引き続き、針ノ木雪渓の反省です。
・ツボ足歩行(キックステップの直登、トラバース、駆け下りる)
・滑落停止 (ノーマル態勢から、頭が下の腹ばい・仰向け)
・ロープワーク(ATCを使った懸垂下降、プルージックでのバックアップつき登降、フィックスロープの通過)
■良かったこと
・気温の読み
あらかじめ天気予報をチェックして装備を決めるのは普通だ、と思いますが、やっぱり春山は温かいのを実感しました。
念のため着たフーディニでさえいらないくらい。R1とフーディニは冬のウエアとしては一番軽いのですが、それでも、暑いくらいでした。そりゃそうか1度でも暑いんだから、13度くらい気温があったので暑くて当然。オーバーパンツはイラナイと思ったけどやっぱり要らなさそうでした。みんな暑くて脱いでいましたが、脱ぐとオーバーパンツなんてやたら重い。ハードシェル着ている人は暑かっただろうな。
気温が高かったので、実はシュラフも夏ので良かったかもしれない。化繊のほうが濡れに強い。ただこれは指定がゴアシュラフカバーと会ったので冬を前提にしているらしかった。次回は夏用で十分だなと思いました。
・スコップ
スコップは持っていった人が少なかったので、あってよかった装備。暇だったので雪洞でも掘ればよかった。
湿雪だったので、スノーマウント作りにも最適そうだった。けど、みんな雪洞堀りにはあまり興味がなさそうだったんだな(笑)。せっかく、はななを持っていったんだけど…。
■学んだこと
・大型ザック
結論:大型ザックは大型テントで定着山行しなければイラナイ。
私のバリアント38は、拡張性があり、結局同じ量が入った。大型ザックは重さというより、嵩高いもののためにあるのかもしれない。
夫と二人で行くテント泊なら厳冬期でもバリアントでやっぱり十分だ。なにしろ二人用テントは1.7kgでポール込なのだから。象足だって2人分はいらないし、ランタンなんて持っていかない。コンロは小型で十分だ。
大型ザックを購入するとき、モンベルのお兄さんに「ウルトラライトの人には必要性がないですよねぇ」と同情交じりに言われた…のは、やはり最近の登山者の多くは、ウルトラライト志向なんだろうな~と思った。
最近の個人装備はとても軽い。私は夏のソロテント泊では、テント込みでも10kg行かなかった。
冬でも、テントを抜いて10kg以上行くなら、それは無駄なものを持っているってことだと思う。
無駄なもの…酒や嗜好品を含め…持っていくかどうか?の判断の分かれ目は、その山行のリスクによると思う。
今回のように歩く距離も時間も少なく、ほとんど宴会目的の山行なら多少重くなっても贅沢を選んで、重たいものを持っていけばいい。歩くのが遅くなったところで、大勢に影響がないのだから。
けれど、厳冬期でそれなりのピークを目指す山行ではこれはできない。リスクが高すぎる。だいたい歩く速度が遅くなるような重さを担ぐべきでないし、その山行に必要な重さを担いで、標準コースタイムから速度を落とさず歩けないなら、その山は単に行くべきでない実力以上の山なのではないだろうか?
ただバリアント38と同じものを入れても、大型ザックであれば考えずに放り込める。これは楽だな~(笑)。あまり考えなくて良いのが大型ザックの良いところだと思った。
今回買った大型ザックは、山ヤさんへのロマンへの投資、ということになるかもしれない。山では、でっかい荷物、重い荷物を背負っている人がエライ。その価値観は今も山で生きている。それを踏みにじるのは、新参者のマナー違反ってものかもしれない。これまでの山の文化を作ってきた人たちがいるのだから。
でも・・・、たぶん、私はこのザックを使っても、今年のお正月に鳳凰三山へ出かけたときに南御室小屋で見かけたお兄さんのようになると思う… そのお兄さんはザックがやたらデカく「テント泊ですか、すごいですね~」と声をかけると、うなづいて「重いですよ~」と言って、どっかとザックを背負おうとしたのだけど、意外に軽くひょいと持ち上がってしまったのだった・・・(笑)
山の人は温かいので、みんなの装備を監視し合っている。ザックが小さいとテントを持っていても持っていないのではないか?と想定されてしまう。大型ザックであれば、みんなが安心してくれる。それなら、大型ザックを背負って、ウルトラライトにしていれば、心配をかけることもなく、八方丸く収まるのかもしれない(笑)。
たしか山の先輩もこないだ18kgくらいだったよなぁ…85Lのザックだったけど。
それに今のバリアントに米を18kg入れるとショルダーベルトが食い込んで痛かったので、これを機に大型ザックは歩荷散歩専用にしておいて、日帰り装備をバリアントに入れたらいいよっていう神様のお達しかな。
・軽量化?
思うに、山では「重いほうがエライ」という価値観がまだ健在なので、軽量化、という言葉そのものに、心理的抵抗感があるのではないだろうか?
とすると、心理的抵抗感がない「必要なモノ以外持っていかない」などと、表現を変えるべきなのかもしれない。
今回は車を回していたので、私は食事の用意をしなかった。でも、見たら、肉のパックの発泡スチロールまで持ってきていた…(汗)。せっかくジップロックに移し替えたのに意味がない。
それなのに、水汲み用のバッグはなくて、水汲み容器はちょっと苦労したので(ただ水場まで5分だから別に何ともないのだけど)、私は90分しか歩かないのを想定して、水は大量にはいらないだろうと、サーモスだけに絞り、一応持っていったプラティパスを置いて出る判断をしたので、みんなが水入れをもっていないなら、もっていけばよかったと思った。プラティパスくらい軽いので入れておけばよかったんだった。
今回、なしで済ませられると思ったのは、ランタン。ヘッドライトが5人分もあればいらない。私はいつもは小型のLEDで済んでいるのでやっぱりイラナイなと思った。焚火を囲むテント泊の時は、テント内は寝るだけなので余計要らない。
ダウンパンツは持っていかなくて正解。象足は持って行って正解。
「荷物が重いほうがエライ」という価値観の割に共有されていないのは、「プアな道具でなんとかデキルほうがエライ」という価値観で、つまりは、ATCがなくてもカラビナで確保できるほうが本当は偉いんだが、そっちのほうは山ではあまり共有されていない。
豪華な装備が目白押しだった…マット2重とか…(汗)春山でマット2重だったら、厳冬期は一体どうなるんだろう?!
■ 体力
体力はそれぞれなんだなぁっていうこと。体力があればいいってもんじゃないけど、体力がないと山では危険が増してしまう…。90分しか担いでいないで、4,5時間の講習中はほとんど空荷、体もそんなに動かさない…そんな1泊二日の山行で疲れていたら…やっぱり厳冬期で7時間かかる山には行かないほうがいいかもしれない。
厳冬期 観音岳山頂から |
私たち夫婦の体力は、特別に強いものではなく、一般の40代サラリーマンの平均的なところでしかないと思う。
ペースは一時間300m、一日の歩行時間は10時間くらい、標高差1500を日帰りは平気なくらいでしかない…。
けれど…それでもやっぱり若さと言うものは、大事な資産なんだな、それを生かせるうちに生かしておかないといけないな、と思いました。
私の山の先輩は、厳冬期北岳1泊2日だからなぁ…。人を連れて歩くからには、それくらいは欲しいところだろうし、そうでない人は人を連れて歩くべきでない。自分を含め。
ちょっと前に天狗岳に行ったときに、途中ですれ違ったおじさんに山頂行かないの?と聞くと、おじさんは、わたしが2時間未満で歩く道を、4時間かかるのだと言っていた…。だから行かないのだと。
男性の、そう年も離れているようには見えない登山者のおじさん…は、少しさびしそうだったけれど、山に来るだけエライと思った。自分の力をわかっていれば、今は山小屋がいっぱいあるし、無理をしなければいいだけなのだ…
私だって立派な中年で山を始めているわけで、今2時間で歩ける道を1時間半で歩けるようになる可能性より、2時間の道が3時間になる可能性のほうが高いと思う。残念ながら、それが成長期を過ぎた大人の登山のあり方だと思う。
そうであれば、2時間の道が3時間かかるようになったときにどう自らの安全を確保するのか?そういう発想で、年齢が若い今、できることをやっておくのがいいのかもしれない。
たとえば、岩場だって、滑落停止だって…今は平気だけど、足が上がらなくなるかもしれないのだし…そうなった時に岩場の安全通過術を知っているほうが知らないよりいいに決まっている。懸垂下降も70代になって身に着けるより、40代で身に着けるほうが良いに決まっている。
■自分を守るためのロープワーク
ロープワークは、ちょうど最近習ったところのものが講習で出てきたのと、クライミングの本を10冊くらい読んだところだったので、そんなに難しくは感じなかった。
ロープはパートナーの夫と知識を共有していることが重要なので、一度夫と乾徳山に復習がてら行くか、と言う感じ。
夫はボーイスカウトだったからロープは得意みたいなんだな。でも、お互いに確保できる、という体験知が欠けている。
確保は確保器を使うバージョンも使わないバージョンも二通り必要だと思った。というのは、一般登山者は、普通は確保器なんて知らないし、要らない。
カラビナでさえ、何を買っていいのか分からないし、そもそも普通の登山でカラビナはイラナイ。日本の一般ルートを歩いているかぎり、そんな確保がいる道を歩くことはまれだからだ。
ただ体験していないことは、いざピンチになった時にできないので、半年に一回くらい夫と安全地帯で懸垂下降とお互いをビレイする方法を確認し合った方がいいかもしれない。
スタンディングアックスビレイは、とても用途が広いので、覚えておいてよいのかもしれないと思った。
でも…私が歩きたい八ヶ岳の稜線は、雪がそれほど強固でなかったり、稜線は土が露出していたりして、すってんころりん600mで立場川まで落ちてしまう鉾岳あたりの通過に際して、どんな技術が使えるのか?というと、確保術ではなくて、結局は落ちない歩行技術の方だったりするんだな…
権現の先にある旭岳は普通に歩けた。けれど、それをどう先輩の確保という、安心の傘なしで、行かせるか? それが自分の山を作るという行為だと思った。
■ 歩行技術
講師は「歩くことを普通の人は考えない」としきりに強調していた。
そうなのだろうか?
私なんて、歩く度に歩き方研究しているようなものだけれど…女性は一般に歩き方に対する認識が男性よりは高いのではないだろうか?それはたぶん単にプロポーションの崩れが気になる、という理由で(笑)
軸が崩れた体は、きれいな形の筋肉が付かないと思う。
バレエをやっているとバレエらしい体格になる。 それは使う筋肉を指定されているからで、その筋肉を使っていないと間違っている、として直されるから。
登山もそうしたらいいんじゃないかと思った。
というのは、キックステップでしっかり軸足に乗れない、なんて人が本当にいるとは思えない。
だって片足立ちができない人は世の中に居ないだろうから。キックステップは結局片足立ちのことだ。ピッケルと2点確保になります。
だから、登山者の歩き方がなっていないと責める前に、教え方が悪いんじゃないか???って話だ。 これは登山界全体で。 すごく難しいことのように聞こえるのだけど、結局 要は一本足。そこがわかりづらい。
キックステップは軸足に完全に乗ります。それは単純に言えば一本足になるってことで、平地の階段でも練習できます。トラバースだって原理は同じで、単純に垂直、鉛直のラインに立つ、ということです。
バレエなんか回転技があるから、鉛直のラインがないとピルエットなんてできない。だからみんな一本足で立っている。登山者も一歩足で立つ練習を積めばいいだけなのではないだろうか???
■ 当たり前のことが丁寧にやる
当たり前の普通のことを丁寧に味わいながらやるのがヨガです。登山はそれと少し似ている。
登山で大切なことは、基本的に当たり前のことばかりで…その当たり前のことを、考えないから、リスクが増える。
当たり前のことは、なんてことのない晴れの日には、重要さがわかることがない。
雪が降り積もっていなければ、濡れが致命的だとは感じられないし、クラストしてつるつるの地面でなければ、アイゼンのありがたさは分からない。
ふかふかの雪でなければ、スノーシューもわかんもただの重しでしかないし、手袋を何気に置くな、と言われても、てぶくろそのものが要らないような好天の下では、ただの小言にしか聞こえない。
タカマタギでは、1時間の間に、雪にさしていたピッケルが見えなくなるほど降雪があって、ピッケルを無造作に雪に指していてはいけないという教えの大切さやホワイトアウトの怖さが分かった。
ウエアは明るくないと視認性が悪い。
雪渓=雪崩の巣 だけど雪質による。判断が必要だ |
だから、いざという本格的な困難に、そうでない状況下で備えるのは、想像力の勝負となるわけだ。
どれくらい想像力を働かせられるか?
そういう意味では、やっぱり、講習山行は、悪天候であればあるほど、勉強になるわけで、今回のように大晴天だと、むしろ技術を軽んじてしまうリスクの方が増えて、逆効果になる場合もあるわけで…それはそれで問題かもしれない。
そんなことを考えた講習会・・・結局結論は、夫と二人歩くのが、実は一番安全なんではないだろうか・・・でした。
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