Sunday, July 2, 2017

アルパインクライミングへつなげる、ボルダリングジム通い

■ ボルジム 500件突破

現在日本では、ボルダリングジムブームです。今年500件を突破し、雨後のタケノコのようにジムが増えています。

実はボルダリングは、クライミングの一分野にすぎませんが、今ではクライミングそのものの代名詞のような扱いになっています。

そこを詳しく語ってしまうと、一記事で終らなくなるので、他にどういうクライミングがあるのか?は、割愛しますが…。

■ 山ヤはすべからく、2点支持とビレイを身に着けましょう

結論から先に言いますと、山が嵩じて、アルパインクライミングに行きたい!ということになった新人山ヤさんにとって、最初の課題となるのは…

1)2点支持を身に着ける
2)ビレイを身に着ける

の2点です。いくら登攀力がない山ヤでも、2点支持が身についている、& ビレイが身についている、というところまでは、最低行かなくては、山のバリエーションでは、沢も岩も、アイスも、雪稜もありません。

身についていない段階での同行は、お荷物になるばかりでガイド登山と一緒だからです。
注.これ以前に、体力、読図、一般縦走テント泊、単独でのリスク管理、レスキュー基礎知識、くらいはマスターしている前提です。

■ 以下のような質問が来ました…
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こんにちは。
自分は今月、二回ほどボルダリングの体験をしてきました。 クライミングジムは都心部にも多いのですが、トップロープ壁を備える施設はわずかな様です。 アルパインクライミングのジム練習は、ロープを使った人工壁練習を想定していると思います。 

ここで、ご意見をと思うのは、私が取りえる今後の方針についてです。 当面は、通勤路上のジムでボルダリングに慣れ、段階的にトップロープ壁施設への遠征を混ぜてゆくという考えで良い物でしょうか? また、アルパインのための人工壁練習では、ロープを使う課題に挑戦する割合、頻度はどの程度なものでしょうか? ここまでが質問です。 

 ・・・ 以下、報告的な感想と雑感です。 

ジムのボルダリングを二回ほど体験して思うのは、山とは別個の活動として、ボルダリングを楽しめないとおそらく継続は難しいだろうということです。 今の自分の時間価値につりあう満足があるかどうかは、もう少し続けてみないと分からないかもしれません。 課題の難易度は10段階程度になっているようですが、最も易しい方から数えて三つ目は苦しいです(7級なのかな)。  

二回目の訪問時は一つの課題に絞り込んで、8回中4回成功というところでした。 あんまり登れたぞという気分にもならないので、同じ課題ばかり続けてしまいました。 どこか悔しさが残り、店員さんに意見を求めたところ、足の力だけで登れる課題だと教えてもらいました。 

あと足の親指先端の痛みも気になります。(シューズの適正サイズがわからないです) シューズとチョークバッグは購入しても良いと思っていますが、自分で選択する経験をする為に、もうしばらくレンタルしようと思います。(↑製品のアドバイスも頂ければ嬉しいです)

 自分は課題を山の岩に変換して眺めるせいか、難しい課題に挑戦するガッツはあまり湧きません。 (そんな所には行かないからと思ってしまいます) あとこれも体験してみて分かったのですが、ジムはまるで山の話をするような雰囲気ではないのですね。 こんな様子です。 

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■ 当方の回答
ボルダリングジムについてですが、  

ムーブ(=2点支持) を身に着ける、

という意味で、山でのクライミングにつながって行きます。 その意味では、ボルダリング壁であっても、リード壁であっても、同じことを身に着けることができます。

普通の山登りで出てくるのは、3点支持で、2点支持の体の使い方は、まったく違うのです。 いわゆる岩稜帯では、3点支持で歩いていますが、手1点、足1点の二点支持が身に付くと同じところを非常に素早く安全に抜けることができるようになります。ちょっとした鎖場などがが、ぜんぜん危なくない、ということですね。  

まったく縦走しか知らない場合、ほとんどの登山者が、20代の若い男性であっても、鎖場の鎖に全体重を預けて、引っ張るような登りをしていると思います。(例:後立の不帰やキレット)

この段階の登山者だと、10回程度ジムへ行き、7級程度の課題を2点支持で登れれば、鎖は一切手をつけずに15~20kg程度の重いザックを背負った状態でも、不帰やキレットが安全に通れるようになるように思います。40代でスタートした女性の私の場合がそうだったので、男性なら、10回も要らないかもです。

これをしておけば、山おばちゃんたちのような、つたない歩きは克服できます。難所で時間がかかることもないです。

アルパインクライミング、となると、これでは不足です。初級のルートでも、もう少し難しいです。  

ロープが出る山は、5級から上です。1級は遊歩道、2級は登山道、3級は3点支持の岩場、4級は念のためロープがいる程度の岩場、5級はデシマルグレードのスタート地点、6級は、人工登攀の岩場(つまり、かぶりがあります。昔は人工登攀、現代ではフリークライミングの課題となる場合もある、その場合、再登でフリー化と呼ばれる)です。デシマルグレードは、5級が細分化されたものです。(参考:RCCⅡグレードその他のグレード

ので、最低でも、5.10Aを2点支持で登れるようでなくては、アルパインの初級ルートに出た場合、ロープワークもセットで、支点作成も覚えなくてはならなくなるので、実力が不足すると思われます。 この段階になってから、リード壁があるジムに通われてもよいですし、一般的に公共の施設は、ジム代が格安です。小瀬の人工壁は、なんと390円だったんですよ。私は初期にひと夏捧げましたが、毎週二日、半年通って、2万円程度でした。営業ジムの一か月分です。 

リード壁に通う別の意味は、ビレイの習得です。言うまでもないことですが、ビレイができない人は、岩場に連れて行くことすら、できません。ビレイをいきなり本番で習得することはできないですから、リハーサルの場としてのインドアウォールが必要になります。

落ちる役をする人は、支点が確実でないと墜ちれないです。普通にしていて、ビレイの習得に、週2、半年程度かかると思います。立ち位置、墜落係数、体重差、だらりんビレイ、パツパツビレイ、手繰り墜ち、逆クリップ、ゼット、などなど一通り、やってはいけない失敗を、安全な環境で体験して、本番で致命的なヘマをしない状態に仕上げておく必要があります。  

最近のリード壁は、5.9くらいからですので、ボルダリングの5級くらいなれば、リード壁も楽しくできるように思います。 ただ、実際の外の岩は、アルパインの岩場で、いわゆるゲレンデと言われるような日和田、広沢寺レベルだと、5.9よりうんとカンタンです。4級の岩場だからです。 

逆にフリーの岩場、小川山だと、5.7でもインドアのリード壁とは比べられない難しさです。なので、インドアのグレードをいきなり外に岩場に適用するのは、危険です。

いわゆる山岳エリアのアルパインクライミングで、必要になるのは、ゲレンデレベルであり、典型的な事例は、夏前の三つ峠です。多くの山岳会、大学山岳部が、夏山のアルパインクライミングのリハーサルとして、三つ峠に集結しています。

さらに言えば、クライミングにおける足遣いは一般に、外岩でないと習得できないようです。 ですので、クライミングムーブに慣れるために、一般的なボルジムでムーブを意識した練習をしつつ、日和田レベルで、外の岩にデビューし、週二日は平日夜にジム、月に1日か2日の週末は、チャンスがあれば、日和田レベルの岩に連れて行ってもらい、ロープワークを習得、リードに慣れる、など、ゆっくり1年くらいかけて習得するのが良いかなと経験上は思います。

この時期の課題は、上記2点はもとより、

・岩場慣れして、岩場でのリスク管理に慣れる (例:セルフの習慣)
・リード慣れ

です。

ちなみに、多くの山岳会は、このような段階の人には場を提供しています。

習得にかかる時間的な感覚は、40代スタートの女性の私の体験で、男性だと、ジムであっという間に上達する人もいます。 が、ロープワークの習得は、誰でも同じだけの時間がかかるようで、クライミングジムで登攀が上達しただけの状態で、守りの業であるロープワークが未熟なまま、クライミング力の自信だけで、岩場に行き始めると危険がマックスであることは、予想の範囲でしょう。

この時期の登山者に、一番死亡例が多いです。とんでもない支点やとんでもない確保を見るのも、この時期の人です。本来は、ルートに出るのは、まだもっと先が良いと思います。  

ただ、山の人は温かいですから、こういう人たちがいると、周囲が見守ってくれ、技術的な不足は指摘してくれることが多いです。ですから、その教えを得るためだけでも、岩場に行く価値があります。 (例はこちら

ボルダリングが楽しめないのは、山でスタートした人共通です。なので、ごく普通です。心配ないですよ! 

チョークバックと靴は買いましょう。無いと話にもなりません。 私も、ジム壁では、ぜんぜん萌えません。でも、これは山に行くために、支払わなければならない代償だと割り切って、通うしかありません(笑)。

多くの山岳会では、合同クライミングデーを設けていますので、それに参加するのも一案です。

ちなみに、退屈なジム壁を面白くするコツは、友達を作り、セッションをすることです。 そして、ジムの課題やグレードにこだわらず、ジムの人が、どんどん難しいのにチャレンジするように言ってきても、無視して、自分が納得いくまで、何度も易しい課題に登り、トラバースなどで、インターバルトレーニングなどして、とにかく、自分は何のために、これをやっているのか?トレーニング内容を自分で組み立ててみることです。それには最初はデータ取りです。 何が登れれて、何が登れず、どうしてなのか?ということです。

何しろ、目標は2点支持の習得であり、5.〇〇が登れる、ボルダリングの2級が登れる、などというグレードを追いかけることではないのですから、ジム壁はあくまで、道具です。 私は、最初の頃は、パートナーもいなかったので、リード壁はやらず、長もののトラバースばかりをしていたのですが、腕力が付き、沢のへつりで役立ちました。

回数を決めて、何往復したかなど、細かく記録をつけていくことで、だんだんと自分の成長が可視化されると、追い求めるべき課題も見えてきて、面白くもなってきます。
 
例えば、最初に長ものトラバースをやってしまうと腕がすぐ上がってダメになるが、ちょっとアップしてからなら、2往復も平気、など…。これは体がムーブに慣れ、省エネの登りができるようになるためと思います。そういう風に自分を知っておくと、本番の山でも役に立つのです。

そこまで、そんなに時間がかかりませんから!コツは記録を取ることです。 こんな話でお役に立てたら幸甚です。

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以上が私のコメントです。

■ 時代背景

このアドバイス依頼が来た時… 実は、私は師匠と一緒にいたので、このメールを読んでもらいました。

師匠の意見は、

「こんな奴、ほっておけ。自分で考えないやつは山にそもそも向いていない」

でした。この場合の山というのは、一般登山ではなく、アルパインクライミングという意味です。

私がいた地域山岳会でも、自ら学ばない新人は放置されていました。何年入っていても、ビレイもできない状態であったのは、当人に真剣に学ぼうと言う意思が見えないため、教える側に教え甲斐がないからです。

一方、私は、この質問をくれた方の気持ちも、よく分かるのです。それは、私自身が、高い電車代を払って、東京都の都岳連の講習会に出かけたりなどしたからです。

山岳会には、
・スポーツクライミング寄りの同人的な会
・地域山岳会
・若い人主体の会
の3つに所属していました。試行錯誤には、時間的ゆとり、経済的ゆとり、コミュニケーション能力、調査能力、危険を避ける能力、など、様々な能力が必要になります。

さらに周囲は、山岳会は高齢化していて、行っても役に立たないと言いますし、かといって、他の手段を紹介してくれるわけではありません。

ジムでは話が合わないし、そもそもジムクライミングを楽しめないし、どうやって仲間を見つけたらいいのだろうか?と途方に暮れる状況であるのは、否定できない現実があります。だから、アルパインへ進む人が激減した、というのが正しい現実認識でしょう。

つまり、昔の新人さんには、考えないでも与えられていた環境が、今の新人さんには、相当、得ることが難しいということです。

そのような状況を打開するための、以下が別のベテランからのアドバイスです。

■ 現代の困難なアルパイン入門者への状況の打開案


ーーーーーーーーーベテランからのアドバイスーーーーーー

オールラウンダーのしっかりした指導者がいて、きちんと育ててくれて、同じ年代の仲間がいる山岳会に入るべきなんでしょうが、そんな会はほぼ絶滅危惧種ですし、見極めも困難でしょう。

大昔は、山岳会と言えば、それが当たり前でした。今はツアー交通公社みたいです。
韓国でもそうらしいですが、SNSつながりで危うい関係のパートナー探しで見よう見真似で山、アルパインに行っている人も多いですが、若い人達は、うまく行っている人達もいるようです。
私なら、とりあえず、アルパインやってそうな山岳会に入って、外岩通いしてたら、その山岳会がアホアホジジババ山岳会だったとわかっても、ゲレンデで、他の会の人と繋がったりして、目的に近づくことも仲間に巡り会えることもあると思うのです。上部組織の都道府県の山岳連盟の講習会にも参加できるし、横の繋がりも期待できます。
チャレンジャーなら、リスク覚悟で、ボルジムで仲間見つけて、見よう見真似でリード、ロープワーク、アルパインに進むのもありかと思います。天才なら…
山志向なら確かにジムは萌えませんしね。ペツル完備の外岩でのフリークライミングに慣れると、アルパインでガバガバ浮き石引いて落ちたりしますので、フリークライミングに慣れると、それはそれでリスクでもあります。

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このアドバイスをまとめると、結論は・・・

1)老害のない山岳会に入ること
2)有料講習会に参加
3)「信頼できるガイド」に連れていってもらう

です。

■ 照会先

さて、そうなると、老害の無い山岳会ということになりますが、都内では、私が知る限りでは、

1)YCC
2)やまね
3)九十九
4)無名山塾
5)まつど山岳会

などがあります。 若い会は、安全志向の高まりにより、フリー化の傾向が強く、さらに安全志向が強い場合やバディを組むより、個人の都合で登りたい志向が強い場合は、ボルダリング志向が強いです。

この場合のフリーという言葉づかいは、フリークライミング志向という意味です。フリークライミングのほうがアルパインクライミングより安全性が高いです。

有料講習会では

1)公営
2)私営

があり、私のおススメは、都内であれば、都岳連の登山講習会に出ることです。

東京都や大阪府の登山学校は、抱える登山者人口が多いため、他県よりもカリキュラムが充実しています。

長野県の近隣に住んでいれば、長野県山岳総合センターのリーダー講習に一年かけて通えば、山岳会でかつて新人に教えていたことを教えてくれます。

1)公営の有料講習会
 ・都岳連 登山学校
 ・府岳連 登山学校
 ・長野県山岳総合センター リーダー講習

私が知っている限り、最も優れた登山学校は、大阪府岳連の学校です。1年では終わらないです。

2)私営の登山学校
 ・無名山塾  おススメ
 ・マウンテンゴリラ 
 ・マウントファーム登山学校(後藤真一さん主催:沢寄り)
  
実は色々探せばありますし、山小屋でパンフレットを置いていることも多いですが、ガイドさん主催のものは、数として多すぎるので、割愛。

山を営業の対象としていないものが、質が良いと一般に言えるように思います。その意味では、ガイドさんは、教えるにしても、ガイドとして教え、先輩や師匠として教えるわけではないので、教わり甲斐がなく、お客さん扱い、となってしまうリスクが多いです。

例えば、私が見ていたプロガイドは、メインのセルフを取る、ということを教えていませんでした。
 
3)沢に特化した登山学校
 ・渓友塾
 
私は行かずに初級の沢程度は歩けるようになりましたが、泳ぎまで含めた本格的な沢ヤになりたい場合は、きちんと教えてくれるようです。ですが、主催者が高齢化していることと、きちんと教えるには受講生の数を絞る関係上、高額化しています。

4)アルパイン寄りのクライマーのクライミング講習に出る
 ・菊地敏之さん
菊地さんの講習は、フリークライミングの講習ですが、アルパインのご出身であるため、理解があると思われます。が、支点作成や、支点回収のための通し八の字での、結び替えなど、理解した段階で出るべきで、まったくのゼロでは、講習内容がもったいないかもしれません。

しかし、アルパイン2年目、3年目である程度、フリークライミングとアルパインクライミングのつながり(トラッドと今では呼ばれています)が理解できるようになれば、出る価値があると思います。

以上のようなところで、やはり、

 自ら道を切り開いていく登山者

となるためには、無駄を覚悟で、業界の常識を知る、というためだけにでも、

 とりあえずは、アルパインの山行もやっている山岳会に属す

というのがおススメです。

番外ですが、最近では、登山ショップの店員さんがゲレンデに連れ出してくれる場合もあり、都内であれば、ご紹介できるショップは、

 ヨシキさん

です。

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