな気がするのですが・・・
基本的な理解に関しては、やはり、登れる=登攀力、とは全く別物、という気がします。
岩場で怖いのは、知らないということを知らない人が、知っている、分かっていると思って、登りに来ることです。
例えば、ロープをまとめてもらったら、振り分けでなく、ループにしてしまうとか、ダブルとシングルの登り方の違いを分かっていない、とかそういうことでも、「まだ分かっていないんだな・・・」と分かります。
それは指摘された方はむっとするかもしれません。すいません。しかし、分かっていないので一番危ないのは、本人なのです。
それに分かっていないことは、何と言っても、「分かったら終わり」! 希望がもてます。
≪関連記事≫
ロープワークは原則主義で覚えたい
自立したセカンドになるには?
クイズ(アンケート?)の私的回答です。
ReplyDeleteB→A→B(やったことないけど)→B→B→A~Dの4つとも→D→どちらでもない(リードクライミング時は どの程度伸びるかによるし、トップロープや懸垂では伸びないほうがbetter)→「セルフに落ちる」(意味が理解できない)→B→A→A→A→A(ムンターでビレイしたことがない,ATCガイドはホールに紐をかけておけば緩め易い)→B→A→A(下に人居ないなら落ち易そうなのは落としてしまっておく),B,C,D,E,F(確実に、でもなるべく早く)
いや~議論を呼びそうなのは、設問を何とすべきか?ですよ~ 回答はもう、みなさんお分かりですし(^^)
Delete私が分からないのは、落石です。落石って下に人がいなければ落とせるものは落としておくように習いましたが、会の先輩は落とさない派です。もちろん、私もゲレンデでは石があっても落とさないけど。沢の人は落としておきますよね。
セルフに落ちる、はランヤードに落ちると、すごく痛い、ってやつです。伸びないのに落ちるとすごい衝撃です。後輩に人工壁でスタカットを教えていて、彼セルフに落ちてスゴイ音が。
色々な状況があるので、そういう状況を考慮すると設問自体が作れなくなりますが、やっぱり、多少のやり取りで議論していく中で、あ!そうか!!と分かっていくものかと・・・
落石が どの程度起こりやすそうか と 起きた場合に どの程度 危ないか。ということを評価して その後の行動を決めたらイイと思うし、場合によっては落とさないってこともありますよ。下に人が居なくても。
Deleteランヤードに落ちるってのも分かりません。そういう言葉に詳しそうな知人に訊いてみます。
Deleteセルフに落ちる、は、セルフビレイを取っているスリングって伸びないので、伸びない紐に墜落する(衝撃荷重をかける)を、すごい衝撃だってことです。支点にもすごい衝撃がかかりますが、自分もすごくガツンと来ます。静荷重なら平気です。 この辺は『教科書になかった・・・』に書いてあります。
Deleteカウテールと言って、セルフビレイ用のスリングを多少伸縮するものにしている人もいます。
メインロープでセルフを取っていた場合は、落ちてもメインロープは伸びるので、そんなに衝撃はないです。ロープは伸びることで衝撃を吸収してくれるんですよね。
この辺は落ちて実感するのが大事なのかな~ 三つ峠で60m、懸垂していたら、私はバックアップつきで懸垂するので、少し下がるたびにテンションがかかるのですが、そのたびに、びよよ~んとバウンスして、懸垂下降とは全く別の遊びみたいになってしまったことがあります(笑)
有難うございます。
Delete物分りが悪くて申し訳ないです。
知人に訊いて それでも分からんかったら その本、借りて読んでみます。
カウテールは見たことあります。
懸垂の途中でぶら下がったままボルトを打ったり、降渓などで懸垂を繰り返すようなルートをたどる時はスタティックロープを使ったことがあります。ビヨンビヨンすると危ないので。
でも、絶対はずれない支点で落石なんかありえない壁があるなら、びよんびよん遊びも楽しいのかもしれませんね。地面にぶちあたったらいややけど。
あれ?反対だよ~ びよんびよんするほうが支点に易しいです。スタティックは支点にもろ、衝撃がいくので、静荷重ですよね。 自衛隊や消防隊は懸垂しかしないのでスタティックだそうです。やっぱり懸垂下降は伸びないロープが良いみたいですよね。
Delete毎度、どうもです。「ビヨンビヨンすると危ない」というのは懸垂時限定ということで書きました。わかりづらかったら すみません。
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