■ 確実性を高める=クライミング
この週末、もっとも素晴らしかったのは、
クライミング=確実性の積み上げ結果である
ということが再確認できたことだった。
私には、クライミングは山の延長として最初からあった。遊歩道クラスの1級から、二本足歩行の2級、3点支持の3級、そしてバランス感覚が必要な4級、それがさらに困難になり、落ちる可能性が排除できなくなると、ロープが必要になり5級になる。だから、ロープを出さない5級はない。
アルパイン1年生として過ごした山岳会1年目は、どの程度からロープを出すか?を研究して過ごした。その疑問は登山を始めてハイキング道しか歩いていないころから、持っていた疑問だった。
1)落ちる可能性がある
2)落ちたとき、怪我の可能性がある
平たく言えば、穂高クラスの一般縦走路クラスでは出さない。それを超えると出す。
落ちる可能性は人によって違う。何度も同じところを通っていれば、慣れ、が発生するからだ。
しかし、慣れが発生していないような人がロープを出すべき場所で出さず(例:ジャンダルム)、いちかばちか登山をしており、それを自慢話の種にしている。それが今の山の世界だ。
登山が、度胸試し、あるいは、強運比べ、になっているのだ。それが山で遭難事故が絶えない一つの遠因になっている。
と確信できるのは、雨量50ミリ、視界50mしかない日に、制止も聞かず稜線へ出ていく人たちを現実に山小屋のバイト中に見たからだ。
特に中高年は、そうした価値観が強く、雷が鳴っている中で歩いたことが、なぜか自慢につながっている。その時はたまたま運が良かっただけなのに、だ。
その価値観は、クライミングにも持ち込まれ、ロープを出す技術がなかっただけなのに、ロープを出さなかったことが武勇伝になってしまう。
■ ある経験
私は今冬3月ジョウゴ沢に行った時、核心部の大滝でロープを出さなかった。師匠には叱られ、だいぶ反省した。
出さなかったのは、私自身もクライミングに不安を感じなかったため、もあったが、1番の理由は、状況に流されたことだ。
トップがロープの出し方を知らないで行ってしまった。本来滝下で、メンバー全員でロープを出すか出さないか相談しなければならない。そのまま行ってしまったのは、私がリーダーをしていたのに、メンバーにリーダーへの敬意を欠いていたからだ。文化的精神的問題だ。
計画書、ギアの指定など私が行ったし、ルートを提案したのも私だったのだから、リーダーは私だった。彼はダブルロープを1本持ってくるように指示したのに、持ってこなかった。本来なら、そこで敗退にすべきだった。このパーティはメンバーの構成に問題があったのだ。
大半の男性初心者は、大抵は、登れるか登れないかだけが敬意の対象になる。その判別も素人っぽいが、その判別で判断する習慣が抜けないと、問題は他にもある。
当の自分が他のメンバーにより大きなリスクを負わせてしまうのだ。
男性初心者は、自分が落ちることなど想定もしておらず、自分が落ちた場合、メンバーは救助しなくてはならないことを考えていない人が多い。山を怖いとは思っていないのだ。
登れるからロープが要らない、という山野井さんクラスのカッコよさを、アルパインを初めて1年もたたず、ロープを出す出し方もいろいろあるということをまだ学んでいない人がやろうとする。
ロープの出し方を学んでいない証拠に、沢でまったく同じことを再現していた。つまりザックの中にロープを入れたまま核心部に取り付こうと再度していた。
それでは、トップはロープに守られていない。つまり自分が平気そうだと思ったらロープは出さないでいいとおもっているのだ。しかも、その予測でさえ不確実で数歩で落ちていた。
こういう人と一緒に山に行くことは、他の人に取っては、爆弾を抱えていることで、一緒に行く方がむしろ遭難救助に遭遇する確率は高まってしまう・・・。
トップが”俺にはロープはいらないから”という考えのために出さない箇所で、落ちてしまう可能性がより大きいのは、本来ロープ出すべき場所をトップの怠慢のために出さずに通らなくては、ならなくなるメンバーの方だ。
トップがより大きなリスクにメンバーを晒している。
そのことは各種の遭難事件が、過去に多数の実験で証明している。たとえば出すべき場所で出さなかったとき落ちるのは、出さなかった張本人のガイドではなく、より技術の未熟な顧客だ。
アルパインでスタートした人が良く起こす、このような勘違いは、ロープを出さないで済ます方がかっこいい、というもので、それをまだ5.10代さえもまともに登れないような、下積みも実績もない時代にやってしまい、たまたま運よく怪我がなく過ごしたことを武勇伝にしてしまう。
早期に考えを正さないと、次のグレードでは、落ちて大怪我をしてしまう。
考え方が問題だから、グレードがどうであれ、いつかは落ちることになっている、ということが分からない人が多い。
私はそうした危険な思想の人たちに山岳会で取り囲まれていたので、尊敬しているクライマーに、
確実性を積み上げることがクライミングの神髄だ
と言ってもらって、自分の感性にお墨付きをもらったような気がした。山に一か八かはない。クライミングにも一か八かはない。
■ 基礎固め
私は、まだ”いわゆる5.9アンダーの人”(=初心者という意味)なので、今は、外岩で5.7とか5.8をたくさん登り込まなくてはならない。
それは、やっている本人にも明らかで、他の人にも明らかだ。易しい課題をたくさん登り込むことで、基礎力が作られる。
それなのに問題は、フリー出身の人(あるいはジム出身の人?)は、
すぐにもっと難しい課題へ行くべきだ、とすること
だ。でも基礎力がないのに、その上に積み上げられるはずがない。
私は中高はテニス、大人になってからはバレエをやっていたのだが、どちらも基礎練習が一番好きだった。テニスなら素振り、バレエならバーレッスン。クライミングは、基礎レッスンに値するものが、人工壁なのだが、素振りやバーレッスンに値する良質な基礎課題が、ボルダリングブームでとても少なくなってしまったのかもしれない。
指力を使って、ギリギリを乗り越える、という遊びが主流で、岩場での確実な登りのために基礎的なムーブを洗練させることを主眼にした課題がとても少ないのだ。おそらく今リード壁があまり流行っていないということもあるのだろう。
ということで、わたしに必要なのは基礎固めである。でも、それは、1年以上前からずっとそう思っていることだ。
■ 経済的苦痛の解消
今身近にあるボルダリングジムに毎日通っても、基礎固めにはならないのではないか、と思うのが、ボルジム通いを躊躇する理由だ。
しかし、それでも行かないよりは行った方が良いのは道理なので、その程度の動機に月1万円近くの金銭的負担を背負うのが非常に苦痛だ。なぜなら、そのお金があれば、毎週外岩に通え、その方がうんと力になるだろうからだ。
この苦痛を解消する最も良い手と思えるのは、夫にビレイヤーを買って出てもらうことなのだが…、今回は夫にはクライミングってこんなことだよ、ということを見学してもらった。
トップロープのビレイくらいは誰でもできることなので、夫にお願いしたいのだ。
■ 幕山公園
今回は、初めての湯河原幕岩。幕山公園は、荒れていた。
正面壁にたどり着いたら、途中の梅園が草ぼうぼうで、すっかり草のとげまみれになった。岩場は取り付く課題を見つけるまでが難しいし、そこから核心だったりする。
が、そういうことを含めて楽しいと思えるタイプの人の方が好きだ。連れて行ってもらえば、確かにアプローチは楽だが、山と言う感じが薄れる。
一緒に行ってくれたモウアラさんたち夫婦と登ると、ビレイは出番なしだ。特にリードは二人でビレイし合った方が慣れていて安心だろうと、私もよほど疲れていそうでなければ、申し出ない。
ビレイヤーのニーズのために呼んででもらっているわけではなく、とてもありがたいと思っている。
まぁ異性のパートナーと一緒の場合は、ビレイヤーが必要だからね、というのは、本来の恋人への配慮もあるので、必要なことだ。
ちゃんとした山ヤ同志だと、誰と組んで、誰と山に行っても、そんな言い訳はしないで済むのだが、下界の論理(男女が一緒にテントに寝るなんて)とかをクライミングが大衆化するつれ、山に持ち込む人が増えたのだ。
ちゃんとしたアルパインの人ならは、男女の差別はない。もちろん、区別はあるが。
■ キャンプ?
幕山公園は、キャンプサイトがないのがネックだ。
しとど庵は廃業しており、キャンプは駐車場を利用するだけで、あまり快適ではないし、逆に自然サイトにあるような清々しさもない。管理人のおじさんはむしろ面倒を抱えて迷惑そうにしていた。
ただ安くつくのがメリットか。
私たち夫婦は、今回は2泊でもあったので、1泊はしとど庵でテント泊、2泊目は近所のペンションで1泊2食付にしたが、一番合理的なのは素泊まりかもしれないと思った。
ペンションでの一泊二食にあまり価値は感じなかった。食事は近所でできそうな普通の生活が身近にある土地柄だし、コンビニも豊富だからだ。
特に海産物の食事に価値を見出す人で無ければ、食事が特に美味しい土地柄とは思えなかった。温泉も半分は、塩素の湯で、源泉かけ流しを求めるなら、要注意。
これはどこも同じだが。歴史ある温泉街ではあるが、都市化しつつあり、基本的に温泉宿としてお得に楽しむのには、あまり向いた土地ではなさそうだった。
まぁこれは黒川温泉などで、私たちの期待レベルが高くなっていることもある。
http://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/19489/19489.html
■ アプローチ
行きは小田原経由、帰りは箱根スカイライン経由で帰ったが、御殿場ー湯河原間が既に都市化しており、渋滞が気になる。高速道路も渋滞しそうだった。箱根スカイラインは有料だったが、スムーズだ。
芦ノ湖と箱根は、通り過ぎただけだが、ウンザリするような観光地だということが分かった。箱根には行くまい、と思った。
■ 幕山
帰りに、幕山を登って帰った。幕山は600mそこそこの山で、山の雰囲気としては、近所の裏山だった。イノシシが穿り返した跡がたくさんあった。登って降りて1時間ほど。
初めての岩場や初めての土地に行ったら、最初に高台に登って全体像を把握しておくと良いと思う。
小川山でもそうして、とりあえずカモシカ登山道を歩いておいたことが後で、岩場にスムーズに取りつくのに役立った。
岩場ではあまり地図読みはイラナイが、それでも、例えば、八幡沢がどの沢なのか分かっていれば、八幡スラブには取り付きやすい。最悪は沢を遡行すれば辿り着けるだろうと分かるからだ。
今回は幕山公園では、正面壁と桃源郷は登山道から分かった。茅ヶ崎ロックは分からなかった。悟空スラブへ行くにはかなりアプローチで苦労しそうなことが分かり、あまりそそられない。
湯河原みたいな遠い岩場でわざわざ易しいスラブへ行かなくても、近所に小川山や十二ヶ岳の岩場があるからだ。
■ 恵まれている山梨
今回、関西からのクライマーと合流して、やはり、山梨は岩場に恵まれていると思った。
十二ヶ岳の岩場
三つ峠
兜山
太刀岡
甲府幕岩
小川山
瑞牆
昇仙峡
湯川
とこれだけでも、相当数になる。甲府幕岩はまだ行っていないのは、パワー系と聞いているからだ。昇仙峡は最近注目を浴びているようだが、エリア不明。でも古い岩場で、往時の昇仙峡開拓団の人は知っている。
これ以外にも金峰山や乾徳山も登山体系には載っている。もしかしたら岩殿山にもあるかもしれない。
山梨が恵まれていないのは、全国的なブームの外にあること、ジムとクライミングインストラクターだろうか(笑)?山梨のクライミングジムはレベルが高いので、こういうとジムのオーナーには心外かもしれないが。ジムは現在4つもある。
でも全国的なクライミングブームの枠外にあり、定期的に講習を行っているガイドさんは都会では普通のようだが山梨では見たことがない。
山梨は大体において、全国レベルの20~30年前を走っている。旧世代と新世代との価値観の乖離も大きい。基本的に情報が入ってこないし、新しいことに興味がないのだろう。
それは何かに集中する、例えば子育てとか、受験勉強とか、スポーツとか、そうしたことには向いているが、情報がないために客観的に位置づけるということは苦手だということだ。
例えば、いかに外岩に恵まれているか?というようなことだ。日替わりで行ってもかなりの岩場に行けるんだが(笑)。
全国的に見れば、本場と言ってもいい土地柄だよな~と改めて感じた次第だった。
これからは岩と言うよりはアイスのシーズンインだが、アイスにも恵まれている。
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