Sunday, September 15, 2013

読了 『黒い画集』 ”遭難” ‐ 鹿島槍での遭難劇!

今日は雨の音で目覚めることができ、シンプルで贅沢な幸せを味わっています。

実は昨夜は夜更かししました。というのも、私にしては珍しく、小説を読んでいました。普段、私は日本の小説はまったくと言っていいほど読みません。読むのは、海外の著者が書いた本が多く、最近はリック・ウォレンを読んでいます。

でも、昨日はわざわざ県立図書館に出かけて、松本清張の『黒い画集』を借りてきました。

■ 山と出会いと本

特に楽しい山に行くと、「山に行ってきました♪」という報告メールを各方面に出します。

それで先日の、後立縦走ソロテント泊4泊5日も出しました。
(山行報告はこちら。http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_29.html )

そんな山ヤさんの一人から、

”新潮文庫に松本清張の「黒い画集」という、短編集があります。その中に「遭難」という短編が、ちょうど鹿島槍からキレットにかけてが舞台になっています。機会があったら読んでみてください。”

と、教わっていました。この方は、両股小屋に出かけたときにバスの中で出会った方でした。

”鹿島槍”、”キレット”、”遭難”… 興味津々なキーワード。

これは読んでみたいな!と思い読んでみたのですが… 怖かった~。

■ 鹿島槍においての遭難劇

舞台は、まさしく鹿島槍です。それも私が歩いた時期とも重なり、舞台は8月31日お盆を過ぎた夏の終わりの山行。そして、低体温症による遭難劇でした。

山行は、鹿島槍~五竜を2泊3日の予定で歩く設定。今も、さもありなん、ですね。

小説の中の遭難は、キレット小屋にたどり着く手前で悪天候につかまり、引き返す途中で道迷い、ビバーク、救助が間に合わず遭難死という流れ。いや、これもさもありなん、ですね!

メインとなる舞台は、大谷原~冷池~鹿島槍南峰~北峰~八峰キレットです。 南峰から牛首山という尾根に濃霧によって迷い混んでしまい、ビバーク→低体温症で、3人パーティのうち、一名死亡、という話です。 

コース的な話でいうと、今は、鹿島槍に登るのに、大谷原出発はマイナールートです。こんな道です・・・ 

赤岩尾根
http://www.naganoken.jp/mount//chushin/k-alps2/kashimayarigatake-au.htm

今は、赤岩尾根を使うのはメジャーではなく、ほとんどの人が爺ヶ岳をつないだ柏原新道を使います。
たぶん扇沢のほうが交通手段があるからだと思います。柏原新道は歩きやすさで定評がある道ですしね。
一方の赤岩尾根終点の大谷原はマイカーのみ。ですが、実は、大谷原からでも、スキー場を突っ切る道で、簗場(やなば)駅まで歩けます。これは、山行でご一緒した山ヤのおじさんに教えてもらいました。

と言うわけで、私が歩いた道で、この遭難劇に合致するのは、冷池からの、長くてゆったりした稜線をもつ布引岳を通過して、鹿島槍南峰、北峰を通り、キレット方面へ一行が下る道でした。 

■ 牛首尾根と主稜線の相似性

牛首という言葉で私が連想したのは、実は、五竜と唐松岳の間にある牛首と呼ばれる鎖場(滑落死者も出ている)でした。

こんな視界不良の中・・・
が、そうではなく、牛首山というピークが鹿島槍南峰からの派生尾根の先にあり、その山に濃霧によりウッカリ入り込んでしまうという話でした。

天候もこの時期のこの山でありえます。私が歩いたのも、濃霧と強い風の中でした。



地図を確認してみると、ちゃんと牛首山があります。牛首なんて地名は日本中にありますもんね。牛首は地形語で、牛の首のように長く緩やかな稜線、ということです。

この遭難が成り立つために、この鹿島槍南峰~牛首山への道が、南峰~冷小屋までの道とソックリだという状況設定となっています… 

これは本当にそうなのかなぁ・・・?興味津々。





私も濃霧の中、南峰を歩いたので、そこから遠方は見渡せず、西に派生する尾根には全く気が付きませんでした。

← これ南峰で取った写真。この右手側で、牛首尾根に迷い込みやすい?

実は北峰は少し登り返しがあったので端折ってトラバースしか歩いていません。濃霧で視界不良、どうせ何も見えないので行かなかったのです。



松本清張さんは、この、鹿島槍南峰から派生するという、牛首尾根を歩いたんだろうか…

とするとすごい人だなぁ!!
これが布引山までの稜線道 ステキでしょう

確かに地図を見ると勾配と言い、道の雰囲気は地図から見る限りそっくりで、昭文社の山地図には、「悪天候時、牛首尾根に迷い込まぬように」とあります。

…というか、この尾根、歩けるんだろうか?






地図です。大まかな位置関係が分かる。ルートラボより拝借。

と思いつつ検索すると、ウィキペディアによれば、実際は牛首尾根には登山道はないようですね。

が、見るからに歩けそうな尾根なので、踏み跡くらいはあるかも?ですね~。

うっかり間違うというのも、地図に書いてあるくらいですし。

■ 北股本谷

完全密室の山岳犯罪は、最後は、鹿島槍北峰から北股本谷で締めくくられます。

この北股本谷、今は山スキーの滑降ルートとして使用されているようです。バリエーションとして書いてありました。 積雪期のルートなのかな?

にしても、冬に谷を歩くのは気が進みませんねぇ。何しろ、後立の信州側って、とっても急なので。

このルートは実際、かなり急な下りのようです。短編の中では、初冬に下りで使います。赤岩尾根を下るより短時間で大谷原にたどり着けるのです。 

ここで二つ目の完全犯罪が成立する…

遭難を装った山岳密室犯罪、そこまでうまいこと行くかいな!というツッコミはもちろん、大あり!!

でしたが、それより何より、作者の松本清張が、牛首尾根だの、北股本谷の実際について、山をよく知っていなければ、書けない舞台設定。

そっちのほうが、なんともスゴイな~と思ってしまいました。 

さらに私には小さな発見が…(笑)。

阿祖原温泉にいくには、下の廊下を通るのが通常ですが、なんか…この牛首尾根、阿祖原温泉に直通するっていう感じに突っ込んでいます(笑)。

ちょっと興味をそそられる尾根ですね。まぁ歩かなくても、あれがその尾根だと思いながら、歩けばいいか。

■ 不倫の話がメインです

松本清張さんってすごい小説家なんだな~と納得した私ですが、文学部卒としてみると、少々、話の流れに無理がないでもないな、という強引さは多少あるエンディングです。

基本、この『黒い画集』で集められている短編集のテーマは ”不倫” だそうです(汗)

この鹿島槍山行の動機も・・・ おっと、これを言ってしまっては次に読む人が楽しくありませんね。

■データ集

ウィキペディア 鹿島槍
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B9%BF%E5%B3%B6%E6%A7%8D%E3%83%B6%E5%B2%B3

吉田二郎 鹿島槍研究 (1957年)  なんとアマゾンでたったの2500円!
検索したら山梨県内には蔵書がなく、信大に1冊あるのみ。 この辺の岩場はもろいので登るのは大変そうですが、そういうのが好きな人には良い本なのかもしれませんね!

ヤマレコの鹿島槍 北股本谷 滑走記録
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-302903.html

当方のアマゾンレビュー

http://www.amazon.co.jp/review/R2WYGE2TLQLGSD/ref=cm_sw_r_fa_asr_xJGBG.1W5618W


http://s-moriwaki.at.webry.info/201011/article_2.html

余談ですが、『黒い画集』の中には”天城越え”も収録されています。

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