Monday, November 9, 2015

山の実力を客観視することの難しさ

■ リーダーへのサポートが必要

〇〇さんがリーダーだから、任せておけば大丈夫 という思考回路

は、信頼をあらわしているのではないかもしれない。

では何を表しているのか? 依存、か、怠惰、のほうではないだろうか?

リーダー任せの山行は危ない。リーダーだって神ではないのですから、何でも知っている、分かっていると期待するほうが、おかしいのです。

リーダーのミスは、指摘してやれなかった、みんなのミス。

以下は、死者が出る遭難を経験した大学山岳部の学生らが出した反省とその対策です。

■ 学生が遭難から導き出した問題点と反省点

問題点1) 知識、経験が秀でている者に判断を任せていた
問題点2) 山岳部として安全を担保するための考え方を教わっていなかった
問題点3) 上級生の積極的参加意識の低下
問題点4) 危険と安全に対する意識が欠如

対策1) 机上講習の充実
対策2) 合宿、個人山行のあり方を見直す
対策3) リーダーを務める山行を積極的に行う

 対策1)机上講習の充実
  ・インプットだけでなく、アウトプットを行い、進捗度と定着を図る
  ・遭難事故を学習する機会を設ける
  ・登山の歴史や思想を学ぶ
  ・自分にとって、登山とは何なのかを自主的に考え、山と真摯に向き合う

 対策2)合宿、個人山行のあり方を見直す
  ・合宿では、目標達成より、安全を重視する
  コンパスの使い方や地形図の読み方など基礎的な技術を、各人が身に着け個人レベルで安全な登山ができる体制を作る
  ・不足している技術は、積極的にOBに協力を仰ぐ

 対策3)リーダーを務める山行を積極的に行う
  ・下級生も年に3~4回はリーダーを務める山行を行う
  ・その際は、計画立案段階で、山行計画の内容を部員全員で検討する

■ 山ヤの資質

問題の根っこは、社会人も学生も同じだ。 任せておけば安心、という、考え方だ。

それは残念ながら、捨てなくてはいけないし、自立する心が芽生えるのが、山の良さなのだから、任せて安心したがる人は、そもそも山ヤとしての資質に欠ける。

そのような人は、山ではなく、小屋がある一般登山道でハイキングをするべきだ。

上記の学生の反省を、山岳会に落とし込むと・・・

1) リーダー任せにしないで、山行計画をきちんと各人が読み込む

2) 和 より 安全 (安全=スピード)

3) ナビゲーション表の共有 (あるべき行動時間を各人が把握する)

4) 歩く基本を重視する (歩けない人は連れて行かないのではなく、連れて”行けない”)

5) テント泊の生活技術、地図読み、パッキングなど、技術がそもそも身についていない場合は、会山行は、本番ではなく、練習山行の内容にとどめる

6) 遅くなる人は、過剰装備を山行前にチェックする

7) 毎年1度、同じルートを同じ重さを背負って歩き、体力の低下をチェックする

8) 実力を客観的に測定する目安を持つ


今回のリーダーは、赤岳を休憩なしで登れないメタボおじさんとは違い、確実にしっかりした山ヤのリーダーだ。

そのリーダーがした判断であれば、過信が問題なのではないのかもしれない。

とすれば、考えられるのは、単純に パーティ全体の力量が、客観的に把握できていない、ということだ。 パーティの力量=もっとも弱い人の力量。

力量を客観的に把握することは、誰にとっても難しい。

私自身、自分の力量はどこのあたりか分からないため、本チャンなどの本気の山の時は、臆病なくらいに控えめなコースタイムを設定しているので、結局、一日余ったりして、下山が朝9時など、笑ってしまうほど、ゆとりが残っている。

ずっと同じグループで山に登り続ければ、一般登山者との比較ができなくなる。そのため、平均点も取れなくなっていること自体に気が付かない、気が付けない可能性がある。

例えば、私は、40代の平均的な強さ、と言われており、別に強くはない。

40代平均というのは、当然30代平均よりは弱いハズで、当然50代平均よりは強いはずだ。

したがって50代の中では強いだろうと思える山岳部出身者より、私は弱いという現実を見ることになると、それは想定を裏切る好成績。(=安心)

ところが、50代山岳界出身と、同じような人のはずなのに、私より弱いということは・・・たとえば赤岳が休憩なしで登れなかったメタボおじさん・・・は、一般登山者レベルの体力ということが想定できる。なぜなら、私は別に平均より強くないからだ。(=不安)

■ コースタイムは甘々

昨今は60代、70代が増えたため、北アなどのコースタイムは、大幅に水増しされて設定されている。

私も初心者の頃、北岳に登るのに、6時間半と言われても、5時間しかからないので困った。

こうした一般に言われていることの矛盾は、自分で山行を企画していないと気が付かない。

会に入ると、会でしか登らなくなり、自分のコースタイムには気が付けなくなるリスクがある。

例えば・・・私が詳しい尾根で恐縮だが、前に遠見尾根のコースタイムが登り6時間で驚いた。私は4時間20分で、問題なく登る。若い男性(30代)は、3時30分で登る。

ところが、いわゆる健脚者は3時間。しかし、60代は7時間かかる。

60代の方で、ザックを軽くして(5kg日帰り)コースタイムの6時間通り登れた!と喜んでいる人がいた。

エアリアの想定は、35才の男性が、一泊程度の装備を背負って4~5人で歩く、を想定してあるから、35才と同じ速さなら健脚だろうという訳だ。

しかし、それは誤解だ。健脚者と言うのは、3時間で登れる人のことを言う。一般の40~50代は、コースタイムよりうんと早く登る。

アルパインで通用するのも、そのあたりのラインからだ。それ以下の人は、みなアルパインもどき、でしかない。もちろん、私自身も含めて、だ。アルパインには資格不足だということを知っておくべきだ。

これに似た誤解がないようにするには、客観的に測量可能な目安・・・時間と重さ・・・で、毎年条件を同じにして、測定するしかありません。

私にとっては西岳がそれで、大きな山行の前には西岳を歩いて、どれくらい時間がかかったのかを計っておきます。

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