■ 朝気のストローハット
ストローハット、終に閉店かぁ・・・
私の最初の山、八ヶ岳の西岳は、ストローハットの高さんに連れて行ってもらいました。
ストローハットは、現役を引退されたご夫婦がやっている、こぢんまりした、登山ウエアの店でした。
毎週平日と土日に、初心者向けの山のツアーがあり、登山を初めてみようかな、という人には格好の入門ツアーでした。
私は登山靴の最初の一足(シリオ)をここで買いましたし、夫のローバータホもここのです。ウエアの基本的な部分はココで買っていますし、テントやシュラフもストローハットで購入しています。
まぁ基本的に、ウエアは私は着たきり雀であまり色々な山服が要らないし、ウエアより、ギアにお金を掛けたい人なので、なかなか購入するものがなかったりしたので、最近はコーヒーとパンを買いに行く店になっていましたが。
■ 初めての山・・・
最初の山は、高さんに連れて行ってもらいました。 高さんはガイドさんではないのではないのかなぁ・・・ 分かりませんが、私は有償で連れて行ってもらってよかったな~と思っています。
最初の西岳は、ほんとうに、山のヤの字も分かってはいませんでした。 何しろ、西岳が八ヶ岳のやまだってのもしらないし(笑)、標高とか言われても、はぁって感じだし、車で走っていても、今、北なのか、西なのか、まぁホントに乗っているだけですね。
私は基本的に人の運転が嫌いなので、運転で酔いそうだったってのが印象に残っています。
それでも登山口に着くと、さわやか~!秋の黄金色の唐松を見に行った、紅葉の山行でした。
たしか、中高年のおばちゃんたちと4人~5人くらいで登ったと思います。平日の山でした。
私はその頃、転勤で山梨に越してきたばかりで、仕事も失い、主婦業は、今まで主婦業+フルタイムで出張もこなしていたわけですから、急に時間が余ってしまい、それならば、とメルボルンに海外留学しに行っていたくらいです・・・まぁ海外留学はお金の無駄だとわかって辞めて帰ってきたのですが(笑)
趣味のバレエを継続しようとしていましたが、山梨はバレエに関しては砂漠地帯でした。都会では大人から趣味でバレエを習っている人たちは、本来の子供から学ぶ人たちを量で凌駕しており、バレエを教える人たちも、大人に対して真摯に教えてくれます。が、山梨は子供中心の世界なので、大人の趣味のバレエは、生徒は募金してくれる人たちくらいの扱いです。
というわけで、私には、今の生活にマッチした、何らかの活動が必要でした。それで山に行ってみたのです。
そもそも平日のアクティビティを探していたので、低山の三方分山も行って見ましたが、低山趣味はセキュリティの面であきらめました。女性には犯罪の危険が大きいと判断。
結果、私は山は小屋が合って一般道を歩けるアルプス系を目指そう、と結論しました。
■ 高さんとの軋轢・・・
高さんは、この西岳や三方分山で、たとえば
・歩き始めはゆっくり歩いて、休憩を頻繁に入れるべし
とか、
・落石をおこしたら、「ラーク」と言え
とか、
・稜線に出ると何か上に着る物を着る
とか、
・登りは靴ひもは緩めに、下りはキツメに
とか
・登りはストックは短めに、下りは長めに
とか
そういう基本的なことを教えてくれました。歩き方も知らないので、私はまだ「うーん、ここ、どこに足を置くのかしら?」な状況でしたし。 低山の三方分山は西岳より、痩せた尾根が怖かったのをよく覚えています。
でもまぁ、私は「登山ってこんな感じかぁ」とよく理解でき、「あとは一人で行こう!」と相成りました。
今振り返っても、”初めて”の恐怖感を誰かに付き添われて克服したら、後はもう”初めて”ではないのですから、次回からは自分で行くのが、自立と言うことだと思います。
それからは、技術書は図書館で借りて、ガイドブックは新品を買って、夫と二人で好きな場所に行っています。
私の山行履歴を見ると分かると思いますが、初年度は、それこそ、霧ヶ峰とか山でなくて、遊歩道な山に行っています。 そして、いわゆる百名山の山に行ったら、例外なく、懲りています。茅が岳も、瑞牆山も、百名山目当ての登山者に結構うんざりさせられた記憶しかありません(笑)。
しかし、なぜか、私のこの行為は高さんには危険な行為と見えたらしく、さんざん心配してくれました。
その心配は、なぜか、ツアー参加しないことの批判となって聞こえてくるのでしたが、でも、結局は心配をしてくれただけだったのです。
■ 登山ツアー
山小屋で働いて分かったのは、良いツアーリーダーに率いられた団体は、大変マナーがよく、その逆はマナーが悪いことでした。
マナーが悪い団体客は、マナーが悪いだけでなく、死亡や転落などの事故も起こす。
私が小屋に入って4日目くらいに死亡事故が起きました。それは38人のツアーでした。
ガイドレシオを無視したツアーはとても危険です。さらにこうしたツアーは、参加者のレベルがマチマチで日ごろ歩いていないヨチヨチ歩きの人も、無理やり参加しているので、事故になる確率がとても高い。(その上、小屋ではマナーが悪い)
その点、高さんは統率力が高く、「山ではこうしなくてはならない、ああしなくてはならない」と口うるさいです。
私は口うるさくない登山ガイドは間違いだと思います。特に初心者のうちに口うるさくない人は、おかしい・・・
登山者の無知のよるマナー違反(たとえば水を無駄にするとか)は、初心者の頃に叱っておかないと、後で叱っても「今まで何ともなかったし・・・」で、行為が改まりませんし、それはその登山者にとってすごく不幸なことです。
山では人間中心に物事を考えるのではなく、山(という環境)に人間の側が合わせるものだ、というのは、出来るだけ早いうちに身に着けておかねばならない価値観の一つではないかと思います。
そういうのをきちんと教えてくれるのが、良い登山ガイド、であるとすれば、高さんは本当に良い登山ガイドでした。
私は高さんが提案するツアーは、最初の二つ以外は自分で行ける山だったので、あまり山で高さんと一緒に歩くことはなくなりました・・・が、高さんで山をスタートして良かったなぁと思っています。
■ 登山者を育成すると言うこと
若い人は体力はあります。(この若さには50代のいい年のおじさんだって含まれます)
だから”連れていける”。
”連れていける体力のある人”は、”ただ連れて行くだけのガイド”をするガイドさんの格好の餌食になり、どんどん有名で難しい山にガイドは連れて行こうとするでしょう・・・
そうすると、”連れて行ってもらった山”なのに、それを”自分の実力”と勘違いしてしまう・・・その勘違いは、自分で山を歩くようにならない限り、自覚できず、そのため、改まりません。
自分で山行計画を立て、実行し、記録を書いて反省する、そういうプロセスを経ないと、山は一向に面白くはなりません。
おもしろくないものだから、どんどん難しい山ばかりを行こうとしてしまう・・・
私の知っている人で、その力もないのに、厳冬期の西穂に登ってしまった人がいます。
雪山2年目で厳冬期西穂に行ったら、次はどこに登る気でしょう?
ガイドに連れられて行く山しか知らないような、お荷物な登山者を抱えてくれる、お人よしな山岳会はどこにもありません。
かといって低い山はその人のエゴを満たすことができません。
というわけで、その人はもう行く山が無くなってしまいます。
登山者は遠回りのようですが、一年目には一年目の、2年目には2年目の、3年目には3年目の山に行くべきで、それをいくら歩けるからって端折ってしまうと、つくべき認識力もつかず、危険の認知力もつかず、最終的にはどこかに無理が出て、それがほころびとなり、痛い目に合ってしまうのです。
つまり、身の丈以上の山に登っていると気が付けずに登るのは単純に遭難へまっしぐら!です。
たとえ体力が合っても、何か”ヒヤリハット”をおこします。大事なのは、ヒヤリハットの時点で、失敗を反省しておく想像力です。
なぜなら、本物の、失敗になってしまった時、山というのは小さなミスが大きな事故、たとえば滑落、そして滑落死につながるものだから・・・。
今足を踏み外した場所が、すってんころりん600mの場所で起きたら、自分はどうなっていたか?
そういうことを想像できるようになるまで行ってはいけない場所・・・それが大きな山、ということなのでしょう・・・。
私もバリエーションに行くようになりました。今まで以上に心して、技術習得と安全には配慮したいと思います。
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