先日、三つ峠で初のマルチピッチデビューをしたわけですが…、十二ヶ岳の岩場で教わった通り、屏風岩の3ピッチ目、足場の狭いテラスでは、自分のセルフビレイに体重を預けて、リードのビレイをしました。
これをハンギングビレイというのだと後から知りました。ハンギングビレイを最初に教えてくれていたら…と思います。 というのは、支点と自分の位置関係がやっとわかったからです。
私は、支点とビレイヤーの位置関係が悩みでした…(--;)。
確保支点は自分より上に取る、ように講習では教わりました。
しかし、リード練習で、稜線(尾根)に上り詰めると、木の根がわずかに足元にあるばかり…腰より上には支点になりそうなものがない。
しかたなく、足元の木の根でセカンドをビレイすると、どうしても支点は足元です。
ビレイしづらい!どうしたらいいんだ? → ずっと分かりませんでした・・・
正解)
その場合は、尾根の上より、足場が悪くなっても、自分が斜面に降りて、ビレイした方がやりやすい。
それはハンギングビレイと同じことなんだなぁ・・・。ビレイするときはセルフビレイを取っているので、それにぶら下がっているので、斜面でも危なくない。
セルフでぶら下がっているから別に危なくないのです。
それよりアブナイのは、セルフにテンションをしないで、セットしたり、移動したりの、ちょこまか時間のほうです。そのとき、ツルっとか滑ったら、セルフビレイのスリングは伸びないので、すごい荷重がかかります。ちょっとのことだからと、セルフを取っていなかったりするともっと悪いです。
■ 落下係数のこと
支点の位置と安全性の関係を理解するには、落下係数の理論の理解が重要です。
こないだの岳人にありましたが、墜落係数の話は、確保理論の話でどのクライミングの本にも載っている。けれど、みんな落下係数だけ教えて、それが実際の現場でどういう意味か?を教えてくれない。
教えて欲しいのはむしろそっちです。何しろ初心者はやったことがないんですから、現場の状況がイメージ付きません。最初にイメージトレーニングでいいから何が安全で何が危なくないのか、理論を根拠に教えて欲しいです。
この図をみてください。覚えておかなくてはいけないのは、3つのケースです。
1)落下係数0のとき
2)落下係数1のとき
3)落下係数2のとき
これらがクライミング中のどのようなシチュエーションになるか、それを教えてほしいですよね~。全然教えてくれませんけど…。
夏山講習で、登山者のトレーニング法などを1時間もかけて教えてくれなくていいから、確保理論のきちっとしたのをちゃんと机上で教えて欲しいです。一番、理解しづらく、教えづらいことを教えていない。
落下係数0の墜落とは、要するにセルフビレイにぶら下がることです。あとはトップロープ状態。
落下係数1のときというのは、ロープの長さ分だけ落ちることです。落ちた距離=ロープの距離。中間支点がクライマーの腰あたりに来た時です。ロープがちゃんと弛みがなければ落ちても距離は小さくロープが衝撃を吸収します。
さらに登って、ロープがどんどん出ると、落下係数が大きくなります。
落下係数2のときというのは、手繰り落ちです。手繰り落ちは、落下係数2だから危険なのです。
これ以上いくとランナウトです。もう出ているロープの方が墜落距離より長い…。ロープをつけている意味なしです。
単純で大雑把な概念の把握で、
落下係数ゼロは危なくない。(静荷重)
落下係数2の墜落は、落下係数1の墜落の2倍アブナイ。
ランナウトは無限大に危ない。もう決死。
つまり、リードしている人は、中間支点が頭上にある間は安心し、腰まできたらやや緊張し、支点が足元以下に来たら、最大限に緊張し、次のクリップをして安心する。クリップがなかなかできないと、もう絶対に落ちれない。
ビレイヤーも同じで、腰から上にランニングがある時は、そんなに緊張しなくていいです。でも手繰り墜ちは最悪なので、ロープを手繰りやすいように十分出してあげないといけないですね。
ビレイヤーがそのことをわかっていないと、ロープが十分出ず、ビレイに引っ張り落とされる形になり、リードの人は怖い思いをします。だらりんビレイもダメだけど、「もっと出して」と言わせないメリハリが大事です。
私は人工壁でのリードでは終了点が一番怖いです。なぜなら頭上にクリッピングする場所がなく、足元に最終のヌンチャクがあるからです。それまではずっと頭のあたりでクリッピングしているので全然怖くはありません。
■ ハンギングビレイは落下係数ゼロ・・・は怖くない
というわけで、ハンギングビレイは落下係数ゼロです。
しかし、たまたまそこが狭いテラスだったので、ビレイ中の私を見て、
「勇気ありますね~!」
と言われました。それは、安全性を
・理性で判断するか?
・見た目で判断するか?
の判断の違いです。脱初心者の最初の一歩は、見た目ではなく、理性で安全性を判断できるようになることかもしれません。
ハンギングビレイは、見た目より安全です。特に整備された岩場ではそうです。
なぜなら、ビレイヤーのセルフビレイは、非常に信頼性が高いものが選ばれるからです。
逆に言うと、信頼性の高いアンカーでないと、ビレイポイントになりません。
なので、体重を預けている私が勇気があるのではなく、そのアンカーが信頼できるもの、と分かっているだけです(^^)
一般には足場があまり良くない場所で、ビレイするのにハンギングビレイを使うそうですが、要するにセルフにぶら下がることなので、リードの終了点とも同じです。
アンカーには体重を預けるのが安全です。預けないと落ちたとき、動荷重がかかります。
セルフビレイには、常にテンションしておく習慣をつけておくのが大事です。
これって、初心者向きのルートだと、ビレイポイントが基本的に両足で立って取れる場所だから、セルフが形ばかりになってしまい、正直、理解しづらいです。
■ ビレイヤーのセルフビレイはパーティ全体のアンカー
ビレイヤーのセルフビレイは、地面に立ってビレイしているのでないかぎり、体重を預けることが大切です。要するにハンギングしているってことですね。
1)ビレイヤーのセルフビレイはパーティ全体の最後のアンカー
2)大抵、その方が安定してビレイしやすい
3)ビレイヤーがリードクライマーの墜落に巻き込まれたとき、動的な衝撃荷重がアンカーにかからない
の3つの理由だと思います。 (ほかにあれば教えてください)
※支点には、ビレイポイントと中間支点の2つのタイプがあります。
・ビレイポイント:
そこでピッチを切るため、ロープの長さの範囲内に信頼できるアンカー=ビレイポイントを予測して登る
・中間支点: リードクライマー一人分の墜落を食い止めるもの
・アンカー: アンカーはモノとしての、支点そのもの。 例:ハンガーボルト、立木、懸垂支点
■ 怖がり違い
一般にクライミングでは、何が危なくて、何が危なくないのか?の理解が重要です。
初心者は、”怖がり違い”をしてしまいます。
たとえば、ロープに体重を預けることが、普通は一般登山者は苦手です。
それは、ロープをアブナイものの象徴と誤解しているからです。逆です、逆。
ロープに体重を預けられる状況では、預けたほうが危なくない。
ロープは保険証ですから、保険証を怖がるのは変です。怖がるべきなのは、保険(ロープ)が必要になるような状況に陥ること、そのものです。
ですから、既にロープをつけている状態で、怖がっても遅い(笑)
ロープそのものは怖いものではなく、むしろ安心なものです。
だから、トップロープで登っていても、ちょっと難しいところに来たら、「テンショ~ン」という訳でしょう。
セルフに体重を預けるのを怖がるのは、それと同じで、怖がり違い、です。
■ 分からないのが一番怖い
私はリスクを理性的に把握するタイプ。
なので、見た目より理解の方が先立つほうが、安心です。
私が漠然とクライミングが怖いのは、クライミングのリスクを理解していないのではないか?と
理解そのものがないことが怖いのです。なので、よく理解できれば怖さは感じないような気がします。
しかし、それが一番難しいんですよね~(^^;)。
もう裏山はスミレの季節です |
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