Wednesday, June 12, 2013

登山と体力 【見える化】が大事

■ 「強いね」????

「強いね~」と、よく言われますが…うーん? 実際はそんなに強くないです!今から証明します。

登山の強さ、というのは、客観的に「見える化」されていない。

だから、体力自慢=高い山自慢、になってしまうんだなぁと思います。

本当に強いというのは要するに、11メッツの運動を10時間快適に続けられること、です。

具体的には、”20kg背負って、通常の倍の速度(600m/時)で山を登れること”、です。

自分の体力を自慢したい中高年のおじさんは多い。けれど、16kg背負っている私より、同じ道で20kg背負っているおじさんのほうが歩くのが遅い。

私が思うには、若いとき登山をやっていて最近復活したおじさんたちは、筋力がなくなっていることに気が付いていない。

で、そういう人たちと比較して私が「強い」と言われても、まったくナンセンスです。

私が思うには、わたしは日常的に軽い運動をしている40代女性の平均的な体力だと思います。

■ 体力を客観視する 運動強度 メッツ 

メッツ(Mets)というのは運動強度の表現単位です。(1時間当たり)

メッツを使うと、おおよそ、どれくらいの運動強度で自分がバテないか?で、大体の体力を推し量ることができます。
     例
1メッツ=安静時
2メッツ=通常歩行、料理
3メッツ=ヨガ
4メッツ=太極拳
5メッツ=バレエ
6メッツ=ジョギング
7メッツ=登山(14kg以下)
8メッツ=岩登り、ラン(8km/時)
9メッツ=マウンテンバイク、
10メッツ=スイミング
11メッツ=スイミング、ラン(9.7km/時)
15メッツ=ラン(14.5km/時)
                  
■ 最低ラインは週23メッツ

厚生労働省は一般的に、週23メッツの運動を健康維持の目安として薦めているそうです。

一般的にサラリーマンは、仕事では安静時の運動量しか消費していないと思いますし、ジムに通っても泳がない限り、この表によると、大した運動量ではありませんね。エアロで5,6メッツくらいでしょう。エアロなら、週に2~3本は出ないといけませんね。ヨガは、通常、毎日するレベルの運動です。
   
振り返ると、これは週25メッツから、30メッツくらいの運動だったことになります。健康的な生活ですね♪(でも結構仕事を早く切り上げるのが大変だったような… 本当に仕事というものは運動習慣=健康を犠牲にするものですね!!)

週に2回のクライミングジム、2回のヨガ、1回の登山で計算すると、

クライミング 8メッツ×2 =16メッツ
ヨガ      3メッツ×2 =6メッツ
登山     7メッツ×5×1 =35メッツ
                            合計=57メッツ

とりあえずは、倍くらい運動量。登山は行けない週もありますから、そういう場合は、24メッツとなり、最低ラインをクリアしているのみ。24メッツだと、体力維持程度、となります。

私の部活はテニスでしたが、もっと運動していたと思います。

■ 消費カロリーも計算できる

メッツの利用法としては、消費カロリーの計算があります。

     消費カロリー(kcal)=1.05 × メッツ × 時間 × 体重(kg)

の簡易計算を使って計算することができます。

【例 散歩: 2.5METsの運動を1時間 体重52kgの場合】

1.05×2.5×1.0(時間)×52(kg)=136.5(kcal)

これからは、メッツを単位に生活を組み立ててみる時代なのかもしれません?

■ 歩く速度とザックの重さ

登山は一般的には、7メッツの活動ですが、もちろん、ザックの重さ&歩く速さ で運動強度は変わります。

歩く速度は 標高差で

ゆっくり       1時間200m (200m/時)
一般的なコースタイム 1時間300m (300m/時)
健脚者        1時間600m (600m/時)

健脚者は一般の人の倍くらいの速さで歩けます。(健脚者とそうでない人の差は大きいですぞ~!)

ゆっくりの人と一般的な早さで歩く人の体力差は少ないですが、健脚と一般の体力差は大きいです。

ですから、早く歩ける、というのは、そういう意味で、すべての登山者が目指すべき指標となりますが、もちろん、これは登山目的を、”大きな山行に行けること”を目標にした場合に、バテない体力が必要だからです。

早く歩くことを目的にしてしまうのはバテの元ですので、本末転倒です。目標はバテないことですから(笑)!

歩く速さは、バテないレベルが上がっていった結果であることが重要ですね。

トレーニングの場合、普通の人はまずは、1時間で400mくらい標高を上がれることを目的にしたらよいのではないか?と思います。

■ ザックの重さ 

ザックの重さによっても、もちろん運動量は変わります。 

ザックの重さは、0kg、10kg、20kg で十分でしょう。30kg担ぐということは一般的な登山者には、あまりないと思います。

…ということで、手元の資料によると、このようになります。

≪ザックの重さ&歩く速度とメッツ≫

 歩く       ザックの重さ
 速度    0kg   10kg   20kg
200m/時  4.5メッツ  5.3メッツ  6.0メッツ  
300m/時  5.8メッツ  6.7メッツ  7.7メッツ
500m/時  8.2メッツ  9.6メッツ  11.0メッツ
600m/時  9.5メッツ  11.1メッツ 12.6メッツ
700m/時  10.7メッツ     
                   ※200mなどは標高差です。

私たちは、大体コースタイム通りの速度で、ザックは12kgで歩いているので、普通に運動量は7メッツですね。

【一般登山者の運動量】

7メッツで、今回の金峰山・甲武信岳の山行の消費カロリー計算しておきます。

☆7メッツの運動を歩行時間12時間 体重50kgの場合:

 1.05×7(メッツ)×12(時間)×50(kg)=6300(kcal) 

おお~、結構良いカロリー量ですね。友人は2kg痩せていたと言ってたっけ。 

これは二人とも筋肉痛もなく、運転の余力もあったので、基準体力として、どうステップアップするべきか考えましょう。

■ 二つの方向性  速くするか? 重くするか?

体力を上げる、ということを考えた場合、努力の方向性として、2つの方向性がありますよね

 ・速くする → 一般ウケ 
 ・重くする → 山ヤウケ 

①速く歩く 倍の速度で歩けるようになったら?

ザックの重さはそのままで、歩く速度だけが早くなった場合、11メッツの運動となり

☆例:11メッツの運動を歩行時間6時間 体重50kgの場合

  1.05×11(メッツ)×6(時間)×50(kg)=3465(kcal)

と運動量が約半分に減ります。カロリーをそんなに消費しなくなるんですね。つまり強くなる。


②重くする ザックの重さを20kgにすると、普通は歩くのが遅くなります。

普通は20kg担ぐと遅くなりますから、歩く速度が遅くなるとメッツはさがります、6メッツ。そして、その分、行動時間も長くなります。12時間の1.5倍かけて歩くと、20時間。

そうすると、

☆例:6メッツの運動を歩行時間20時間 体重50kgの場合

 1.05×6(メッツ)×20(時間)×50(kg)=6300(kcal)

つまり、重くしてもゆっくりしか歩けない(歩かない)なら、何も強くなったことにはならないのだということですね。

よく軽量化されていない20kgの荷物を担いで、重いからとゆっくり歩いている人をみますが、体力的に見れば、同じ内容を軽量化した人が標準的なペースで歩くのと、なんら変わらないわけですね。

重くて遅くなるくらいなら、軽くて速いほうが、山では安全度が高いです。重くて遅くなることに何の合理性もありませんね。 速さは時に生死にかかわる安全を提供しますから。

重い人=エライ の図式は成立しない。 体力は、軽くて速い人と同じです(笑)

というわけで、重くするなら同じ速度で歩けること、が体力UPを狙うならポイントのようです。

■ 本当の健脚者

では健脚の人とは? 20kg背負っても、600m/時で歩ける人です。

【例 13メッツの運動を歩行時間6時間 体重50kgの場合】

 1.05×13(メッツ)×6(時間)×50(kg)=4095(kcal)

つまり一般の人の3分の2のカロリーしか消費しないで、倍の荷物が担げ、倍の速さで歩ける。

これは1.5倍の体力があるということで、こういう人こそ、本当に健脚と言えると思います。

■ 自分のレベルを知る

運動強度がどのようなレベルなのか?を客観的に把握するのは重要なことです。

本格的な登山という場合、

・1000mを2時間で余裕を持って登れる (500m/時)
・20kgを余裕を持って背負える
・10時間を余裕を持って歩ける

ということだそうです(『岳人』2007年2月号)

これを当てはめてみると、11メッツの運動を10時間余裕を持ってできる体力、と言えますね。

つまり、空荷で歩くなら、700m/時で歩けないと同じ11メッツにはならないのです。 

1時間で標高差700m登れますか? いや~これはタイヘンな速度ですよね。普通は300mですから。

というわけで、健脚者と一般の人の体力差は、大変大きなものだと思います。

たとえば、海外で壁を登る山野井夫妻など、富士山は通常の人の半分以下の速さで登ると聞きました。

20kg背負っていても遅くなっていたら普通の人。遅くならない人=健脚者。

さらに下山は大幅にメッツが下がります。登りの半分以下です。ですから、私は下りなら、ガンガン飛ばしても、そんなに体力消耗しません。重さがあってもなくても、です。

また登山は2週間に1回はしていないと、トレーニングの累積効果はないのだとか。

貯金はすぐなくなるわけですね。昔取った杵柄はあんまり有効でないみたいです。

そして、一般的に運動選手は大きな試合前は

・前日は完全休養日とする
・グリコーゲンローディングする

のだそうです。 

遅くまで仕事していて、前日はろくに食事もとらず、夜討ち朝駆けで、登山口に駆け付け、大急ぎでバタバタと準備したため、ザックは軽量化されず重く、日ごろ運動習慣がないため、太目で体重は重い…、そんな人が山ではやっぱり一番バテやすい、というのはうなづけることですね。

日ごろの軽い運動習慣は、ぜひとも続けるべきですね。

何しろ、机に座って仕事していたら運動量は1メッツなんですから(笑)。

■ 逆に言うと

逆に言うと、一日の歩行時間が14時間の金峰山甲武信の縦走も、一般的な体力でこなせる、ということです。

もし高齢で、体力がない、などの場合は

・ゆっくりあるいてメッツを下げる = 1泊2日から 2泊3日へ
・空荷にしてメッツを下げる = テント泊から、小屋泊へ

という工夫で十分負荷を下げられるということですね。

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