■ ロープワークは身に着けやすい
さて、
・地図読み
・ロープワーク
が、2大登山技術ですが、いかにロープワークを身に着けたか?と言う話になりますが、これがまた、イバラの道だったなぁ・・・と思う訳です(^^;)、ハイ。
しかし、ロープワークは、確実に誰もいなくても教わることができる技です。地図読みより、ある意味ラクです。
ロープワークには、やり始めてから自信がつくまでに、1年半かかりました。
リーダー講習でならってすぐの記録
まだ岩二回目のころの記録
カラビナの掛け方くらいで躓いている頃
ガチ山一年生の頃の記録
何から教え何から学ぶべきか?
■ クライマーがロープワーク上級者とは限らない
ロープワークのニーズとして、クライミングはしないと決めている人には、心ならずも、ロープワークは、クライミングをすると決めている人以上の技術力が要ります。
・クライミングする人 → ロープワークは、初級で済んでしまう
・クライミングしない人 → ロープワークは、熟練の技が必要
理由は、クライミングする人は、簡単に済ませることができるギアを持って行動しますが、しない人は同じことをギアなしで実現しないといけないからです。
特に山岳縦走などで、万が一の時に使える技・・・となると、”その程度でいい”という話ではなく、”それが一番難しい”という話になります。
結果、 クライミングが上手な人は必ずしもロープワークが安全確実な人ではない
となります。
■ 転機となった言葉
1) 何はなくともセルフビレイ
2) ビレイができないと岩には連れていけない
3) 5級マスター
これらの言葉が、成長の強い動機となりました。
私は岩登りは最初から余り乗り気ではなかったのです・・・山岳総合センターのリーダーコースには、
・アルパインコース
・縦走コース
の2つの選択肢があり、到達ラインも違いますが、そのうち、縦走コースを選んでいたくらいです。
(縦走コースは3人しか人がおらず、アルパインコースにまとまってくれると助かるなぁという後押しがあった)
最初は、夫と行く雪山の縦走で、いかに夫を確保するか?ということを目的に出ていたのでした・・・。
しかし、理解が進むにつれて、縦走でロープを出すほうが、クライミングそのものでロープを使うより、数段難しいということが分かるようになりました・・・(汗) 何しろ、縦走路には支点が整備されてはいないのです。
さて・・・話は元に戻りますが、私は、クライミングは下手くそで、なおかつ心配性で怖がりなので、
何はなくともセルフビレイ
が、最初に自分を守る言葉として、盾になってくれました。セルフビレイさえ出来ていれば、少なくとも墜落死はありません。
・雪の急斜面でも、バケツを掘ってセルフをとらないと叱られます。
・またアイゼン歩行練習でターンするとき、自己確保を取らないでやっても叱られます。
これらは、山岳会の行動を見ていると、新人さんへの遠慮や媚から、言わないで済ませられています。でも、ここは厳しく決して譲ってはいけない部分ではないかと思われます・・・命を守る習慣をつけるのが大事です。
ビレイができないと岩には連れて行けない
ということは、講習会の雪中テント泊中に聞きました。私はその時、まだ人工壁も触ったことがない丸っきりのクライミング無知でしたので、ビレイが何かもさっき習ったところ。
それでも、ビレイがクライマーの命を守ることだ、くらいは分かっていました。ビレイができないビレイヤーなんて、ビレイヤーではありません・・・。
その後、南沢小滝でのアイスクライミングが私のビレイ初体験でしたが、上から両手とも制動側のロープを持ってローワーダウンしろと叫ばれ、「すみません」と返しました。フリーのゲレンデに行くようになり、周囲を見ると、そんな丁寧なローワーダウンをしている人なんて、ほとんどいません・・・。
その後、スポーツクライミングを毎週の活動にしている会に参加して、ビレイをマスター。スポーツクライミングでは、みんな平気でじゃんじゃん落ちているからです。
5級マスター
は、クライミングを常習するようになってからの、心の支えです(笑)。 フリークライミングは、上には上がいる世界で、クライミングだけをするようになると、山に行けなくなってしまいます。
しかも、日本の山岳エリアでのクライミングは、5級までしか出てこないのです。
クライミングには、
・ムーブ解決して、一本の難しい課題を一回コッキリでもいいから決める
・いつでもスムーズにある程度のクライミングがこなせる
の二つのベクトルがあり、フリークライミングは前者です。5.12が登れる、などの世界です。平山ユージさんをクライマーだと人は思っても、登山家だとは思わないでしょう。
後者は、アルパインクライミングの世界です。アルパインでは、ハングドッグしてムーブ解決などしていたら、その間に凍てついてしまいます。アルパインに必要なのはスピード。ムーブ解決が必要な位なら、ユマールで登ります。というか、そこが登れる程度の登攀グレードでも、スピードを優先して、ユマールで登ると言う解決策を取るくらいです。
そこで、後者を目指す場合、どういう登攀力を目指せばいいのか?というと、
5級だったらどこでも、よどみなく登れる、
ということです。
■ 具体的にしたこと
1)初心者時代
行動:
1) ロープワークの本を読む
2) 文部科学省が出している、確保理論の文献を読む
3) 家で結び目の練習をする
4) リード壁に通う
5) 初級の岩場に通う
6) 取扱説明書をよく読む
7) わざと人工壁で落ちてもらって、墜落を止める
8) ロープの購入
成果:
・結び目が結べるようになる
・リードフォロー(スタカット)が分かるようになる
・流動分散が分かるようになる
・手繰り墜ちが危険だと分かるようになる
・トップロープは最初を張り気味でないとロープの伸びの分、落ちる距離が長いと分かるようになる
・クライミングスタイルによるロープの差が分かる 必要なギアが分かる
2)脱皮時代
行動:
1) 人工壁で5.10Aが登れるようになる
2) 外岩に連れて行ってもらう
3) 外岩でリードする
4) 先輩の墜落を停止する
5) アイスでリードのビレイをさせてもらう
6) アイスでルートに出る
7) アイスで中間支点を作る練習をする
8) 岩装備をいつも整頓して置く
成果:
・トポを見る習慣
・計画時に、ダブルか、シングルか、どのようなロープが必要か考える習慣
・フリーとアルパインの岩での装備の違い
・フリーの時にじゃらじゃらとギアをハーネスにぶら下げない
・登るのに必要な物だけを持ってあがる
・登り出す前に、登攀をどうするか考える
3)中級者へ
行動:
1)自分が外岩に連れて行く
2)レスキューの講習に出る
3)復習で再度、教科書を読む
4)自宅でロープワークを練習する
5)知っていることを他の人に教える
成果:
・自分で登れるルート
・知識の定着で、自信を深める
・忘れている結びを改めて思い出す
■ どれくらい時間がかかったか?
ロープワークは紹介されてから、丸2年、最初の半年は、機会がなく、素通りしていますから、1年半具体的にかかっています。
私がロープワークが必要になるような山(バリエーション)に行き始めたのが、たまたま冬なので、アイスのルートやゲレンデが主なロープの出番です。
最初の一年は、確保理論を机上で講習せずにいきなり、外で確保だったので、分かっていないことがあるような気がして怖かったです。
実際、
・ランナウト
・墜落係数2の墜落は危ない
・伸びないロープで落ちると危ない
・トップロープのプーリー現象
・ゼロピン目
・トラバースがむしろ危険
・一ピン目を取る前に落ちると危ない
・ロープギロチン
など、当然のことが分かるようになるのに、確保理論をきちんと読まないと分かりませんでした。
クライミングにも机上講習が必ず必要と思います。実際上記のことを理解させるのに、2時間程度しかかからないのではないかと思います。
その程度の知識を理解するだけに、少なくとも一年はもやもやした気持ちで過ごしました。
■ まとめ: 成功の要因となった行動
1)ロープワークの本を読む
2)スポーツクライミングに通う
3)講習会に出る
4)取扱説明書を読む
5)家でコソ錬する
6)相談相手を持つ
■ 講習費用
さて、ロープワークとの出会いは、講習会だったわけですが・・・山岳総合センターでは、リーダー講習以外にも、初級のロープワークを教える講習があります。
山梨の岳連が主催する講習会は、基本的に無料です。無料の講習会でも同じことが得れると思います。
ちなみに、例として、講習会の例を挙ますと・・・登山技術レベルアップ講習会(縦走時のレスキュー)は、机上講習と実技のセットで、15000円。机上があるというのが大事なことです。
山岳会は机上講習を嫌うので、いつまでたっても大事な知識が抜け落ちたままになりがちです。
私が知っている上手くいっている会は、例会で先輩が簡単な机上講習の代わりをしていました。
ただ、ロープワークの講習会は、
・基礎 まったく結び目の名前も知らない本当の初心者向け
・初級 自分の安全を守るためのロープワーク
・上級 相手の安全を守るためのロープワーク
と講習会を選ぶ段階でも、ある程度知識がないと、
どの講習会に出たらいいのか?
がそもそも選べませんので、そういう意味で、相談相手を持つことは必要だと思います。
■ 相談相手を持つ
相談相手ですが、もし誰も相談する相手がいない場合
山田哲哉ガイドが登山何でも相談日を月曜夜に設けています。
また岳連など上位団体の相談窓口も、有効な相談窓口と思います。
山岳会に期待すべきは、こうした独習で、初心者が判断に迷った時の相談窓口というものですが、今この機能が果たせる会や人は少ないかもしれません・・・。
したがって、次に頼るべきは、有料の先輩、つまりガイドさんということになりますが、山岳ガイドにも種類があり、山岳ガイドのガイドステージⅡくらいでは、登攀要素が出ない山しか許されていないので、相談相手とはなれないかもしれません。
登山ガイドではもちろんダメです。フリークライミングのインストラクターもダメですから、結局は、非常に数が限られている、ということになると思います。
■ リスクも自分持ち
結局は、間違ったことを教わるかもしれないというリスクも含めて、リスクは自分持ち、です。
教わったことは、色々と検索するなり、他の情報源にダブルチェックを入れるなりして、きちんと裏を取り咀嚼する、ということが大事です。
Trust But Check
と、英語圏では良く言われています。
例えば、私が信頼する先輩は、確保器使わない派でした・・・何しろダイニーマのスリングも、新しい装備は信頼できないと言って使わないくらいだったのです・・・。
しかし、新しく入ってきた人にとってATCXPガイドとダイニーマスリングは、誰でも持っている標準品です。
例を挙げると、アイスアックスもそうです。アックスはストレートではなく、現代のは、バナナシャフトです。
別にストレートシャフトで登れれば、それで構わないのですが、新しくバナナシャフトのギアを買おうとする後輩にアドバイスができるか?と言えば出来ないでしょう。
したがって、相談する先は、相談する側が良く相手の得意を知って相談する、ということ、複数のソースに相談すること、そうしたことは失礼に当たらない、行為です。
・登山スキルは、相談相手を持つことから
・登山リスクは教わったことを取り入れるか入れないかから
そこから強い自立の心が必要だと言えるでしょう。
■ この記事は三部作です
1)教え方を考える
2)地図読みを習得した経緯を考える
3)ロープワークを習得した経緯を考える (当記事)
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