■ 説明が異様に難しい 登山というスキル
昨日は金峰山に行きました。近所の八ヶ岳が冬の高峰と理解され、アルパインスタイルだと理解されているのと比べると、金峰山は奥秩父の山で、里山のイメージも残すためか…初心者の人たちも多かったです。 というか、ほとんど全員が初心者だったような…???
私たちは登山3年目です。経験は雪山が3年、夏山が1年。なので、私たちだって正直初心者から初級者に脱皮しつつあるようなレベルで、ベテランということはまったくありません。
だから、ですが、すでに自分が通り過ぎてしまった道というのは良く分かるもの。
初心者の人たちが感じる気持ちがこちらからは手に取るように見えました。
・登山という、なんだか何がすごいんだかわかんないけど凄そうな世界への気後れ
・自分は(色々と)間違っているんではないか?
・ベテランには叱られるんではないか?
不安と疑問だらけ。 でもその不安と疑問を、自分で一つ一つ解消していくプロセスも…登山の楽しみの一つではないかと思います。
大体山に登っていれば、先達がいろいろと声をかけてくれます♪よく耳を傾けるべし。
■ ピッケル=ベテラン?
私と夫はたぶん、初心者の人たちから見るとまぶしく見えたでしょう・・・ 普段の八ヶ岳のくせで、ピッケルを持って行ってしまいましたから。
ピッケルはなんだか凄そうな装備の代表・・・ ザックにピッケルとワカンをつけていたので、私たちを見た人たちは、「あ~ベテランさんだ」と思ったでしょう。(←違うんですよ~(笑))
初心者の人にとってはピッケルやワカンは憧れのある道具ですよね♪私もそうでした☆
そして、「ピッケルってどこで使うんだろう…?」と…
だって、金峰山、ピッケルイラナかった(笑) 森林限界を超える稜線歩きはあるということで、とりあえずいつも森林限界以上では持っていく、という理由で持っていきましたが・・・「どこで使うんだろう?」と思っていたのは私たちも同じ(^^) 結局要りませんでした。
結局、要らなかったといえば、ワカン。
でも、ラッセルの可能性は十分にあったので、やっぱりワカンはもっていたほうが良かったと思います。無駄な重さではなかったです。
■ イラナイ物は持っていかない
結局のところ、登山の装備って要るか要らないか判断ができるようになる、のも登山者の成長の一つのプロセス。自分で経験するしかない。つまり山に行くしかない。
行ってダメだったら、すごすごと帰ればいい(^^;) それも重要な経験。
最悪の状況を考えて、それに備えて持っていくのがセオリーなので、登山してみた結果、要らなかったな~っていうのを持って行ったとしても、「勉強になったな~」ってだけです。
アレコレ、アドバイスしすぎると人の勉強を盗ってしまう・・・
ただ、一番ダメなのは、最初からイラナイとわかっているモノを持っていくことです。
山にぬいぐるみ要るか?要らないでしょ。
■ 要るものと使ったものが一致すれば成功!
持って行ったものが10点あるとすれば、そのうち10点を使えば大成功、1点、2点しか使わずに済んでしまえば、その日の予想的中度はかなり低く、登山スキルも低いということになります。
持っていくものと使うものを限りなくイコールにすることを目指すのが登山装備の世界。
これは今は巷の主婦の間で流行っている断捨離と同じ思想です。要らないモノを捨てる。必要なモノしか持たない。
持たない暮らし、持たない生き方と思想は同じなのです。
だから登山が流行するのかもしれませんけどね。
■ 説明されないのは商業主義の分厚い衣のせいです
しかし…このように時代の価値観が、登山と言う思想を後押ししていても…実際の登山に必要な知識を伝授してくれる指南者ははっきり言ってほとんど存在しません。
登山と言う行為は、
必要最低限を背負い、自分の力だけで大自然というウイルダネスに、真摯にしかし謙虚に、向き合うという行為。
そもそもそうした登山という精神文化を提唱している登山界の著名人たち・・・は、商業主義の分厚い外側にくるまれて、肝心のメッセージが見えにくくなっています。まるで、中身のエビはちょっぴりで、衣ばかりが肥大したエビ天のように(笑)。
登山界の大御所たちは、登山のあるべき姿をちゃんと伝えてはいます!!
が…問題が! それだけだと必要なモノはとてもシンプルで数が少ないので…
雑誌も売れない!ウエアも売れない! だれも儲からない!
だから、大事なことは小さい字で書かれています(笑) マンションのチラシとか、金融商品のチラシと同じです。
大事なことは、あまり強調されずに、あまり重要でない些末な差を取り上げて売り上げを上げる構造になっています。良い子は小さい字を読みましょう!!
でもまぁ高度経済成長期を子供で過ごしたような、すでに生まれた頃から、飽食の時代に生きてきたような昨今の若い人たちは、こんな商業主義に流されることはあんまりアリマセン…
というのも、今の若い人たちは、今の団塊の世代以上の人たちが貧しい子供時代を経て豊かな成人時代を送ったのと逆で、豊かな子供時代を経て、貧しい成人時代に突入していくことがあらかじめ見えている世代だからです。 「もっともっと」の時代から、「より少なくよりシンプルに」の世界への転換です。
言うまでもありませんが、持ち物は少ないほど自由です。持ち物が豊かさというよりは重さになってしまい重い荷物で身動き取れないよりも、身軽で自由が今の空気。
というわけで・・・何が言いたいのか?というと、登山の正しい知識は、初心者には非常に読解が難しいです!ってことです。
そして若者はそもそもない袖は振れないので、比較的害を逃れ、今ターゲットはお金を持っている高齢者ってことです。大体、高齢なほどお金持ちなのが今の日本の世相です。
でこういう人たちは、信頼できる誰かの言うとおりにしていればOKという世界で生きてきました。
地元の郵便局に全財産預けても大丈夫と思っている世代なのです。
普通の感性の人は、安全というのはリスクを分散することだとだれでも知っていますが、この世代の人は信頼を預けたら一生それで安泰だという世界にまだ住んでいるのです。
だからオレオレ詐欺がこんなに長引くのですね。でも、そんな世界は今までだって存在しなかったので・・・お国ために尽くしていればお国が面倒見てくれるって・・・何度裏切られてもやっぱり学習しないのは日本人の障壁・・・特に年を召した方ほど傾向が強いです。
■ 分かりにくさ・・・たとえばアイゼン
アイゼンはわかりやすいケースなので、アイゼンを例に取り、説明します。
まず、アイゼンといえば、初心者は軽アイゼンと問答無用で店の人は軽アイゼンを売ります。
なぜなら店の人の頭には、
初心者 = 入門の山=低山=里山
という公定式があり、まず山道具屋さんに行くと「どこの山に登るの?」と聞かれます。
ここで「○○山」と答えられる登山初心者は3割がいいとこでしょう。大体、普通の登山者は漠然と
「雪の山にでも、のぼってみたいな」と思っている程度。
「○○山」と答えられない登山者は「行く山がわかんないんだったらしょーがねーな」と言われ、
何も買えないまますごすごと引き返します(笑)
そして、「易しい雪山」などという特集記事か、雪山ルートガイドを見てとりあえず「○○山」と決めて再チャレンジするでしょう。どのルートガイドを見るかが運命の分かれ目。
運悪く(運よく?)、山岳会の人などが見るような本格的な雪山ルートガイドを見てしまったら、その人の初心者向けの山は赤岳になってしまいます。
普通の人は専門の山道具屋ではなく、一般書店にある本を見る・・・と8割がた、ヤマケイのアルペンガイドシリーズ、でしょう。そうなると・・・初心者の雪山は、北横岳とか、丹沢とか、です。
その○○山にしても、初心者は初心者と自覚がありますから、遠慮気味に選んだつもりでいます。
最初は樹林帯の雪道歩きから・・・で、結局、100%の雪山初心者登山者が軽アイゼンを買う成り行きになりますよね?
しかし、ですよ?
実際、雪山の樹林帯で、雪上を歩くのに、軽アイゼン要りますか?要りませんよね(笑)?
アイゼンが要るかどうか?軽アイゼンが要るのか?12本の前爪付がいるのかどうか?は
・雪の状態
・斜度
の2点に寄ります。 雪がふかふかで新雪であれば、斜度があってもアイゼンはイラナイ。キックステップで普通に雪の上に階段を作って登ります。
これがサラサラのパウダースノーだと雪が崩れて登れないんですが。でもアイゼンはいらんよなぁ。いるならワカンとかスノーシューでしょ。
そして、軽アイゼンが適しているのか?前づめが要るのか?は斜度に寄ります。 傾斜のきついところでは靴底を地面に対してフラットに置く、フラットフッティングはできない。だから前の方にも爪がないと地面に引っかからない。そのような斜面がある場所を歩くなら、低山だろうが高山だろうが、前爪のあるアイゼンが要るわけです。
ところが、今、アイゼンを売る側がやっているのは、「○○山=軽アイゼン」「○▽山=12本歯」です。
つまり、山によって装備が変わるという誤解を売りつけている。ので、結局、○○山には○○アイゼンと言われた登山ビギナーは、○○山に着いた瞬間から、アイゼンをつけることになります(失笑)
それは…そもそも、装備が山別っていう誤解があるからです。そうではなくて、
○○山 → 地形図を見て歩こうとするルートが、急峻な山か、たおやかな山かを知る… → 装備の選択
という思考プロセスを誰も教えないから!! まずは地図ありきなんです。
たとえば、厳冬期の鳳凰三山、3000m級ですが… ”アイゼン不要”。アイゼンは持っていきますが
凍結(クラスト)に備えたお守りです。
どうです?こんなこと、登山初心者がわからなくたって、初心者のせいではありませんよねぇ???
登山者のみなさん、山道具屋さんは道具屋さんであって山ヤではありません。
信頼できる山ヤさんと知り合いになることに全力を注ぎましょう。それが無理なら、本を読みましょう!!
とっかかりはこの辺で・・・・
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