今日は、金田正樹医師の『感謝されない医者』を読んでいました。
自らの意に反して、凍傷治療の権威と呼ばれてしまった整形外科医のお医者さんの話です。凍傷の事例を見るために読みました。
さて、この本からの抜粋です。2007年の著作ですので、情報としては古いかもしれませんので、そのあたりをお含みおきください。これはあくまで、この本を読んで役立つと思われた所の抜粋です。
■ 凍傷の発生のプロセス
1)ジンジンした痛み
交感神経が優位になって血管収縮し始めたころ 末梢への流れが悪くなったシグナル
2)痛みが感じられなくなる
紫色のチアノーゼになり冷たくなる
3)時間の経過で白っぽくなる(白蝋化)
皮膚を押してみて弾力がある ⇒ 深度が深くない(表在性凍傷)
加温でかゆくなる
水泡ができる
ここまでは表皮までの深さの凍傷で皮膚の再生能力がある
水泡は自然に水分が吸収されしなびてしまう
水泡は、外部からの細菌感染と真皮の乾燥化を防ぐという役目を担っているので除去は厳禁。
2~3週間で表面が黒くなり、自然脱落する
その後は寒冷にさらさない
元の状態になるまで3か月を要する
それ以外 ⇒ 深部性凍傷 凍傷が骨にまで及んだ状態
黒に近い褐色や濃い紫
腫れず、しなびている
3週間で分界線が明確になる
・白蝋化した指は両者の中間であることが多い。治療を急ぐ必要がある。
・深部性と表皮性とにはっきり分かれるわけでなく、重症化するケースも多い。
・誤診で重症化することもある。
・水泡を除去すると例外なく悪化。
・受傷後、1週間以内に治療を開始しないと予後が悪い。
・プロスタグランジン(PGE1)の点滴が最適である
・ヘパリン療法は禁忌である
・局所はイソジン消毒し、乾いたガーゼで覆い、通気性のある保温状態にする
・凍傷患者は、表在性、深部性を問わず、再び寒冷に晒すと凍傷になりやすい。
・1年目が特にそうで、長いと4~5年続くことがある。
・温浴とともに温かい飲み物を摂取することが最も重要。
■凍傷は予防できるか?
1)冬季の登攀では、トップのルートファインディングが遅れると、セカンドは長い間ザイルを握っておかねばならず、凍傷になりやすい。(長時間ビレイしている人になりやすい)
2)冬山の行動時間を短くする努力を行う。(大人数での登攀は長い)
3)歩き始めに手足の準備運動を十分に行う。
4)脱水に気を付ける。行動中サーモスから飲む温かい飲み物は凍傷予防の特効薬。夜、朝も水分を多めに取る。酒、コーヒー、ビールはほどほどに。
5)着るものを濡らさない。濡れた状態で稜線に出ない。手袋はスペアを持つ。
6)星状神経節(首)を寒い風にさらさない。
7)手首を露出しない
8)ビバーク中の凍傷が多い
9)喫煙は禁忌
10)寒冷地で生まれ育った人は、雪の降り方、雪質、風の変化から天候の変化を体感的に予測する。予測するからこそ防御も出来る。
八ヶ岳は、登山人口の多さもあり、凍傷例が最も多い。しかも、そのほとんどが稜線上での受傷である。寒さに対する早めの対処が遅れている例が多い。寒さ、冬の天候変化はフィールドでなければ分からない。寒さになれ、気象の変化から身を守る方法を学び、効きの察知能力も現場で学ぶしかないと思われる。
山登りとは、他のスポーツ以上に自己管理能力を問われるスポーツである。
ーーーーーーーーーー以上 筆者抜粋
足の故障
■ 感想
八ヶ岳のリスクは、寒さ。私たち夫婦が小屋に泊まっている間にも、学生さんが凍傷になったと言って小屋に駆け込んできたことがありました。 すぐに温浴していました。
八ヶ岳に遊びにいって指が短くなって帰ってきたら、とっても悲しいですね。
この本によると、2007年に上梓された本ですが、凍傷患者の高齢化が指摘されています。当時から、もう8年もたっています・・・やっぱり、山は高齢化が著しいみたいですね。
先日の黒百合平も高齢者がたくさんいて、大丈夫なのかしらと不安になりました。行動のための体力と防衛の体力はなんだか違うような気がするからです。 いざという時の力はやはり若い時ほどは出ないのではないかと。
中高年のリスクは ズバリ”過信”と言われていますが、体力に過信があると行動が完結できない・・・というのは、自分がいる会でもあったことでした・・・ビックリ。
この本には、忘れられない患者さんのエピソードがありますが、中島俊弥さんと木本哲さんのエピソードが印象的でした。
この本にも書かれていますが、凍傷というのは、自分のうっかりミス、です。
まさか、凍傷になった俺にうぬぼれている人がいないといいと思っていますが・・・大丈夫ですよね?
≪参考≫
日本のエベレスト登頂者リスト
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