■ 地図読みは基本だが身につけにくい
言う間でもなく、地図読みは山の基本である、ということに異論がある人は、まずいまいと思うが・・・
最近の山事情は
・一般道では地図の出番は何年山に行っても出てこない(^^;)
・たとえ、本チャンでも踏み跡を拾うことのほうが、地図を読むことより重要だったりする
・登山道の無い山でも、大抵の尾根には踏み跡がある
ので、あんまり地図を読むニーズ自体が希薄で、身につけにくい技術と言えると思う。
まったく踏み跡の無い山、というのは、血眼になって探さないとなかったりする。
■ 転機となった言葉
私も例外ではなく、地図読みはニーズが希薄で、マスターしにくい現状という障壁があったのだが・・・それらを乗り越えるためのキッカケは何だったか?と振り返ると、先輩からの適切な助言を得ていたと思う。(言った本人は、アドバイスのつもりではなかったかもしれない)
1) ピッケルより読図でしょ!
2) ピンクテープが自分を追いかけてくるようになる
3) GPSはカンニングだ
そのとき、その時で、「そうか」と単純に思い、素直に従った。
だから、アドバイスを得た通りのことが起った時は、すごく成長を感じ、喜びを感じた。
本当にピンクテープが私を追いかけてくるようになった!いや~めでたい!というわけだった(権現)。
GPSなしで行程が貫徹できたときも、祝杯モードだった(伝丈沢)。
一人で地図読みで歩いた山は、黒戸尾根より面白かった(茅ヶ岳東尾根)。
■ 具体的にしたこと
では、具体的にどういう行動をしたのか? 振り返ってみる。
1)初心者時代
行動: 1)地図読みの本を読む
2)基本通り、地形図に尾根と水線を入れる
3)概念図を書く
4)ベアリング図を書く。
(尾根とコルをつないで、標高差と距離、コンパスの角度を出しておく) 例: 中津森
5)地図の端から端までが何キロか計っておく
成果: ・一ピッチが、ピークからコルまでと分かる。
・ベテランとルート作成時の考え方が同じだと分かり、自信を深める。
・次に出てくるはずの地形(コルかピークか)を予想するようになる
・次に向かうはずの方角を意識するようになる
・どうでもよい箇所は気にしなくなる (取り付き、下りはじめ)
・迷いやすい地形が分かるようになる (のっぺりしたピークなど)
・現在地を地形で、同定できるようになる
2)脱皮時代
行動: 1) テープの薄い一般道を積雪期にトレースがない状態で歩く
(少しヒントがある状態、補助車つきの練習) 例: 厳冬期北八つ単独
2) GPSログを帰ってから、よく見る
3) 地図読みをベテランに教わる (講習会)
4) オリエンテーリングの大会に出る 例: 白川郷スノーゲイン
成果: ・テープがなくても歩けることの確認。テープが後から自分を追いかけてくる。
・ちょっとぐらいテープが見えなくても平気だと言う、恐怖心の克服(常に正解を求めない)
・次に見えるはずの道標の予想
・地図を頻繁に見る習慣
・コンパスの使いなれ
3)中級者へ
行動: 1)自分でルート作成して山に登る
2)地図読み講習会に出る
3)地図読みの教え方を学ぶ
4)1ピッチごとに先頭を交代する
5)ここがその箇所だと思ったら、地形的な証拠を3つ上げる決まり
(コル、ピーク、尾根、沢、ガレ、標高、目標物、人工物 いずれかが証拠となる)
成果: 自分自身で地図を読む自信がつく (青笹尾根)
■ どれくらい時間がかかったか?
自分でも、ホントに長い時間かけたなーと今思いました(笑)。
地図読みの重要性を指摘されたのが、登山2年目ですから、丸3年は取り組んでから、かかったということです。
もちろん、1年目でも地図読み講習に出ていますから、トータルでは5年です。しかし、1年目で出た地図読み講習では、まったく動機付けになりませんでした。
一年目で出た地図読み講習 (アルパインツアー 高川山 2011.12)
役立った地図読み講習 (三上ガイド 中津森 2013.4)
復習で出た地図読み講習 (天野ガイド 兜山 2014.10)
地図読み講習は、トータルで3つしか出ていないんですが、それで今の私があるとすれば、講習費用は安いかもしれません。各会1万円はしていないと思います。
時間的投資面を考えても、3回程度の講習は、山岳会に置き換えると3年目ってことになるかな?
私は全部講習は面白いのですが、そうでない人もいるんですかね???
講習的に地図をじっくり見ながら歩くと、とても時間がかかるので、通常の半分の距離しか歩けません。
■ まとめ: 成功の要因となる行動
1) 地図読みの本を読む
2) 地図の事前学習
3) 地図読み講習会に出る
4) それを人に伝達講習する
■ 面白かった山
やっぱり、色々思うと、自分でルートファインディングして行く山しか面白くないかもしれない・・・
間違っているかも・・・という不安が、もしかして山を面白くする重大な要素なのかもしれません。
今夏、もっとも面白かった山は・・・
なんと、ブラックアウトして、迷わなくていい場所で迷った山です・・・(^^;) よく知っている尾根で、暗くなってしまい、ホワイトアウトナビゲーションと同じことをブラックアウトでやったのです。
地図を読み込んでいたので、あらぬ方向から沢音が聞こえてきたり、トラバースするはずがないところでトラバースしていたら、間違いを検出できた。
地図を読み込んでいなかったら、間違いを検出できなかったでしょう。
この間違いを検出する能力というのは大事な能力で、”連れられ登山”では一生つきません。私は今冬の金石沢の時は自分が行ったことがある場所でも間違いに気がつけなかったくらいですから、大事な成長です。先輩なんて、自分が歩いてあっているところでも、違うのではないか?という疑いを持ちながら歩いていたようです(節刀)。
目視情報が一切得られなくなる事態には、
・ホワイトアウト (雪山で霧に巻かれる)
・ブラックアウト (暗闇で何も見えなくなる)
・グリーンアウト (背の高い密集した藪で、何も見えなくなる)
の3つがあるそうです。
目視情報以外の情報は
・聴覚情報 ・・・ 音
・触覚情報 ・・・ 感触 歩いている斜面が尾根かトラバースか
嗅覚、味覚は、使いようがないかなぁ・・・。やっぱり目視情報って、すごく大きいんですね~。
■ 地図読みにおける植生
植生というのは、地図には書いてあるけど、あんまり重視しない事前情報です。というのも植生は、コロコロ変わるから。
でも、実際山に行くと、植生というのが、快不快と美しさを決める、もっとも重要なポイントだったりします。
広葉樹の森・草原 = 快
植林・藪 =不快
大雑把ですが、こんな感じ。
山に行くとき、やっぱり、きれいな山、美しい山に行きたいと人は思うのですが、それが地図から読み取れない、というのが、山の面白さかもしれません・・・
でも、今年やった藪漕ぎはとっても大変だったので、ハイ松記号には気を付けるようになったかもしれない(笑)
■ 余談
歩きやすいように歩くと、人間はリンデワンデリングすることが知られています。リンデワンデリングは堂々巡り、ということです。
リンデワンデリングは、どうも人間の心臓が左にあり、左足が軸足で、右足がワーキングレッグだということとから来るみたいなんですよね。
これまた余談ですが、ユマールするとき、左足はアブミに乗せっぱなしです。右が上になり、主な作業をします。軸が左にある、ということと同じなのかなぁと思ったりしました。
登山の基礎は
・地図読み
・岩登り
と言われます。
”地図が読めて、ロープが使えたら、どこでも歩ける”というのが、登山家が口をそろえて言うセリフ。
地図読みは、なんとか一通りの形が付いたかも?と言える地点に近くなった私ですが、どれくらいビビりで、どれくらい慎重に慎重を期してしか、歩いていないか、ということを考えると、同じくらいの年月が初級のクライミング技術習得にもかかるかもしれません・・・(><)
何かをマスターするにはスモールステップが必要だ、と言われますが、今のところの成功体験である、地図読みの過去のプロセスを振り返ると、人がびっくりするような、小さい小さいスモールステップを積み上げているような気がします・・・
何しろ、5m登山道から逸れるだけで、最初はプチ道迷いと言って笑っていたくらいです。GPSは、クライミングに例えると、トップロープです。
地図読みにもまして、適性があまりなさそうなクライミング・・・
地図読みでも、3~5年もGPSによるトップロープ状態を維持して、時間を掛けて、自信を積み上げてきて、今の場所にいることを考えると、決して私が器用者ではない、ということがご理解いただけるでしょう。
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