登山というのは色々と複雑な要素が絡み合っていますが、その絡み合い具合を分からない人に分かるように説明するには、ものすごく文才が要りそうです。
今回は、その困難な説明にチャレンジ!です。
題材は、「レッツ☆初心者込みの雪洞泊」。
・雪洞泊してみたい
・アイゼン・ピッケルワークを習いたい
・雪山未経験者込みも連れて行きたい
■ 思考の流れ
いきなり初心者が雪山に行って、汗をかいて濡れていたら、即ピンチに陥ってしまう。どうしたらいいか?
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最低限の知識をつけてから雪山に行かないと!
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が、一人で独学だと、普通の人は一か月に本一冊読めたらいいほうではないか…
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(最低限必要な知識を共有)&(スピードアップ)のためには、どうしたらいいか?
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机上講習が必要
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やっと山行可能な状態になった。雪山一回目=雪洞泊はありえないので、どこかで雪山デビューしてもらうべし。
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どこがよいか?
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初心者でも愉しめ、安全地帯が近い遭難しない山。(北八つ、入笠など小屋がある山)
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経験者はアイゼンワークもしてもらいたい。ピッケルも使い慣れてほしい。どこが良いか?
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富士山が適当ではないか?ガイド登山で日帰り1万円程度からあり、負担もそう大きくない。
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初心者はいきなりピッケルアイゼンワークは稜線に出ることになり人によっては心配なので、来年だな。
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実際の山行では、お天気の兼ね合いがある。天気で流れ、順繰りに繰り下がると、結局、仕事で参加できないメンバーが出てきて、レベルにばらつきが出る
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複数回、山行を企画するか、個人で行ってもらうか・・・
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レベルにばらつきがないメンバーを揃える(=足を揃える)には、1シーズンでは足りない。
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装備を持っていない人に購入を迫るのは酷だ
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ビーコン程度は、レンタルでカバーするか・・・
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ウエア類はレンタルなどは無理だ 最低限必要なモノは揃えてもらわないとできない
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とはいえ、初心者の場合は、どこかに抜けがあるものだ。
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つまり、もろもろを考慮すると、雪洞泊は、スキルにばらつきがあるメンバーでも出来るレベルに設定しなければならない
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安全地帯に近いところで雪洞泊
となります。
これはメンバーの数が増えれば増えるほどそうで、レベルのばらつきを揃えるのは、ほんと1シーズンでは足りないくらいになりそうです。
大所帯だと小回りが利かない、という意味の中身ですね。
■ 雪山経験者が常識として知っていること
1)雪洞は雪が多くないと出来ない。2~3月の上越や谷川など。(八ヶ岳では雪洞作れません ><)
2)アイゼンワークは雪洞を作れるような雪が多い山ではできない。稜線なのです、アイゼン要るのは。12月、1月の富士山が定番。(ただし訓練なのにホントに死ぬ人もいます(汗))
無論、これなら八ヶ岳でも練習できます。ただ近年雪がすくないので(去年1月に行ったら稜線の雪は解けて夏道が出ていた)、確実を期すなら2月にならないと雪の保障がありません。
しかし緯度的に雪がある北アは12月1月は天候リスクが高すぎます。そういうわけで死ぬ人がいても時期的に雪がある場所を探すと高度が高い富士山しか行くところがないんですね・・・
3)雪洞泊ならワカン(つまりラッセル)とはセットにできます。また雪洞堀りだけでなく、スノーマウントやイグルーも作れます。つまり雪がたーくさんあるときの宿泊施設は複数作り方があります。
4)雪山初心者だと、装備が問題です。普段の登山装備より、しっかりした選択をしないと、結局買い直しになるだけでなく、危険さえもおよびます。
基本の雪山装備: 冬靴、冬用のレイヤリングしたウエア(大抵暑すぎる)、手袋、ニット帽、
バラクラバ、ゲイターなど小物。
ポイントは、”冬は汗をかかないことが重要”ってことです。
シェルはレインウエアで代用可。大体冬のウエアで10万円弱です。
ケチれない出費ですがちゃんと考えれば高くはなりません。
稜線装備: アイゼン(12本縦走用)、ピッケル(縦走用)
アイゼンは2万円くらい、ピッケルは1万円くらい
豪雪装備: わかん(またはスノーシュー)、ビーコン、プローブ、スコップ、スノーソー
雪崩がある山に行くなら必要な装備。後回しにできる。
5)雪山が初めてで雪洞泊だと予想と現実の違いにショックを受けて(笑)、雪山が嫌いになるかもしれません。
雪洞は湿度100%で、温度が0度~マイナス2~3度です。濡れたものは乾かず、濡らさないテクが必要です。
雪山初心者の定番八ヶ岳では、日中でもー10~15度なので、ウエアに付いた雪は解けません。なので払えばOKで、実際小屋前にはブラシが用意されていたりします。豪雪地帯は雪山としては気温が高く、ー5度くらいなどだと体温ですぐ雪が溶けてしまい、濡れがすごいです。濡れた上に風が吹くとかなり寒いので、実は気温がとっても低い八ヶ岳より寒いかもしれません。
・・・というもろもろの事情を勘案すると、
無理がないステップアップが必要です。
で、モデルケースとしてこういうステップアップを考えてみました。
■ ステップアップ事例
1)12月
☆冬山基礎 机上講習
・レイヤリング: 汗厳禁。手袋3レイヤー。ゴアテックスでないとダメ。
・山岳エリアの特徴: 太平洋気候と日本海気候では注目すべき低気圧が違います。
・冬山の行動の特徴: 雪山ではランチ休憩はないです。行動食です。
・低体温症&凍傷: 絶対嫌ですよね!!
・装備: 冬靴、アイゼン、ピッケル、ワカン、プローブ、ビーコン、ショベル、スノーソーについて
どこかからプロの講師を招く。 費用は折半。
2)1月
☆アイゼン・ピッケルワーク@富士山5合目(雪山経験者グループ)
・ピッケルの持ち方・使い方: リーシュ
・ピッケルでの滑落停止
・アイゼンの装着: 手袋をしていても装着できる
・基本のアイゼン歩行: しっかり一本足に乗ります。片足決まる前に次の足を出さない。
濡れた手で冷えた金属に触ると皮膚がはがれます。ドライアイスと同じです。
ガイド登山に参加する。
☆雪山デビュー@北横岳(初心者グループ)またはクリスマス山行@北八つ
・ピッケルの持ち方・使い方: リーシュ
・ピッケルvsストック: ピッケルが要るのは稜線の一部でほぼストックの方が重要です。
イモトもマナスルほとんどストックでした。
・アイゼンの装着: 手袋をしていても装着できる
・アイゼン&ノーアイゼン: アイゼンが要るのは稜線の一部で、ほぼアイゼンが要らない道
です。どういう時に要るのか知る。
・基本の雪上歩行:ツボ足、キックステップ
3)2月
☆自主山行 (お好きな山へ)
・初心者:霧ヶ峰、美ヶ原、白駒池、本沢温泉、入笠山、夜叉神峠、
・初級者:天狗岳(渋の湯からのピストン)硫黄岳(ピストン)、大菩薩嶺、蓼科山、など
4)3月
☆雪洞泊(谷川岳など)
安全地帯近所、ピークハントなし。ワカンによるラッセルあり。ビーコン使用訓練あり。
講師はプロを招く。費用は折半で。食当は経験者。共同装備分担あり。
とまぁ、こんな風に、雪洞泊に行く前にやることがいっぱいあるわけですね。この雪洞泊は初心者の参加を考慮してちょっと易しめ。 1年目だと、足が揃わないからです。
これは目標が4)雪洞泊 になったら、何をしないといけないか?という目標が定まれば、やることが定まるというケースです。
これだと雪山デビューの年に雪洞まで行っちゃうわけですが、だからと言ってその人のスキルが高いことを示すわけではないことが分かるでしょう。
私は登山は野菜と同じで、急に大きくなったものより、じっくり大きくなったものの方が良いように思うので、1年目はただ雪に慣れるだけ、2年目はピッケル、アイゼン、3年目はワカン、雪洞、とゆっくり成長するほうが良いと思います。
■ おまけ
5)4月
☆ご褒美山行の雪洞泊 念のため安全地帯が近い山で、雪洞や鎌倉を掘って楽しんでみる
鍋倉山(森の家)など。
まぁここまですれば楽しい♪上に学んだスキルが定着というレベルに到達できますね。
■ Whyではなく、How
登山は、”いきなり○○”がNGです。
なので、いきなりにしないためには何をしたらいいのか?
と難しい大きなことを、易しい小さな部品に分解して考える思考スタイルが必要です。
しかし、まったく右も左も分からないと分解することもできません。
それは、普通に夏山を歩いている時から同じで、○○が出来るようになるためには何をしたらいいか?というHowに落とし込む思考スタイルが必要です。
○○ができない、というとき、なぜか?(Why)で止まらずに、できるようになるためには何をしようか?と考える。選択肢は複数合ってよいと思います。
これはとっても面白い作業。こういう作業を共有できる相手が良き山仲間のような気がします☆
≪参考サイト≫
雪山入門の書籍
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/02/blog-post_6664.html
説明が異様に難しい 登山というスキル
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/02/blog-post_18.html
私の山道具変遷記
http://blog.goo.ne.jp/osakahensyu05/e/7b8a074bba3ff47b202ac21bec224816
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