Friday, November 23, 2018

ロープのすっぽ抜け事故

■ 習慣づけ=思考停止

ロープの末端を結ぶ(すっぽ抜け防止)という、原則を守っていないのがいけない、と結論することは簡単ですが…。

その思想には、なんだか、手抜き(=思考停止)を感じます(笑)。

大体、日本の岩場は距離が短く、結ばないで問題がないことが9割だからです。1割のために、習慣化=自動思考するのは… というのが、多くの人が現状落ち着いていることでは?

すっぽ抜け事故には、日本独特の文化的デメリットがあるように思います。

1)トポの不備
一般に、日本のトポには、その岩場で必要になるロープ長が書いてありません。海外のトポには書いてあります。したがって、

”外岩に行く際に、ロープ長を気にする”

という基本の基本ができていないのは、トポによって習慣づけられていないため、ということにも、原因があるように思います。

2)リーダーに金魚の糞
日本での外岩は、知っているリーダーについていくという”金魚の糞”形式をとることが多く、その上、リーダーが質問を嫌う文化的な背景があるため、質問しづらい。そのため、結果的に、相手が強いリーダーであればあるほど、すべて丸投げという外岩経験しか積めない、という結果に陥ることが多くなります。例えば、外岩歴5年なのにロープを持っていない人なども起こりえます。

3)事故情報が共有されない
リーダーの下では守られているため、事故を知ることがないです。事故を見かけることもない。

4)変なボルトを自分で見極める手間も必要ない
ボルトの種類は、ピンキリで、その質を見極めるニーズも生まれないということになり、たぶん大丈夫、というのは、誰かほかの人が行った判断をなぞることになります。

結果、海外ではクライミング1か月の人ですら知っているような、稚拙なすっぽ抜け事故がクライミング歴5年の人に起こりえます。

すると、いつも言われるのは、ロープの末端を結ぶ習慣をつけましょう、です。

これは前述のように、そもそも9割必要ない習慣なので、実際、分かっていてもやっていない人は非常に多い…すると、「分かっているけど現実はね」みたいな建て前vs本音論に落とし込まれてしまうことが多々ありますが、そうではなくて、本当に、9割がた必要がない習慣づけなのです。残りの1割のために、9割無駄なことをする、という方法で、事故を防止することも、もちろんできますが、なんとなく、やる気になれない人も多いハズ。なにしろ、ほぼほぼ問題ない訳ですから。

じゃ、肝心の1割をどうやって無くしていくか? ってことが大事になります。

■ 当然のことを当たり前にしていく

そもそも、ロープ長に思いが至らないのは…なぜか?ということがむしろ意味があることかも?

1)岩場に行く前に、登りたいルートの、ルート長さを考える
2)自分で登るルートは、自分のロープで登る

ロープを購入すれば、自分が登りたいルートに必要な長さを買うだろうと思います。

日本では自己責任とか言いながら、どうも責任の所在があいまいです。そもそも、ロープを持っていない人を外岩に連れていくのは感心しない習慣です。

でも、なぜか持っていないでもいいことになっているような?

■ 登ってしまったあとで、足りないかも?と気がついた場合

さて、登ってしまったあとで、ロープ長がギリギリだった場合、どうするか?ということを考えておくことが大事です。

どうしていいか分からなくなると、クライマーはすっぽ抜けで落ちるしかありません。

1)ビレイヤーが上がる
2)クライマーがどこかの支点にセルフを取り、ロープを引き抜いて懸垂で降りる

一番簡単なのは1)です。ビレイヤーが上がれば、良いだけです。日本の岩場は傾斜地にあることが多いので、ビレイヤーが、地面であっても上に上がれば、クライマーはその分のロープ長で安全に降りることができることが多いです。

■ ロープは60mを買う

あと、私のお勧めは、60mのロープを買うことです。

私は、60か50かの選択肢があったとき、50を勧められましたが、私は後輩には60を勧めます。

なぜなら、ロープは傷んだ端を切って使うことが多く、50m→45mとなったときに、あ、そういえば切ったんだった!というすっぽ抜け事故に発生することが多いからです。”前にこのロープでこのルート登ったよね”という思い込みが起こす事故です。

日本では50mで登れないルートはほとんどないから、というのが、50を勧められた理由でしたが、クラックやっていると、なんと”斜めの課題”があるのです!長方形の腸右辺よりも、斜めのラインのほうが長いことは数学で習いましたよね。

ので、まっすぐ上に登るばかりでないクライミング。60mあるほうが何かといいです。

ただし、10m分は重くなりますので、その分体力つけましょう。

Thursday, November 15, 2018

進まない整備

■新しい仕組み

日本のアクセスファンドの仕組みでは、岩場は整備が進まず、うまく行っているとは言えないようだ。

台湾の岩場では、AAAサーティフィケイトのクライミングインストラクターが整備や見回り、リボルトも含めやっており、ビールを飲めばリボルト基金になる、コーヒーを飲めばリボルト基金になる、ということで、とてもうまく行っている仕組みと思われた。ささやかなお金だから進んで出すし、端数が出た小銭も重いの嫌だから入れちゃう。イラナイモノを出すのだから、あまり負担にもならない。

ラオスでは、ゲストハウスを運営してその営利資金から岩場の整備費用が出たということだろう。地域の観光資源にもなっており、地域にお金を落としているので、地域貢献企業ともいえる。たくさんの外国人を集めている。台湾と同じことで、旅行中でイラナイモノはみんなが置いていくので、置いて行ってもらったもので、ほかの訪問者が成り立つという仕組みらしい。2度目に行ったら、余暇に読む本が増えていたり、ゲームが置いてあったりした。ヨガマット、私のは置いてきた。

ので、日本の岩場でも新しい仕組みを考えたほうがいいのではないだろうか?

庵はたぶん、ある意味日本の先行事例だろうと思う。

トップロープからリードへの移行

■TR->リード

”トップロープで登れたから登れるはず”というのは違うかもしれない。

トップロープで登れたら、ハイ次はリード、

とすると、リードに必要な”余力”が備わっていないかもしれない。

例えば、私が初めてリードした西湖の岩場のような”ハーケンでランニングを取っている5.8”を5.8がギリギリグレードの人に勧められるか?というと、勧められない。

少なくとも、私は後輩に勧めはしないだろう。落ちた場合に、ハーケンでは…(汗)。

足で登れる垂壁に、まだ手で登っている人でも、完登できるからリードでどうぞ、と言えるか?と言うと、中間支点が、その人にとって遠くない課題を選ぶべきだと思う。

というのは、私自身がそのような状態の時に、リードを強要されて、たぐり落ちしたことがあるから。たぐり落ちはもっとも危険。人工壁ですら危険だ。しかし、やってはいけないと分かっていても、クリッピングが遠ければ、バランスが悪化し、そうなってしまう。

またクリッピング体制を作る練習も必要で、トップロープであっても、リードを意識した登りをしていない状態から、いきなりリードへ進むのはいかがなものか?と思う。

リードを意識した登りを身に着けるのには、疑似リードが最適で、疑似リードをすっ飛ばしてリードしても、リードとトップロープがどう違うのか…
・ボルトを目指して登りルートから離れないという点や、
・クリップ体制を作ってからクリップすること、
・スタティックな動き
などの意識づけができないのではないか?と思う。

■ 万年セカンド

私の最初の師匠の鈴木さんは、どんなに易しくてもリードすることが大事、という価値観の人で、それは、万年セカンドを自分の会で作ってしまった反省から出た信念だったと思う。

いかに万年セカンドを作らないか?というのは難しい。

が、早すぎるリードで怖がらせることがマイナスに働くことは確実だ。

私も新人さんに、楽しくリードする経験を積んで、クライミングの楽しみを発見して欲しい。

そこへの移行は…? 言葉で言って聞かせるべきだろうと思う。

■ 事例

事例として自分を考えてみる。

私がリードへ進むのに、背中を押す後押しが必要だったこともあった…例えば三つ峠の一般ルートの隣あたりのやつ…登れないと思っていたら、登れた。岩田さんと登っていたころだ。初めてのクラックオンサイト。アイス5級のリード。

それらを勧めてくれた人の脳裏には、おそらく、私が思考しているようなことがあったはずで、私のリードを成功へ導くために、色々な計算があったはずだ。

それが非言語で言語化されていないのが、もっとも大きな弊害なのかもしれない。

それは、

1)そろそろリードできる能力が身についたという判断
2)適したルート
の2点に凝縮されるのだが、中身は

1)リードできる能力
・ムーブにゆとりがある
・たぐり落ちが発生しないゆとりがある
・足がきちんと使えている
・クリッピング動作が正しい
・バランスで登れている
・終了点でどうしたらよいか分からなくならない
・やってはならないことを分かっている(足をロープの下にいれると落ちたとき頭が下になるなど)
・1ピン目、2ピン目までは決して落ちてはいけないと分かっている
・トラバースでは降られる

2)適したルート
・支点が強固である
・支点がその人にとって遠くない
・終了点が強固である
・その人にとって難しすぎない
・フェイス、オーバーハング、スラブ、クラック、などのクライミングの要素的な部分で、その人の課題に適している(初心者はスラブから)

他にもあるかもしれない。

人工壁でのリードは、こうした要素一つ一つを、意識に落とし込むるためのものだ。人工壁では、トップロープができたら、すぐにリードに進んでよい。が、それは、こうした要素のうち、どれが意識づいていないか?を洗い出すためだ。そのために恐怖心が使える。

怖いということは何かが身についていないということだと思う。

■ 試行錯誤して学ぶ 

こうしたことを私は失敗を通じて学ぶ学び方をしていると思う…。

人工壁に通っていた時代には、だいぶ怖い目にあった。
二つの山岳会に入っていたが、人工壁時代を共にした会Aでは、危険な目に合わせて、それで辞めていく人はふるい落とす派、のようで、今考えても、よく初心者同士のあぶなっかしい落ちれないビレイで、バシバシ落ちていたよなーと思う。私はどっかぶり苦手で最初のころは最初のハングで頻繁に落ちていたからだ。ビレイしてくれていた人も初心者で、リードしたら終了点でどうしたらよいか分からなくなっていた。

一方の会Bは、暖かく見守る派で、私が絶対登れるからと自信満々の5.5ですら、先輩がちょんちょんとチョークをつけてくれた(笑)。信用されていない。この会では、私以外の新人は3年たっても5.10Aは難しいようだった。TRオンリーしかさせてくれない会だった。たぶん、怪我をさせたくないと思うとそうなるのだろう。つまり、先輩は誰も私のビレイヤーを買って出てはくれない。ので、こんなところに居たら一生リードできないと思って、やる気がある人は、ほかにビレイヤーを探し始めてしまう。結局、他会の人と組まざるを得なくなる。他会の人とは日常的にクライミングを共有できないので、結局、危険を排除しきれなくなる。

どっちも両極端で、危険を排除しきれていない。大事なことは、どちらにも陥らず、安定的な成長をすることだ。

(リードという行為に対して初心者時代)は、(ビレイスキルが確実な人…往々にして先輩)にビレイしてもらうべきだ。

ビレイが初心のビレイヤーと組むときは、ビレイがあやふやなので、クライマーは限界グレードには挑戦すべきではない。

それでもって、落ちても安心な高さに来たら落ちてみることも考えに入れる。落ちないクライマーとばかり登ると、ビレイヤーはキャッチ経験を積めないからだ。

■ 紙からSNSへ

以上のようなことは、私が思うには、昨今の人は、かみ砕いて教えないと、多分、分からないのではないか?と思う。

分からないヤツは来なくていい、という排他的な態度ではなくて、たぶん、どこかに書いたものがある、読みたい人は読めるというのが大事なのだろうと。

というのは、昔の人に話を聞くと、みんなたくさん山書や雑誌を読んでいたらしいからだ。読んで自然に理解したのだろう。

しかし、現代では、だれも紙の本を読まない。読むのは、SNSかブログ。情報の伝播の仕方が違ってきているのに、山の世界では、それに追いついていないだけなのかもしれない。

■ 関連記事

リードへ進ませる要件

頑強な男性でも1ピン目でたぐり落ちしている事例

Wednesday, November 14, 2018

摩耗したカラビナの事例


これだけすり減ったカラビナでロワーダウンするとロープが切断される危険性がある。
極力、使わないようにして下さい。

Tuesday, November 13, 2018

リードについて

■最初に習ったこと

1)リードしたくない人にリードさせてはいけない

2)リードクライマーは、悪いビレイでは登れなくなることがある


3)ビレイヤーは装備の一部

4)ビレイヤーのセルフビレイはパーティ全体の最後の砦

ビレイは重要です。ビレイ技術は、クライミング技術(ムーブや逆クリップしてはいけないなど)とは、別個の技術で、ほとんど語られていませんが、

今落ちたらどうなるか?

という想像力があれば誰でもすぐ分かる。(それが昨今、教育の質の低下で分からない人もいるようなので、かみ砕いた説明をした方が安全です)

アルパインでは落ちることは死を意味します。

ので、墜落を前提としてボルトが打たれているスポーツクライミングをしない限り、墜落を止める経験は積めないので、昔からやっているアルパインの人で年配のクライマーは落ちたクライマーを止めた経験がゼロの人もいます。そういう人のビレイは、かなり危ない。だらりん&後ろに後退しすぎています。

ので、リードするときは、相手(ビレイヤー)を見極めてリードしないといけません。

クライミンググレードが高いからといってビレイがいいかと言うと、そういう関係にはなく、ダラリンの人も多いです。握れば止まる、というのも嘘です。止まっても下のテラスに激突すれば、グランドと同じです。

自分の命を守るのは、落ちたらどうなるか?という想像力と、Trust But Checkの力。

Friday, November 9, 2018

自分が作った課題で人が死んだら?

自分が作った課題で人が死んだら?

どう思うのだろう?と、ふと思った。

初登者には、率直にすごいな!と敬意を感じる。が、基本的に山登りは楽しくてしているため、すごい!と言ったところで、それは自分が楽しくてやったまでのこと、でもあるだろう…。

ピオレドール賞を取るようなクライマーも、フリーソロのクライマーも、楽しいからやった、と皆、口をそろえている。

そこには他の人のため、という視点はない。利他や愛他の精神は存在しない。

別に悪いというのではない。

ただ自分が楽しいからやっているということなだけだということだ。

自分の作った課題で人が死ぬ、ということは、クライミングだから当然ありうる。それを考えない課題設定者はいないだろう。

さてさて…

1)ピンのランナウトは、再登者に舐められないため、だそうである。

2)グレードの辛さは、東京方面の再登者に舐められないため、だそうである。

よそから来た人が、その課題を登って

      「簡単だな」と思われるくやしさ vs 命の重み

では、 前者が勝ったということで、それは明らかにエゴイズムの勝利であるように思われる。

そのような愚かしさのために、例えばランナウトで死んだ人がいたとするなら…?

それこそ、犬死というものではないか? 他人の自己顕示欲のために死んだということなのだから…

先駆者や開拓者には栄誉が与えられよう…が、そこには義務も生じるはずである。

後に続く人の安全を守るという義務が。

日本では強者の権利ばかりが主張され、義務のほうが守られていないように思う。

権利があるところ、責務もある。責務を果たしていないで、権利ばかりを主張するのは、いかがなものだろうか?

Tuesday, November 6, 2018

クライミングにおけるリスクの段階的理解

■ クライミングにおけるリスクの段階的理解

1)初心者のころ

トップロープがリスクが最も少ないということも知らないので、単純に高いところに登るだけで怖い。本人は登っておらず、実はロープで引き上げられていることが多い。

2)脱・初心者のころ
クライミングのムーブが少し身について、アレ?登れるかも?な状態になる。

怖いビレイが何か?も知らず、トラバースが危険とか、リードがより危険とか、ハーケンはただの飾りで、当てにならない、とかも、知らないので、かなり危険なことを平気でしてしまう。この期間はかなり長い。

3)クライミングでやってはならない失敗を一通り経験すること

その無知のために、ロープに足を絡めてリードで落ちて頭が下になるとか、逆クリップで落ちてロープが抜けるとか、グランドスレスレで床から50cmで止まるとか、同レベルのクライマーの友人が落ちて死ぬとか、”事件”が次々と起こり、クライミングの危険が何か?について理解が深まる。と、ともに恐怖心が生まれる。

自分がいかに危険なことをしていたか?とビックリ仰天する。死んでいないことが奇跡だと理解する。

今まで平気でスイスイ登っていたところを慎重に登るようになる。

4)ビレイヤーを選ぶようになる

限界にチャレンジしたいと思い始めるが、ビレイヤーが問題で限界にチャレンジできなくなる。巷のほとんどのビレイヤーは、信頼に値しないことが見極められるようになる。自分が落ちないクライマーの人や落ちた人をキャッチした経験がないビレイヤーは、基本的に信頼できるビレイヤーではない。また前に引かれて自分が危険な目に合うなど、自分自身を守る必要も考えられるようになるため、自分自身が良きビレイヤーに成長する。ダラリンビレイとぱっつんビレイの使い分けができるなど。

5)お茶を濁しつつ登る時期

結局、ビレイヤーが問題すぎて限界にはチャレンジできないので、”ダメビレイヤーで安全パイを登る”ことになり、欲求不満で、楽しくないが、その分クライミングの安全マージンは増える。落ちれない。

・・・と私の場合は、まだクライミング歴5年目ですので、ここまでしかわかりません。

ひとえに私がまだ生きているのは、落ちないところしか登らないから、です。

■ 登攀力でクライマーを計ることについて

私は登攀力一気に上がった時がありましたが、それは分かりやすいように、クライミングジムのグレードで言うと、8-7級がムーブを使ってスイスイ登れるようになり、6-5級がちょうど良い難しさ、4級だと登れないのがほとんど、というような状況です。それで3年目くらいだった。(外岩は、5.9がオンサイトできたくらいでした。私はゼロ初心者当時の実力は、5.8RPです。これは大体の初心者と同じです)

男子は腕力があるので、ムーブなしで、初日に6-5級の課題は、ジム課題であれば登ってしまうと思います。なので、たぶん、素人でも、外岩5.9のオンサイトは、初心者レベルでも可能なのだと思います。

一方で、日本では、5.9と言っても、岩場によってその難しさが様々で、昨日のクライミングでは、5.9に5.12RPしている男子が、テンションしてしまいました…。岩場によっては、5.9って、2グレードくらい辛いみたいです…、つまり5.10bくらいはあるって意味です。 

したがって、登攀力が上がって、5.10bがRPできるくらいでも、ある岩場では、5.9がやっとこさ、という時代が長く続くということです。

日本では岩場間でのグレード競争が、グレーディングの統一性を失わせているので、その点で、グレードが命を守るための目安として機能しておらず、グレードで取りつくとえらい目に合います。ひどい目に合うだけならいいのですが、グランドして、大怪我したり、下手したら死につながります。

RPで登攀力が上がっても、なかなか、それを(オンサイトにトライしても良いグレード)にイコール関係で結びつけることが難しい。

例えば、5.12RPだったら、2グレードマイナスした5.11bだったらオンサイトトライできるのでは?とは言えない。

とくにランナウトという問題がある場合、それを難しくしています。

日本の外岩は、なかなか死のリスクを排除することが難しいです。

昨日も、私が目視で、「これなら登れそう!」と思った課題がありましたが、先輩が毒見してくれました…。

毒見した結果、ホールドが悪く、これが私が初見リードで取りつくと、かなりやばかっただろうという結論になりました。

なので、リードで取りつきたいと思って、本当にそうしていたら、今頃死んでいたかも?です。

適正なグレーディングをする、というプロジェクトが日本中に広まれば、話は違うかもしれませんが、日本の岩場は、そのような状況なので、岩場をよく知っている人に最初のうちはトップロープを張ってもらうということが必要になります。

トップロープで岩場の癖やグレード感覚を養ってから、あとでオンサイトする、ということですが…そうなると、あんまり冒険や未知の要素が楽しいというタイプの人には、トップロープを張ってくれる人がいないと、岩場が楽しめないみたいなことになって、その割に課題が難しくて、肉体疲労は激しい、ということになるかも???


Friday, November 2, 2018

アルパインクライミングがどれくらい難しいことか?

最近、私は初心者と登る機会が2度ありました。彼女は私が初心者で始めた年齢より、うんと若く24歳です。(私はクライミングを始めたのが42歳。登山38歳)初心者と登ると、同じグレードを登っても、内容に大きな差があることが分かります。

5.9を初オンサイトした時、先輩に「フリーはこれからだね」と言われましたが、それがスタートして2年後です。

彼女と同じスタートして3か月目にも、5.8をリードしていますが、かなり怖かったです。これがまずは私のスタート地点の能力として、私の成長スピードというのは、私をインスボンに連れて行ってくれた師匠がいうには、ごく標準です。遅くない。スタートで5.7が登れ、5.8はギリギリ、から、5.9をオンサイトするまでに2年。今は5.9は登れて当然でしょう、という感じですが、RPだと5.10c、TPでは11がラッキーで登れるくらいで4年もかかっています。私は元々文系型でアスリート型ではありません。現在は5年目。


私一人の成長事例では、標本数少なすぎますから、隣の事例と言うことで、もっと強い5.12を登る先輩だと、もともとアスリート型でクライミングに有利であっても、5.12をRPできるまで10年。スタートが高くても、結局、じんわりとしか成長できないのは一緒なのです。

例えば、11が含まれるマルチピッチのルートなど(例:白亜スラブ)は、12を登るくらいのゆとりを予め作って、登らないと、”安全”にならないです。それは、設置されている支点が当てにならないため、全力自分の力だけで(これをフリークライミングという)で登るためには、要するに支点がゼロで登るだけの技術が必要だからです。ということは、11が1ピッチでも含まれるルートを登れるためには10年が必要と言うことになります。

私の場合は今は、5.7だったら決して落ちないので、5.7が完全フリーで登れるのに4年かかっているという話です。

これは、支点やロープ技術、ルートファインディングの習得を別ばなしにしての話です。なぜなら山ヤはこれらができていて当然だから、初心者の時に猛特訓を受けることになっているからです。(が、これらの技術は、ほとんど、宝の持ち腐れ技術です。でも、出番がないほうが良い技術ですが…)

というので

私のような一般人で、4,5年努力しても登れる本チャンはささやかなルートですし、
ましてや、白亜スラブのようなルートが登れるには、10~12年程度の修行期間が必要なのです…

こんなに長い修行期間が必要なので、アルパインクライミングやマウンテニアリングを志向する人が減っても仕方ないかなと…。

なにしろ、楽しみが遠すぎます…

私は独学しましたが(馬目さんも独学だと言っていました)、独学は個人間で能力差が出ます。独学に慣れていない人は、何からスタートしていいかすら分からない。となると学習環境が、どうか?ということが、競技人口を左右すると思いますが、山岳会の衰退で学習環境は悪化の一途。ということは、人口は減る一途。

ということで、理解がだいぶ深まりました。

誰でも、命を落とすのは嫌なので、「支点が強固に整備されたルートを頑張ることにします」となると、スポーツクライミングもしくはフリークライミング、をすることになります。実際、この2分野では人口増えている。

・習得に長い時間がかかる割にご褒美が小さい
・危険
・危険を回避する方法がない
・教育機関がない

がマウンテニアリングを衰退させた原因となっています。