Wednesday, April 10, 2013

登山中の救急法 備忘録


登山中の救急法についても学びました。出展はすべて山岳総合センター資料より。筆者による要約。

≪まとめ≫

 ★ほぼすべての登山中の体調変化が脱水に起因する。
 
 ★体温は、我慢ではなく、管理すべき項目
 
 ★登山中は丁寧に呼吸をする
 
 ★炭水化物を中心に食事をとる


■水を飲むべし!

・運動中のエネルギーは、仕事には使われず(16%)、84%が体熱の発生に使われる。
・水を飲まないと放熱されない

→ バテる。

・自由に水を飲むだけでは不足し、1時間ごとに脱水量に見合った量を飲む

■脱水の症状

・筋肉のけいれん
・疲労   血液濃度が濃くなるため 頭痛、倦怠感など
・熱射病
・急性高山病
・持久力低下 2%の脱水で、運動能力は10%低下
・血栓   脳卒中や心筋梗塞を引き起こす
・むくみ  脱水のために出たホルモンによる
・凍傷
・低体温症

脱水は100害あって一利なしですね! 脳卒中や心筋梗塞は持病の発病ではなく登山中の脱水が、引き起こしたものかもしれません。

むくみについては、冬山でも思い当たる節があります・・・うーん。このほか不眠も登山中の脱水が
原因であることがあるそうです。

■脱水と死

・2%で喉が渇く 5%で頭痛がする、20%で死に至る

・見分けるには、親指の爪を押してすぐに戻らず3秒白いままだと脱水 またはハンカチーフサイン

■ どのくらい飲むべきか?

・体重1kg当たり 50ミリリットル =50kgの人 2500ミリリットル

・1時間の行動で体重1kgあたり、5gの喪失

 (必要水分量)=5g × (体重)×(行動時間)

  ※体重50kgの人が行動時間8時間の場合 5×50×8=2000 2リットル必要

■何を飲むか?

・スポーツドリンク(イオン飲料)を2倍程度に薄めて飲む
・OS1 経口補液 水1リットル 塩3g 砂糖40g
・水だけを飲むと自発的脱水が起こるため

■熱中症

・熱痙攣 こむらがえり
・熱疲労 頭痛、吐き気 熱射病の前段階
・熱射病 意識障害が発生し、死亡する危険が非常に高い

・手当は涼しいところで衣服を緩める 脈が弱い場合は足を高くする
・水を飲ませる
・腋窩などを冷やし効率的に体温を下げる
・意識がない場合は回復体位を盗らせ、心停止の場合は心肺蘇生を行う

■熱射病の条件

・気温、湿度、無風
・~24℃まで ほぼ安全
 ~28℃ 注意
 ~31℃ 警戒
 31℃~ 厳重警戒

★熱射病のリスクは標高の高い山より低い山が高い。風のない樹林帯の方が稜線より高い。
夏の雨後の樹林帯は非常にリスクが高い

■急性高山病

・酸素分圧は3000mで地表の2/3 まで低下。
・一回の呼吸で吸う酸素量が低下するため、起こる。

食欲不振、疲労(脱力)、めまい、睡眠障害 の4つを伴うもの。

・高所脳浮腫=精神状態の変化と運動失調
・高所肺水腫=安静時呼吸困難、咳、チアノーゼ、ゼーゼーという音、頻脈

対処法:
初期症状の場合: ①動かない ②水分をガンガンとる ③休養 ④深くゆったりした呼吸法
中程度の場合: ①ともかく高度を下げる(300m以上) ②初期症状の対応を取る
重症の場合: ともかく高度を下げること! 朝まで待たない!!

・酸素ボンベは役に立たない
・ガモウバッグ
・予防はゆっくり上ること
Climb high, sleep low =高所順応 BCからピークハントしてBCで寝る
・スポーツドリンクのお湯割りが有効な場合がある
・着替えさせる
・湯たんぽを足元に置く
・爆弾低気圧によっても高度障害がおこることがある
・高山病の遺伝子がある: DR-6、DQ-4
パルスオキシメーターで計測できる。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E5%8F%A3%E8%A3%9C%E6%B0%B4%E5%A1%A9

■低体温症
・外的要因: 寒冷+濡れ+風=低体温症
・内的要因: 薄着、空腹、寒さへの抵抗力低下、飲酒、脱水、知識不足

・36度で寒気がする、34度が山中で回復可能な下限、32度で意識が喪失する
意識がない低体温症(32度以下)は山中では回復不可能。無理に温めてはいけない。
・特殊な機械による丁寧な回復処置が必要なため、体を揺さぶったりも良くない。デリケートに丁寧に扱う。

・予防は 衣服、濡れ、風、食事、水分、避難、早期発見(寒いと感じたらすぐ)

低体温症は急激に進行するため、稜線を300m歩くだけでも症状が出てからきわめて短時間に死亡する

・処置:風雪を避け、腋窩など効率的に体を温める。糖分が入った飲み物を飲む。
・重症の場合:丁寧に梱包しておく。加温しない。マッサージ禁止。

■疲労

・乳酸がたまる=疲労
年齢により、疲労せずに歩ける心拍数が違う。(220-年齢)×0.75 

・傾斜がきつくなると心拍数が上がる
・ザックが重くなると心拍数が上がる

脳は乳酸が出るとキツイと感じる。キツイと感じないぐらいで歩く。

・下山では着地に注意する。筋肉痛=下山で発生
・登り=大腿四頭筋、下山=下腿三頭筋


■何をどれだけ食べるか?

・シャリバテ: 登山ではフルマラソン程度のエネルギー消費量になることがある
・脂肪を燃やすには炭水化物が必要
・糖質は即効性がある

・(必要カロリー)=  1.8 ×行動時間 
          + 0.3×距離
          + 10.0 ×登りの標高
          + 0.6×下りの標高

          × (体重 + ザック)
            
 (出展:『登山医学』 26巻)
       



 

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