「初心者は何が分からないのか、分からない」
と言われます。私が興味があるのは、そこです。
どうやったら、何が分からないのか?分かってもらえるんだろう?
何が分からないのか?=自分の課題。
自分の課題を分かっていれば安心です。自分が何が分かっていないのか?分からないみたいなので、それが心配を呼び起こします。
分かっていないことを分かっていないのが一番のアルパインのリスクだから、です。
■ 何がかつて分からなかったか?という経験知
登山は、経験知、というものがとても重要な活動です。経験から学ぶこと。そこが私が登山を面白い!と思う理由です。
私は登山者としてはまだ4年の経験しかなく、経験値が低い。経験知も、蓄積がない。
しかし、私は、去年、自分が達成しよう!と思ったことは達成しました☆
それは、クラミング力が、どうこうというようなことではなく、アルパインクライミングに対する理解度、というようなことです。
何が分かれば、分かったと言えるのか? それを一言で言えれば問題ないのですが、難しい。
去年一年、初心者のアルパインクライミング1年生として過ごしました。去年の今頃は、大きな決断をしました。その頃の理解度と比べ、本当に成長したなぁ…(笑)。
ただ、その成長の中身ですが、理解が進んだというだけで、去年の私と今の私は、クライミングスキルや体力など、一般的に人がスキルと認定するようなことは、ほとんど何も変わりません。一般登山の知識(天候やギア関係)もほとんど変わっていません。
じゃ何が変わったのか?
後に続く人や今リーダーで教えている立場の人の参考になるかもしれないので、重要事件をまとめておきます。
分かりやすいように、自力をピンク、他力を青、対等のパートナーとはオレンジにしました。
■ 重要事件のビフォーアフター
≪クライミングを始める前の前史≫
1)2013年4月20日 乾徳山
何をしたのか? → カラビナ懸垂。1ピッチ
2)2013年4月~10月 大町の山岳総合センターでのリーダー講習会 トータル3回
何をしたのか? → 雪上でのスタカット、懸垂下降
沢でのロープワーク、徒渉でのフィックスロープ
スタカット、ハーケンによるランニング、立木にタイオフの支点
岩場でのスタカット(シングル)、懸垂下降、ザックによる搬送
セカンドのビレイ、3分の1引き上げ
3)2013年6月ごろ ロープワーク講習会を講師を招いて主催
何をしたのか? → ムンター、クローブヒッチ、プルージックなどの結び目の確認
宙吊りからの脱出、ロープ径によるフリクションの違いなど
4)2013年6月23日 芦川横沢 沢登り
何をしたのか? → 懸垂下降で敗退の練習。空中懸垂 2級の沢での登攀
- クラミングジムに通い始める。
- このころ奇特な先輩に、ジムで墜落してもらってビレイを体験する。
- ロープワーク(結び目等)は、このころマスターした。
≪本格的な登山へ移行する≫
- クライミングジムに加え、人工壁通いを始める
- 人工壁はトップロープを終わり、リード練習へ進む
- マスタースタイルへ
- 小瀬の試験に合格する
- ビレイはマスター
- 地図読みをマスターした
1)2013年7月26日 三つ峠天狗岩で、山の師匠に出会う
2)2013年11月30日 山岳総合センターでのリーダー講習会参加を辞める
その時点で何が分かったか? → 登山には継続的な仲間が必要なこと
(講習会で集まるメンバーは一時的な集まり)
登山には技術だけではなく、信頼関係が重要だということ。
3)2013年12月5日 阿弥陀中央稜で、セカンドの確保を行う
何が分かったか? → ビレイ点とビレイヤーの位置関係。
ムンターでのビレイとATCでのビレイ
4)2013年12月8日 南沢小滝のアイスクライミングで、初めてビレイを行う
何が分かったか? → 体重差があると小柄なビレイヤーは振られて滝に激突すること
クライミングが上手な人が安全な登山者とは限らないこと
初心者に初心者の立場がどういうものか?を説明せずに、
ギアを貸してはいけないこと(ずっと借りるものだと誤解してしまうから)
説明がないと依存者を作り出してしまうこと
トップロープのビレイの仕方、ローワーダウンの方法
アイスのビレイで凍傷になること
5)2014年1月10日 茅ヶ岳東尾根 単独 無名尾根を下降
何を達成したか? → 単独つまり全部自分の力だけでの地図読み
地図読みでピンチに陥るかも?という恐怖心の克服
6)2014年1月12日13日 金ヶ窪沢アイスゲレンデ練習、広河原沢左俣アイスルート
何が分かったか?→ アイスでのマルチピッチ、リード、フォローは固定のセカンドでの
ルート。
セカンドの役目。
バリエーションルートではアプローチが難しいこと
バリエーションルートは初見で行くことが一般登山より難しく、
危険が大きいこと
7)2014年1月18日 十二ヶ岳の岩場 アイゼントレーニング 初めての岩
何が分かったか? → ハンギングビレイが分かった
つまりビレイヤーのアンカーが重要だと言うことが分かった
ショートピッチで10aくらいの箇所で落ち、先輩に墜落を止めてもらった
8)2014年2月5日 中津川滑沢
何が分かったか? → 初めてセカンドでミニ墜落。ビレイがあって助かった。
懸垂支点のバックアップの取り方 前の懸垂ロープをバックアップに
使っても良いこと 自然地形での支点
9)2014年3月1日 醤油樽の滝アイスクライミング
何を達成したか? → アイスでのリード練習 セカンドの確保はまだやらせてもらえない
10)2014年3月12日 シャクナゲ尾根からニュウ
何が分かったか → 地図が読めてもルートファインディングが核心で突破できない
リスク管理では冬山の単独テント泊(ビバークの代わり)が課題
11)2014年4月5日 三つ峠 屏風岩
何が分かったか? → ダブルロープでのセカンドとしての登攀
トップはクライミングだけで精いっぱいのこともあるので
余裕があるセカンドの人はサードの人用に支点をロープに掛け変えてあげる
など、次のクライマーへの配慮を常にすること
岩では、懸垂下降で特定の箇所でよくロープがひっかかるなど、
経験知が重要だということ
懸垂など、ロープワークでは常に手伝う
12) 2014年5月18日 十二ヶ岳の岩場
何をしたか? → 初めてロープワークを人に教える
初めて岩をリードする(5.8のフェイス)
13) 2014年5月22日 小川山屋根岩2峰
何をしたか? → 5.9の登攀セカンド
セカンドの確保 (ムンターで)
懸垂下降 (カラビナ&ムンターで)
14)2014年5月25日 小川山八幡沢 春のもどり雪
何をしたか?→ 5.8のスラブのリード
複数ピッチの懸垂下降
15) 2014年6月22日 十二ヶ岳の岩場
何をしたか? → 自立したクライミング
シングルでのリード・フォローをつるべ
ロープが重くて引かれると登れないこと
16) 2014年6月29日 春のもどり雪
何をしたか? → 自立したクライミング シングルでのリードフォロー
ロープが重くて引かれて登れないと怖いので、シングルにした
17) 2014年7月12日 三つ峠天狗岩&屏風岩
何をしたか? → 自立したクライミング シングル&ダブルでのリードフォロー つるべ
コールが課題
ロープジャミングが課題
18) 2014年7月13日 春のもどり雪
何をしたか? → 自立したクライミング シングルでのリードフォロー つるべ
19) 2014年8月4日 カサメリ沢
何をしたか? → 先輩がリード中フォールして、墜落停止
自分が滑落
20) 2014年8月13日 三つ峠マルチピッチ
何をしたか? → つるべ ダブルが流れない事が課題だと確認
21) 2014年8月23日 太刀岡山左岩稜
何をしたか? → 相方、ダブルでロープが流れないことが課題だと確認
22) 2014年8月24日 ズミ沢 沢登
何をしたか? → リーダーでの沢登り 易しい滝の登攀
小さい意味でのルートファインディングが課題であることを確認
自分でリスク管理して行ける、自前沢の達成!
23) 2014年10月4日 十二ヶ岳の岩場 教える側
何をしたか?→ 初心者へのロープワーク講習
スタカットでの登攀 リード
24)2014年10月10~13日 前穂北尾根本チャンデビュー
何をしたか?→ 地図読みで可能な山(北穂池)とルートファインディング核心(本チャン)の
違いの理解
ロープを出す場合が、どのような場合か?を理解
ガイド登山者→5,6のコルからロープ
山岳会 →3峰のみ
山の総合力とは何か?を理解
↓↓↓
GOAL!!
■ 考察
こうして考えてみると 一般登山者から、本格的な登山者への一歩を踏み出すには、
- リスク管理能力(天候判断、進退の判断、生活能力、行程の管理力など)
- 体力
- 地図読み
- ロープワーク
- 確保技術
- 登攀力
が必要ですが、どれか一つだけを学ぶと言うよりも、それぞれを意識した山行を、つづれおりに
入れ込むことが必要なのかもしれません。
- リスク管理能力: 一般縦走を自分一人の力でできるようになることで身に着ける
この能力がない人は、本チャンには連れて行かないという割り切りが必要になるかもしれません。リスク管理能力は、山に登る一人一人が理解すべき最低限のところ。
単独で山を歩けないということはどういうことか?というと、パーティを形成し、一定の役割を担い責任を担ってくれても、リーダーがピンチに陥った時に、判断する機能がパーティにゼロになってしまう・・・ということです。リスクの取り方を練習してこないといきなりピンチになります。
これは最低限の自立で、本来は普通のことであり、自立ともいえないようなことなのかもしれません。
- 体力: コースタイムを下回らないこと。山のサイズ的には大きければ大きいほど良いが、積雪期赤ア岳がベンチマーク。無雪期は一人で数日のテント泊縦走ができるくらい。
- 地図読み: 道なき道を行くことが本格的登山の始まりなので必須技術。徐々にしか身に着けられない
- ロープワーク: 結び目は自学自習する事柄。
- 確保: 確保力は登攀力以前に必要。
- 登攀力: 無ければ、どこにも行けないので、自分で上げていく努力が必要
山の総合力と言った場合、進むか、退却するか、の判断が的確であること、がその中身です。
このことには、決断力以外に、山の様子を見る目、つまり、観察力、というものが加わってくるように思います。
例えば、沢で、増水していてもOKな時もあります。そういう見る目は現場でしか養えない。
そうしたものを軽視する登山者は、経験者の同行を軽視します。が、経験者は、実に様々なサインを山から読み取ることができるものだと思います。
経験者が読み取っていることを読み取ろう、という意識が、あるかないか?が、ただ着いていくだけ人と、経験を積み重ねていく人の差なのかもしれません。
ガイド登山であっても、ついていく人の意識レベルが高ければ、そこから経験を積み上げることができると思います。
しかし、漫然とただ着いていくだけだと、何年蓄積しても、経験値も上がらず、経験知もつかない。
そこを分かってもらうのが、一番、分かってもらうのが難しいことなのかもしれません。
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