Thursday, May 30, 2013

花谷さんに会いました

昨日はピオレドール賞をとったアルパインクライマーの花谷さんという方のキャシャール登山の報告会を聞きに、エルクに行っていました。

去年までの私なら、普通に北岳や赤岳に登ることが、こうした世界的な山のクライミングと本質的にはなんら変わることがないということに思い至らず、たぶん、単純に違う世界の話と思っていたでしょう…

その証拠に、岩崎元朗師匠のいうところの、ツーリスト、ハイカー、アルピニストの区分では、完全にハイカーの気分でした。 

ここ最近、講習を受けているので、ロープワークが出てきて、アルピニスト0.5みたいな地位にいますが、アルピニストとハイカーを分けるのは、歩く山ではなく、山に対する考え方なのだ、ということがわかってきました。

アルピニストの区分とハイカーの区分は諸説ありそうですがその区分は登る山のサイズ別ではなく、登り手の”心の持ち方”といったところに一線があるのです。アルピニストの心は基本的に自分を主体とせず、山を主体にしているような気がします。山に登っていても山の存在がお留守の人、多いですもんね。

花谷さんのキャシャールは、私のツルネ東稜みたいな感じで、ご縁が引き寄せた山ということでした。
なので花谷さんが達成感満点に輝く笑顔でいることもまた、なんとなく身近に感じられ、思わず握手をお願いしてしまいました。 

まぁ私は登山者としては3年目。まったく出だしのスタート地点におり、花谷さんは一応名声と言う頂点を極めた点にいるわけですが、その間に長く長く横たわる梯子がどんなに長かろうと(当然私は趣味で登っているので名声を求めるわけではありませんが)、同じ価値体系であることに変わりない。たどり着く達成感は同じなのです。 登る山がデカいか小さいかだけの差なので。

さて、そのキャシールですが勝因はというと、ライト&ロング…ライト&ファーストではなく、長丁場を
予定して体力の配分を行い、じっくりルートに取り組んだということにあるようです。

このルートは難易度はさほどでもなかったようですが、基本的にアプローチが長い!この山はクライミング要素が強く、雪の要素が少ない山ですが、岩場もグレイド的には、それほどでもないのだそうでした。5.9とか5.10. 

ただ核心に行くまでにいかに体力を温存するか?というところがポイントだったそうです。 

海外のクライマーにはこんな岩よく登るなぁといわれるのだそうです。それはもろいから・・。でも、日本の岩場は世界に名だたるもろい岩場ですから、日本のクライマーならではの繊細な神経が行き渡った
岩登りかもしれません。

岩場の写真など見せてもらいましたが、岩場…私は岩登りはしないのですが、見るからに登れそう…(笑)に見えました。登れる人を一杯目にしているせいで、自分では登れないけど、登れる人がいるのは超納得~(笑)

こりゃまた耳年増ならぬ、目年増になったんですね~。写真見て、不遜にも、登れそうだなぁとか思ってしまいました。

実は先日は別の山の報告会で、GWの穂高と剣の山行を見たのですが「登れそう…」に見えてしまいました…(汗)先輩曰く、GWなら厳冬期と違いそれほど難易度が高い山でもないのだと…そういうことを吹き込まないで欲しいなぁ、もう!また行きたくなってしまうじゃないですかねぇ!! 

だた実はこの超有名山岳より、別の無名の上越の低山バリエーションのほうがラッセルやルートファインディングがシビアで…写真を見ていても「無理っ!ガイドつけて!!」と思ったのでした。 こうやって見ているだけでも自分の登山力のうち、特にボトルネックになっているのがルートファインディングだということが分かります。ラッセルはともかく…(まぁ何人かで行くのでしょうから…) やっぱりルーファイは課題です。

とまぁちょっと話が逸れましたが、キャシール、はすべてのアルパインクライマー、登山の考え方をマスターしている人たちが並ぶその列の頂点に立った山だったのでした。

面白かったことを箇条書きにしておきます。

・荷物が軽かった 一人分20kgくらい
・トップのみクライミングシューズで登り、時短。
・セカンド以降はザックを背負って、ユマールで登る
・「ザックさえ下ろせば俺結構元気よ」 → うける~
・食料はカップヌードル&栄養ゼリー
・すっぽ抜け事件あり。末端は結ばない。
・リッジにテント張る
・テントがヘリテージ性、特注。 床が2重に重なっているだけで空いている
・ヘルメット落とした
・落石で唇を切った
・ヘラクレス系男子
・真ん中は温かいので真ん中を交代で寝る
・ガス用に台がなかった。
・帰りにはガスにまかれるが、なぜかトレースがあった!
・帰りはヘロヘロでリンデワンデリングに近く
・夜遅くなって下山
・下山後2日は同じ服を着ていた
・隊長と言うのは係りの者

3人のメンバーのうち、一人はヘルメットを落とし、一人は落石に当たり負傷、一人はすっぽ抜けをやらかすという… それぞれなんらかのヘマをしているところがウケました。

というか落石に当たったのはヘマではないですね~。一番お若い屈強な方だったそうで、痛みを我慢しつつの山だったのだそう。それぞれ色々な感想がありそうです(笑)

すっぽ抜けと言うのは、懸垂下降で、ロープが下降器から抜けてしまうということなのですが、普通は墜落事故につながります。さらっとすっぽぬけと言ったので、質問タイムで聞いてみたのですが、場所が良かったようで、落ちてもその先で止まる場所のようでした。いや~ロープワークは胃が痛くなります。

すっぽ抜けを防ぐには、誰からも結び目を作れと言われるのですが、結び目は作らないのだそうです。それくらいスピードが要求されるシビアな山ってことですね。 でもすっぽ抜けてたら…。ラッキーで何よりです。

私は懸垂下降、生涯でまだ5度しかやっていないので… それも落ちるようなところではなく講習会もしくは数メートル下に足場… 正直、空想の域を出ませんが、懸垂下降って下に行けばいくほど、ロープが軽く快適になってくるんです。最初はとっても降りにくいのですが。気分よく、降りれる~と思ったら、アラ?!みたいな事態はなんとなく自分自身について予想でき…それがおっちょこちょいな性格とマッチしてとんでもない場所でそうならないかと思ったりします…。想像力がたくましいんですよね、私。

後は、最も楽しそうだったのは、最後の核心部の登りでした。垂直方向に大きな雪庇の張り出しがあり、ハングした壁が付きでていましたが、上手く岩の弱点をついて、左にトラバースして、最後はアイスの壁。このアイスが固くてピックが突き刺さらないのだそうでした。 いや~恐ろしい。アイスのリード…それも標高…何メートルか忘れましたが6000は超えており、退路がなく上しかない山。

花谷さんは前人未到の地に魅かれるのだそうでした。そうなると、誰もが行くから山に行きたい!という昨今の山ブームとは対極の価値観ですね!

今の山ブームは、スローライフブームとか、高度成長期を後に、低成長時代に入った日本の自然回帰現象というかそういうものだと思いますが… そういう本質的に相対して

・安く、大量に、みなと同じ画一的なものを

という高度成長期的な価値観を持ち込む人もいっぱいいるので… 私はやっぱり人のいない山を目指したいなと思いました。 

まぁ、そうなるとどうしても雪の山になってきてしまうのですが…でも雪なら好きだからな~いっか~。
というか私単に暑いの嫌いなだけだと思うんですよね。体質がピッタだから・・・

とても刺激を受けた報告会でした♪

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