去年は歩荷散歩していた 20kg |
ベテランによると、実際は、それはワンダーフォーゲル部の価値観で、アルパイン志向とは対極にあるそうです。
たしかにアルパインスタイルとは、荷を軽くして早く登り、山にタッチしてダッシュで降りる形です。昔のヒマラヤ登山の包囲法とアルパインスタイルの差に近いものがあります。
そう思うと、トレランって究極のアルパインスタイル(笑)?
■ 適正な歩荷負担とは?
パーティで登山すると、当然、歩荷の負担を割り振らなくてはなりません。
となると、適正な割り振りを知る必要があります。
当然ですが、
・より若い人のほうが荷を担ぐのは、普通
・女性より、男性のほうが担ぐのは、普通
です。が、ある程度、根拠のある数値のデータが欲しいところです。
■ 男女差について
男女差については、スポーツ科学の分野で、ある程度、信頼性のある数値が出されています。
≪Facts≫
- 男性でも女性でも筋肉1kgあたりで出せる力は同じ
- 男性は筋肉量が一般的に40% 女性が35%。
- 有酸素作業能力や無酸素作業能力において女子は男子の約70%前後
(体重50kgの女性)と (体重70kgの男性) を単純に筋肉量で比較すると、
体重 筋肉量割合 総筋肉量
45kg女性 × 0.35 =15.75kg
50kg女性 × 0.35 =17.5kg
60kg男性 × 0.4 =24kg
70kg男性 × 0.4 =28kg
となり、
男性が28kg担ぐときに、女性が17kg担ぐのは、別に女性に優しくもなんともありません(^^;)。
計算がめんどくさいので、(筋肉1kg当たり出せる力=1kg)の仮定で、適正な歩荷負担を計算すれば、各々の肉体が持つ、筋肉量にとって公平な歩荷負担は
45kg女性 = 15.75kg
50kg女性 = 17.5kg
60kg男性 = 24kg
70kg男性 = 28kg
となります。
これは私の今の歩荷力と同じくらいです。私は40代ですが、山歴40年のベテラン山ヤの先輩に、「40代の平均的な強さ」と言われています。 実際私より強い人いっぱいいます。でも、17~8kgまでは、歩荷それほど負担に感じません。
逆にいうと、体重47kgの私が17.5kg担いでいる時と、体重70kg男性が28kg担いでいるときは、同じくらいの負担に感じている、と言う事なんですね~!!びっくり~!!!
■ チビには負担が大きい
山の会には、歩荷訓練山行があることがあります。ある会では、女性25kg、男性35kgだそうです。
それってどういう負担なんでしょう?
仮に体重50kgの女性に25kg、体重70kgの男性に35kgの歩荷負担をさせたとすると、筋肉1kgあたりの負担量は
(歩荷の重さ)÷ (筋肉量) 筋肉1kgあたりの担ぐ重さ
女性 25kg ÷ 17.5kg =1.4kg/kg
男性 35kg ÷ 28kg =1.25kg/kg
となり、体重50kgの女性への負担のほうが70kgの人より大きいということになります。なんかチビに損だな~。
ちなみに、女性が体重55kg 男性が体重65kgとすると
女性25kg ÷ 19.25kg =1.298kg/kg
男性35kg ÷ 26kg = 1.346kg/kg
となります。やはり体格が大きいほど歩荷は有利なようです。
こうしてみると、(筋肉1kg当たりの出せる力)は、大体1.3~1.35当たりなのかもしれません。
この数値に男女差はつけるべきでないので、1.2くらいが適正なのかも?
■ 加齢
これは加齢を加味していませんので、加齢について考慮する必要があります。
≪Facts≫
- 最大換気量は直線的に低下し、60歳代では40~60%低下する。
- 筋力は20歳~30歳代でピーク。30歳代~80歳代までに約30~50%低下。
- 筋力及び筋量の低下の割合は50歳くらいまでは小さく、50歳を超えると大きくなる。
- 一般成人は20歳~50歳までの間に約10%の筋量を失うが、50歳を超えると80歳までにさらに30~40%という急激な筋量減少が起こる。
なんか、50歳という年齢に一線がありそうです。しかし、それを考慮すると、計算がめんどくさいので、年1%の筋肉量喪失、と仮定して、計算してみます。
つまり、若者に甘い仮定です。50歳のラインも考慮ナシです。
また、計算が楽なので、(筋肉1kg当たり出せる力=1kg)&(20歳時ピーク)と、仮定します。
(実際は、私が40代で1kgは普通なので、20代だったら、筋肉1kgあたり、1.数キロは、担げると思いますが・・・計算が楽なので)
≪仮定≫
・20歳時 筋肉1kgあたり担げる力=1kg
・年筋肉量が1%ずつ減る
≪体重50kg 女性の例≫
年齢 筋肉減少量
20歳 = 0% = 17.5kg
30歳 = 10% = 15.75kg
40歳 = 20% = 14kg
50歳 = 30% = 12.25kg
60歳 = 40% = 10.5kg
70歳 = 50% = 8.72kg
計算式は、0%喪失だと ×1.00、10%喪失だと、×0.9・・・・50%喪失だと、×0.5です。
となります。例え、体重70kgの壮健な男性であっても、加齢を加味すると
≪体重70kg 男性の例≫
20歳 = 28kg
30歳 = 25.2kg
40歳 = 22.4kg
50歳 = 19.6kg
60歳 = 16.8kg
70歳 = 14kg
となります。
実際は、20歳時点では、たいていの人がもっと担げるのでは?と思います。
私は体重47kgで40代ですが、18kgくらいまでは普通の登山道だったら普通に歩けますので。(クライミングはダメです)
でも、こうして筋肉の喪失量を仮説でもいいから計算してみると、人間、年を取ると、歩荷はつらくなるということが分かりますね(笑)。 しかし、加齢は生理現象ですので、人間は加齢には勝てません。
だから、担がなくて良い小屋泊が高齢な登山者に人気が出るのでしょう。
逆に言うと、60代でも20kg担いでいる小屋番さんなどはホントにすごいです。
そういう人は若いとき、40kgくらい担げたのかもしれない・・・ということですね。
逆に言うと、年を取ると半分まで低下するのですから、若いときは倍くらい担いでおかないといけません。伸びしろを上げておく意味で。
私は今40代前半ですが、18kgまでです。先日も自分の冬山装備と食当で歩荷負担18kg位でした。夏山でも縦走すれば、それくらいです。
登山を初めて間もないころは、何キロが適正な重さなのか分かっていませんでしたが、
日帰り 3~4kg
小屋泊 6kg
夏山テント泊縦走 15kg
冬山テント泊 18kg
冬壁登攀 25kg
というのが大体のラインのようです。最近のテントは軽くて、生米とか持って行かなければ、テント泊縦走も12kgくらいまで軽くでき、私は夫と二人でテント泊の時は、二人合わせて22kgくらいでした。
ひとりで夏山のテント泊1泊二日に行った時は、定着でたったの8kgです。山小屋でランチにラーメンを食べるから、ですね(笑)
縦走の時は、やっぱりもう少しありました。予備電池や水を4リットルくらい持つので、それだけで15kgくらいになります。
共同装備にすると重複を避けられるので軽くできます。
■ 試算
筋肉1kgで歩荷1kgできるという仮定でおおよその目安として
例1) 70代女性 体重45kg だと
体重45kg × 筋肉量35% × 筋肉喪失量50% = 7.85kg
例2) 60代女性 体重55kg
体重55kg × 筋肉量35% × 筋肉喪失量40% = 11.55kg
例3) 50代 男性 体重55kg
体重55kg × 筋肉量40% × 筋肉喪失量30% = 15.4kg
例4) 40代女性 体重 50kg
体重50kg × 筋肉量35% × 筋肉喪失量20% = 14Kg
例5) 30代男性 体重70kg
体重70kg × 筋肉量40% × 筋肉喪失量10% = 25kg
例6) 50代男性 体重70kg
体重70kg × 筋肉量40% × 筋肉喪失量30% = 19.6kg
例7) 60代男性 体重60kg
体重60kg × 筋肉量40% × 筋肉喪失量40% = 14.4kg
というのが、筋肉1kgあたりの負担として、公平な量になります。
ただくどいようですが、これは筋肉1kgあたり、1kg歩荷、20歳最大を仮定しています。少し弱気で控えめな仮定の数値です。
これによると、60代の普通の体格の男性と40代で小柄な女性の歩荷力は、ほぼ同じです。
■ まとめ
適正な歩荷負担量を割り出すには
(体重)×(筋肉量)×(筋肉喪失量) ×(筋肉1kgが出せる力) = 歩荷量
例: 体重50kg × 0.35 × 0.8 × 1kg = 14kg
です。
筋肉量
男性 → (体重) × 0.4
女性 → (体重) × 0.35
さらに、年齢の係数をかける。
20代 → 100% =1
30代 → 90% =0.9
40代 → 80% =0.8
50代 → 70% =0.7
60代 → 60% =0.6
70代 → 50% =0.5
ですから、こうしてみると、若くてごつい体格の男性が30kg位、担いでいるのは、全然すごくありませんねぇ~(笑)
それより、体重50kgもない70代女性が、15kgも担いでいる方がすごい。
山での凄さは公平に評価されなければなりませんねぇ(笑)
しかし、男性3人に交じって、女性一人17kg担いで一番強かったあの時って、ショックだったよなぁ(笑)
≪関連記事≫
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2014/03/2014.html
この記事には後日談があります。
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2015/01/blog-post_5.html
■ 興味深い鍋割山荘の記録
http://nabewari.net/about/kusano/bokka
‐‐‐‐コピー
歴代重量ボッカ記録
1996年12月26日 | 2斗樽酒(43kg全重)と正月用食材 | 114kg |
2005年12月16日(57才) | 3時間15分 | 110kg |
1995年10月 5日 | 40kgのプロパンガス2本と 500mlビール缶と350mlビール缶の2ケース | 109kg |
1995年12月28日 | 2斗樽酒と正月用食材 | 108kg |
1997年12月29日 | 2斗樽酒と正月用食材 | 107kg |
2001年12月28日(53才) | 2時間48分 | 107kg |
1972年10月 | (四国愛媛県石鎚山、1981M、山頂小屋最高重量) | 106kg |
2003年12月24日(55才) | 2時間32分 | 105kg |
1999年12月27日 | 2時間26分 | 105kg |
1998年12月28日 | 2時間27分 | 105kg |
1994年12月28日 | 2斗樽酒と正月用食材 | 104.5kg |
1990年頃(年月不正確) | 内容不明 | 104kg |
2002年6月より、すなわち2年半程前から毎日営業とし、週に6回、年間300~310回のボッカをこなしています。この29年近くで6000回を越えるボッカを行っています。ただ、2004年7月から右膝をかなりいためてしまい一回の重量が60kg以下になる事が多くなりました。オーバーユースは自然も生身の肉体も同じだなと思い知らされています。
草野さん
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