■ 昔の教え方 vs 今の教え方
常連で読んでくださっている人にはくどいですが、私は大人になってから山を始めた女性登山者です。5年目に入り、山岳会は2年目です。ガチな会ではなく、普通の地域山岳会です。
ですので、昔の教え方、を知っているわけではありません。ただ、先輩たちの言動の端々から、
昔はこうだったんだろうな~
でも、
今はそんな教え方ではワカラナイだろうな~
と思うことが多々あります。
■ マズイやり方
こんなことがありました。
合宿では個人装備が指定されています。ロープが出る山をスタートしたころは、
確保器、エイトカン、簡易アセンダー、プルージックコード、スリング持っているの全部、カラビナ、持っているもの全部、捨て縄持っているの全部・・・
とフル装備というか、もっているのは全部持って行っていました。
すると…
「そんなに持ってこなくて良い」
と言われます。それで、個人装備表にある通り、スリング3、カラビナ3 を持って行ったら…今度は
「それじゃあ足りない」
と言われます。
この教え方では、最近の人はいつまでたっても分かるようにはならず、
不満だけを貯めていく
だけです。 おそらく、言いたいことは
「今回の山行に必要なものをリーダー任せにせず、自分で考えて持ってきてください」
という意味です。それは、
そのまま、言葉にして言わないと分からない
のが、最近の人なのです。それは、60代だろうが、40代だろうが、20代だろうが、最近の人なら同じです。
■ できる人
いわゆる、デキる人は、山行を見て、
50mダブル ×2
とあれば、これは登攀がしっかり入るクライミング要素の強い山だな、とすぐわかります。装備リストにヘルメットやクライミングシューズがあれば、クライミングシューズが必要となるような山です。残置もあり、ヌンチャクで済むのかもしれません。
そうなれば、万が一に備えて、簡易アセンダーくらいは必要だし、岩がちな登攀の可能性もあるので、ナッツとかキャメロットの1、2番くらいは忍ばせてもいいかもしれません。下降器は必ず冗長性を持たせて(つまり落としたときの備えも入れて二つ)で持って行きます。
逆に
30mダブル ×1
であれば、あまり登攀的でない可能性があります。念のためのロープです。ですから、出すことがあれば、先頭としんがり以外は、フィックスで通るでしょう。ルートを見て、樹林帯が主体であれば、支点類には、むしろスリング類があった方がいいのかもしれません。
そう言う風に そのルートで具体的に何が要るか?を想像して持って行くのが大事です。
ですが、くどいようですが、
「そのルートで具体的に何が要るか?を想像して持って行くのが大事ですよ」
と言われないと分からないのが現代人です。そこはかとない教え方ではだめです。
■出来ない人
テント泊でも同じことが起ります。それはリーダー講習でのテント泊でも、同じように起ったことなので仕方がないことなのです。
例えば次の図で、普通の理解力がある人は、みな左の図のように座ります。
今の人は、右の図のように座ると、最後の人が行き場がないということが
理解できる人の方が稀
です。
昔は山岳部というのは、慶応だの、早稲田だの、長野だの、北大だの、東大とまで行かないまでも、
エリートの集団
でした。
今の時代の新人さんは普通の人
です。
総合的な理解力も下がっているだろうし、今の時代の人は、山歴10年で、山に慣れていても、その内容は 個人山行です。
個人山行をいくら積み重ねても、テント内での過ごし方を教えてくれる人はいません。
テント内では四隅に座る
ということを教わる機会はないのです。ですから、6人用テントに4人で入っているのに、「狭いから俺タテに寝る」と言い出す人がいるんです・・・。もっと狭くなるよ・・・。
ところが先輩たちは
テント内での過ごし方なんて、教えるものじゃない…
と思っています。そういうものは
「見て盗むものだ」
というのはイマドキ通用しません。
・個人の荷物は一つのバッグにまとめる
・不用意にがさごそしない
・火のついた鍋は誰かがかならず押さえておく
・スペースを互いに譲り合う
くらいは常識の範疇のことです。がそれを口にしないと常識として共有できないのが今の時代です。
それ以前に
真冬に6テント4人では寒いです
とかも、口に出して教えないといけません。なにしろ、今の時代の人は、ギアには豊かに育っています。テントは先輩の時代よりうんと軽いのです。
私のソロテント泊装備はとくに軽量化しない状態で食料抜きで8kgです。テントは一人用ではなく一人で行くときも、2-3人用です。個人山行でテント泊するときは、山岳会と違って、朝出発するまでに40分しかかかりません。山岳会ではかならず2時間はかかります。
座る順番もです。古い会では年功序列がまだ生きていて、誰も奥の4隅の一つを取らないので、私が入ったら、
「新人のくせに…」
と案の定文句を言われました。だから「テントに入る前に誰がどこの隅に座るか決めてください」と言ったのに…。
新人のギアを見て 「そんなものを持つのは10年早い」などと言ったところで、それはセールで買ったものなのです。先輩の時には日々切り詰めたお金を貯めて、大枚を握りしめて、買いに行ったようなものでも・・・。
■ まとめ
要するに今の人は、
やんわり指摘 & 盗ませて覚えさせる
という方法では育てられません。
こういうふうにやりなさい
と結論を言わないとやれないのです。
あれもダメ、これもダメ、方式は、昔はおそらく選抜の考え方があったのではないでしょうか?それでついて来なくなるような奴は、どうせまともな山ヤになれない、という発想です。
ツラい歩荷訓練も同じ意味があったのでは?それで辞めるようなヤツは辞めてくれて結構、という時代です。
今の時代はそうではありません。山屋的才能がなくても、来た人を何が何でも山屋に仕立て上げないといけない時代です。
持ってくる装備を見れば、その人の実力が分かります。それで相手を値踏みし合っていたのです、たぶん。しかし、そんなこと今の人が発想できるはずがありません。
昔は競争社会をベースにしています。今は飽食の時代なんてとっくに終わって、ゆとり教育も終わりの時代です。ゆとり教育の人は、円周率は3.14ではなくて、3で習っているんですよ?そんな人たちが後継者なんです。平成の新時代さえも過去のこととなりつつあります。
スマホを嫌うより、スマホに詳しくなる方が得策です。ホントに遭難対策に仕えますから。
先輩たちが教わった時代の教え方では、よほどスルドイ人でないと、意図が伝わらないのです。そこはかとない伝え方ではだめでしょう…
だから、色々な人がいますが、
〇〇ができなければ、××には連れて行けない
たとえば、
ビレイで墜落をきちんと止めてもらえなければ、ルートには連れて行けない
などです。その前に、リードできなければ、リードのビレイはきちんとはできるようにはなりません。
何ができるようになれば、どういうことができるのか?はっきり言った方がいいです。そうでないと、だらりんビレイで 「うひょ~ 俺ってかっこいい~!」と思っている新人を作ってしまいます。見ると不必要なギアばかりをじゃらじゃらハーネスに着けていて、ちっとも玄人目にはかっこよくないのです。
そんな人にビレイをしてもらって連れて行かなくてはいけなくなったら、連れて行く本人は勝手に命がけにすればいいですが、会の他の他の人まで命がけになります。
不必要なギアをじゃらじゃらつけているのはカッコ悪い
ということも、要するに行ってやらなければ分からないのです。
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