Tuesday, April 7, 2015

どこからロープを出すか?

■どこからロープを出すか?

ロープを出す出さないの判断ですが、難しいです。その上、安全に対する基本姿勢が色濃く表れるようです。

私は判断力を磨いて、あらかじめ危険を予知することを重視するタイプです。

■ 出さなかった例

ジョウゴ沢は、核心はF2と大滝でした。F2は溶けていたので核心は存在せず、大滝が核心でしたが、25mもあるように感じられず、みなごく普通な感じに直登。

先頭を行ったのはもっとも強い人です。で、セカンドは弱い人の定位置なので私ですが、私も上からロープ出そうか?と言われたときにはすでに取り付いており、先頭の人が行った段々は行かずに、アックスで直登して登りました。

これは溶けていたから易しかったのか不明。大きな氷瀑になると、より難しいのかもしれません。雪で寝ている部分はつながっている時期でもあり、半解けで落ち口付近では岩肌がすでに出ていました。

私はロープ無でいい、という判断をとっさにしました。悪い箇所では立ち止まるほうがリスクが大きい。核心部でロープを結ぶために片手を空けるなんて嫌です。

しかし、ちょっとでも不安があるならロープを出す、という判断をするなら、トップが登り終えるまでまって、下でロープを結んでから取り付くべきでしょう。一緒に行った人は誰も、そういう躊躇はない滝でした。

ロープを出した方が安全な所ではロープを出すべきですが、それに大滝が当たるかは不明。
来年の別のシーズンも同じような状態かどうかも不明。

これは登りでしたし、登攀的には非常に易しかったです。季節柄、スリップよりアイス崩壊が心配でしたが、アックスの感触から、十分支持力があると分かりました。が、そういう判断ができるのは、去年中津川滑沢を経験し、今年涸沢の滝を経験しているからで、半解けアイスに対する自信がないと、出せと言うかもしれません。何しろ、クライミング力とは関係ありません。

滝を見て、登れないと判断しなかったと言うことは、危険に対してはあらかじめ近づかない方針の私が登れるくらい易しかったという意味とも考えられますし、無知により、危険に気が付かず登っている、とも考えられます。

念のため断っておきますが、それは一緒に行った人しか判断できません。

私たち三人にとっては核心と言えるほどの核心はなく、易しいルートでした。

■出してほしかったのに出なかった例

逆に出して欲しかったのに出なかった例もありました。無名の小さい沢での下降です。そこは前に通った時には、ロープを出してもらった箇所でした。登りはいいけど、下りが…の箇所。

出してもらった時も、12登れる人が下りを逡巡していたので、やっぱり出して良かったのです。ほんの3mくらいです。振り返ってみたら、登りなら要らない箇所でした。

別の人と行ったら、その人は背が高い人だったので、ずり落ちスタイルで下れてしまえ、ロープを出さなかったので、私はちょっと無理をしておりました。出して欲しかったけど、まぁその人に支えてもらえそうだったので妥協。

悪場って、ホントに一瞬です。ここは支点が乏しく、降りるときも岩角に掛けて、角度を気にしながら降りなくてはいけません。が、一瞬が致命傷になったら事です。

背が高いと、低い人のことは想像しづらいので、出して欲しいときは自己申告するルールにしたいと個人的には考えています。私には難しい箇所を、大丈夫でしょ、ジャンプ、と言われたことが何回もあります。また徒渉は私にはかなり大変です。

■ 出してほしかったのだろうと予想できた例

川俣尾根から権現に上がる時、三ツ頭で稜線に乗りますが、小さい雪庇を越えます。

女性の先輩が「ガイドならロープを出すんでしょう」と聞いてきてビックリ。そこは雪上で大変だけど危険がないからです。

こんなところで、出して欲しいのか~と思ったのでした。後で聞いたら、単純にラッセル大変だっただけみたいです。

ラッセルのような心肺機能勝負のものは、年齢が出ると思うので、やっぱり若い人が頑張るべきと思います。

■ 確実にロープが要る例

この川俣尾根から権現という山行の土台になった、ツルネ東稜という山行ですが、旭岳から権現までの稜線は、うっかりコケタら、すってんころりんと立場川まで落ちて行ってしまう危険エリアです。

当然ですが、ロープを出してもらって歩きました。

ただ確実でないロープワークなら、確保者も引きづり落とされてしまいますので、そうならない技術限定です。

■ 些細なことでもロープを出す練習を

スヤマ尾根の時は、沢のへつりで何度もヒヤリがありました。 私は越えれましたが、リーダーはロープを出すべきと考えていて、若手にロープを出させたがっていました。

こういうとき、女性の私の役目は、「無くても行けるもん」ではなく、「出して~」のような気がします。

易しいところで、さっと出せないロープが、難しいところで出せるはずがありません。

経験値を上げるには、誰にでも、練習台が必要で、練習台になってあげる役目は、入会の順番が後の人ほどありそうです。

それに女性が出して欲しがってもなんてことはありませんが、男性同志だとメンツもあるかもしれません。想像するに。

■ 限界系と確実系 

芦川横沢では、CS滝が核心部でした。それは同行した男性のサードの人が初心者時代に何度も落ち、登れなかったところだそうでした。あっさり登ってしまい、すいません。

私はボルジムの成果で、別に問題なかったのです。自分が登れなかったところをあっさり登られてしまった方は、ちょっとショックのようでした。その核心部では、さらにロープを解くいて結びなおすという失態までしていますが、ロープを結びなおす余裕まであったわけで、要するに別にものすごい登攀が下手なわけではありません。(かといって一年で11まで行くような才覚はないです。)

ここはロープがあっても、トラバースだったので、振られるため、落ちれないところでした。それは分かっていました。

ここは一緒に行った人がリードできる、凄い登攀力があるから可能だった場所で、私が一人でいくなら、見るだけ見て「登れないね~」で、、終わりです。

今の登攀力は当時より確実に上ですが、絶対に行かないと思います。

それくらい、

火事場の馬鹿力系の登攀力(限界系)といつでも確実に登れる登攀力(確実系)は、開きがある

と言うことだろうと思います。

■ 東沢釜の沢

東沢釜の沢は沢登り講習でしたが、東沢釜の沢は初心者向けコースと思って気楽に行ったら、登攀力が意外に必要で、私が怖いな~と思うスラブで、登攀が必要でした。

でもこれは講習会だったので、より保守的な判断にしてあるはずです。

怖いかどうかは、スラブの経験がないから、と言うのもあったと思います。私が岩でスラブを経験したのは、この沢講習より後なので。

でも、この講習では、もっとロープを出してほしくて、怖かった記憶があります。

というわけで東沢ならだれでも行けるという説には反対意見になり、その後ズミ沢とかズミ沢より易しい伝丈沢を経験して、初心者は歩く沢からだなと確信しました・・・(^^;) 登攀的な沢は最初は怖いです。
 
■ 何と教わったか

  • ロープは出さないで済むんなら出さない方が確実に早い
  • 早さは安全につながる
  • 登攀力がないために、何でもないところを核心部にしない
  • 迷ったら出す
  • 山に一か八かはない
  • 事故を起こしてから何とかするよりも、事故に遭わない努力が重要
  • 滑落停止技術より、雪上歩行技術が重要


と教わりました。

これらは実際矛盾します。 が、大体実際に山行を共にしている仲間内では、それが具体的にどういうことか、共有できていると思います。

その仲間内でうちはこれくらい、と共有できていることが大事なことなのではないか?と思います。

私はあくまで、自分が確実に登れるところから登り、徐々に判断力を磨いていくことで、取れないリスクをそうとも知らないで取ることがないように成長する、のが大事だと思います。



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クライミング事始め

7 comments:

  1. 「ロープを出して欲しい(or 使いましょう)」と言い出し難かったり、
    「ロープを出して。」と言ったのに、「急ぐから」という理由だけで渋るような
    メンバーであれば、それ以後は一緒に行くのは避けたほうがいいと思います。

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    1. そうか~ 思い当ったりして・・・(^^;) やっぱり若いと、人は、他の人にも自分と同じ基準を適用してしまうのでしょうか。

      出してと言える間柄づくり、も標語に入れようかな。


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    2. 私の今までの経験に限って言えば
      私より年上の50台や60台の人でも
      ロープを使うのを嫌がるかたは居てはりました。
      特に「若いから」とかはないというか
      むしろ若い人のほうが積極的にロープを使ってたような気がします。
      特殊な環境だったかもしれませんが。

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    3. ああ、ちょっと意図がずれて伝わりました。 
      若い → 相手の立場が思い至らない → 足が短い人、手が短い人、色々とおり、自分が楽でも相手も楽に登れるとは限らない → 自分が登れたところは、相手も登れるはず

      私はチビで腕力がないので、たぶん、登攀力的ハンデは一番底辺です。 背が高くて腕力がある男性がラクラク登れるところも、わたしだとかなり大変化してしまいます。逆は狭いところに体が入る系かなぁ・・・ クラック系には多少の光がないでもないような気がします・・・ 

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    4. 「ロープを出す/出さない」と「やっぱり若いと…」とは 別の話 ということですかね。

      では、Kinnyさんの記事とは全く別の話ということで この記事を読んで思い出したことなど書かせていただきます。消してもらっても構いません。

      前の会では指導的立場にある人たちが
      なるべくロープを使わないようにすることが多かったです。
      「なるべく懸垂下降せずに、巻き下りる。」
      「登ったり巻いたりするときも なるべくロープは使わずに済むところをいく。」
      などなどですね。

      で、私は結構ビビりなので、「ここ滑ったら終わりやん。」みたいなトラバースとか 私の今までの沢登りでは結構そういう場面が多かったんですけど、そういう人たちと行くと、「いけるいける」とロープを出してくれないこともありました。
      それらはケースバイケースで色んな理由があるんですが
      私がパーティ内で結果として指導的立場だった時は「そこは大丈夫」とか「ここは支点をとるのが大変」という時でも 不安を訴える人が居れば、そこはロープを使ったりしてバックアップをとれるようにしてました。

      そうゆう風な自分の経験がありましたので、本文中の「…ロープを出してほしくて、怖かった…」が
      心に留まりました。

      「早さは安全につながる」というのは 尤も至極に思えますが
      前述のようなパーティ内で ロープを出すか出さないかの判断が分かれるケースにおいては
      早さを優先すべきではないと思いますし
      もし、落石、雪崩、熊、スズメバチなどのリスクが高いと予想される区間を複数人が通過する際、
      ロープで確保してると、そこに滞在する時間が長くなってしまうので、危ないのを承知でロープを
      使わず登るというのは間違いで、そこは、引き返すべきだと考えます。
      もちろん、引き返すに引き返せないケースもあるでしょうけど。。。

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    5. そうなんですよ~ 不安な時に出してくれないと、私は嫌なんです。だってそれじゃあ単独で行ったほうが安全になってしまいます。単独なら、ちょっとここは・・・と思えば、無理しないで通らないし、懸垂で要ると思えば、めんどうでも出すでしょう?

      でも、蜂だの、落石だの、の ”そこに留まるリスクの方が高い”ときは、その限りではありません。が、最初からそういう羽目にならないように(進退窮まらないように)したいな・・・ そうは言っても、行って見たら蜂の巣があった、という状況では仕方ないかもしれないですが。

      早さは安全につながると教えてくれたのは、ものすごく良くロープを出す人です(^^) 

      たぶん、ロープを出すと遅くなる、という人の言っている”遅くなる”のは、ロープワークの稚拙さが多分に加味されているからでは??

      ・・・ということは、”ロープを出しても遅くならない人をみんなで目指す会”作ろうかな~

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    6. 目指して下さい♪

      ロープワークは車のレースのピットワークにも似た部分があって、練度で随分早さが変わると思います♪

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