Monday, January 21, 2013

オシャレな登山者


■ 読了 『私の山道具』 

読了と書いたけど、実はこの本は読む本ではなくて、見る本。一種のスタイル集なのです。


スタイル集と言うのは、ファッションの着合わせを掲載した本。 

山でファッションコーディネイト… ありえないだろうなぁ…私の山の先輩の辞書には。

山で必要なものは服以外にも一杯ある。どうやってコーディネイトするほどの数の山服を持つんだろうか?

私の場合は、装備にまわすお金で手一杯でコーディネイトするほどの量の山服はもてない…。

夏は夏の山服をずっと同じのを着たきりだし、冬は冬の山服を着たきりだ。

紫のダウンとオレンジのダウンどっちを着る?なんて状況にある人が一体いるんだろうか…?

山道具屋さんによると、山を始めるには10万円、冬山を始めるにはプラス20万円と言われているそうだ。

で、この山ファッションスタイル集…でも、私もこの手の本に惹かれる口だから分かる…

都会の人が憧れる山のスタイル…。『白雪姫と七人の小人』に出てきそうな愛らしいログハウス風の山小屋。オイルランプの夜。茶色く焼けた古い本に、手垢がしみこんでぴかぴかになった木製椅子。暖炉。木のマグに注がれる熱いコーヒー… 質素な食事もおいしく感じる、ゆったりと流れる時間。

というのは実際は今、山小屋では、靴の脱ぎ場もない混雑しきった玄関口、3回に分けて呈され、
急いで食べなくてはならない食事、雨合羽を干す場所の取り合い、夜の大音量のいびきと2人で1枚のおふとん、あるいは盗まれてしまうストック、などにすっかり置き換えられているんだけど…。

でもね、憧れですから。 憧れるのは自由でしょう。

で、私もそういう憧れから、自然の中を歩くことに目覚めた、と思う。

ただ単に山梨には、神宮前も代官山も自由が丘もなかったから…こうした物質的な面で満たされることがなかっただけだ。

学生の頃は、古着屋で服を買うためにわざわざ電車で1時間かけて神戸元町の高架下に通って米軍払い下げの店で1本300円の軍パンを10着試着して、私の一本を見つけてくるのに血道をあげた。アメリカから持って帰った白のお皿のセットは重くて重くて、でも割りたくないから機内持ち込み。そんな私だったから、もし環境が与えられていたら、それこそ山ファッション路線を突っ走っていただろう。無論、都会には高い山服もあっと驚くような低価格で売っている古着屋があるに違いない。ファッションは創意工夫の発露先なのだ、都会では。

山歩きには不要のククサ…でもザックにをぶら下げているのは私の小さな抵抗…山の何を愛するのか、見た人はきっと察してくれるだろう。いや、もしかして「またファッション優先の新参者か~」と思われるのかもしれない。

山には2つの現実があるように思う。

この間、中山峠越えで天狗岳に登った。黒百合ヒュッテ宿泊。

小屋に着いてラーメンを食べているとちょうど硫黄岳から歩いてきた、という男性が小屋に到着した。体格の大きな大柄な男性だった。バラクラバにゴーグル、ハードシェルにオーバーパンツというものすごい防寒体制で、マムートのマンモスマークが見える、黒を貴重にしたファッションだった。とってもお金が掛かっている感じ。「ものすごい風ですよ」とのこと。嵐の中を歩いてきたみたいにどっかと腰を下ろす。

その山に彼が小屋についた後で出かけて行ったのだけど、その時間帯だけだったのかもしれないけれど、風は無風の地帯もあるくらいで、雪は閉まって歩きやすく夏山より気を使わずに済んだくらいだった。むろん、私がその山を登るのがもう5回目だったってのもあるかもしれない。翌日、同じ目的地だった彼は、ルートは違うはずだったけど、結局私の後を追う形で歩いたようだった。
明らかに後ろをついて来ていたのは何でだったのだろう?定番以外の道に興味を惹かれたからかもしれない。

山小屋では単独行の女性登山者が私以外にももう1人いた。ロングスカート。素泊まりだったみたいで夕食は手作りだった。その荷物を入れている袋はマリメッコだった。ウチにもいくつかマリメッコあるけど、マリメッコと分からない柄をわざと選んである。彼氏は山男で山小屋がない南アの新南部なんかが好きなのだそうだ。だからいつもテント泊、と笑う。販売業だから平日が休み、と言っていたので、勝手にアパレルだと思っていたら「え?なんで分かるの」って驚いていたけどオシャレな人だったからだ。

昔出たお通夜で、私と義理の姉以外の参列者たちからパジャマとシートパックが出てきたときには驚いた。私の山の先輩にとって、ロングスカートで過ごす冬山の夜って、そんな感じなんじゃないんだろうか… 

でも私はこの彼女とは志向が似ている。持ってきた酒も日本酒だったし(笑) 朝起きて出るときは彼女はアイスクライミングブーツを履いていた。

平日の黒百合平… おしゃれな登山者に会える場所・・・?それは、燃え盛る焚き火を囲んで、皆でひとつの鍋をつつき、ありあわせの衣類と質素な装備で挑む山男の世界とはまったく違う。

焚き火から飛ぶ火で穴が開いたセーターや使い込んで色あせた傷だらけのザック。
マンモス印のついたブランド山パンより作業ズボン・・・GPSではなく、カウンターアサルト、そんなスタイルがかっこよく見える。そんな世界もある。

この2つの世界は遠くへだったっているようだけど、実は愛しているものは同じだと思うんだけどな。











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