さて、今日は図書館へ出向き必要な岳人を借りてきて、やっと一つの出来事が終息した。
やっと自分の山の話に戻ることになった・・・ あ~びっくりしたなぁ!もう!って感じの山だった。今回は、うまいことしてやられた。
さてと・・
私は、やっと5.9がオンサイトできるようになった。フリーの入り口だ。
オンサイトというのは、一つの熟練を示すものだ。
日本のクラシックルートと言われるアルパインルートには、基本的に5.9以上のところは、出てこない。だから、アルパインルートを目指す人が、5.9ならどこでも登れる人、つまり5級のエキスパートを目指すのは、当然の帰結だ。
一方、別の目安もある。たとえば、人工壁で5.9と言えば、ものすごく簡単で、今日ジムに初めて来たという人でも登ってしまう。もちろん、私もすぐ登れた。もちろん、人工壁の5.9は、岩場とは違い、岩では5.7を登るのも、かなり難しい。5.12を登るような人だって、ソロ登攀は5.7が精いっぱいと言っている人もいたくらいだ。
とはいえ、フリークライミングという枠組みで見ると、5.9というのは、まだ入り口に過ぎない。何でも登れるという話ではない。
そこのところの分かりづらさ・・・アルパインでは熟達、つまりエキスパートのレベルでグレードを議論し、フリーではそうでない・・・ということから、理解が難しくなるのだと思う。
カンタンにまとめてしまうと、アルパインで5.9が墜落の可能性なく登れるためには、フリーでは、5.11にTRでチャレンジしているようなレベルでなくてはならない。
5.7をリードできるレベルから、5.9をオンサイトできるようになるまでに、1年半かかった。
心優しい人は、「岩以外にも色々やっているから」と言ってくれる。確かにそうだ。縦走も、沢も、雪もアイスもやっているんだが、どれもフリーを基本にしているので、フリーが弱いということは、基本が弱いということになる。
まぁクライミングだけをやると、歩きが弱くなるのだから、どっちも必要で、そのどれもを、勘を失わない程度に続けていく、というのが、とても難しいことなのだ、と最近は考えるようになった。
■ エキスパートになることが目標
以下は、『フリークライミング』からのまとめ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
≪あるグレードの初級者とは?≫
・自らの限界に触れなくてならない → 墜落する → トップロープ
・未習得のムーブが洗練され、体に記憶される → リードに至る
このグレードを完全にマスターできるのは、まだまだ先の話である。このような補助的手段を排除できて初めて、初級者は次の技術段階に達することができるのである。
≪あるグレードの上級者とは?≫
・トップロープによるムーブの暗記に頼る必要がない
・いきなり下からリードで取り付く
・上級者も当然墜落することがあるだろう
・核心部では何度か落ちるかもしれない
・何度も試登を重ねる「ヨーヨー戦術」は、上級者の技術段階に属する
・あるグレードのルートを徐々に少ない試登回数で完登できるようになることが進歩の目安である
≪あるグレードのエキスパートとは?≫
・墜落しないで、ゆとりを残して登攀する
・一つのグレードをマスターしているかどうかの目安は、「フラッシュ」「オンサイト」である。
≪まとめ≫
・5級のエキスパートは、6級の上級者であり、7級の初級者である。
・目標は、グレードを登ることではなく、そのグレードのエキスパートになることである。
・初級者は、技術・戦術に欠けているので、あらゆる手段に頼らなければならない。
・懸垂下降してルートの道筋、ホールドの質と条件を確認しておく
・トップロープで登る
・リードで登るときは確保点で休憩する
・最高点から再び登攀を始める(ハングドッグ)
★一つのグレードをマスターすること(エキスパートとして登ること、オンサイトすること)が努力目標である。
★もっとも価値があり、もっとも満足感が得られるのは、低いグレードの初見ルートのオンサイトである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上 要約ーーーーーーーーーーー
この物差しに当てはめると、私は、今5.10Aはヨーヨー作戦で登っているので、5.10Aの上級者、5.9のエキスパート、5.10bの初心者、ということになる。
個人的な感覚でも合致しており、TRなら、5.10Bは登れたりした。もちろん、全く技術的に未知なクラックなどの特殊なケースは除く。
■ アルプスでのフリークライミング =アルパインクライミング
ーーーーーーーーーーー以下 要約ーーーーーーーーーーーーー
・ゲレンデ的な岩場では、ルートの難易度の客観的尺度でありうるグレードも、アルプスではそのまま適用できない。
・持久力が要求される
・ボルダ―が短距離走とすると、アルパインクライミングは長距離選手
・フラッシュ オンサイトが原則
・墜落やヨーヨー作戦は許されない
・安全性のもっとも重要なファクターは時間である
・落氷、落石、雨などの外的危険を事前に熟知していなくてはならない
・ルートファインディング
・アプローチのこなし方
・懸垂下降の確実性
=アルパインクライミングでは、教本では得られない、長い実践を通しての修練と経験が必要になる
・危険に遭遇し、必要とあらば、それを回避できるようになるには、経験を積むしかない。
・アルパインルートに取り付くのは、そのグレードのエキスパートに限られる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
したがって、私はこのまま、5.10台を頑張って登っていれば、クラシックと言われるアルパインルートに行けるようになるだろうという一定の目安は付き始めた・・・ということだ。
だからして、大変喜ばしい事件だったわけだった。何しろ、オンサイトというのは、誰か他の人が登るのを見てもいないのだからだ。
■ 補助的手段
トップロープで登ることは、初級者の補助的手段だし、
ヨーヨー作戦で登ることは、上級者の補助的手段だ。
これは、歩き主体の山でも同じで、
誰かに連れて行ってもらうことは、初級者の補助的手段だし、
先輩についてもらってリーダーで登ることは、上級者の補助的手段だ。
最後は、一人でその山に登れなければ、登れたということにならない。しかも、未知の状態で登れなくては、完全に補助的手段を排したとは言えない。
だから、連れて行ってもらって登った山は、自分の実力のうちに入らない。もちろん、ガイド登山は、補助的手段のうちの最たるものだから、自分の実力のうちに入らない。
それでも、自分が行ったことがある山の実力のうちに、ガイド登山や山岳会の山行で行った山を入れてしまう・・・人は弱いものだからだ。
でも、ギュリッヒが行っているように、山の本当の喜びは、低いグレード、低い山で良いから、自分の力で登れたときにあるものだ。
No comments:
Post a Comment