山の先輩がイヴォン・シュイナードの本を貸してくれていたのですが、すごく面白かった!のでした。
≪参考≫
イヴォン・シュイナードについて
アイスクライミングの本としては、技術が古いと、悪口を言われること確定!な本でしたが、山への飽くことなき好奇心と観察による経験談に溢れていて、山好きなら時間を忘れて読める本です。
すごく共感したのは、山の危険と題する章です。
ただ、ただアイスの道具はさすがに古すぎて、まったく役に立ちません(笑)
・・・が、雪のこと、氷のことに関しての、洞察や知識は、何十年たっても、雪や氷の質が変わるでなし…たぶん現代と同じだよな~と思いました。
私にとっては、「そうだよな~、山は、山そのものが面白いんだよ~」と思えたのでした(^^)。
素晴らしい文だと思ったので、引用します。
ーーーーーーーーーーー山の危険ーーーーーーーー
山の変化
地球は、冷却と歪曲によって山を形成する。一方、重力は山を再び平坦な状態に戻そうとする。山、この摩訶不思議な尖塔群は、常に変幻する大気の大海原に屹立している。
大気の変幻とは、太陽熱で蒸発し、雨や雪となって地表に還元する水の循環である。
大気が空中にそびえる山々の岩に突き当たると、方向を替え、上昇し、冷却され、必然的に風や雨となって降り注ぐ。高い山では、結晶して雪になる。降り積もった雪はやがて海へ向かう長い旅を始め、旅の途中で山々の表面の岩を削り取ってゆく。
山に登る者は、落石、滝、アイスフォール、雪崩など、自然の循環が引き起こす数々の危険をうまく避けて進まないと、そのいけにえになってしまうのである。まさに山に関する知識は、力であり、命の綱でもあるのだ。
地球上で、山ほど活動的で、自然の営みや変化がはっきりと分かる場所はない。
・・・・略・・・
登山者はまさにこの変化の真ただなかに自分を投入するのである。ロッククライマーは、自分たちが登っている世界は安定しており、自然の造形物は永久的なものと思っているが、実際は絶え間なく、山から剥離していくもっとも崩壊しやすい表面の部分を登っているのである。
一方アルピニストは、山は安定したもの、という幻想はあまり抱かない。氷結した岩の中の水分の膨張や激しい寒暖の差で凍る岩や氷のひび割れは結果として岩や氷を崩れやすくし、ホールドがもろくなったりすることを十分しっているからである。
自然の変化は、激しく過酷なものだが、その中にも一定のリズムがある場合が多い。・・・
・・・略・・・
登山者にとって最善の防御策はタイミングをつかむことである。・・・略・・・具体的には荷を軽くし、早く行動することである。
・・・略・・・
初心者が大氷壁の登攀に必要な技術を身に着けるまでに、それほど時間はかからないが、登攀を安全にやりとげるには、長年にわたる試行錯誤の経験が必要である。雪や氷の登攀実技はかなり直線的で単純ともいえるが、コンディションを正確に把握することは非常に奥の深い複雑な技術であるといえよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー引用終わりーーーー
と書いています。最後はそうした自然の法則を自ら「発見する喜び」を記して終わっています。
アルピニストとロッククライマーはどうも違う人種らしい???
以下は一般の私たちのような登山者にも役立つんではないか?という山の行動規範リスト。
ーーーー要約ーーーー(ほぼ引用)
1)出来るだけ早く移動しようという意思を持つこと
2)トレーニングによって体を良い状態に保つこと
3)嵐のために山にくぎ付けにならないように、天候や気象条件をよく把握しておくこと
4)ルートを暗記しておくこと
5)早朝に出発すること
6)休憩をとったり汗をかいたりせずに数時間にわたって行動できるように、着実なペースを身に着けること。
7)行動中トップは一番強いクライマーが務めること
8)エネルギーの消耗を防ぐために少しずつ食べたり飲んだりすること
9)ザックを出来るだけ軽くすること
10)登攀の進行に応じて必要になると思われる品物が簡単に出せるように、荷物の入れ方を工夫しておくこと
11)氷の上でのビレイの回数を減らすために長いザイルを使うこと
12)着脱に手間取るようなハーネスの使用を避けること
13)ハーケンの代わりにナチュラルプロテクションを使うこと
14)短いピッチのアイスが出てきたら、アイゼンを履く前に、なしで行けないか検討すること
15)2,3分でアイゼンをつけれるよう練習すること
16)道具は常に鋭くしておくこと
17)時間に追われている場合はラストはユマールで登る
18)下降では絶対に必要な時以外は懸垂下降をしないこと
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
現代に通じますよね。
整理してみると、
1)体力 (1~2)
2)天候への知識・判断力 (3)
3)行動規範(規律、ディシプリン) (4~11)
となっています。 昨今、登山者の質の低下が叫ばれていますが、
・ルート自体を知らなかったり・・・
・着実な行動ができなかったり・・・
・必要なカロリーや水分を取らないでバテたり・・・
・ザックが不必要に重かったり・・・
・要らないものは持っているのに、必要なものはすぐ出てこなかったり・・・
・道具の着脱に時間がかかったり・・・・
ということなんだなぁ・・・と思いました。
この本には雪上での確保技術も一通り解説されていました。
ちょっと雪上での確保をもう一回、誰かに講習してもらいたいな~と思いました。
たとえば、バケツを掘って、そこに座り、腰がらみで確保する、などです。
私はスノーボラートでもやりましたが、これ、セカンドを確保するのは、下向きなので分かりやすかったのですが、リードを確保するのは、スタンディングアックスビレイ以外よく分かりませんでした。
でも、そういう確保が必要な山ってどんな山だか、今のところイメージできません(^^;)
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