私はヨガを教えていますが、教えている知識のほとんどはバレエで得たものです。
また脊椎外科の医療翻訳をしたことがあり、その時一日8時間、一か月のトレーニングを外科の先生からみっちり受けたので、解剖学は基礎は一通りなぞっています。
もちろん、医師レベルではなく、翻訳者として医師をサポートできるレベル、基本的な誤訳を犯さないレベルと言う意味ですが、医学部生以外でそれだけ解剖学に触れる機会があった人も珍しいでしょう。
ヨガのティーチャーズ・トレーニングも修了していますが、習ったことはすでに全部知っていることでしたし、むしろ付け加えてあげたいくらいでした。
そんな私が登山界を見て不思議なのは、登山と言うのは、
歩けなきゃ話にならない
アクティビティなのに、骨のアライメントについて、まったく無頓着であり、膝の痛みを
膝は消耗品
と言って受け入れているように見えることです・・・。
■ 骨のアライメント
支点を作る人ならだれでも知っていると思いますが、
支点は、ロープが引かれる方向を意識して作るのが大事
です。 なぜなら、支点には抜けにくい方向と、抜けやすい方向があるのが普通だからですね。
それに
屈曲点には力がかかる
これは常識と思います。
その常識を、なんで脚に応用しないのかな~?
これはネットから拝借した画像ですが、ちょっと見てください。
膝でヌンチャクが折れ曲がるように曲がっているわけだからです。 しかし、一般にO脚っていうのは
http://www.ikiikiseitai.com/ より引用 |
私も散々O脚だと言われましたが、実際骨自体はまっすぐです。ただ歩くときに、内またで歩く癖が放置されていただけです。
欧米に行くと、人々の歩き方がスマートでびっくりします。
欧米人は子供のころから姿勢について結構やかましく言われます。
『小公女』の話の中で頭の上に本を載せて歩く練習をさせられているのを覚えていませんか?
ドイツに留学した友人は、なんと足をゾロびく癖をしつこくドイツ人の人たちに直されたそうです。
この図でも分かりますが、ほとんどのO脚は、膝を内側に内転させ、股関節を内側に内転させています。足首はこの図とは違い、女性は内股のまま、外側が長いことが多いです。男性はガニ股を男らしさの証とするのか、上図のようになっている人が多いです。夫もこの型です。
で、何より不思議なのは、このように ゆがんだ骨の並び (並びのことをアライメントと言います)をみな、生まれつきのモノとして受け入れていることです。
ゆがんだ骨で生まれついた人はほとんどいません!
例えそうだとしても、骨が 重量のラインに沿って並ぶように使うのが、もっとも楽だということは一目瞭然でしょう。
具体的には、
・歩くときは、つま先と膝の向きは常に一致させる
です。さらにいうなら
・股関節に力みなく、鉛直のラインに膝を上げる
です。膝を上げさせると、骨盤まで上がってしまう人が多いのです。股関節だけを単純に屈曲させる、というのは意識しないとできないです。
つま先と膝の方向が一致していない → 膝の靭帯に負担がかかる
つま先より、内側に膝が倒れれば、外側の靭帯に負担が大きくなり、(X脚)
つま先より、外側に膝が倒れれば、内側の靭帯に負担が大きくなります。 (O脚)
です。
靭帯と、筋肉、どちらが伸びやすく、回復が早いかと言うと当然、筋肉です。
靭帯は人体の中では非常に強いもので、伸びるのにも時間がかかるし、一旦伸びたら回復するのにも時間がかかり、切れたらくっつくと前より固くなります。
すごく強固なのです。 その靭帯が痛い、というのは、どれくらいの力がそこにかかったのだろうか?
ということですよね。
現代では人間の寿命の方が、膝関節の寿命より延び、繰り返し繰り返し使われることの摩耗は致し方ない、というのが医学界の見解でもあります。
が、それでも摩耗した箇所をさらに酷使するような使い方(要するに屈曲した使い方)は改め、柔軟性の大きい筋肉で、骨のアライメントのバランスを取るようにすることの重要性は高まりこそすれ、低まりはしませんよね。
歩き方を研究するのが登山なのに、どうして骨のアライメント(コツのアライメントと呼びます)は見過ごされているのかなぁといつも不思議に思います。
理論的には、骨のアライメントを正しく鉛直のラインに持って行いけば、筋肉の使用は最小ですみ、それがもっとも疲れない歩き方になるはずです。
これはいわゆるハの字歩きでも同じで、つま先と膝の向きを一致させることで、膝の靭帯の負担が小さくなります。