ちょっと前に図書館から借りてきた本を読み終わった。なんだか一気に読んでしまった。
”エベレスト”というと、言葉自体が、やっぱり、”山煩悩”な雰囲気をまとっている。日本で言うと、”富士山”、と同じだ。
富士山の山小屋に勤めていた人が、「富士山は、お祭り」と言う・・・私は富士山に6月に登っているけれど、お祭りの富士山は知らない。
”お祭りのエベレスト”が具体的に本当はどんなことなのか?知りたい人に、良い本だと思う。
映画『エベレスト 3D』では、隊長のロブ・ホールが、登頂制限時間リミットの14時を大幅に超える15時すぎに顧客のダグさんが山頂を目指したい!というのに、同意したことになっていた。それは情に流されたということになっていたが、こちらの記述ではそれは憶測でしか分からない。
映画で見たときと違う印象を持ったのは
・ダグさんは確かに郵便局員だが、他の隊員と比べて明らかに”クライマー”であり、”ベテラン登山者”であり、”自立した登山者”で、”手のかからない客”だった。
・ロブさんは、10回以上もダグさんに電話を掛けて、エベレスト遠征を誘っていた
こと。 登りたかったダグさんの山煩悩に、隊長が情に流されたという構図とは、すこし力バランスが違うようだった。
登らせたい思いと登りたい思いはマッチしているようだったし、どちらも熟練の登山家であり、クライマーだ。なのに、どちらも、14時で降りると言い出さなかったのは、単純に高所で判断力がオカシくなったためなのだろうか・・・。
登山では、”一番弱いメンバーがパーティの実力”と言われる。それで行くと、難波さんは、日本に伝えられているよりも、弱いメンバーだったようだった。
アイゼンでハシゴを歩くのに成れておらず、3回転んだのは、映画ではベックさんだったけれども、実際は難波さんのようだった。難波さんはアイゼン歩きやクライミングは、そうやっていなかったのかもしれない。ヒラリーステップでは10mの垂壁の登りがあるそうなのだが、最後は後続にお尻をプッシュしてもらっている。
でも、そんな高所でのクライミングなんだから、どんな経験があっても体力がおぼつかないのかもしれない・・・。
ベックさんが視力を失ったのは、雪目ではなく、レーシックの手術のせいのようだ。高所に行く人はレーシックしない方が良いかもしれない。
また、ロシア人ガイドのブクレーエフさんは、この事件後、顧客をおいて一人で先に降りたと言って批判を浴びていますが・・・
私の知っているリーダーはいずれもしっかりした人たちですが・・・山岳会では、あまり危険がないと見なしたら、さっさと降りて、ゆっくりの人には付き合わないリーダー多数。幼稚園児じゃないんだから、危険がない箇所くらい、自分で歩きな、って意味ですね。
私もそうされて別に平気なのですが・・・。そうしては、いけないタイプの人がメンバーにいたら、後ろを歩くか、少なくともその人が目に入る距離にいます。・・・例えば、くたびれてヘロヘロになっているオジサンとか・・・どちらにせよ、下山口で合流するし、パーティは一つなので一人で先に行ってもあまり合理的ではない。
早く歩くのは、急かしたい気持ちが表れているわけですが、本当にバテている人は、急かしても歩けないと本には書いてあります。やっぱりバテが遅さにつながるようだと、やっぱり身の丈以上の山ですね。
ので、ブクレーエフさんへの批判は、あんまり登山を知らない人の完全外野の意見だな~と思いました。
■ 公募登山の関係性
驚いたのが、こうした公募登山での、リーダーとメンバーの関係性です。
リーダーと各メンバーは信頼関係でつながっているけれど、各メンバーはみな初対面で、互いでロープで結びあうでもなんでもないのです。なので、メンバー間の助け合いは期待されていません。
そこは、一般的な登山と全然違います。メンバーは他のメンバーを助けることが期待されているからです。
例えば、疲れたメンバーがいれば、ザックを持ってやったりします。
それは、運命は一蓮托生と言うところがあるからですが・・・たとえば、誰とでも最初はあるので、友達になりながら、山に行くのでも、最低限すべきことというのはあります。
初心者の間はあまり分からないですが、ゲレンデから入って山に行くという流れはお見合いです。
1)ゲレンデクライミング → 2)ロープワークやビレイの確認 → 3)山
例えば明神主稜程度の山に行くのでも・・・最初は三つ峠のゲレンデで互いのロープワーク理解度を確認し合い、その後フリーのゲレンデに行って、互いにどれくらい相手のクライミング力に期待してよいか、確認し合ってからしか、本番の山には行かない。それでも、ゆとりを見て、一人でも行けるようなルートに一緒に行くのですが・・・。 エベレストほどの大きな山なのに初対面!
やっぱり、ある程度トレーニングで大よその実力を分かりあっている仲間と行く方がどんな山でも安全だよな~と思いました。
誤解の無いように言っておくと、互いを知りあうのは、実力程度のところに行く、ためです。今の実力でどこなら行けるか?と考える。
”今の実力で行けるところ”を少しずつ、上げて行くのが山。なので、実力を客観的に見極める必要があります。
そういう意味ではエベレストに登る実力、というのは、難波さんは既に6大陸の最高峰を登っていたから、素人目には一番資格がありそうですが、そうではなかったことが意外でした。
また、公募メンバーは、ガイドとシャルパにすべてをお任せしなくてはならず主体性や積極性を発揮してはならない、ということでした。それは登頂へのエネルギーを温存するためです。
平たく言うと上げ膳据え膳で、「あなたは勉強だけしていればいいのよ」という受験生と同じ状態です。
そんな山、なんだか全然楽しくなさそう・・・
山には色々ありますが、やっぱり自分の力で楽しく登るのが一番安全なのだな~というのが感想でした。
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