Friday, September 20, 2013

山と伝承

今日もお天気が良かったですね♪

夫が週末山に一緒に行ってもいいって言うので、ルンルン気分で山企画中です♪

どこに行こうかな~

■ 読了 『山梨県の民話と伝説』 土橋里木

私は小さいころ、”お話”大好きでした。ただ”お話”をしてくれるマミーやダディ(笑)はおらず、ばあばもじいじもいない、核家庭に育ったので、もっぱらお話しと言えば、絵本でした。

絵本は私は早々に読破したのですが、絵本の全集が我が家にはズラリと揃えてあり、それらは、『世界の…』を冠する絵本たちだったので…イソップやアンデルセン、アラビアンナイト、そんな話が子供の頃にインプットされ、日本の昔話はそのうちの一つでしかありませんでした。ケルトの『石の花』、韓国の『安寿と逗子王』まであったから、かなり網羅的な全集だったんだと今思えば思います。

日本にはたくさんの”お話”が一杯あるのに、それらは伝承されなかったんですよね…

美しい絵本になって伝承されたのは、私とは文化的つながりがあまりない世界のお話。

そっちのほうが優先的に小さな幼児の頭には行っちゃったんですよね。私の愛読書『大草原の小さな家』では、親が子供にお話を繰り返し聞かせる姿が描かれています。それはちょっとうらやましい情景ですね。アメリカのパイオニアライフ、開拓時代と言えば、お話は荒くれ男やインディアンの話、そしてお話が終わると読み物と言えば、聖書とたまに届く新聞くらいでした。

そういう200年前の話を本で読んで、憧れる私。私はまだ絵本という現実に手が取れるものでお話を読みましたが、今の時代の子供は電子ブックのKindleで読むのかもしれません・・・(汗)

さて、この『山梨県の民話と伝説』を借りてきたのは、日本の山々には多少伝承的なものがあるからです。

地名にそれが時々現れます。 それで、ふと不思議になるので、調べてみたりします。

たとえば、鹿島槍の裾野には、カクネ里という地名がありますが… カクネなんていきなりカタカナ?と思ったら、隠れ里→カクネ里 の訛り。 平家の落人伝説がある場所です。

そういうことがちょくちょく起こるので、山の本を読みたい時は、登山の棚を覗くだけでは不十分で、時々は民俗学(388)の棚も見るわけです。で、ちょっとたまたま手に取った本がこの『山梨の…』でした。

山梨の山にまつわる話が出ているだろうというわけです。

■ 千代の吹上げ

金峰山には、「千代の吹上げ」という場所があります。断崖絶壁。ほかに「稚児の吹上げ」と書いている本もあったのですが、どっちなんだろうと思っていました。
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/03/blog-post_5.html

千代=ずっと、 稚児=軽い ということで、どちらも風が強いことからきた地名かしら?くらいに想像していましたが、実は違う。

千代の吹上は、昔、大工の妻千代という女性がその場所から堕ちたが信心深かったために情けを掛けられ、吹きあげられて命が助かった、という場所なのだそうです。

これは『山梨の…』に書いてありました。ほぼ同じような話がこちらから読めます。
http://www.tsugane.jp/meiji/rekisi/sutama/minwa.html

■ 山の背比べ

八ヶ岳の有名な伝説と言えば、富士山との背比べですよね。 

でも、この本に寄れば、山と山が背比べする伝説は、八ヶ岳と富士山に限らず、多くの地方であるのだそうです。

最も古い記録は、近江の息吹山(叔父)と浅井岳(姪)。めいっこと叔父が競って、浅井姫が負け、その首が琵琶湖に飛んで行き、竹生島になったのだそうです。

あるいは岩手山と早池峰山白山と富士山立山と白山

どの山でも登山者は石を一つ持って登れば願い事がかなう、などと言われたのだそうです。また麓に「砂ぶるい」というところがあり、登山者は必ずそこで古いわらじを脱ぎかえて、人々が踏み下ろした砂は、その夜のうちに再び山の上に帰っていくものと信じられていたそうです。(『山梨の…』P40 )

今ではそれがストックには石づきをつけましょう、みたいな話になっていますね(笑)。

■ 八ヶ岳、ヘビ、泉、杖差し伝説

八ヶ岳は山梨と言うより、長野にある山のようでこの本では伝承は多くは掲載されていませんでしたが泉の話は有名なようです。

ここでお話が読めます。
http://nihon.syoukoukai.com/modules/stories/index.php?lid=258&cid=28

杖を指して、そこから水が湧く、という話は典型的なようで、オリジナル、固有のものではないようです。

また、ヘビは水辺に多い動物なのでしょう。ヘビ=竜ということで、海のない山梨でも竜宮伝説があり、深い淵の底に竜宮がある、というお話は多いそうです。

おもしろいのはお椀を貸してくれるってところですね(笑)
http://www2.wind.ne.jp/nagaou/old%20tale/densetu/densetu.html

返さない人がいて、貸してくれなくなったのだとか(笑)・・・

■茅が岳 

茅が岳の孫左衛門の話は、どうも有名なのに、何度茅が岳に登っても、聞いたことがありませんでした。教えてくれる人がいなかったんだなぁ・・

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孫左衛門(まござえもん)の話

むかし、江草の湯戸に孫左衛門というものがおったんじゃ。ある日、茅ヶ岳のふもとの屏風(びょうぶ)岩近くまで牛を追って草刈りに行ったんじゃ。すると、そこに見なれない二人の坊さんが囲碁をさしておったんじゃ。孫左衛門は二人のかたわらに立って見ているとな、少したって坊さんが豆を持たせて「もう村へお帰り。」と言われてたんじゃ。そう言われて、はっと我にかえった孫左衛門は、我が家へ帰りついたんじゃが、家に帰ってみると、驚くことに3代もの長い年月がたっておってな、まわりの衆(しゅう)は顔も見たことがない人たちばかりだったんじゃ。あまりのさみしさに再び坊さんたちのところへ行ってみようと思ってな、村を出る前に孫左衛門は村人に向かって言ったそうな、「もし、屏風岩へ薪(まき)を取りに行くんなら、私は江草村のものだと言いなさいよ。」と言い残して村を去ったそうじゃ。それからは、よその村の者がこの山に来ると不幸がおこり、江草の村人なら無事だったとさ。
ーーーーーーーーーーーーーーhttp://www.tsugane.jp/meiji/rekisi/sutama/minwa.htmlより引用

http://www.fruits.ne.jp/~mahirunohoshi/youkaiichiran.htm
にも同じ話が簡略されて載っています。八ヶ岳の天狗、の話も出ています。大天狗、小天狗ですね。

山には天狗尾根という地名はとても多いのですが、形から来たのか、興味がありますね。

さらに八ヶ岳では、私は同心、の意味が知りたいのですが、誰か知りませんかね・・・?

茅が岳には机という地名もありますが、それも伝承の地名ようですね。とすると、兎藪はどうなのでしょう?

■ 籠城

山にまつわる伝承と言えば、籠城、もあります。昔は山城に籠城した時、水が豊富にあるように見せかけるため馬の足をなまこめで洗ってみせたりしたのだそうで、そういう場所の地名が「馬洗い」「馬場」なのだそう。

馬場とは単純に厩のことだと思っていたので、へぇと思いました。岩殿山や韮崎の七里岩がそれらに当たるそうです。

■ 伝承の類型

伝説=土地に根差したもの
昔話=あちこちの土地で共通にみられるもの

典型
・民話  昔話として伝わるもの 笠地蔵など
・竜宮信仰  
・巨人伝説 ○○ボッチ 
・笑い話
・動物譚  カチカチ山など
・木の伝説
・石の伝説
・水の伝説
・塚の伝説
・坂、峠、山、谷、沢の伝説
・屋敷跡、城址の伝説
・信仰

こちらに類型の型の一覧があります。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%94%E8%A9%B1#.E6.98.94.E8.A9.B1.E3.81.AE.E5.9E.8B

昔話はあちこちの土地で同じような話が見られるようで、赤石岳には『雨漏り怖い』の話がありましたが、それは別の土地でもよく聞かれる話でした・・・ 他の土地にない話と言う意味では、伝説のほうが価値がありそうですが、類型的にみられる話がある場所は同じような特徴や由来を持っていると言え、それはそれで情報源になりそうです。

山では 「賽の河原」という地名はよく見かけますが、賽の河原と言えば、死んだ子供が集まってお地蔵様の庇護をうける場所なのだそうです。大体が岩がゴロゴロした開けた場所ですよね。確かによくお地蔵さんを見かけます。

また峠は、語源は「タワ」つまり、たわみ、であり、「たわみごえ」→「たわごえ」→「とうげ」という説もあるそうです。(柳田国男)

ガレは崖を表す言葉ですが、山梨では男性がモテたようで、おとらのガレ、琴時のガレは女性の恋心を疎ましく思った男性が女性を崖から突き落とす話らしいです。こわ~。昔から男性はモテてたんですね。

でも何も突き落とさなくても・・・突き落とさないよう気を付けましょう。っていうか突き落とされないようにしようっと。

http://www3.town.minobu.lg.jp/lib/shiryou/minwa/stories/minobu0006.html

http://www3.town.minobu.lg.jp/lib/shiryou/minwa/whatsminwa_c05.html


それにしても作者の土橋里木さんはすごい方ですね。祖母、祖父から聞いた話、というのがよく出てきます。でも、土橋さんも明治38年生まれ…存命なのか、どうかですね。

おばあちゃんの膝で昔話を聞けるような時代に生まれたかったなぁ・・・

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