Friday, April 3, 2015

本チャンへの道

■ ”本チャン”とは何か?

まず最初に、”本チャン”という言葉はストリップ劇場の用語なのだそうです!知らなかった!! そりゃそうですよね、女性が知っているはずがないですよねぇ。継続登攀のことを、”パチンコ”と言ったりするのも、似たような流れなのだそうです・・・(^^;)

本チャンというのは、このように下品な言葉なので、使いたくないですが、前穂北尾根と太刀岡山さ岩稜は、今の用語使いだと、同じマルチピッチクライミングに分類されてしまいますので、それを区別する意味で、「本チャン」を使います。

■ 本チャン仕様の自分になるには?

最近、ベテランYosemiteさんから、色々とご指南をいただいています。

昨今の山岳会の新人教育は、先輩多忙につき、

 自ら成長しようとする人限定
 
 後進を育成しようとする人しか教えてもらえない

世界と化しています・・・ 

女性は例外があるようですが、”連れて行ってもらう”は、男性には基本アリエナイ選択肢です。

しかし、その2つを同時にこなすのは、ホントに難しい!また、

 成長するためのカリキュラムをどうしていいか分からない!

という、当然至極な問題があります。 今求められているのは、カリキュラムを作る能力です。そこで、

 ・ロープワークも習ったし
 ・1年はフリーの練習もしたよ~
 ・あとは何をすればいいの~

という方限定で、アルパイン1年生の皆さんに情報共有です。ホント、これから何をしたらいいのか?分かりませんからね~、初心者は。

資格は

 ・ビレイが確実にできること
 ・リードできること
 ・つるべが分かっていること
 ・トポを見れること
 ・基本的なリスク認識(メインロープのセルフを取る=フリーの人はダメ)
 ・普段から山に通っていて基礎的な登山を知っていること
 ・読図

です。

■ そもそも「本チャン」とは、どのようなルートか?

基本的に・・・です。

・ナッツやカムがない時代に作られたルート
・そのため、基本的にハーケン(ハングにはリング・ボルト)でプロテクションを作ったルート
・From the Groundなルート
・ピッチグレードの上限はⅥ
・現在のフリークライミングに比べるとムーブはさほど困難とは言えない
確保条件が悪い、不安定さ・不確実さを甘受しなければならない箇所がある
・今のフリ―ルートにはない「悪さ」がある
・基本は”山登り”
・ルートでの外的危険要因に注意しなくてはならない (悪天候、落石、雪崩、時間、落雷)
・取付点までのアプローチに障害があることがある
・終了点から安全圏の下山までに障害があることがある

です。

グランドアップというのは、重要かもしれません。ボルトルートは、ラッペルダウン、いわゆるフレンチスタイルのフリークライミングのルートです。ヨセミテスタイルとは逆です。(ウィキペディア解説

■ 三つ峠を本チャンの練習ゲレンデとして利用する方法

三つ峠は、「本チャン」向けのゲレンデとしては定番で、ここより良いゲレンデがないため、シーズン中は多くの人が集まります。大学山岳部が、4つも5つもいることがあります。

つまり、

三つ峠は本チャンに向けた非常によいトレーニングゲレンデ

です。ただ九州の人が三つ峠通いをすることができるとは思えませんので、各地に似たものがあると想定し、ここでは三つ峠を例にとって、ベテランYosemteさんから伝聞の、本チャン向け練習メニューを紹介します。

≪本チャンむけ練習メニュー≫

 1)中央カンテ 3ピッチ×1回
 2)右フェースを天狗の踊り場まで3ピッチ×2回

 つまり、合計9ピッチをつるべ登攀で登下降する

≪ポイント≫
・第一や第二バンドまでを同数登下降しても、降りるたびに緊張が解けてしまうのでダメ
・第二バンドから第三バンドを経て天狗の踊り場までは、傾斜の緩いⅠ~Ⅱ級のところがあり、三点支持は要るもロープなしでも登れるライン。しかし、同箇所の下りでは滑落したら止まらず、致命傷になる可能性あり。 そういったまさに「本チャン」的な、易しいけれども緊張を解いてはいけない箇所繋いで、1本のルートとみなして登り、それを3本やるのがとてもよい。
・最低でも、6~7山行

つまり、ポイントは

 ・緊張感の維持
 ・長い時間

です。
 
≪解説≫
・先行パーティなどの待ち時間込みの9P 
・いろいろなタイプのピッチを経験しながら、次第にピッチ・グレードを上げて行く
・岩の形状には人それぞれの得意不得意があり、難易の感覚はトポと違う
・登れた、登れなかったに一喜一憂しない
・いずれにしろ、6、7山行(すなわち50~60ピッチ)登り、懸垂すれば、登攀力・懸垂術・ロープワークは大いに進歩して自信がつく 

≪登攀力UPについて≫
・トップロープでの攻略や練習はしても良いが、小川山などのフリークライミングのように、ハングドックしたりして、ムーブ解決のベクトルが強くなってしまうと、「本チャン」練習としては本末転倒。

≪体力UPについて≫
・登下山道は、三ツ峠駅からの往復とする (北口は短いのでダメ)
・最後の仕上げは、ザックを背負っての登攀とする (本番ではザックを背負っている)

≪注意事項≫
小川山や太刀岡山といった80年代以降に開拓された岩場のフリークライミングのルートは、それ以前に開拓された岩場のルートとは「質」が違い、いわゆる「本チャン」のトレーニングには基本的に向いてない。

≪あるルートにチャレンジして良いかどうかの判断≫
リーダー会で判断してもらう
敗退が確保されていること

■ 50~60ピッチのつるべ

運転でも、教習所では大体40時間などの運転練習時間があります。私はアメリカで運転したのが初めての運転ですが、これを目安にして、40時間人を雇いました。

それとおなじで、トータルで50~60ピッチを経験して、

 手際の良さ & 臨機応変さ

を新人はマスターしないといけません。



■ 北岳バットレス四尾根渋滞の原因について

これは例として四尾根が分かりやすいためです。初心者向けルートは基本的に同じような状況にあると思われます。

 「パーティー数の多さ」
 「熟達度不足」
 「ルートの構成」

・登れるけど諸動作が遅い初級者がいるパーティーが沢山やって来る
・四尾根主稜に5ルートからパーティーが集まるので、ボトルネック状態
・マッチ箱の懸垂もボトルネック

≪熟達度不足とは何を意味するか?≫

 ・取付で迷う
 ・岩場で逡巡
 ・間違ったラインを登って戻る
 ・トラバースする、
 ・ランニング取りが稚拙でロープが絡む
 ・ロープが流れない
 ・カラビナやテープを落とす
 ・ヌンチャクを取り忘れて登る
 ・カムやチョックが外せない
 ・テラスやレッジを間違えてピッチを短く切る
 ・懸垂ロープが絡む
 ・初心者の懸垂の遅さ

■ 体力より、長く維持した集中力

若い男性でアルパインに来るような人で、体力の不足を感じているような人はいないと思います。が、クライミングすると、体力はかならず下がっています。体力が下がると、集中力も下がっていると思われます。

また登山ではとっさの判断は必要とされませんが、岩ではとっさの判断がかなり重要です。のんびりタイプは、頭の切り替えが必要かもしれません。この切り替えはゲレンデでは経験できません。ゲレンデはのんびりクライミングだからです。

また、登山では、女の人のお尻に目を奪われていても、なんてことはないですが、岩では危ない。切り分けが必要です。いい加減なタイプ、切り替えが苦手なタイプはNGです。

そういう意味でも、

 信頼関係の構築&慣れ

ということが、一般登山と同様に重要なのがアルパインクライミングと思われます。

アルパインは、そういう意味で、

 同じ人と行く

のが良い活動と言う意味で、慣れを蓄積することができる山岳会という枠組みが生きるのではないでしょうか?

とは言っても、昨今は同じ山岳会内に練習台となる人材がいない時代です。

新人に必要なのは、練習台であって、パートナーではないかも・・・ですから、練習し、各自が、50~60ピッチのつるべを経験して、ひと段落するまでの期間にあたっては、枠組みを超えた連帯は必要だと思われます。そうでないと、普通のゲレンデにも一人では新人を連れて行けませんから。

■ 練習に必要な期間

さらに、目標のルートがある場合、6~7回の練習を積み重ねるには、毎週岩場に通っても、6、7週間、つまり、他に何もしなくても、1か月半は最低限必要です。

去年私は、三つ峠通いが、山へ行けないストレスになり、ついには、沢に単独で行って(結局先輩がついてきてくれましたが)、ストレス解消しました。

そういう意味でも、1か月半という準備期間は、非常に短く、毎週三つ峠通いだけをするのは、ストレスになるので、おススメはできません。また、真夏はとても暑くてやっていられない条件下です。三つ峠は4~6月が適期です。8月など、とっても暑くてやってられません。

頻度としては、月に2~3回がせいぜいではないでしょうか?月2回であれば、3か月かかりますから、4月にスタートしたら、7月に間に合うかどうか・・・というところになります。8月を目指すなら、ゆとりを見て、4月にはスタートしないといけません。

これはあくまで同じ人と行く場合ですから、パートナーが変われば、また摺合せの時間が、多少必要です。

というわけで、一般に新人が考えるほど、本チャンへの道のりは短くないのです。

まぁガイド登山が、5万円として、このような手間を省くもの、と考えれば、安いとなるのかもしれませんね。

後は誰かが一人先輩に連れて行ってもらえば、それを仲間に広めると言うのも手です。

≪関連サイト≫
三つ峠トポ
三つ峠の思い出
三つ峠は本チャンの練習場
三回目の三つ峠
17Pにどれだけの時間がかかるか?
リードの疲れ
前穂北尾根への道
リードしません

2 comments:

  1. yosemiteです。

    私のをパクっちゃダメですよ(笑)。 
    <>を見直しました。 Kinnyさんのブログ記事は沢山あるので、途中から拝見してる者としてはこういった過去記事の関連があると便利です。

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    1. いや~すいませんね。非常に有益な情報だったので、リーダー講習の同期たちに読んでもらいたくて(^^;)。どこの会も先輩が多忙で新人には手が回らず、みな“リードさせてもらえない・・・” ”許可がもらえない”と、不満を貯めているようです。何をすれば、許可が出るのか、皆をして模索中です。

      せっかくいただいた知恵はみなで共有しなくては。それがワタシの務めであると、僭越ながら感じています。

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