乾徳山に行ってきた。前に乾徳山に行ってから、ずいぶん間が空いてしまった。2年ぶり。当時は、まだロープワークを身に着けようと、始めた頃だった。
今日、乾徳山に来たのは、トレーニング向けの山の偵察だ。
乾徳山は最終集落の徳和から、すぐの山なので、アプローチで除雪に悩まされることがないだろう・・・という思いからだ。それに最近、避難小屋が新しくなっており、ちょっとした集まりに使えるのでは?と知っていた・・・。先週のわらじ納めの転進先にどうかな?と思ったけれど、まだチェックしていなかったので、提案せず。
雪の山はアプローチが課題だ。住んでいる人のための除雪なのだから、集落がないと、除雪がない。
茅ヶ岳も、その点、合格の山だが、茅ヶ岳は2時間で行って1時間で下りてしまえるようになってしまい、1時間の運転が割に合わない。茅ヶ岳は、ショッピングセンターのラザウォークと一緒にする。わざわざ1時間も運転して、山だけしか行かないのは、なかなか正当化できない・・・。
■ 思いついたらすぐ行ける山
行き先は、朝の晴れを見て、決めたことなので、バタバタと支度をする。サーモスにお湯を詰め、保温ジャーに昨日の夕飯の残りの、根菜のトマトスープ、を温めて入れる。ヘッドライト、コンパス、非常用品・・・ザックは沢のためにバックボーンを抜いているので、日帰り程度の装備だと、ゆるゆるで形にならない。それで、適当にその辺に転がっている2リットルのペットボトルを2本つっこむ。緩衝用にナノパフを放り込む。それでもザックは軽い。
日帰りで歩いているだけだと、いつまでも背筋力はつかないかもしれないと思ったりもする。重い荷を持つ経験、軽くして走る山、どちらも必要だ。
朝、車を出してから、空を見て、行先を変更し、乾徳山に決めた。最初は、また定番、茅ヶ岳でいいか~と思っていたが、東西南北と空をみて、一番晴れていそうなのは、東の、それも甲武信より盆地側だった。
■ 近い山
10時に徳和に着く。徳和公園はスマホのナビに出てくるのがありがたい。
・・・が、駐車場の案内板を見ると、駐車場の標高は830で、山頂は2000ちょっと。たったの標高差1200しかない・・・ということに、がっかりする。
そそくさと出たので、地図がない。スマホのアプリに2万5千の地図をその場でダウンロードする。これで、電波が取れなくなっても、大丈夫。拡大もできるので、紙よりむしろ、こちらのほうが実は便利なのだ。もちろん、電池が切れたら、ただの重し。
日ごろ、地形図を持とう!と主張しているにも関わらず・・・スマホの地図かい!ということだが、乾徳山は前にも来ていて、地形図を見て、尾根と水線を入れ、概念を把握する、ということは、とっくの昔にやってしまっているんである。だいぶ前だけど。
■ルートが色々ある山
歩きだすが、ルートも気分で決めた。舗装路を歩く気になれないなと思い、舗装路から一番早く解放されそうな、道満尾根に決める。でも、道と満という字、気にいらない。”金満”みたいで。
すぐにゲートが出てくる。鹿の通行止めの為だ。山梨では鹿の被害が多い。ゲートの鍵は、鹿には解明できず人間だけが分かる、賢い仕掛けになっていた。
道満尾根は近所の藪山と同じ雰囲気の尾根だった。当然か。近所だもんね。車で40分は、盆地内では近所とは言わない。が、我が家の裏山、愛宕山と山域としては、同じ山域。
道満尾根は、尾根なのに、登山道が深くえぐれている。多くの人が通った証だ。尾根を人が歩くと、通った跡がくぼみ、そこに石ころや落ち葉が集まる。それで通りづらくなるので、今度はそこを外して、尾根の歩きやすいところに、また道ができる。ここもそうなっていた。こうなっていると、雪の時も、ルートが明瞭。
■ 携帯が入る山 & 色々な楽しみがある山
山梨らしい明るい尾根を気分よく歩いていると、ケータイが鳴った。週末の山の相談。それで気分が一気に明るくなる。
”パンがないならお菓子を食べればいい!”ではないが、雪がないなら、岩をすればいい。山で出来るアクティビティは多い。今日みたいな歩きもあれば、岩も、沢も、雪もアイスもある。
全部ひっくるめて山だから、全部やっている。
山が差し出すことに、文句を付けまいと思ったのだ。あれは嫌だ、これは嫌だ、は、人間の方の都合だ。尾根しかやりません、などと食わず嫌いを言うのは、よろしくない。山には尾根もあれば、谷もあり、壁もある・・・全部、山なのだから。
尾根以外を知って、山に対する見方が確かに広がったな~と思う。尾根しか知らなかったら、分からなかったことがたくさんあった。たとえば、岩が実は、とても頼れる相手なのだとか。水場の探し方とか。アイスは自然が作った、率直な登路なのだとか。
道満山の手前で、向こうから、若い男性の登山者が降りてくる。若いと言っても、私くらいだけど・・・。ずいぶん早い下山だなと思う。まだ11時くらい。この時間で降りれるような山だということだ。ということは、あまり山頂まで時間がかからないのであろう・・・。
道満尾根は、地形の尾根通りには道が付いておらず、ピークを飛ばして、トラバースしている。ということは、つまり、先を見て、合理主義的に距離を節約するために、ピークが飛ばされたということで、要するに、まだ先が長いという事だろうと思ったのに。
彼らが降りてきて以降、距離を稼ぐために、わざと地形に忠実にピークを飛ばさず、登る。
あろうことか、立派な林道にでてしまった。そこは前に来た時には、もっと荒れていたのに、今は軽トラなら、楽に通れそうな立派な道になっていた。砂利道ではあるが、平坦だ。大平牧場が眼下に見える。
ああ、あの道かと思う・・・こんなところ、通ったっけ?と思うが前に来た時は、林道から番号を数えて歩いたんだった。こんなに立派な道ではなかったということは言える。
いきなり展望が開け、草原となり、見覚えのある月見岩に出る。12時14分だった。
向こうから、オジサン登山者二人が降りてきた。挨拶すると、どこから?と訪ねられる。道満尾根からというと、そのコースは時間がかかるほうだと言う。でも、登り2時間だから、下りは8割のはずだ。月見岩から山頂までは1時間だから、トータル3時間で登れる山は、時間がかかる山という訳ではないかもしれない・・・。
二人は八王子からだそうで、この山は慣れているようだ。避難小屋が新しくなったことなど、少し話をする。
「では・・・」と言うと、一人が「ここから先は何もないよ」と言う。いや、こっから先が本番って感じの山なんだけど・・・。乾徳山は山頂付近の鎖場が有名な山。岩がいっぱいあり、それぞれ名前がついていたりする・・・。
たしかに偵察は、新しくなり、キレイになった避難小屋が目的なんだが・・・。
2時間しか歩かないで降りたら、もっと残念な山になってしまうだろうなぁ・・・。
月見岩から先は1時間とあったが、13時に着いたので、45分くらいか。
■ 念仏岩 & 旗立岩
途中に最後の山頂直下の長い鎖場より、クライミング的な念仏岩がある。太い鎖が2本渡してあるが、いつも鎖があっても意味がないな~と思う。登山靴だと乗るところが小さい。クライミングシューズなら、楽勝だ。でも、こんなところで、一人でいるときに、コケでもしたら、大事になるので、チャレンジはしない。普通に歩ける所を行く。
ここ、コケたら、岩で頭を打って大けがだよなぁ・・・と思う。
今日は思いついて出たので、登山届は出していない。かと言って、乾徳山くらいの山に行くのに、登山届を出していないのだから行くな、というのも、変だと思う。単独ではだめだ、というような気持ちにも全くなれない。しかし、用心はする。
例えば、ねん挫したら?ねん挫くらいなら、携帯電波が入るところまで、降りれるだろう。
尾根の反対側に落っこちたら?まぁ、ほとんどアリエナイ想定だが、それでも遭難したら、駐車してある車で追跡できるだろう。まぁ死んでいると思うけどね。そもそも落ちるような場所はない。
あれこれ考えるが、山頂直下の鎖場も通らないで、裏から登る。前に来た時には、なかった残置のロープが、あちこちにあるが、なんでこんなのいんの?という感じ。まったくいらない。
けれど、その辺の立木を寄せ集めてきて作ったと思しき、木製ハシゴ・・・は、怖い。横木の一つはかなりすり減って、体重が重い人が乗ったら、へし折れそうだった。
山頂から、黒金山方面を見る。あっちに縦走したいと思いながら、やっていない。
茅ヶ岳方面は、見るからに寒そうな雪雲に覆われている。たぶん、南アの上のほうだ。
富士山は山頂部が見えない。甲府盆地が平べったく見える。採石している山の肌が痛々しく見える。360度見回して、今日は、この山で正解だったと納得し、時間も遅いのですぐに降りる。13時7分。
下りに、岩場を偵察するも、どこにも終了点らしきものは見当たらない。どこなんだろうなぁ・・・旗立岩の終了点は・・・。そうしていると、雪がちらついた。ほんのちょっと。
旗立岩は支点が整備されていない初級の本チャンだ。山岳会の新人さんにアルパインの岩ってこんなことだよ、と紹介するのに良いような場所だそうだ。
行ってきたら?と紹介してもらったものの・・・一緒に行く相手がおらず、実現していない。山岳会の先輩たちは、支点が整備された岩場しか行きたがらなかったのだった。たぶん、そんなに自信がなかっただけだと思う。
かといって、初心者二人、雁首揃えても、支点がないところの方が、支点が整備された小川山マルチより難しくなってしまう・・・と思い、小川山より、実現していない。
旗立岩を思うと、一般的な東京方面の山岳会が羨ましく思える・・・隣の庭は青く見えるってヤツだ。どの会の記録にも、でてきそうな初級の岩場で、アルパインのオーソドックス(?)というような、感じがするからだ。「山梨の山岳会なのに、旗立岩、知らないの~」と言われた。
とはいえ、支点が怪しい場所は三つ峠でさえ、連れて行きたがらなかった山岳会なので、旗立岩に一緒に行ってくれるとは思えなかったし、それもそうだな、と納得しつつあるのも事実だ。岩場でピンチになった時に支点を打ち足せる技量があるか?というとないかもしれないし、支点を追うようなクライミングしかしていない人に、自然の岩場でルートファインディングを期待するのも酷だ。ルーファイだけ成立していれば、おそらく登れるような岩場だとは思うけれど。
2年前、私がこの旗立岩の話をしたために、他の人が行ってしまった。
フリーの人は、アルパインの人と違って、初登を重視しない。誰かが行きたいと言っていたところを、小耳にはさんで、抜け駆けして行くことを悪いと思っていないみたいだ。
後で、先輩に「〇〇に行きたいって言うんじゃなかった」と言ったら、そういうことはよくあるよ、だから、行きたいルートは黙っていることだ、と教えてくれた。
まぁ、今となっては、それはビレイをマスターした分の恩返しと思っている。誰しも行くところがなくて、うっぷんを貯めているのだろう。まだ岩を始めたばかりの私でさえ、遠征しないと行く岩場がないなと、このところ感じるくらいだからだ。特に冬季は。
■ ベースとなる場所と水場
月見岩へは、14時前に着き、草原の少し先の新しくなった避難小屋の高原ヒュッテに入ったのは、14:05だった。そこでランチを食べる。昨日の根菜スープ。ゆっくり食べたが、2分しか、かからなかった。
噂にたがわぬ、きれいな小屋で、ストーブもあり、宴会もできそう。寝具などは何もない。土間の掃除用にほうきと塵取りがあるくらいだ。だが、できたてほやほやのぴっかぴかで、無垢の板の壁には、ホールドを取り付けたい気持ちにさせられる。
小屋の様子を写真に収め、小屋を出たら、14:10.周辺は、昔は共同の茅場だったらしく、白樺の木立で、どこでもキャンプによさそう。枯れ枝もたくさん落ちていた。
あとは、水場だ。銀晶水場にすぐにつき、細い塩ビパイプで取水しやすくしてあった。脇に、プラスチックの筒というようなガラクタちっくなものが、二つ置いてあった。コップだ。
この場合、この質素な塩ビパイプと、プラコップは、必要にして十分な、役立つもの、だ、と思った。粗末なものだけれど、プラスチックではなくて、ガラスのコップが置かれていても困る。木製でも金製でも、いまひとつで、耐久性と、誰にも持ち去られないためには、どこかのパイプを割っただけのようなプラコップで十分なのだ。
■ 集落
あとは、徳和への道を下りた。途中、また林道とクロスする。山梨は本当に使われていない林道が多い。
集落で道を少し間違い、歩く量を増やしてしまったが、下山1:40と道標には書かれていたが、当然だが、そんなには、かからなかった。15時15分ごろ下山。
案内板には、徳和渓谷、という名前もあった。夏にいいのかもしれない。
集落は、純和風の昔ながらの農家の作りの家がまだ残っていた。こいのぼりを立てる竿が懐かしい感じ。なかにはものすごくお金持ちもいるらしく、ピカピカの家もあり、純和風のひなびた集落には似つかわしくない、お城風の洋風の家もあった。とてもチグハグだ。
後は車を飛ばし家に急ぐ。今日は帰りに買い物もしたいから・・・。残念ながら、甲府へ向かう通りは、渋滞がもう発生していて、いつものスーパーまでが核心部。
・・・という山だった。
■ コスト
・ランチ代、残り物利用でゼロ円
・駐車場 無料
・交通費 34km リッター17km、150円/Lで、往復 600円
■ 参考コースタイム
登り3時間、下り2時間 林道20分
徳和公園 10時 (道満尾根ルート)
道満山 11時
月見岩 12時15分
乾徳山山頂 13時6分
月見岩 13:44
高原ヒュッテ 14時 ~ 14時10分出発
欽晶水 14:18
徳和公園 15時34分 (おそば沢ルート)
■ その他
旧坂本家住宅
徳和渓谷
■ 山のグレーディング
乾徳山 技術的難易度…C 体力度…3
黒金山 技術的難易度…B 体力度…2 (乾徳山林道駐車場から往復)
乾徳山周辺マップ
山頂付近から、大平牧場方面。
雪雲が南ア方面は濃い。
でも降りたら、櫛形山はくっきりとしており、雪雲は北岳の向こうのようだった。
高原ヒュッテは白くて新しく可愛らしい。
冬季はトイレ閉鎖で、通年無料開放。
ピンボケですいません。
ホールドを付けたくなる壁。
まきストーブ。向きが悪い。座って薪をくべられるようにしてくれないと。
トイレは、靴を脱いで入るスタイルだそうだ。すごい。
徳和集落で、成功したビジネス?
No comments:
Post a Comment