Saturday, November 9, 2013

誰に山を教わるか作戦: ガイド登山&講習会の上手な利用法

■ 山学びは暗夜行路

未組織登山者が否定される最大の理由は、「山を体系的に学んでいない」ということです。

いつだったかの山雑誌のアンケートに「登山をどこで学びましたか?」という質問があり、回答者の8割が「独学」でした。

その雑誌は「独学は山を学んだとは言えない」と結論していました(汗) YES&NOな感じ。

そのYES&NOな感じと言うのは、どんな意味かと言うと…

たとえば、(勉強熱心な未組織登山者)(勉強せず先輩について歩くだけの山岳会所属者)2者がいて、どちらがより危険かというと、たぶん後者だから、です。

「夏山の一般ルートを歩きたいんです!」と言って山岳会の戸を叩かれても、山岳会の方も実は嫌なんじゃないか?と、私は想像したりするんですが…その辺は正直な所、どうなんでしょう?

私の想像では、ホンネは「夏山の一般ルートくらい歩けるようになってから、来てくれないかな…」ではないのかな…と。「面倒見きれない」「それくらいは自分で」がホンネなのでは…?

よくあちこちのサイトで、「山岳会を無料のガイドツアー組織だと間違えている人がいる」という苦言をよく見かけます。

私もある山岳会に誘われたことがあります。でも良く聞いてみると、

 ・最近増えた高齢初心者の新規会員の入門山行を引率できそうな若い人が欲しい、とか、
 ・平日暇そうな人でクルマを回してくれそうな人がほしい、とか、

そういうことみたいでした…(汗)。無料の添乗員要員か・・・(汗)

■ 体系的に学ぶ場はアリマセン

さて、未組織の個人登山者にとって、いかに「山を学ぶか」は結構シビアな問いです。

山を学ぶには、独学を除いて、3つ方法があります。

 1)優れたガイドにつく 
 2)講習会に出る
 3)山岳会に入る

それぞれにコツがあるように思います。 それについて書きます。

■ その1) 優れたガイドにつく

山登りを初めてすぐの頃、「ガイドさんについて歩くと上達が早い」と言われました。 

しかし、意味が分からなかったので(というかツアーなんて御免だ!と思っていたので)、無視してそのまま自分たちで登りました。

だって、上達は早くなくても困らないですもんね(笑)マイペース死守です。

しかし、ピッケルを使用するニーズが出てきたので、地元の有名ガイド(名物ガイド?)三上さんに「ピッケルの使い方教えてくださーい」とお願いしました。

お返事は「ピッケルより読図でしょ」でした(汗)。反論できません!(一応断っておきますが、このころでも、ちゃんと2万5千の地図に磁北線を引いてコンパスとともに携帯していました。念のため断っておきます。ただそれらの出番が全然ないだけです…^^;)

≪当時の記録≫
ピッケルより読図でしょ、というまっとうなツッコミ

「ピッケルより読図でしょ!」以外にも、「滑落停止より歩き方(キックステップ)でしょ!」ってのもありました。

私が想像するに、登山者の育成には、大体山ヤさんたちの中で共通理解されている、段階的なものがあるようです。 

 段階1 体力
 段階2 歩くことをマスターする
 段階3 生活技術をマスターする
 段階4 地図読み
 段階5 雪上技術
 段階6 確保
 段階7 岩登り

そんな感じ・・・? 何となく感じたことなので、正しいものを知っている方には教えてもらいたいです。

各段階にはそれぞれ個人の成長ペースがあるかもしれません。

まずは体力だから、山岳部の新人は重い荷物を背負って合宿させられるのかなぁ・・・ よく分かりませんが、たぶん方法論として優れていて、一定の効果があったから、きっと昔はそうしていたんでしょうし・・・。

廃れたのは3Kだからだそうですが、3K、8000m処女峰を狙う登山家候補生には必要だったのかもしれませんしね。

今の登山者は登山家候補生ではなくて一般登山者だから、同じ方法論がふさわしいのかどうか?は、それについての突っ込んだ議論を専門家がするべきだと思いますが、とりあえず想像するに、こんなところが登山のオーソドックスな段階だったんではないでしょうか?

ピッケルを使った滑落停止などは技術として派手で分かりやすいです。でも滑落停止なんて最後の最後の技術と言われます。だって転んでから何とかするより転ばないことがまず重要なんですから。病気になってから治療するより最初から病気にならないように予防するのが正しいのと同じです。

話が逸れましたが、ガイドさんに、力になってもらうにはコツがあります。

≪ガイドさんを上手に利用するコツ≫
 ・こちらのニーズを的確に伝える
 ・ガイドさんには、先頭ではなく最後尾についてもらう(危険がない限り)
 ・ルートガイドはしてもらわない (技術ガイドをしてもらう)
 ・判断は登山者が行う。(ガイドさんには判断について助言してもらう)
 ・地図や山行計画は登山者本人も用意する
 ・共同装備の負担を積極的に担う (食当など)

そうでないと、ガイド登山はただの高額なツアーになってしまいます。

良いガイドさんは、こちらが学ぶべき技術にふさわしい山を提案してくれます。中津森はそういう風にして実現した山でした。

■ その2)講習会に参加する

山梨に転居前の私の仕事はお勤めで経済セミナーに参加することでした。なので、講習会というものに、すでに慣れていたわけです。なので、講習会の利用についてはノウハウが少しあるかもしれません(笑)。

ほとんどの講習会の問題点は、参加者のレベルが一定でない、ということです。つまり最大公約数的ということです。そして、一方通行の学びである、とも言えます。ガイド登山が家庭教師とすると、講習会は塾、というわけですね。大人数の聴講方式。これは講師が一方的に話して受講生は受け取るだけの、一方通行の学習なので、基本的に読書とあまり変わりアリマセン。近年はその反省から、一方通行でない参加型のセミナーもありますが、あまり一般的ではありません。また、限られた時間の講習となると講師の個人的な流儀に偏ることもあります。

メリットは要点が絞られていて効率的ということです。

≪講習会のデメリット≫
 ・最大公約数的である
 ・一方通行である
 ・内容が偏ることがある

したがって講習会を活用するコツは、全部を逆にすることです。

≪講習会を上手に利用するコツ≫
 ・要点は絞られていると心得、導入に過ぎないと考える(残りは独学で補てんが必要)
 ・カスタマイズは自分で行う
 ・質問する

です。まぁ、講習会に出ても独学は避けられないということですね。講習会は独学の一つの形態ということにしかなりません。

■ その3) 山岳会に所属する

これはタイヘン悩ましい課題です。 私はまだよく分かりません。理由は、趣向が色々な会がありすぎるからです。

ただ言えるのは、

まだハイキングの山に自分で行くことができない段階から山岳会に入る必要はないのではないか?

と言うことです。

ハイキングの山というのは、

 ・ヤマケイアルペンシリーズで、技術度1体力度1の山

と言うことです。

つまり、整備された遊歩道、木道、道標のあるハイキング道で、コースタイム往復3時間というような場所です。

代表的な場所で言えば、上高地の河童橋周辺、霧ヶ峰、尾瀬、などです。たとえば南アルプスなら、日向山、入笠山、櫛形山、甘利山などです。

ロープウェーで上がれる山の周辺散策もそうかもしれません。栂池公園周辺や白馬池ですね。

たぶん、一般的な山ヤさんは、それらの場所を”山”とみなしてさえいないかもしれません。道がない場所の登山に向かわない限り、山ヤさんにとっては”山”でないので(^^;)、基本的にはヤマケイアルペンガイドシリーズにコース紹介されているところにコース紹介している季節に行く限り、山ヤさんに教えを乞うという意味で、山岳会に入る必要はないのかもしれません。

山岳会は仲間が必要な山に行くために仲間の一員となるための場所ですから・・・

■ 独学で用心すべきこと=登山適期

…というわけで、普通の一般登山者(アルピニストではなくてハイカー)は、

 ・基本的に、未組織登山者でも、夏山(6月~11月)の一般道を歩く限り問題ない

と言うことがわかるでしょう。

もちろん、これは、標準的な体力を備え、登山計画も自分なりに立て、顔を上げて道を見ながら歩き、
登山の地図も持ち運ぶ、登山者にとってです。

(手ぶらでヘッドライトも持たず、午後4時に入山する人)や、(心臓病や高血圧などの持病を抱えた人)は省きます(念のため言っとかないとね!)。

ヤマケイアルペンシリーズは、登山の段階をステップ1~5に分けています。20~40代の普通の登山者は、ステップ3くらいの山でもいきなりでも登れます。

いきなりステップ5の山にさえ行かなければいいだけです。

ただ用心しなくてはならないのは、ちゃんとガイドブックを読んでいない場合です。

ガイドブックには登山適期が記されています。

たとえば、鳳凰三山の登山適期は11月初旬までです。基本的に小屋がある山では小屋が閉まる=登山シーズンは終わりです。

ヤマケイアルペンガイドの場合は登山適期はガイドブックの前にまとめて「このガイドブックの使い方」の欄にあります。

より親切なガイドブックでは各山ごとの登山適期を記しているものもあります。

たとえば、登山適期と言うことを知らないと、雪がない普通の登山に向かっているつもりで、5月ゴールデンウィークの八ヶ岳横岳に出向いてしまいます。実は5月の八ヶ岳は雪山です。 

≪登山適期のついたルートガイド≫
こちらに日本百名山の山々の登山適期をまとめたものがあります。
http://www.momonayama.net/hundred_mt_list_data/season.html

一般登山者にとって、11月~6月(山開き)までの期間は登山はお休みの期間です。

ちなみにこの表では瑞牆山は12月~5月下旬までは登山不適、鳳凰山は11月上旬から5月下旬まで登山不適です。

≪定番ガイドブック≫



≪ルートガイド集≫
・アルペンガイドシリーズ :各山域ごとの一般道のルートガイド&グレード表
・ワンゲルガイドブックスシリーズ: 上に同じ。ルートガイドは散文的で読みづらい。
・日本登山大系: 山岳会に入るまでイラナイ。図書館で閉架にあります。

≪技術ガイド集≫
・ヤマケイ入門&ガイド シリーズ: 最新の技術本おススメ
・ヤマケイ・テクニカルブックシリーズ: 内容は一時代前だけど、これしかないから読むしかない。
                         図書館にあります。
・ヤマケイ山学選書シリーズ: 内容は古いけど鉄板。
・山登りABCシリーズ: これも内容が古い。常識が書いてあります。

押しなべて、叢書やシリーズはシリーズ全体での位置づけを把握して読むのが効果的です。

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