■ 終に鳳凰三山
2010年に山を始めて、丸二年・・・ 2010年12月31日は、夜叉神峠にハイキングに来る登山者でした。 2012年12月31日。終にガイドツアーでなく、個人山行で鳳凰に来ることができるようになった。
それも薬師岳まででなく、観音岳まで・・・感無量。
今回のヤマレコです♪
■ 行程(コースタイム)
Day1 30日 ① 7:17 夜叉神峠登山口 - 12:16 南御室小屋 ②12:56 南御室小屋 - 14:44 薬師小屋
Day2 31日 ① 6:40 薬師小屋 - 8:10 観音岳山頂 - 9:00 薬師小屋
② 9:40 薬師小屋 - 13:28 下山口
今回のヤマレコ。
■ 達成とは少しずつ勝ち取るもの
2012年最後の山は、薬師小屋泊での雪山ロングルート…この山行は、本当に私たち夫婦の登山の総括ともいえるものでした。
「連れて行ってもらう」のではなく、「自分達で登る」山登り。
2010年の同じ12月31日には、私たちは雪山初心者として、「夜叉神峠」を訪れ、夜叉神峠~高谷山を歩き、峠からの白根を見て感動する登山超初心者でした。そのとき、夜叉神峠登山口にいたガイドツアーご一行の女性達の見下すような眼差し(汗)。男性のガイドに率いられた女性一団でしたが、高級ウエアに身を固め、初心者の私たちがアイゼン(6本の軽アイゼン)をつけたものかどうかを迷っているのをフンというような調子で眺めているのでした・・・。
そして、その人たちは登山口を占領してストレッチをしており通行のジャマでした。礼儀正しいのはガイドさんだけで、ツアー客からみると一般登山客というのは、下民(?笑)であることを明らかに感じさせられる…私たちはそそくさと前を通り過ぎたのでした。
けれども雪の高谷山は誰にも歩かれておらずとても気持の良い場所でした。少しだけれども尾根を自分達で読んで歩かないといけなかった。それから、私たちは地元の山道具屋さんでツアーに参加しないことを非難されてつつも、少しずつ雪の山を歩き、少しずつステップアップして、終に今回ツアーではなく、個人山行で厳冬期の鳳凰三山に向かうことになったのです。
■ 企画の由来
この鳳凰三山の企画は、私たちがそろそろ「冬のロングルート」を求めたことから企画されました。
通常このコースは登山口から5時間の南御室小屋に一泊するのが人気です。とくにテント泊が人気があります。
が、既にそのルートは体力的には冬よりバテる夏のテント泊で既にマスターしており、体力が持つことは確認済みなので、今回は、ロングルートということで、さらにその約1.5時間先の薬師小屋に宿泊です。薬師小屋には夏に通りがかったときに泊まってみたいな…と思い、宿泊する機会を取ってあったのでした。薬師小屋にはテントサイトはないので、ココまで足を伸ばせば必ず宿泊になります。
冬山のテント泊はまだデビューしていないし、ロングルートにチャレンジしたい私たちにはピッタリ。 どれくらいロングかというと、5時間の歩きに、さらに1時間40分の歩きが加わります。つまり6時間40分。ランチや途中休憩を入れておおよそ7時間の道のり。
歩行時間としては、甲斐駒の黒戸尾根で七条小屋へ行くのと一緒ですが、道が緩やかです。ステップアップ黒戸尾根前座(笑)。南アルプスは八ケ岳と違い、クリスマスは小屋が開いておらず、お正月は29日からです。小屋明け当日は小屋番さんも忙しいだろうし、トレースがないもしくは薄い可能性もあり、途中がラッセルとなると体力的な難易度が上がるので、人が入って一応トレースもつき小屋明けから新鮮さを失っていないだろう、翌日30日宿泊としました。
■ あいにくのスタート
あいにく、お天気は悪化。温暖な南岸低気圧が入り、30日は気温が高く、31日は一転して冬型。南アルプスでも3000mで20mを越える風が予想されていました。お空では南からの低気圧と北からの低気圧が綱引き中のようでした。
前日29日は北の低気圧が勝ったのか、甲府でも雪が振り冷え込んだので、翌朝の道路の凍結を心配しましたが、あけてみると30日は朝から生暖かく、着込んだ冬山のウエアが少々滑稽に思えるほどで、道路からは一切雪が消え、凍結の心配は杞憂でした。夜叉神ゲートは開いていました。
私たちはここしばらく朝寝坊ばかりしていたので、久しぶりの早起きが堪え、せっかく5時に起きたのに出発は6時になってしまいました。厳冬期三ツ頭でシャリバテを経験して以来、雪山の朝ごはんはお餅です。この日はヨモギ味の黄粉もちを2つずつ食べました。
我が家から40分の夜叉神峠登山口に着いたのは7時頃でした。7時スタートで7時間歩くと14時になってしまいます。山では7時スタートは決して早くありません。むしろ遅い(汗)。というのは日が短いので遅くとも16時には小屋についていることが常識だからです。私は慎重派なので1時間は前倒しにしたい派。 夫があまり気分的に盛り上がっていない…のが、この出発時間の遅さに表れています。朝起きたのも、私が先、食事も私が準備、コーヒーも、着替えるのも…とすべて私の後追いです… 気後れしてるな。メンタル面は課題です。
■ 地元の人に会う
着くと、「地元の者ですが・・・」と声をかけてきた2人組みの男性たちがいました。
「コレ今日のお天気です。参考にされてください。登山届けは出されていますか?」
「アレ?!塩沢さんじゃないですか~」
そう、芦安の山岳館の館長の塩沢さんたちでした。早朝から登山者に安全登山を呼びかけているそうです。私は夜叉神峠の西口登山道の整備でお会いしたことがありました。
「あ~あのときのヨガの先生ですね!」「その節はどうも~」 お会いするのは約1年ぶりです。
そして、その前を10人近くのパーティが通りがかりました。私たちとは違い林道に向けて歩く。 「ウチの娘をよろしく~」 見やると、うら若い細身の娘さんがごっつい山男の群れに混じっています。ウチの娘と言うのは、同僚か知り合いか何かそんな感じのようです。
「へぇ~北岳ですか?いいなぁ。」
「そうです。でもあっちは行かないほうがいいですよ。今回天気が悪い」
「北岳だけ?ほんのお隣なのに…あっちは悪いんですね」
「そう」
鳳凰三山と北岳は野呂川を隔てただけですが、お天気は北岳と鳳凰三山では予想方法が違うようです。たしかに奥のほうの山が雲をさえぎって鳳凰側は稜線が見えているのをよく下からも見ます。 支度して「アイゼンまだいらないよね」と夫に相談していると、聞こえたのか、同僚の方が「峠までは要りませんよ」と教えてくださいました。
■ 夜叉神峠まで…雨と高温
7:17スタートで、夜叉神峠までハイクアップです。尾根を九十九折に緩やかに登る道で、ここは何度も来ているのでもうおなじみです。ドイツ人のクリスとも来たし、友人とも。
ただ今回は夜叉神峠はほんの序盤です。そして、気温が高い。手元の温度計では冬なのに5度くらいありました。みぞれ状態の雪道です。もちろんアイゼンは不要。中ほどまで行くと、駐車場で会い、先を行っていた男性が一本とっているところでした。「暑いですね~」と声をかけると、「私はもう脱ぎましたよ」。私たちも少し先で衣類を調整しました。私はシェルを脱いでしまいます。夫は相変わらず、気温が高かろうと低かろうといつも同じ冬仕様…少しは考えたらいいのになぁと思うのですが、彼はどうも寒がりと自認しているらしいです。でも今回は彼さえ、中のフリースを脱ぎました。
私は上着なしのミドルレイヤーだけに。気温も高いのでちょうど良い。登山道の状態は悪く、じょりじょりの雪道です。ザックには雨のしずくが…暑いので帽子も脱ぎます。
正直冬山(雪山)では、雪が降るのはいいが雨はとても危険です…気持も萎える。途中、立派なウエアの若い男性を追い抜き、夜叉神峠には8:25です。遅い… 気持は焦りますが行程は長いので、ウエアを調整し、ザックにレインカバーをつけ、ドリンクを飲む程度で、そそくさと出発です。 夫はここでアイゼンをつけました。私は必要な雪質のように思えなかったのでツボ足で。
私たちが追い抜いた男性は杖立峠までのピストン、若い男性は今日はハイキングとのことでした。薬師小屋は空いているらしいよ、というと心動かされた風でしたが…。この男性たち2人は意気投合したみたいでした。
杖立て峠から降りてきたというパーティとすれ違いました。
「撤退です」
「上、そんなに悪いんですか?」
「…」
■ 雨からみぞれ、雪に変化
この道はほとんどが樹林帯の中の道です。雨や風などは樹林帯の中では緩和されます。なので、撤退して下山したパーティが二つもいるのは少々上はどういう感じかな、と不安になりましたが、雨と風はまだ想定内のことなので進みます。
ザックには雨が強い場合に備えて、傘が今回、冬山としては特別に追加されています。また、雪の中では、積極的にツエルトを出したほうがいい、という先輩のアドバイスを受けて、張り紐をつけ、枝に引っ掛けるばかりになったツエルトが待機。悪天候で嫌気がさしたら、充分な休息で英気を養うつもりで(笑)
杖立峠までは、アイスが露出した少々いやらしい段差もありましたが、基本的にはアイスがところどころ見え隠れする程度の積雪2~3センチの道で、アイゼンは必要ありませんでした。途中でおじさんとテント泊の重そうな装備の若者1人を追い越し、杖立峠着が9:56です。まずまずです。2人ともまだ疲れておらず平気だったので、軽く一本取って先を急ぎます。次なる目的地は山火事跡。開けた草原です。
山火事跡へは10:30着。ココは樹林帯から抜けるので夏は気持が良いですが、悪天候時は、単純に悪天候に晒される場所となるので入る前に、ドリンクを飲みます。お天気は悪いものの、樹氷はとても美しいと思いました。ただ曇天(汗)。
さらに苺平まで急ぎます… 樹林帯の中とはいえ、冬の風は冷たく、薄手の手袋の指がかじかみます。手袋を一枚付け足そうか考えましたが、私は手の循環は良いほうなので大丈夫だろうと無視。手袋は100円ショップのです。すぐ乾くんだけど、今日は乾くより先に雪がついて溶け、そこを風が吹く…。
緩やかな起伏を繰り返しつつ、標高を上げます。苺平へは11:54着。 そろそろ疲れてきますが、さらに先へ。途中で指がかじかむのを気にせず、歩いていたら、指先の動作が、のろのろとしかできない・・・アレ?それほど冷えているのに気がつき、多めの行動食を取ります。 苺平まで来たら後は一息なのは知っているので、さっさと先へ。12:16 南御室小屋着。ぴったり5時間。
小屋では温かい飲み物で休憩(300円)し、カップヌードル(400円)を頂きました。家からも持ってきていたのですが、小屋経営に協力(笑)?夫は八ケ岳の山小屋の気分でランチを注文しようとしていました(汗) 違うってば!ここは南アルプスなんだってば。なるほどだから夫がランチを準備していなかったんですね・・・私はもう1食持つかどうかかなり悩んだのに。
小屋では台湾から日本に観光できている人がいたので、少し会話して行動食のどらやきをあげてしまった。台湾の人は親日家が多く、海外でいつもとても親切にしてもらっているので。
食べてトイレに行きそそくさと出発です。あまりゆっくりすると歩くのがイヤになるからです。トイレは100円です。
出発時小屋の人は、今日は虫の居所が悪かったらしく、感じの悪い聞き方で、「あんたたち薬師小屋まで行くの?予約入れてるの!名前は!!」と聞いてきました。この小屋のオヤジさんには夏も会っているのですが、私たちを覚えていなくても仕方ありませんが、あたかも非常識登山者と決め付けたようなこの聞き方はないだろう、という聞き方で、聞くというより非難と言う感じでした。 こっちはちゃんとありがとうございましたと言って出ているのに。
でも山ではこういうことは多いです。心配をしてくれているだけなのです。
■ 薬師小屋へ 本日の核心
南御室小屋から薬師小屋へはちょっとだけ登ります。多くの人が南御室小屋で行程を終わるのでトレースは薄くなります。
この日もトレースが薄くなり終には消えてしまいました…でも雪は30cm~40cm踏む感じでラッセルで苦しまされるほどではありません。ただ体力は必要です。樹林帯の中なのでところどころ深い雪に足を取られます。危険はとくにありません。去年ツルネ東稜でラッセルの練習していてよかったなぁと思いました。崩れる雪質の急登ラッセル箇所が数箇所。崩れる場所は崩れる速度より速く登るのがコツで体力を消耗します。
先行していたカメラマンのおじさんを追い抜きました。おじさんはワカンをザックにつけていましたがわかんがあれば、スピードアップできそうな道でした。私たちはツボ足ですが。 私と夫はたいてい20mくらい開けて歩くのですが、振り返っても夫がいない・・・彼は少々くたびれていたようです・・・やっと砂払いの稜線に入る前に追いついてくれました。私は立ち止まるので写真が取れるが、彼は追いついても出発なので写真が撮れない・・・でも歩く時間の差はせいぜい5分なのです。その5分の差が写真が取れるか取れないかの差になる。
最後は砂払いからの稜線歩き…暴風(^^;)。 なぜかヤル気に目覚める私。ここまで来たらやるっきゃない!
ココが本日の核心。強風でしたが…私はこの日のこの山のために、2週間前に蓼科山で雨&湿雪&暴風を経験したのだ、と思いました(^^)。 なぜなら、あの日の蓼科山を思えば、「こんな風、微風ね」と思える程度の風だったからです。とはいえ、頬を叩く雨は、雨と言うよりみぞれで鋭く痛く、フードの紐も締めなくてはいけない。息は殺してサッサと歩くべし。
稜線に出ると花崗岩の砂が露出していて、さらにアイゼンは不要に。ほんとこの道はアイゼン不要です。しかし耐えるのも少々のことですぐに薬師小屋に着きます。到着は14:44。
小屋前はトレースがなくラッセル…今日の一番乗りなのか?それとも風でかき消されてしまったのようです。
■ 楽しい出会いの薬師小屋
雪を玄関口で丁寧に払うも玄関口も吹雪いているので、すぐに雪がついてしまいます…(汗) あきらめて、薬師小屋では入ってすぐに、「下の小屋が心配していた」と連絡しておきます。到着を知りたがっていると思われるので。
入ってすぐの団欒の場?では、先行者3人が歓談中でした。大阪弁。聞くと大阪から、昨日南ア入りしたそうでした。女性二人と男性お1人。ストーブを囲んでいます。
私と夫は濡れたジャケットや手袋などを乾かす場を教えてもらい、受付を済ませました。一泊二食8000円と良心的です。感じの良い若い男性の小屋番さんで、寝場所も女性と言うことで奥まった場所をあてがっていてくれていました。ほどなく追い越してきたおじさんも到着。
濡れた手袋を乾かすのに、ストーブの前に陣取っていると、真っ暗な中でお顔は見えませんが、毎年ここに来ていて、もう8回目だという人(黄緑さん。ウエアが黄緑だったから。)が、奥から山談義を始めました。今日は甲府からタクシーで夜叉神に入ったということだったので、帰りは送ってあげましょうかと聞いてみる…。
「帰り送ってあげますよ」
「いやそれがね、時間が合わないかもしれない」「だいじょうぶですよ、私たちゆっくり歩きますから」「いや逆。私歩くの早いんですよ。コースタイムの6割くらい」「え?そうなんですか~?!」「どうやってそんなに健脚になったんですか?」「家が富士山に近くて、いつも富士山に登っているんですよ。もうすぐ100回になる・・・」「すごい!」そんな会話がきっかけで色々と山の話を。静岡の方でした。 話していると、カメラマンのおじさんも加え、3人で楽しく。おじさんも常連でした。夫、表から他の3人も参加し、雪を溶かして水を作ったりしながら、山談義で盛り上がりました。
食事は6時。8時消灯。消灯までの小1時間は7人の小屋泊まり全員で、たのしく山の話題で大いに盛り上がりました。関西からの三人はご夫婦と奥様の妹さん。沢もやるそうで北アの沢には興味を掻きたてられました。沢のシューズの選び方を相談したり。甲斐駒の奥の黄蓮谷も知っていた。
小屋の本棚にはPEAKSと『岳』が置いてあった。若い登山者を思わせる。私が選ぶ小屋は大体この路線だ。ここに最近仲良くしている山の先輩もいたらいいのに…と思いました。今頃赤岳展望荘のはず。あっち(八ケ岳)も天候悪そうなのです。
関西組みは、だんなさんは登る系の沢が好きで、奥様は歩くだけで泳ぎの要素がない沢が好きなのだそうです。妹さんは初心者だそうでしたが、初心者は鳳凰三山来ないって(笑)。昨日南ア入りし、南御室小屋に泊まったそうでしたが、林道のゲートが閉まっていて山の神から歩いてきたのだとか・・・でも2泊するなら、余裕の日程ですね。ただこの日は稜線はイマイチで薬師岳で帰ってきたそうです。
話しかけてくれた山のエキスパート黄緑さんと関西組みは、大峰山の話題で大盛り上がり。ローカルな名前が飛び出します。おじさんはカメラマンで、この方も毎年薬師小屋に年末は来ることにしているそうです。もうひとり常連のカメラマンのおじさんがいるそうですが今年はまだ来ていないのだとか。
この日は15名の予約が半数減って7名。こじんまりと楽しく過ごせてよかった☆ 夜も気温が高く暖かく、持っていったシュラフで充分でした。夜中にトイレに起きると外はすごい風の音でしたが、音ほどに風そのものはすごくなく、雨混じり。うっすらと満月に近い月が曇り空のむこうに見えていました。
■ 素晴らしい稜線歩きの本日
朝になっても、天気が今ひとつと言う前情報で、みんななんとなく気分の盛り上がらないスタートですが、小屋の朝食は6時。 カメラマンのおじさんは、写真狙いなので朝食抜きで地蔵岳を目差すということでした。6時に朝食。おいしいご飯でした。
この山域、鳳凰三山は、薬師岳、観音岳、地蔵岳を合わせて鳳凰三山ですが、一番奥にあるのが地蔵岳。 薬師岳は小屋から10分。 で、初心者が同行する場合は観音岳まで、とするのが通例です。
観音岳までなら、小屋から1時間40分。地蔵岳(オベリスク)はさらに1時間半先です。私は時間配分に頭を悩ませます。小屋の食事が6時なので出発は早くても6時半。往復3時間なら9時半。地蔵まで行きたいけど…そうすると、往復6時間になってしまって下山にかかる時間を考えると後一泊必要です。来るのに6時間40分の道のりですから、多めに見て大体6時間くらいを見積もっています。ちょっとタイトなスケジュールと思ってフォースト・ビバークになってもいいようにツエルトでのテント泊装備に近い装備を持ってきているほど。下山は最低16時には済ませたいということを考慮すると、午前中に下山を開始したい… 前回、夏に縦走したときは下山の見積もり違いで、余計に時間を喰ってしまった経験があります。冬は夏よりコースタイムの管理はシビアです。
から見る富士山と砂払岳。 夜が明ける前。
・初心者は観音岳まで
・下山にどれくらい時間が掛かるか未知数
の2点があって、そこで今日はこの時間から出て、10時に小屋に帰ってこれる地点まで歩くことにしました。
目的地ではなく、時間で歩く。一応夫には、「1時間半歩いて折り返し、1時間半かけて戻る」と話しておきます。こうすれば10時前に小屋に着くはずです。
夫は周囲の人の「今日は風が強い」という言葉を真に受けて、朝食後ダラダラとしており、あまりヤル気モードではありません。
「あのね、私早く出たいんだけど」
「僕、薬師岳まででいい…」
「そう、じゃ私10時に小屋に戻ってくるから、小屋で待ってて。」 夫を残し、さっさと出発です。みんなトレースがないのを嫌気しているだけ。
関西の三人組は下山日だし、カメラマンのおじさんは出たあと、あとは「黄緑さん」と私たちしかいません。黄緑さん(常連さん)はトイレにでも行っているのでしょう…
「ピッケル要るかな?」
「うーん」
行程は前倒しのほうが安全であることは山の常識。なので、気後れしている夫は放置し、私は私のお山に向かうことにしました。ピッケルはとりあえず持つ。でも、ストックメインで行くことに。アイゼンは不要と判断しました。この判断は正解でした。
ソフトシェルの下にはダウンを着込み、バラクラバ、帽子、ゴーグル、ピッケル、ストック、最厚手のグローブで完全防備です。6:40 出発。
小屋前にはカメラマンのおじさんがつけたトレースが…。(ただこれは間違っていたんですけど)
小屋前に徒歩2分の小ピーク(写真上)に登ると、そこにカメラマンのおじさんが…アレ?!「途中でトレースがなくて、戻ってきちゃったんだよ」 岩を背に、風を避けれる写真適地でシャッターチャンスを待つ作戦に切り替えたようです。さらにそこに2人組みの男性も。男性たちはたぶん下の小屋からきているようでした。薬師岳の砂地…トレースはありません(汗)。花崗岩の岩はどう進んでもOKなのです。足取りの重い男性二人が先が長い私にはなんだかジャマに感じられたので、先を越します。
ここは夏に来たことがあるのだし、基本的に稜線を歩くだけです。冬は雪屁が発達するので気をつけるとすれば、あまり東側に寄りすぎない。潅木や岩が出ているところを歩くこと。
雪の稜線を一番乗りで歩けるなんて!! 気分がいい。よし!あそこのピークまで行くぞ!と観音岳のピークを目差します。
ただ風は八ケ岳で味わったほどではありませんが、強くバラクラバは息で湿り、鼻はハナタレ小僧…冬山では仕方ありません。そして、食べてすぐ出たために指先がかじかみ感覚がない。風はまだゴーグルをつけるほどではありません。
すると、後ろから夫が追いついてきました。どうも気を変えたらしい。ところどころ先にラッセルしてもらいます。
7:40.船窪地形で少し風が緩むところに着ました。 ピークはまだ先。ラッセルがしんどくなかなか思うようなスピードで先に進めません。夫は、迷っているようです。
「8時までは先を行こう!」
そう今日は時間優先で。 稜線歩き…風上には雪が少ないので歩きやすいのですが、トレースもかき消されて、岩と雪のミックスです。何しろ強風であまり快適な歩きになりません。風下は風は緩みますが、ラッセルがしんどい。あまり東寄りに行くと怖い。
結局その間を取って雪が深くて大変そうになれば、風上に出て、雪の着き方がたいしたことがなければ稜線に乗ります…
時間喰う…(汗) ピッケルジャマ! 雪は上が3センチほど凍った最中雪でした。去年ツルネ東稜で散々雪と戯れたなぁ…
ラッセルしている姿がじれったく思えたのでしょう…黄緑さんが追いついてきて、「こうするんだよ」 とスイスイと先にラッセルをしてくれました。まるで這うように雪の山を登るのです。そう体重分散ですね。黄緑さんの助力を得て、観音岳山頂 8時10分。
白根。あちらは雲の中です。
この日の景色は最高でした。山独り占め気分満喫。私たちより前にトレースはない。前日スノーシューで鳳凰小屋に行った人がいるはずですが、トレースはほとんど見えませんでした。この方は小屋番さんたちに「無謀だ」と引き止められていたそうです。
しばらく山頂を満喫して、自分達の作ったトレースを戻ると、あっという間に小屋につき、9時に小屋に戻ってしまいました。1時間半の道が40分くらい(汗)。 別にアップダウンは同じなのに・・・
私たちのトレースを伝ってゾクゾクと後続の登山者が歩いてきていましたが 「あ、しまった!ここはハイマツの上だ(汗)」と思うところを、「トレースがあるから当然」といわんばかりに、みんなトレースに忠実に歩いてきて、自分でも恐ろしくなり、「これ私がつけたトレース
だからあんまり信用しないで」と言って回って降りたのですが、真意が伝わらなかったらしく、「ありがとう」と言ってくれる人はまだしも「そんなの当然ジャン」と言われ、カチンと。 じゃあ、自分でもっとマシなトレースを付けてくれ…
私が思うに私たちは稜線をまっすぐ歩いたのですが、本来の道は風上の岩場側だったように思います。この稜線歩きはまったくアイゼン不要です。花崗岩の岩質、砂質は滑りづらいので。ピッケルはほとんど入りませんが、ラッセルで使えます(笑) 途中胸までのラッセルもあり、膝で固めながら登りますがそれは1、2箇所です。太ももまでの雪も深いほうで大体膝か、膝下です。
■ 下山
9時。薬師小屋に戻り、一息入れます。コーヒーを沸かしオヤツタイム。小屋番さんが破裂しそうなコーラを持ってきてくれました。コーラのシャーベットでおいしかったです。
地元の山の話題でひとしきり盛り上がり、オヤツも食べ、厚手のグローブやダウンは仕舞って下山向けの軽装に切り替え、ピッケルはまたザックに付けます。今回アイゼンは出番なし。
9時40分小屋を出発。黄緑さんは私たちが桃の木温泉に立ち寄ると聞いて気分を変えたようです。甲府駅まで送ってあげる約束ですが、彼は足が速いので、私たちよりゆっくり出てもらうことにしています。
私たちは予定より早い時間ということもあって、気分も軽く下山開始です。夫は行きより断然やる気。いまごろ・・・(笑) 思うに、彼はムードに流されやすい性格です。みんながAといえばAと思ってしまう。お天気が回復してうららかな冬の一日って感じなのも良いようです。
今回は稜線は風が強いと言われていましたが、実は彼が知っている初めての三ツ頭での風や初回の冬天狗での風よりラクラクだったはずです。二週間前の蓼科山でさえ今日より強かった。
山行自体の企画が私なので私のほうがモチベーションが高いのは仕方ありませんが、彼は彼自身の山は登っていないので、ウエアにしても装備にしてもあるいはトレーニングにしてもどちらかというと後追いな感じです…(ただ地図読みとITガジェットに関してはかなり熱心にやってくれます)
南御室小屋までの下山は、10:20着。登り1時間40分の道ですが、下りは40分でした。小屋でお手洗いを済ませ、休憩は要らないという彼にトップを歩いてもらいます。
ウンザリ顔で到着するのぼりの人たちと違い、私たちは清清しい稜線歩きを堪能したあとなので気分も軽く。どんどん降ります。
31日は天候も回復したため、登山客が多く道はさらによく踏まれ、まったくアイゼン不要です。
苺平11:02。杖立峠11:53。ここで私たちが関西組みに追いつき、私たちに黄緑さんが追いついてきました。 もう仲間って感じですね!
杖立て峠から夜叉神までは溶けかけたアイスが日に照らされつるつるになり、露出したいやらしい道で、本来アイゼンを付けるべきでしたが、練習兼ねて無しで歩き、3回尻餅(^^;)をついて夜叉神峠着12:45。
峠で一本取り、反省してアイゼンをつけ、登山口には13:28で下山終了です。
9:40に出発して、13時半なので、おおよそ4時間(正確には3時間47分)で下山したことになり、健脚者の黄緑さんともおよそ30分程度の差で、済ませることができました。 なんかやればできるじゃん、って感じ(笑) 夫は下山に自信を少し付けてくれたような?
■ 定番桃の木温泉
帰りは定番の桃の木温泉で入浴し(1000円)13:45~15:30。甲府駅に黄緑さんを送り、自宅についたのは16時20頃。
すばらしくバランスの良い山行でもあり、また、得るところが多い山でした。
何しろ、この3年の山の成長に大感激。山も素晴らしい景色と黄緑さんと言う山歩きベテランを差し向けてくれて、それに答えてくれたような感じです。
《今回の学び》
・アイゼンはアイスでない場合はいらない。
・鳳凰三山の稜線歩きはピッケル不要。
・ダブルストックは急ではない、緩やかな道で推進力になる
・下山 薬師小屋~夜叉神峠登山口 3時間47分。
・行動食はすこしづつを何度も食べる。
・シングルのごつめ手袋はとても乾きにくい。
《リンク》
Goo(←古いブログ) 山行記事 出合った方のコメントがある。写真が多い。
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