ビレイについては、たとえ名前が売れている講師についたとしても、きちんと教えてもらうことは難しい・・・。
最近ある有名講師のビレイ講習ビデオでのミスを指摘してもらった。
最大の問題は
ビレイができることが、岩に行く必要最低条件
だということを教わらない新人が多いということだ。ビレイができなくても、まぁ最初はトップロープだから、と連れて行ってしまう。
そうやって、トップロープが普通のこと、ビレイは誰か他の人のがやってくれるのが普通のこと、として、連れて行ってしまうと、
・ビレイは連れて行ってくれる人(主催者)がやってくれるもの
・岩はトップロープで登るのが普通のこと
という感覚を育ててしまう・・・。
この誤解は、イベント的に登っている場合には、山岳会、商業的なクライミングイベントを問わず多い。
”登りに行く”のだが、”登るため”には、”ビレイ”ができないといけないのだ。
■ ビレイヤー不足の現実 ・・・「落ちないからいいだろう・・・」
・・・が、実際問題としては、・・・私にも経験があることだが・・・、あてにならないビレイを受け入れ、
「まぁ落ちないから、いいだろう」
と登ることが多い・・・。私自身、落ちれないビレイを受け入れて登った経緯は少なからずある。もちろん、自分が落ちないと思っているところしか登らない。
落ちれないビレイを受け入れて登ることは、ビレイヤーにとっても、クライマーにとっても、Lose:Loseの選択肢だ。
落ちないから、良いだろうと思っている間に、うっかり落ちてしまい、それをビレイヤーが停めれなかったら、そのビレイヤーにとっては一生の心の傷になる。
落ちる落ちない、の判断は、Ⅳ級であっても、外の岩では、やはり外的要因もあるので、不確定だ。
例えば、ホールドは欠けることがある。
私のパートナーは、彼の登れるグレードでは落ちないハズのところだが、ホールドにした岩が突然欠けて、落ちた。その石は、私をめがけて飛んできた。停めたけれど、もし初心者だったら、ラクにビックリして、制動手を離してしまうかもしれない。
制動手は、何が何でも離してはいけない。
■ グリップビレイの害 ベテランの場合
以上は、初心者のビレイについての話だが、たとえ講師を務めるような、ベテランと言えども、ビレイが確実かどうか?の目安にはならない。
グリップビレイになれてしまったベテランは特に要注意かもしれない。
クライマー側と制動側のロープを同時に握ることは、厳禁なのだが、グリップビレイをしたことがある人にとっては、正しい操作のように感じてしまう。
これを高難度グリップビレイと呼ぶ人もいるそうだ。かなり危ない!!グリップビレイは、正式なビレイとは今の時代言えない。もちろん、アルパインのルートでは、グリップビレイで十分と言える場所もあるかもしれないが、それはシビアではない場所のことなのだろう。私はまだ見たことがない。
グリップビレイでは、両方のロープをまとめて握る。
このビレイスタイルは、制動側のロープが上にきてしまう。
・ロワーダウンでのすっぽ抜け、
・懸垂下降でのすっぽ抜け
と同じである。制動手側は、かならず、S字にロープを屈曲させていないといけない。屈曲さえあれば、強い力がなくても、ロープは止まる。
大事なことは、手とロープの摩擦ではなく
屈曲
だ。
私の知り合いでは、山歴40年のベテランがいる。しかし、外岩では何で確保していたのかというと、ムンター(汗)。そもそも確保器を持っていないのである。
それでクラックも登っているからアッパレであるが・・・現行主流になっているATCガイド型の確保器をもっていない。
そう言う場合は、新人さんと変わらないかもしれない。もちろん立ち位置などは信頼できると思うが。
■ 懸命すぎても
新人さんの場合は、悪いお手本を見てしまったのだろうか・・・前の会では、残念ながら、何度指摘しても、両手が確保器より上になって確保している人がいた・・・(汗)。その方は、悪気がない。というのは、懸命にクライマーを見ていたからだ。
クライマーを見ることは大事だが、両手が確保器より上になっている状態で、いくらクライマーを見てもダメはダメだ。
そして、制動側の手が、確保器から遠かった。
制動側の手は、ほとんど確保器に添える
くらいで良い。
その方はなぜか、墜落を止めるのは、制動手側ではなく、クライマー側のロープの自分の手のグリップであると勘違いしているようだった。
たぶん、ロープを繰り出す時、左手(クライマー側)を優先させるからだと思う。繰り出しでは、当然だが、制動している手を上に持って行かないと、ロープが出ない。
逆に言えば、繰り出しているときに落ちたら、ロープが流れてしまうので、アブナイ。
■ ローワーダウンのミス ・・・ロープは流れ出したら止まらない
一度、だいぶ長いルートで、先輩がテンションと言ったのに、聞えないことがあった。
しかるに、私はまだテンションしておらず、先輩がローワーダウンでテンションした瞬間に、ロープがするする・・・と流れ始めた。
一瞬で理解し、すぐに握ったため、ロープのスピードが付いておらず、事なきを得たが・・・
この時は、
流れ出したロープを握るのは難しい
事を理解した。それ以来、
ローワーダウン時のテンションのコール
には気を使っている。分かっていても、他にも人がいるルートだったりで、コールが聞こえないということはある。
自分がクライマー側で、テンションするときも、
立てるところで、テンションを感じてから
しか、体重を預けない。
■ ATCタイプで確保を覚える vs ブレーキアシストの確保器で覚える
確保は大抵の人は、ATCタイプで覚えると思います。
私は、2穴のバケツタイプを買ったら(シングルロープだと径が太く、ATCガイドタイプは流れが悪く使いにくい)、師匠に、リードする気がないと目され、非難されてしまいました(涙)。
リードするつもりがあるかないか・・・は、山屋教育上重要課題ですが・・・フォローしかするつもりのない人は、おそらく依存的な人なので、自己責任を原則とする山には行かないほうが良いと思う・・・のですが、それとは別の問題があります。
初心者は、ATCで確実なビレイを覚え、グリグリなどへ進むべき
ということです。
グリグリ2やクリックアップ、あるいはマムートのスマートなどは、確保の保持の仕方は同じですが、手を離しても止まります。
つまり、オートマ。 とすると、ATCは、マニュアルと言うことになります。
どちらから覚えるのが易しいか?というと、オートマのほうかもしれません。
初心者にはブレーキアシストの確保器をもたせるべき
なのかもしれません。
■ ビレイヤーを選ぶ責任 ・・・トップロープとリードは違う
初心者は知らないとういうか、教えられていないことが多いのですが、
ビレイヤーを選ぶのはクライマーの責任
です。
会にいると、なんとなく、未知の相手と組まされたりもします・・・その場合はトップロープでなら、ほとんどの場合大丈夫です。
リードになると、ビレイはシビアです。
繰り出しが遅いと登りづらいですし、1ピン目から3ピン目までは、余分なたるみがないようにビレイしてくれないと墜落した時にグランドしてしまうかもしれません。
また立ち位置の基本は、1ピン目の真下です。
こちらの記事は私の2年前の物ですが、基本をまとめています。
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2014/05/blog-post_16.html
■ タイトな繰り出し
私自身は、タイト目に出してくれているビレイヤー(繰り出しが遅めに感じられることが多い)は、初回であれば、好感をもっています。
特に、1~3ピン目までであれば、クライマーが引いてから、ロープを出すくらいでも、繰り出しが遅い!と怒鳴る気にはなれません。
落ちるときは、低い位置では落ちてはならぬと思っていますから、低い位置で落ちるようなら、そのルートには登らないです。
低い位置で落ちるとどうなるか?ロープには伸びがあるので、その伸びの分でもグランドする可能性があります。
また、低い位置のフォールを止めるのは、ロープを一瞬で手繰らなくてはならず、非常に難しいです。
■ クライマーの責任を取った経験・・・1ピン目でのフォール
初心者の頃、一緒に成長して行きたいと考えていた相手で、1ピン目で落ちる人がいました。人工壁です。大急ぎで手繰って、問題なく止めましたが、その方とは登れないな、とその時、判断しました。
1ピン目で落ちるようならリードで取り付いてはいけないのです。落ちるくらいなら、他のホールドを持ったりしても良いくらいです。
その方は、勉強不足でしょう。ビレイについて知らないから、自分がクライマーになった時も、1ピン目で落ちてしまったのでしょう・・・。というか、普通は自分がクライマーになっときこそ、落ちたらどうなるか?ということを真剣に考えるものです。
私も当時初心者ですから、無条件にビレイを信頼し、落ちてはいけないと、勉強さえしていれば分かるところで落ちる、ということは、これは生き方の問題だと感じ、一緒に組むのは今後難しいと思いました。
無条件の信頼というものは、誰にとっても負担です。たとえ、ベテランでもです。
安全は、クライマーもビレイヤーも共同責任
で守るという意識が必要です。
安心の内容は、実績に基づいたものでないといけません。
というわけで、その方とは縦走もしていたし、しばらくジムにも一緒に通っていたので、時間の投資もあり、もったいないと思いましたが、泣く泣くあきらめました。
これがクライマーとしてビレイヤーを選ぶ責任を取った最初に事例となりました。
(もちろん、一回の失敗で、判断してしまうのは良くないことです。この時はすでに理解不足だけでなく依存が起きていることが分かる事例が3回目でした。)
■ 推理
ビレイヤーとクライマーの間には、色々な推理があります。
例えば、他の人と登らせないという措置を取っていたら、それはその”他の人”、つまり登る可能性のある人たちのビレイやリスクマネジメントが危ない、という意味です。信頼できない相手に、自分のパートナーを任せる気にはなれないハズです。
ある時は、クライミング歴5年と言われて信頼していたら、リードのビレイで引っ張り落とされそうになったことがありました。
その後、その人のリードを見ていたら、ヌンチャクを引っ張ってリードしていました。つまり、自分でリードして登るフリークライミングではなく、トップロープで登らせてもらうタイプのクライミングを5年していたという意味だったのでしょう・・・。
ある人がクライミング歴3年と言うから、尊敬していたら、流動分散を今習っていました。・・・ということは、今までリードで登っていないという意味です。ということは、その人には、リスクマネジメントはできないだろう、と言う意味です。
こんな風に色々と行動から分かることがあります。
■ 一番安心なのは自分が育てた人
どんな人とも初回はあります。その時、未知数なのはビレイのスキルです。
なので、一番安心なのは、
自分が育てた人
です。何を知っており、何を知らないか?ということは、
自分が何を教えたか?
のそのままの反映であるからです。
したがって、登りたいクライマーは、人を育てます。育てられる方は、それに答えて、
安心して登れるビレイヤーになる、
それが大事なことです。それ以上にクライマーとビレイヤーの信頼関係は必要ないと思います。
互いが互いの命を守り合っている、ということをしっかり理解する、
ということが一番大事です。
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