Friday, November 8, 2013

遭難しないための考え方を模索しよう

■ (連れて行く相手)と(連れていける山)

最近、リーダーとして人を連れて行くということを考えると、

 ・自分のリーダーとしての技量

以外に

 ・連れて行く相手の技量

も当然重要なポイントだと考え至りました。 

私は夫と出かけるときはリーダーですが、積雪期でも知らないルートに出かけています。
しかし、女友達と夏山縦走した時は本当は行きたかった山は選べず、知っている山で2泊を1泊にして難易度を上げました。また、完全初心者を連れて行くときはかなり用心した山行しか組めません。

               責任の量
完全初心者      = 100% 
少し山を知ってる人 = 70% 
同じレベルの相手  = 50%
先輩           = 30% 

というような算段が心の中にあるのかもしれません(笑)。

余談ですが、人間は自分が属すグループの人数の多寡で責任の量を図る癖があるそうです。
たとえば、共有部の掃除などですが、3人のグループであれば自分は3分の1やれば自分の分は終わり、30人のグループであれば30分の1しかしなくて良いと考える、のだそうです。案外団体ツアーが無くならない理由はこの辺かもしれませんね。

脱線しましたが、(連れて行く相手)(連れていける山)も違います。

私は登山2年目の去年から、時々人を連れて山に行っています。しかし、相手の技量により、私自身が一人なら登れても、一緒だと連れていけない山もあります。平たく言うと足を引っ張るんですね。

たとえば、

 完全初心者       = 無雪期&積雪期の北八つ、北横岳、三ツ峠 
 少し山を知っている人 = 瑞牆山、茅ヶ岳、両股小屋
 同じレベルくらいの人 = 金峰山、甲武信岳 

■ (リーダーとしての実力) ≠ (登山者としての実力)

英語では、聴けるけど話せない、ということはよくあります。パッシブイングリッシュ(受動的に理解できる英語)とアクティブイングリッシュ(自分が発信できる英語)は異なる、ということはよく知られています。

日本人は一般にパッシブばかりが強く、相手を理解できるのに、自分を理解してもらうよう発信できない人が多いので、発信英語=実力と考える英語圏の人からは、ほとんど英語力を評価されないことが多いです。

リーダーとしての実力は、例えるなら、アクティブイングリッシュかもしれません。リーダーの時は登山者の実力より、下のところしか行くことはできません。自分の山が10なら、リーダーとしては8の山しか行けないのが普通です。

今の私の実力では

 A.120%の山=チャレンジレベル: ツルネ東稜~旭岳~権現~川俣尾根 
 B.100%の山=自分で行く山: 厳冬期鳳凰三山、夏の後立縦走 単独テント泊4泊5日
 C.80%の山=もう通いなれた山: 厳冬期八ヶ岳天狗岳、
 D.60%の山=人を連れて行った山: 瑞牆山、茅が岳、大菩薩、北八ツ、北横岳、三ツ峠

です。

まったく初心者の人(装備も持っていない)と行くなら、無雪期なら、瑞牆山や大菩薩嶺は連れていけますが、後立縦走は連れていけません。

もし初心者の人を冬の天狗岳に案内するなら、私にとってはリーダーとして結構チャレンジです。

雪山にはスノーシューなどで入ったことがあるレベルの人であれば、ルートを渋の湯からのピストンに限定し(つまり易しくし)、小屋泊にすれば、少し緊張はしますが、連れてはいけると思います。悪天候はもちろん除くです。

■ 初心者の無知はだれの責任か?

初心者の場合、無知による事故は、リーダーの責任ではないかと思います。

初心者を連れて行くと、リーダーとしてチャレンジだというのは、つまり相手を心配する、という意味です。

たとえば、コースタイムたった3時間の渋の湯ー黒百合平間ですが、それさえ歩けない人もいます。いつだったか、夜更かししてきて、歩けなくなったオジサンがいました。つまり、雪山がどんなものかについて無知だったために自己管理ができなかったわけです。しかし、この人は初心者です。無知について責任を問えるでしょうか?まぁ寝ていないと言うのは社会人としてどうか?と思いますから、この人は自己責任を問えそうですが、それでも、この場合、この人を登山以前に除外せずに登頂できなかったら、リーダーの責任です。それ以前に雪山の怖さを事前に伝えていなかったのがリーダーの落ち度にあたるかもしれません。そこは議論が別れるでしょう。

また黒百合平から天狗山頂までも、直下にほんの少しだけピッケルが必要なエリアがあります。アイゼンが要るか要らないかは雪次第ですが、いる場合、装着がちゃんとできるか見張らないといけない相手だと大変ですし、たとえば濡れた手で金属を触ったりなどしないか、などの冬山の常識がまだ身についていない人だと超・心配です。つまり緊張します。

最悪のケース、肝心の核心部でアイゼンが外れて落ちた、などありえます。それがもし連れて行った山で起きたら、それは相手の責任ではなく、たぶん、見張っていなかったリーダーの責任です。

それに低体温症つまり凍傷。ほとんどの人があまり気にしていませんが、行動食を適切に食べなかったりして体温が下がると、すぐ軽い凍傷にかかってしまいます(指の先が黒くなる)。

初心者と一口に言ってもその内容やレベルにも色々あるので、自分で自分の腹ごしらえをまだしてくれないレベルだと指示しないといけなくなります。そういう場合、指示するのはリーダーの責任になります。

これが”初心者を連れて行くのがいちばん大変”という場合の、タイヘンの意味合いです(笑)。

初心者には無知による過失には、自己責任を問えません・・・。シラナイの当然ですから・・・。

■ 知らない山にリーダーとして行くべきか否か議論

 ”知らないルートを積雪期にリーダーとして計画することは経験者にとっては普通です”

と言われ、うーん?!とのけぞっています。

トムラウシの事故報告書でメインガイドがその山に経験がない人だったのにはすごく驚きました。そんな感じです。

普通なのか・・・(汗)

でも、世の習わしというものは、ベスト・プラクティスとは異なりますよね。

私は、今、講習会に出ています。公的機関の講習会がいかに登山者を育成すべきかについては大いに議論をすべきではないか?と思いました。

私自身は、一般登山者である講習生には、遭難しないためのベストプラクティスを教えるべきで、講習会に出るようなレベルの人(自分も含め)が、知らないルートに積雪期に行くべきだとは思えません。

何しろ、講習レベルの人は、いくら○十年の経験がある経験者、といっても経験の濃度が高校・大学山岳部出身者などのガイドレベルの人たちとは決定的に異なるからです。

ベスト・プラクティスは

 1)無雪期 既知の一般ルート 
    ↓ 
 2)積雪期 既知の一般ルート
    ↓
 3)無雪期 未知の一般ルート
    ↓
 4)積雪期 未知の一般ルート

ではないでしょうか?

私ならクラスメートのリーダーシップで未知のルートはちょっと躊躇します。
    

■ 経験の濃度

山から学ぶことの濃度は、山行形態で異なります。

もちろん1を知って10学ぶ人もいれば、1しか学ばない人もいるように、当人の資質にもよります。
資質を除外して、考えると・・・

ガイド等に連れて行ってもらった山の経験  20%
友人に                        40%
自分で行った                   100%
連れて行った山の経験             120%

というイメージでほぼOKと思います。

ツアーなどに参加して得た山の経験値は、自分でも色々なところで書いていますが、限りなくゼロに近いです。これは登山初年度からそう思っています。

その理由は、ツアーでは、登山計画を自分で立てず、標高差何メートルを何時間歩かないといけないのかも知らずに、ただ指定された集合場所に行くだけだからです。人の後をついていけば登れる山は登っただけで、内容としてはすごく濃度が低いわけです。ひどい人になると、何と言う山に登るのかさえ知らない人もいます。

私はこれは損だな~と思います。同じ山に登るなら、濃度が濃い山をしたほうが一回一回が重みと価値ある経験になりませんかね?だから団体ツアーは考える登山にとってほとんどお金の無駄です。

団体ツアーで穂高に行くより、一回近所の低山に自分で行ったり、初心者を連れて行く方がたぶん勉強になります。

■ 経験の濃度を高める工夫

しかし、それでもツアーに頼らざるを得ない場合、どうやって経験の濃度を高めるか?が頭の使いどころです。

幸いなことに登山は3回おいしいものです。

 1回目は、登山の計画を立てるとき
 2回目は、登山をしている時
 3回目は、登山を振り返っている時

4回おいしいと言う人もいます。たしかに 4回目、長年たって、昔を振り返る時も楽しいかもしれません。まだ3年分しか振り返りがないので分かりません(笑)。

私は面白い登山をしたときは、3回目を色々な人と分かち合うことにしています。ブログで登山記録をつけるのもそのためです。

ちゃんとした登山者の人なら絶対わかってくれます。 

ぜひ、2回目だけでなく3度も楽しむようにしたらどうでしょう?

登山は3度楽しむ。けっきょくは、それがいちばん遭難しない考え方ではないか?と思います。


≪関連記事≫

歩ける山 ≠ 連れていける山

http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/11/blog-post_5.html

 

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