Tuesday, June 25, 2013

観光客を登山者に育てる仕事・・・最初のツアーで非常識登山者を育てない

昨日は、初心者のためのロープワーク講習会を主催しました。

とりあえず、誰も来ない!という事態は避けれたようで、良かった~☆な感じです。

誰も来なかったら講師を務めてくれる人に申し訳ないので…。

■ ロープワーク ・・・ 観光客 と 登山者の境界線

登山観光客と、ちゃんとした登山者(”ちゃんとした”というのは誤解が生まれやすい表現ですが)の差を説明するのは、とても難しい・・・

まだ観光客の意識で山に出かける一般登山者にとって、登山の世界は、とても分かりづらいのです。

たとえば、


【シチュエーション】

 残雪の山で、雪の上にテントを張って寝る。

【観光客である一般登山者の気持ち】

 「なんで、こんな冷たい雪の上で寝なきゃならんのだ!!」「冷たいの最悪!」

【登山者の気持ち】

 「冷たいけど、おかげで水を担がずに済む!ラッキー!!」


実は残雪の山というのは、水がどこでも取れ、すごい自由で素晴らしい季節なんですが・・・それが分かりづらい。

こういう観光客目線の人を連れて行くと、ラッキーな状況で文句たらたらになるので、注意が必要です(笑)

たとえば、山小屋に泊まるにしても、稜線の水がない小屋で、「え~なんで歯磨きダメ?」とか言い出します。

いや歯は磨いてもらいたいんですけどね、下水道はもちろんないから歯磨き粉使わないですよ…

でもそこは説明してあげればいいだけ・・・ でも山の人は頑固者で、分からない人に説明してくれる奇特な人はいません・・・。


■ スタート地点は登山計画

観光客目線の人の、ブレークスルー・・・ 自分の殻を打ち破る瞬間は、登山計画を立てる、ということをやりだしてからです。

人には誰しもブレークスルーが必要です。 だって、新しい自分になるのは、どんな年齢になっても、素晴らしい経験です。自分に自信が持てる。

観光客目線の人が観光客から脱却できないのは…単純に、前後を知らず、ただ当日参加するだけだからです。

どんなツアーにしろ、山じゃなく海外旅行だって同じですが、何が大変って、前の準備なんです。

でも大変というよりも、ここが楽しいところなんです。

残雪の山がなぜ有利なのか分かる…

たとえば、登る、と決めました。


・一日何時間歩こうか?  ⇒ 自分の体力に合った行程は何時間だろうか?
・どこで宿泊しようか?  ⇒ 小屋泊なら食事は持っていかないで済むな…軽いけどお金がかかるな。テントなら、重いからもっとゆっくり歩かないとバテテしまうかもしれない。

・困った状況に陥ったらどうしようか? ⇒ 危険な個所はどこだろう?あらかじめ地図を見ておこうか・・・

・水はどれくらい必要だろうか? ⇒ コースガイドには水場がないな・・・となると水に困るな。
                        そうか!雪があれば、水を持ち歩く必要がないんだな


と、まぁこんな感じ。

この思考のプロセスを見せないと、観光客目線の登山者が、一般登山者のレベルまで持ち上がることはありません。

だって、観光客目線の人に合わせて、ツアーの人が全部お膳立てしてくれるのですから…

■ 北ア

観光客目線の登山で、一般的なのは、富士山&北アです。が…そんな北アルプスは、実は危険な個所が一杯…

鎖場もあれば、墜ちれば一巻の終わりっていう危険なエリアもあります。

だから、山を知っている人は、観光客レベルの人を見て、あぶないなーといつも思ってしまうのですね。

しかし、観光客の立場に立ってみれば、金さえ払えば、現地集合だけで良い、と言われたから、言われた通り、そうしているだけ。

事前の説明会もなければ、事後の反省会もないので…それで、非常識登山者扱いされても、困るよな。

観光客の人たちに、キチンとした資料なり、説明会なりをしてくれる手間を主催者の側はかけてくれません。

「朝 ○時に××集合」 それしか伝えないから、それしか伝わらない。単純・・・

私は誠意があるツアー主催者はきちんとした事前説明をする人たちだと思います。大体、

・雪山の講習会と言うから行ってみたら、雪がなかった…とか、

・アイゼン・ピッケルの基本を教えます、というから行ってみたら、ただ歩くだけだった

とか…「この雪質じゃできない」とかの言い訳があるだけで、

・アイゼンはどういう時に必要になるのか?
・なぜこの雪質ではできないのか?
・ピッケルはどういう場所で必要になるのか?

ちゃんとした説明がされたことはありません。 理解する努力をするのは、個人の努力に任されています。

そうなると、じゃあ連れて行くって言ったんだから登頂くらいはさせてよね、と思うのが人情…

ここに横たわるのは、巨大な擦れ違い…コミュニケーション不全症なのです。

■ 非常識登山者呼ばわり 

私なんて、1年目、2年目はツアーに参加せず、自主山行で登っているだけで、さんざん非常識登山者呼ばわりされました。

自分たちで行ける安全な山を選んで行っているにもかかわらず!です…どれだけ悪口を言われていたかというと、ほとんど会ったこともない知人に「○○なこと言われていたよ、大丈夫~?」と心配されるくらいです。

特に山梨は小さな社会で、そしてあまりニュースがない静かな生活。そういう場合、話題がないときの無難な話題が、共通の知り合いの噂話。

その場にいない人の話は、ネタとして、都合がいいのです。それも、最近引っ越してきた人だと友達もいないから、悪口言い放題にしても、本人に伝わらない、という安心感があり、悪口言い放題。

そして、その結果、私たち夫婦は、ツアーに参加しないだけでさんざん非常識登山者呼ばわりされていたのでした…。

ああ~ヤダヤダ・・・ 誰だって嫌ですよね。

しかし、ツアーに参加しないといけないのは、たとえば、北岳を例にとると、

・2万5千の地図も持たず、
・何キロ、何百メートル歩くのかも知らず、
・北岳がどんな場所か知らずに

参加する人たちだけです。

間違っても、健康で、山を歩く体力があり、地図を読む知力もあり、危ないと思ったら引き返す謙虚さもあり、北岳に行く前に、低山で足慣らしをするような人たちではありません。


ただ・・・その常識は、最初のツアーでもらうものなのです…

最初のツアーが一番肝心なのはこのためです。

私は地元の山ショップ、ストローハットがやっている、登山ツアーに最初は参加しましたが、2回だけです。

一回目は八ヶ岳の西岳。標高差900ちょっと。 二回目は三方分山。低山。

どちらも、自分でも登れるなって思いました。ただ低山は犯罪が怖いと思いました。山ではなく、人が怖い。山は密室ですからね。何をされても外に漏れないのです・・ああ~危険。

ガイドさんが全部背負ってくれるような、おんぶにだっこのツアーに最初に参加して、甘やかされてしまうと、甘やかされたってこと自体も分かりません。

それも、頼んでもいないのに背負ってくれて、後で「背負ってあげたんだよ、本来は自分で担ぐもの」って言われるなんて・・・じゃあ、最初からそうしてくれた方が良いと誰だって思うでしょう…

だからね・・・最初のツアーが大事なんです。 

一人一人が自分のできる範囲で自分のことはしようとすること。



 

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