Thursday, September 5, 2013

良識的な登山者であるためのABC

「登山者」と「山ヤ」は違うことを書きました。

で、正直、私は、「登山者」の常識を誰からも教わっていません。

なので、私の知識はすべて、読書から得たものです。逆に言えば、だれでも今の時代、読書で私が得ているような知識は得ることができる、ということで、恵まれた時代と言うこともできます。

読書で得た知識は、実体験で検証し、実体験で判断したことは、読書で検証しています。

今回も、昨日、図書館で

・「テントで山に登ってみよう」
・「テント山行」 ヤマケイ登山
・「北アルプス開拓史」
・「どうする山のトイレ問題」
・「登山医学入門」
・その他、雑誌『山渓』 と『岳人』

を借りてきて、検証したくらいです。ほとんどが再読する本です。

検証したのは、山でカミナリに遭遇した時にテントを放棄して小屋に逃げ込んだことについて、です。

検証の結果、合っていました。

実を言うと、私以外の人が慌てて出てこなかったのが不思議で、判断が合っていたか知りたかったのです。

ちゃんと山の本に”テント泊でカミナリの場合は、一刻も早く屋根のある建物に避難しろ”と書いてありました。ほっ。

避難しなくても何事も起こりませんでしたが、避難しなくて良いって結論にはなりません…。

事が起こってからでは遅い。 

■ 山のことは山で学ぶ

正直、私も山のことは山で学びました。

だから行かないことには学べない。それは仕方ない。最初は私も非常識登山者だったかも?

けれど、行っても学ばない人もいます。

たとえば、120ミリの大雨で現実に雷が鳴っている雷雨の中、キレット小屋を出発して稜線を歩いてきた団体ツアーのお客さんたち…。

非常識登山者のNo1は、イケイケの天候判断、です。

トムラウシの大量遭難は、イケイケの天候判断、のためです。

一般向けトムラウシの教訓
http://blog.goo.ne.jp/bongo-pete/e/c6099f508cc938224e66861acc59484e

しかし、天候というのは、はっきり言って、予報は予報でしかないので、確実なことがないのが当然です。

天候判断は、雨の中でも、歩ける人なら歩いてもいい、ということにはならないんです。

もちろん、小雨程度なら出かけてしまいますが、それはリスクの低い安全な場所で歩いた経験をたくさん積んでからです。いきなり3000m級で、この先5時間小屋がない、吹きさらしの稜線で、ではありません。いくらガイドがついていても安全対策にはなりません。むしろ行く判断をするガイドは危険です。

安全と言うのは、この場合、行程の時間内に、大雨につかまって身動きが取れなくなる、というリスクがゼロの場合です。

天候判断はガイドのような、プロでも難しいんです。 

なぜなら、雨の中、1時間で歩ける道(一人なら)を、3時間かけないと歩けない(団体ツアーなら)だと、リスクは3倍に膨れ上がってしまいます。

こまめな衣類の調節と濡れない工夫を知っている人なら、1時間くらい雨の中歩いても平気でも、そういうきめの細かな配慮ができない人が大量に一緒にいるとなると、かなりやばくなりますよね?

普通はそういうことは登山者が個人個人でマスターしていくものですが、団体ツアーの場合、個々人で何をすべきか?衣類の調節でさえ、ガイドの指示がないとできない人が多数です。

レインウェアを着た方がいいのか?の判断さえできない。あるいはレインウエアを着ても襟は開きっぱなし、雨がどんどん襟足から入ってくる、そんな状況の人さえいます。私は100円カッパの人も見ました。いまだにホントに居るんだ~とシーラカンスを見るような感動です。

寒いときはどうしますか?もちろん服を着ますが、その他、何かエネルギーになるものを食べます

たとえば、私の知っている良い天候判断の例は、風雪が激しいとき、稜線の山から、樹林帯の山への
変更、がありました。具体的には八海山からタカマタギへの変更でした。厳冬期2月の、全国的に
大荒れの日の冬山登山の、予定地変更でした。遭難者も出た日。

また沢に行ったときのガイドさんは私がレインウェアを着たのを契機に、寒いのだろう、と判断して
早めのランチタイムを設定しました。出来るガイドだな、と実感した瞬間でした。食べると温まるからです。

お客さんは体が冷えたと口に出して教えてはくれません。一番弱い人を瞬時に見つけ、弱い人にジャストミートするのがガイドさんの役目です。

天候は、良い方にも悪い方にも外れるのですから、保守的な判断をする、というのがまずもって重要です。

特に、体力、技術(足を置く場所の判断、ペース配分)のスキルの無い(からこそツアー参加)の場合です。

さらに、体力温存を心がけ、低体温症だけは避けなくてなりません。低体温症になると、体が動かなくなり、歩けなくなる。

歩けなくなると、ますます行動時間がかかり、ますます濡れます。悪循環です。

私が見かけた団体ですが、小屋に着いてからも、廊下は水浸し。乾燥室は占領。食堂でよその小屋から持ち込んだゴミを出す。

そんなことをするのは、たぶん・・・体力的に余裕がないから= 精神的余裕もないから、としかかんがえられないでしょう。

だってみなさん、50代、60代、いや70代の人生の大先輩ですからね。

もっとも恐ろしいのは…、こうした人たちの勘違いが強烈なことです。

雷雨の中で出発したことが、恥ずべきことではなく、自慢であること、です。

視界も効かないような、悪天候の中の出発は、おろかな行為No1で、恥ずべきことです。

特にガイド登山は他人の命を預かっているわけですから、個人が自分の命をどう危険にさらそうが、ある意味、勝手ですが、ガイド登山、ツアー登山では人の命を危険にさらしていることになります。

リアルなカミナリ遭遇の記録
http://blog.goo.ne.jp/bongo-pete/c/d0dbceb48c2fa96271c38a3a885d5e60

私も遠見尾根でカミナリに突っ込みながら登った時は恐怖体験でした・・・

■ 痕跡を残さない

極論すると、常識的な登山者であるために気を付けておくべきことは 総論で

自分の存在の痕跡を残さないこと

です。

その上で各論になりますが、

 ・水は節約できる限り節約する
 ・ゴミは全部持ち帰る(持ち込んだものは全部持ち帰る)

です。 これは昨今は、し尿も含めです。 小屋のトイレで払う100円は持ち帰らずに済む価格と思えば安いものですよね。

さらに、ちゃんとした登山者だなぁ~と小屋の人に思ってもらうために気を付けたいことは

 ・大声を出さないなど一般的な良識を守る
 ・混雑した小屋では譲り合いの精神で
 ・意味のないファッションをしない
 ・ザックにあれこれくっつけない

です。 

自分の痕跡を団体ツアーの人は残しまくります。

ゴミはもちろんのこと、忘れ物、さらには、小屋の部屋のおふとんはまるでレスリングの試合でもしたのか?なありさまです。

小屋では布団は次に使用できるかのチェックのため、たたみ直しますので、部屋を元通りに直す必要はありませんが、まったく使用前の痕跡を残さないほど荒れた部屋… 

友人知人の家に訪ねて行ってもこんなありさまにするのでしょうか…?しないでしょう。

良識が疑われる登山者は一時が万事なので、警戒されるのは仕方ありません。

さらに、ファッションですが、別に何を着てもいいのですが…意味のないファッションは、単純に人目を引きます。何のために着ているのだろう?というファッションは警戒されます。

たとえば、ネットで出来たベストをまとっていたおばさんがいましたが、ネット…?何の役に立つんだろう? 

余計なものは重さを増やすだけだ=余計なものはもっていかない、というのが、基本的な山の論理なので、(ただし嗜好品(酒)など重要アイテム(笑)?は除く)、”?”な視線で人目を引き寄せるのは必至です。 

もちろん、その人には嗜好品的重要アイテムなのかもしれませんが…。

一般的に言って、山の玄人、小屋の人に好印象なのは、実用的で飾り気のないファッションです。

というのはあんまり飾り気があると、登山道で枝とか岩に引っかかるからです。

安全対策より、ファッションの方に力が入っているようだ、と感じさせるほど、ファッションが立派なのも、あんまり好印象とは言えないかもしれません。

あと、これは完全なるねたみかもしれませんが、山関係者は一般にあまりお金持ちでないので、全身を高級ブランドのアークなどで固めた登山者は、違う意味の視線を浴びそうです。

下界の価値観を山上に持ち込んでいる、という点で山初心者を思わせます。

山の実力とファッションの価格が反比例する傾向にある、というのは一般登山者も知っておいて、損はなさそうです。

ま、そういう人が超有名クライマーだったりすると、視線は完全逆転し、ステキ~なのですが、私はおひとりも見かけませんでした(笑) 一般道に来る現役山ヤさんなんていないか…

この時期、山ヤさんは沢か、海外遠征か、遠征資金のためのガイド業、あるいはレスキューなどの
業務で忙しいはずなので、実力がある人が一般道を歩いているはずは・・・全然ありませんね…(笑)

また、同じ理由で、ザックをデコると警戒されます。よくサンダルやコップ、ゴミをぶら下げている人を
見かけますが、40L程度のザックでテント装備なら分かりますが、テント泊用の巨大なザックなのにぶら下げていると…微妙になります…。中に入るものは入れましょう!

沢沿い以外の道でコップをぶら下げていても、立ち止まって、飲める沢水は流れていませんし、
サンダルはテン場に到着しないと必要がありません。ゴミに至っては、下界に至るまで触ることがない
ものですし…。ザック容量にゆとりがない、ということが一見して分かるならいざ知らず、道中に必要がないものをぶら下げると、素人丸出しです。

ザックの中に出来るだけ収納してしまうこと。これであなたも山をよく分かっている人に見えます。

最後に、ファッションは目立つカラーはOKです。黒一色だと蜂が寄ってきますし、黄色は虫をよく寄せる色です。でも何事もやりすぎは・・・ですね。


■ 擦れ違い

道中では擦れ違いや追い抜きが発生するのは、当然ですが、すれ違うことで学ぶこともいっぱいあります。

擦れ違いや追い越しでは

 ・安全な場所を選んですれ違う
 ・山側に避ける
 ・相手にザックを向けない

の3点は重要です。 

まず安全な場所がどこか?初心者の方は分からないので、とにかく道幅が二人通れるところ、です。 狭いところではすれ違わない。 たまに鎖場ですれ違おうとしている人を見かけます。

私なんて先日は、G4あたりで追い越しで胆を冷やしました。(が、追い越さない方がもっと危険と思いました) 

梯子などの通過があるときは、梯子は一人で登ります。複数の人がいれば、全員が通過してから、自分が通ります。

谷側に避けると、谷側の路肩の土が崩れて、墜ちてしまわないとも限りませんよね?アブナイ。

そして山側に避けたとしても、ザックを相手に向けては意味がありません。

後ろには目はないからです(笑) 擦れ違いはザックを山側に向け、相手も自分も安全であることを確認できる体制で行います。

ただ団体ツアーで26人もいたら、ガイドさんは最後尾なんて見れないので、団体ツアーとすれ違ったり、追い抜いたりするときは、特別、細心の注意を払う必要があります。


■ リスクに対して

夏山登山の危険(リスク)は、

・天候
・疲労(病気、歩けなくなる、ねん挫 など)
・落石
・道迷い

程度です。 リスクは低いです。

疲労は、ガイド登山であっても自分で対処するものです。具体的には、水分・糖分・塩分を十分補給します。

2時間おきに何かを口にするとよいです。体温調節はこまめに。ねん挫は靴ひものゆるみなども原因になります。登りは緩め、下りはきつめ、と言われています。テーピングを学んでおくのもリスク対策になります。

意外に日焼けは疲労しますので、日焼け対策は万全に。女性だけのことではありません。

男性はカッコつけたがるので、登りで無理をしがちです。登りは呼吸が乱れないペースで。遅い人がいたら、さらにペースを遅くしてもらいます。

落石ですが、これだけは起こしてはなりません。自分が落石を起こす人にならないよう細心の注意で。

というか、雪渓では自然に落石が落ちてきますので、頭上には常に注意です。

本来は、雪渓でなくとも、頭上に墜ちてきそうな石があるかどうかは常に気を向けておくのが良いのです。

■ 一般道で現在地を知るには?

こ~んなに道がはっきりしているのに、なんで道迷い遭難が起こるのか?


道、 超、明瞭ですよね~
正直言って私には意味が分かりませんでした。

が、最近、分かりました。 

みんな、無の境地で歩いているんですね…たぶん。

ずっとうつむいている(汗) 

というのは、よく私が歩いてきていることに気が付かないすれ違いの人がいたからです。

時々、遠くを見たらいいのかも?それだけで道迷いは防げそうです。

こういう一般ルートを歩く場合、高度計さえあれば、現在地の把握は簡単です。

なぜなら水平方向の位置はどう考えたって登山道の上であり、あとは縦軸の位置、垂直方向の高さがわかればいいだけだから。

高額なプロトレックの腕時計をしているのは何のためか?というと、標高から現在地を知るためです。





なので、高度計は、コンパス、地図、とともに三種の神器です。

一般道では標高を見ましょう。

■ 持ち物

・サーモス(水筒)
・ヘッドライト
・レインウエア

を持たない登山は考えられないですよね? しかし、夏山ではサーモスも、ヘッドライトも、レインウェアもなくても済んでしまうことはよくあります。

これは もともとは道なき道を歩いていた”山ヤさんの山”を起点にして、それが徐々に難易度を下げ、”登山者の山”、になったからです。

でも、持っていないと超非常識登山者です!!

あとは、

・地図 (2万5千の地図)
・コンパス
・高度計

最近では

・携帯電話(山ではドコモ限定)

も必携アイテムです。

防寒具に関しては、山小屋利用だと要らない場合がほとんどだと思いますが、持っているのが常識です。フリース一枚でOK。

というのは、寒さに関しては歩けば温かくなるから。寝るのは小屋泊なら小屋の布団がありますし。

最近の山の傾向で、持つべきアイテムNo1は

・ヘルメット

です。なぜなら、前述のように歩きなれていない山の初心者が夏山の90%のお客さんだからです。

その人たちが落とす落石から自分を守る必要があります。

ということは…

夏山のNo1リスクは…他の登山者?! という仮説も成り立つ…わけで(^^;)、そんな夏山にはできれば近づかない、のが賢明なのかもしれません。

■ 参考

穂高岳山荘 FAQ
http://www.hotakadakesanso.com/faq.html




 

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