土曜日はバットレスの前座で、中山尾根を予定していましたが、転進で太刀岡山になりました(^^;)。
カモシカのあかちゃん |
中山尾根はそんなルートのひとつ。季節柄、夏は暑い低山の岩場ではなく、涼しい高い山が快適ですね♪
が、標高が高い山は、普通の登山と同じように標高によるリスクが一杯。
その一つが、天候です。標高が高い=天気が悪い。特に夏はお天気の急変が問題で、午後は落雷が問題になります。落雷を避けるためには午後の遅い時間帯(14時以降)は、稜線にいないようにしないといけないので、落雷のリスクをヘッジしたら、急いで登って急いで降りる必要があり、急ぎたくない、もしくは急ぎたくてもできない場合は、朝の早起き、がリスクヘッジになります。 中山尾根は取り付きから4時間でトップアウトでしたが、我々の実力ではあやしいところでした。
23日の天気予報は悪く、平地は曇り、山は朝から霧もしくは一時雨、午後から雨・雷雨の予報…。
私は山では弱気の人なので、初の高山のマルチではありましたが…前日から「敗退濃厚」と思っていました。ほとんど敗退を確認しに行ったような感じです。
5時集合を4時集合にし、3時起きで、一目散に八ヶ岳へ…。5時半にはすでに歩いていたのでしたが、行者小屋にたどり着く前に雨が降り出し、午後に向かって天気は下り坂であることは分かっていたので、6時半は撤退決定。7時半下山終了と、まぁ素早い!即決ってステキ!
なんというか、これから出社できてしまいそうです(^^;) あ、土曜日で出社はしないでいいんでした。
去り際に見えた、駐車場のおばちゃんがなんとなしに嬉しそうに見えました… そうだよなぁ…ほんの2時間くらいしか駐車していません(^^;)
そして、相談の結果、盆地内にある山なら、800hPAの気圧配置の影響を受けないだろう、ということで、低い山を目指します。
候補は太刀岡山です。 太刀岡山であれば、クラシックアルパインルートの左岩稜。太刀岡山はアルパインのルートで知られていた場所のようですが、今ではフリーのルートもいっぱいあり、『日本100岩場』にも載っています。
・・・って、易しいマルチと言う意味では、中山尾根よりうんとむずかしいんでないんかい???
難しさの話で言ったら、バットレス四尾根より難しいですけど・・・これが前座って・・・(汗)
バットレスは登山靴で開かれたルートですが、太刀岡山左岩稜は、クライミングシューズで開かれたルートです。左岩稜のほうが難しいのは、最初のピッチがあるのと岩がかぶっているからです。
バットレスは行動時間が長く、体力が必要で、また岩場が落石などの危険がより大きいです。
■ ピッチの詳細
1P目 5.9 20m ハンド~フィストのクラック。 キャメNo3が複数必要。最初の出だしがかぶっています。
2P目 5.7 20m 凹角。クラックにカムでビレイ点を作る。少し被っています。
3P目 5.8 20m ハンドクラックから、スクイズチムニー。ルートは二つ取れ、人がギリギリ入れる岩の中を行き、奥のクラックを登るか、またはフェースを登る。ここは残置のカムがあり、ナッツキーを入れて取り出そうとしたが取れず。
4P目 5.5 20m ここから岩稜。含む歩き。
5P目 5.8 20m ここは岩を飛び移るところがある。カムで支点を作る。
6P目 5.6 40m ここではロープの流れに注意。祠のある鋏の広場は小山ロックへの登山道が通る。
7P目 5.6 45m ここはフェイス。でも5.6とは思えないなー ホントに5.6なんだろうか?前回来た時の残置の支点セットが無くなっていた…。
■ 帰うかと思った・・・
岩稜ってやっぱり尾根なんだな~と思いました。尾根って大体、末端が急です。それは岩尾根でも同じようで、最初なんて、被っています(汗)
しかし、ここで5.9とはとても思えない…。正直に言うと、このピッチで「すいませーん、登れませーん。帰りまーす」と言わねばならないかもしれない…と思って登りました。
とりあえず、登れないと思っても登ることにしているのですが…ここはやっぱり、とっても難しく…苦しんで登りました。ホントに5.9なんだろうか。カムでAゼロして切り抜けました。
しかし、帰るにしても、岩では懸垂支点がないと敗退することもできないのです。ともかく登れるか登れないかより、懸垂支点があるかどうか?そこが問題です。しかし、まぁホントにここは大変でしたねー。
上に懸垂支点になりそうな立木があったので、帰ろうと言い出すなら、そこだな~と思っていました(笑)
次のピッチは少し内面登攀だったので、少し易しくはなりましたが、落ちれないのは一緒だし、内面登攀ってジムで練習したりはしないので、超緊張。突っ張りながら登る。
ここもいいところにスリングを置いてくれていたリードクライマーの先輩のおかげで突破。しかし、これを作りながら登れるって言うのがすごい。さらにその位置が、ちょうど欲しいところにあるのが、かゆいところに手が届く感じですごい。そこまで行くのにどれくらいの経験が必要なのでしょうか・・・
この先輩以外でもいつもそう思いますが、ベテランってすごいですね。
終了点は立木のある小さなテラス。カムの固め取りで支点を作っていて、初めてカムの固め取りの支点を見ました。
3P目はとっても変わったピッチで、二つルートが取れます。薄型の体型の人は、スクイズチムニー。ザックがあると登れない。その後、奥壁を登りますが、ザックがある人は、スクイズチムニーではなく、上のフェースを行きます。上の方がもちろん難しい。
ここで休憩。
そしてここから相方がリードです。しかし、5.5とは思えない… 良く言えば解放感バッチリ。悪く言えば、高所恐怖症の人には向かない怖い場所。
私はと言えば、目の前のことにアップアップ。
高さが怖いという気持ちは起らないのですが、単純につい最近滑落したので、自分のクライミング力が信じられず、ここで転んだら死ぬなーと思って怖いです。
普通だったら歩けるような斜度のところも、しゃがんでお尻を付いて降ります…(^^;)。
もうねぇ、自分に対する信頼度のレベルゲージ、20~30%のところを指していますからね。
4P目、5P目、6P目は大方、易しく、クライミングで、問題になるようなところは出てこないのですが、一旦下って歩くようなところも出てきます(ラクラク)。が、岩に飛び移るようなところも出てきます(ひえ~)。
と言うわけで、怖いんだか、易しいんだか分からないような太刀岡山左岩稜… とんがった岩に馬乗りになると、背景は遠景だけです(かっこいい~!けど本人には分からなーい)。
と言うわけで、面白かったのか、怖かったのか、勉強になったのか? 消化するには、体験がインパクト大きすぎる山でした。アップアップですね!
■ 姫待遇
と、最初から分かっていたので、カメラは持ち込みさえしなかった・・・ので、今回は写真は少な目です。何しろ、お姉さんは、姫待遇、でした。
リードクライマーにザックがないのは、リードは大変だしな~、と思いますが、なんとセカンドのワタクシもザック免除!
ザックがあると結構大変ですからね~。やっぱり普段の人工壁でザック付で練習しなくては!と思いました。
私のクライミングのポジションがセカンドだったのは、クライミング力の順番からしてそうだな~と思ったのですが、ザックも免除してもらえるなんて。客観的な実力を理解してもらえているようで安心感がありました。そして、感謝、感謝です。
三つ峠もザックなしで登っていますし…三つ峠は、易しい岩場ですが、何かちょっとしたことで転んでしまったら大変なことになります。何しろ落ちる距離が遠いので。
ゲレンデなら、ロープにぶら下がると言うのはありですし、私も墜落を止めた経験がありますが、ルートでリードしてロープにぶら下がるって…。ないない~!って感じです。絶対に落ちない、と言うことを考えると、私はまだザックつきでどれくらい登攀力があるのか未知数です。自分でも、ザックがあるとアレ?って思います。特に被ったところ。
■ 高度感を愉しむ余裕なし
しかし、後続のリードしてくれた先輩が「これくらいのグレードだと楽しくていいですね~」と。相方も「楽しいっ!」と。
私は一杯一杯という感じなので、「楽しい?」な感じでした。
岩って、楽しいのかどうかより、目の前のことに必死になってしまいます。自分で自分のクライミング力が信用全然できないからなぁ。
相方は初見リードで、楽しかったそうなので、それはやはり培ってきたクライミングの努力のたまものと思いました。
それでも、すごく易しいピッチです。一番難しくて5.8。
グレードによる登攀力だけならば、相方はもっと難しいピッチもリードできるはずです。私だって5.8は人工壁はリードできるし、外岩でも5.7はリードできました。が、それとこれでは全く違う。
その、実際のアルパインルートでの岩のグレードと人工壁やゲレンデでのグレードは全く違うということを肌感覚で分かることができたのが収穫ですね。
■ 登攀力以外の要素がかなり重要
思うに
アルパインクライミングの登攀力というのは、グレード以外の要素がたくさんあるのではないか?と。
それは、どこに支点を取ったらいいか?とか、ロープを交差させないコツとか、ロープの流れをよくするコツとか、上手なランニングの作り方とか、色々なことで、それば現場でのシチュエーションに遭遇してしか、教えられないし、身に着けることもできない。
それが経験と言われることの中身なんではないかと・・・。ただ中身を具体的に言うのが面倒なので、経験と言ってしまう。経験で確かに技術は上がり、安全性は増すと実感します。
四尾根は渋滞がよく話題になります。それは、登攀的には難しいところがないということが言われている場所なので、つい登攀力だけを見て、行けるんじゃないかなと考えてしまい、渋滞を作ってしまうような技術力しかないという自覚ができないまま、出かけてしまう人が多いからかもしれません。
そこに思いが至ることができたのが一番の収穫である、太刀岡山さ岩稜でした☆10時半出発で16:30までかかりました。下山終了17:30 帰宅18:30.
≪学んだこと≫
・1ピン目はダブルで二本ともに掛けたい時は、同じ支点にヌンチャクを二本使ってよい。
・ダブルの時のビレイは、片方が長くなったりするものだが、その都度ビレイヤーが長さを調整する。
・両方まとめてロープアップして良い。
・ランニングの取り方が悪いと後続はビレイされていることにならない場合もある。
・トラバースのランニングは取り方に注意を要する ビレイがビレイにならない場合もある。
・コールはゆっくり。
・クライミング要素以外の支度の手早さ、なども重要。
≪太刀岡山左岩稜について≫
・アプローチが極小(徒渉ありの5~10分)
・低山
・非常にフリクションが良い
・最初の1P目は古い記録とはルートが変わってしまっています。
・カムはキャメNo3、No1、No2などを使いました。No5があっても使えそうなワイドクラックあり。
・3P目以降は、高度感があり開放的な岩稜。
・岩はとんがっていて馬乗りになれます。
・最終ピッチ前に休憩適地あり。
・トータル7ピッチのルート。下山は20分くらいです。
参考:http://lonelysoldier.dreamlog.jp/
http://yama-to-damashii.outdoor.cc/20081206_tachioka-left/01.htm
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