「どうして落ちるの怖いのかなぁ?雪は全然怖くないのに」
「痛いからじゃない?」
そう…私は、岩は、沢より雪より怖いんです。
岩ヤさんには、沢が嫌いな人が多いです。それは沢は、動く岩だし、濡れた岩だから。
私には、それらのリスクは、登山上のリスクと同じなので、あまりリスクには感じられません。
■ 価値観の差
私には、雪も沢も、次に何が出てくるか、登った後に見える景色が面白くて登っています。
苦を忘れる楽、というわけです。
どんな易しい場所も、雪でも沢でも、地面は不安定だし、状況によっては滑るのが当然なので、動くとか、濡れていることは最初から受け入れ済みのリスクなので、気になりません。
あまりに、ひどければ山に受け入れられていない日だから、と登らなければいいだけなので。
その先に何が見えるか?分からないから見たい!という探検的要素が、私の基本的な動機なんですね。 これは人生も同じです。
雪の山を歩くとき、落ちることは考えていません。下りでさえ、6月ですが、雪の富士山、走って降りれるくらいです。
それを思うと、岩の怖がりようは、ちょっと滑稽なほどですネ(笑)
■ 身体は嘘をつかない
岩の場合は、落ちるか落ちないか?というのは、ほとんど自分の肉体の限界だけの問題です。
私は肉体派ではありません。 根性で何かを克服する、というのは、苦手というより、しません。
ヨガの先生ですから、ボディ(身体)とマインド(心)では、ボディのほうが、よほど正直で裏切らないのは知っています。
しかし、その原理を使って、精神力で身体を服従させようというのは、エゴです。禁じ手です。
例えば、多くの現代人にとって、太ることは不満の表れです。過食症や拒食症が、精神の病であることを知らない人はいませんよね。
一般に良いと言われることでも、当人にとって、それがどんな意味があるのか?は、また違います。
たとえば、一般的に見て、働くのは良いことですが、仕事が逃避である場合もありますし、享楽、であることも、ままあります。
世間のモノの見方で計ったことと、当人の内的に起っている真実が違う、と言うのは、よくあることです。大事なのは内的真実のほうです。
ヨガで良くある、痩せたいというニーズは、過剰な(不必要な)自己顕示欲や、女性の場合、愛情の欲求であることが多くあり、精神が満たされ、その痩せたいというニーズがなくなった途端に、するりと痩せる、ということは良くあります。
ヨガが心を満たすように薦めるのは、そのためです。それを無視して、意思の力で身体を押し通そうとすると、関節を痛めたり、逆に太ったりして、身体が反逆するので、なかなか前進しないどころか、後退することも良くある話です。
一般に今の人は、自分のカラダのメンテナンスに裂く時間が足りず、気の毒に思っています。例えば、肉体の声(肩が凝る、腰が痛い)を無視し続けて、酷使を続けると、身体は反撃します。具体的には、
- 大きな怪我
- 大きな病気
- 鬱
- 体重の大きな変動
などの警告をして、身体は自分を強制終了させます。
つまり入院がいるような、大きな身体的挫折は、裏を返すと、無理のツケです。その人が身体の声を無視してきたツケともいえるわけです。ある意味の傲慢です。
病気や鬱が無理のツケであることに反論がある人は少ないと思いますが、怪我も実はそうなのです。怪我や事故も実は自分が招いていることです。興味がある人はこの辺の古典はこれです。
自分を愛して!―病気と不調があなたに伝える〈からだ〉からのメッセージ
■ 疲れは体からのメッセージ
その小さなバージョンが疲れ、です。
ですから、疲れの観察は、自分の精神を肉体的な面から発見する活動と言えることになります。
余談ですが、身体からのお便りの代表と言えば、文字通り、便ですね(笑) 男性は、下痢の人が多いと思います。それは会社で嫌なことがあると、お腹をこわしたりしませんか?
女性は逆にため込む人が多く、貯め込み始めると、精神的に良くない徴候であることが多いです。
過剰なビール、過剰なタバコ、何かに対する偏向、偏愛、みな何らかのメッセージを外に向けて発しています。
自虐的なことは、大人でも子供でも、ほとんどのケースで、愛情の不足を意味しています。
■ 精神的疲れ
私は岩を、というより、岩を登る自分のスキルを、まだ深く理解していないので、リードはエライ疲れるみたいです。
今年8月、三ツ峠でつるべを練習し、なんだか普段の登山とは異なり、すごく疲れました…。
その時は、単純に夏に弱いから、夏の疲れ(大抵夏は消耗して夏バテしています)かな?と思っていました。
しかし、城山から帰ってきて、考えを変えました。
というのは、城山の翌日、予想以上に疲れていて、その疲れ方は、三つ峠と同じ、ぐったりとした疲れ方だったからです。
これは、精神的疲れです。
今年の夏の三つ峠では、もう岩に行けなくなったのです。間一日の休息をはさんで、4日間の予定でしたが、最初の2日で疲れてしまい、残りの2日練習できず、パートナーを怒らせてしまいました…。
その三つ峠は、偶然にも、カサメリ沢で墜落をしてからの復帰でした。 私は墜落で、自分の歩く能力自体にも信頼を失ったので、その時はゲレンデで遊ぶくらいにしていればよかったんですね。今思えば。
そのことに無自覚で、普段通りマルチへいきなり行ったから、普通以上に精神的に疲れたのでしょう・・・。
三つ峠は、登るのが難しい場所ではないので、体の疲れではなく、心の疲れです。
しかし、パートナーはそこら辺の事情は、落ちた本人ではないし、分からないので、私が疲労困憊している理由が分からず、せっかくお盆休みを取ったのに…、と怒ってしまいました。それは分からないのだから仕方ないですね。
しかし、その疲れた状態で、岩に行っていたら、墜落したかもしれないと思います。
他の登山と比べて、岩はリスクに対するゆとりのマージンが少ないので、こういう精神的にデリケートな部分があります。
気分が乗らないときは登らない、というようなことですね。
■ パートナーシップ解消
相方とは、一か月ほど前に、パートナーシップを解消しました。
それは、突き詰めれば、このためです。
お互いに、互いの限界を知らないので、体だけでなく、心が岩に適合していないときに、互いにそうと気が付かず、相手に無理を強要してしまうリスク、がありました。
岩が(山が)、人をはねのけているとき、というのは、あります。
その時に行くことになると危ない。岩の場合は、ハイキングなんかよりシビアです。
他にも、行きたい山が合わない、とか、一緒にテント泊できない、という根本的な相違や問題がありましたが、それは、複数のパートナーを持つことで、皆やりくりしている部分です。
あの時は、カサメリ沢で墜落した直後だったので、走ると頭痛がするくらいの時でした。
どんな易しい場所でも、落ちたらダメなところと、落ちても良いところがあり、三つ峠は易しくても、落ちたら、ダメのところばかりです。
ただセカンドでよかったら、そこまで疲れなかったと思います。が、相方とはつるべの練習で出かけていました。
「セカンドでいいなら登る」と言えるほど、相方に甘えて良い、とは、まだそこまで信頼関係が出来ていませんでした。
私はどちらかというと、甘えるのが苦手なタイプです。なかなか甘えられませんし、甘えません。
私が甘えることができる相手は、すごく限定的です。
■ 本チャンでは疲れなかった
本チャンでは、登山と同じ疲れで、バテはしましたが、岩での精神的な疲れとは全く違う疲れでした。
実際、前穂北尾根では全然疲れてませんでした。セカンドは気楽だし、リードしたところも、普段の岩とは、くらべものにならない易しさでした。自分の登る能力や支点作成の確実さ度合いとくらべ、落ちる危険は全く感じませんでした。
あとで、ガイド登山の人は、5,6のコルから、ロープを付けると聞いて、あきれたくらいです。そんなことしていたら、日が暮れちゃうよって思いました。
■ 安全管理も自己責任で
一方、三つ峠も、易しい岩場ですが、「セルフ取って」と言われ、初心者が墜落死したりしています。
死なせたのは、非常に有名なガイドさんで、初心者講習で、その人は自分でセルフを外して、自分で、墜落してしまったのです。
三つ峠の支点は立てる場所にあるので、ロープワークがきちんと分かっていなかった、ということしか、考えられる原因はありません。つまり、自業自得です。つまり、自分で自分のケツがまだ拭けない人です。
師匠は、初心者を決して一人にしてはいけないと言っています。が、実際問題、初心者でなくても、支点の安全性が確認できる、信頼できる人というのは、あんまりたくさんはいません。
大抵のクライマーは、登れても、支点については、ほとんどの人が経験が不足しています。
なぜそう分かるのか?というと、去年、南沢小滝に連れて行ってくれた人は、アイスクライミングの上級者でしたが、作ってくれた支点はプアでした。
一般に、登る人は、登ることの方に夢中なので、安全管理はおろそかなのが定番なのです。それに気が付くには、男性の場合は自分がヒヤリハットを経験するしかないようです。
私も含めですが、安全については、過剰に心配しすぎるか、心配が足りなさすぎるか、のどちらかです。
ちょうど良いバランスを見つけるには、経験から積み上げていくしかありません。
が、経験から、あまり学ばない人が多いのです。
その人が経験から学ぶタイプの人かどうか?というのは、同じ失敗を繰り返しているかどうか?で推し量ることができます。
ラッペルステーションがあり、ケミカルアンカーがある場所(城山)は、墜落には良いところです(笑)
三つ峠は、岩登りとしては易しいですが、ランニングはハーケンだし、終了点は立てますが、間違った懸垂下降のセットでは、落ちてしまうかもしれません。空中懸垂になるところがあります。
一回も空中懸垂をしたことがない人が、いきなり三つ峠でトップで懸垂するのはやめたほうがいいかもしれません。
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