Sunday, December 1, 2013

答えはYesの赤岳

■ 一般登山と本格的登山の交差点

昨日の赤岳
赤岳は言わずもがなの八ヶ岳の盟主です。無雪期は普通に一般登山者の山です。

ところが、積雪期の赤岳はとても微妙な地位にいます。
 
というのは、赤岳は”本格的登山”において”初級”の雪山ですが、一方、一般登山者向けのガイドブックでは”最上級”の雪山です。

その理解しがたい矛盾について、以前考察した記事があります。

かいつまむと、(一般登山者の上級)=(山ヤさんの初級)です・・・(^^;) もう、こまっちゃう(笑) 

 ※参考までにガイド登山では、赤岳は岩稜帯に入ってからはロープで登山者を確保します。

私は完全に一般登山者として、趣味で登山をスタートしています。ですから、雪の赤岳は基本的に”目標とする山”でした。遠くの目標は八ヶ岳の全山縦走ですから、赤岳はまず越えなければならない課題です。ハードルとしては手前のほうです。

■ いったい何をどうトレーニングしたらいいのか?

「目下のところ、目標とする赤岳に登れるようになるには何をすればよいのだろうか?」 

明確な回答は得られないまま、多くの登山者は、いちかばちかの登降をせざるを得ないわけです。

それは私が選びたい道ではありませんでした。

「赤岳くらい楽勝」という空気は、一般登山者の間でも濃厚です。それは山やにとって初級の山であることから情報が錯そうしているためです。

昔は山ヤしか読まなかった山雑誌。その時代に”初級”と書いても問題なかったものが、今では未組織で、山の技術伝授の歴史の流れの中にまったくいない登山者も、そうした専門雑誌を参考にして山を決めるようになってしまいました。そこで混乱が起きたわけですね。

しかし、一般登山者と山ヤの違いは、リスクの認識力です。

一般登山者が晴天の赤岳に登れても、それは、リスクについての認知が不足したまま、たまたまのラッキーで登れている山という意味です。決して実力を示しているわけではありません。

私はリスク認識が欠如したまま、登れるから登ってしまうという登山をしたいわけではなく、またリスク判断についても他者にお任せした登山をしたいわけでもありません。たとえばガイド登山のようにですね。

そうした登山者は一体何をしたらよいでしょうか? 経験からわかっている範囲で書きます。

■ 第一段階 脱一般登山 ~ 低くても自信が持てる山からスタートすべし

私たちは”自分たちでリスク判断し、安全にたいして自信が持てる山”からスタートしました。具体的には、冬の天狗岳や初冬の西穂独評などに出かけました。そこで得た成果は、次のようなものです。

 ・雪や低温環境に慣れる
 ・雪山とはどのようなものかを知る
 ・装備についての知識

登山独特のリスクは、「リスクとは何か自体を知らないこと」かもしれません。リスクを知らなければ、当然それに備えることはできません。

登山のリスク管理は、一見すると、なんだこんなことか、というような非常に些末に見える内容です。具体的には、雪の山では行動食ですが、行動食に何を持って行ったらいいのか?とか、雪の山で着るべき服装はどんなものか?とか、正解を聞いてしまえば、あっけない、そういう内容です。

なので、”軽視してしまうという心理リスク”があります。しかし、リスクを取らないのではリスク管理したことになりません。山なんか登らなきゃいい、という話になります。

軽視してしまうと言う心理リスクを避けるためにおススメの方法論は自らの失敗を通して学ぶと言うことです。下らなければくだらないほど、教えられて身に着けるより、自ら学んで身に着けるほうが身に付くからです。大体くだらないことは人に教えてもありがたがられませんし(笑)

だから、ピッケルを持つまでに天狗岳3回ってわけです。

ここまでが第一段階です。 ここまでで、雪山が好きなのかどうか?今後もやりたいのかどうか?それが自己判断できるようになると思います。

一般登山者のレベルで挑戦できる雪山は冬の天狗、硫黄レベルが結構限界点です。いわゆる入門と言われる山ですね。私たちはおよそ2年を費やしています。

■ 赤岳までの道のり

私は好きだから続けたいと納得したので、更なる技術の伝授を求めました。

それが2012年2月26日の天狗岳です。ピッケルは持つだけでは意味がなく、使えるようにならなければ意味がないというわけで、プロのガイドさんにスキル伝授を乞うたのがこの山でした。

一般にガイド登山は自分で登った山とは言えません。

が、この時点で私たちの冬天狗は4回目であり、ガイド登山において登頂を買ったものではないことは明白でしょう。

そこから試行錯誤が約1年… 講習会の門をたたき、クライミングジムに通って初歩的な岩登りを身に着け、夏山は後立の岩稜帯を縦走しました。

つまり、それがこの赤岳までの道のりです。

高額な講習費用や山道具費用をねん出するため夏山のアルバイトという犠牲も払ったほどです(^^;)。

振り返ると、この山に登るために過不足ない技術が付くように、山の神様はうまく計らってくれたのだということがよく分かります。

赤岳はピッケルとアイゼンが必要な山であることは良く知られています。

しかし、そうした技術をみにつけるにはどうしたらよいかについては正直な所、あまり納得性の高いアドバイスはありません。

結果、何がどう身に着いたらどこの山に登っていいのかどうか、よく分からない。

山は自己責任と言われるのに自己判断できないのです・・・(汗)

私も、一年前、雪の岩稜を通過するために安全性を高めるには、何をどうトレーニングして身につければ良いのか、よく分かりませんでした。

今ではアイゼンワークについてならよく分かっています。 自分の欠点・弱点、強みについてもよく分かっていると思います。

■ 第二段階 ・・・ 環境探し

まとめると、第二段階では

・岩稜帯の投降について夏山で慣れる
・クライミングについて多少の知見を得る
・初めてのロープワークに触れる

などスキル面を強調した山をすべきでしょう。 この段階では体力UPは、目標ではなく前提です。

■ 達成とはじまり

今回、積雪期としては、初めて赤岳に登頂しました。 実はこの前に重要な決断をしました。山岳総合センターの講習会を途中退場したのです。なので、私にとってこの山行の成功は意味が大きいものです。

これは山岳会の山行に同行したもので、お見合い山行(笑)とでもいうべきものです。

頂上荘前から赤岳山頂方面を望む
私にとっては今シーズン初の雪山。 つまり、これは足慣らしの山です。 

雪山は環境が過酷なので、いきなりだと体に堪えるだろう、と私たち夫婦は足慣らしで、11月の西穂独評に行くなどしていました。ただ、今年は、実は、秋は少し体調が悪く、出かけられていませんでした。 ので、私の懸念は岩稜帯ではなく、むしろ体力の低下を少し心配していました。そこで、出かける前に低山を少し歩いておきました。

今回も、山の神様は、これ以上ない快晴で私を迎えてくれました。

雪の赤岳は素晴らしく・・・

それはまるで「ようこそ!」と言っているかのようでした。「よくやったね」ではなく、「ようこそ!ここへ」でした。

私の山の喜びは達成感という一言では片づけられないものです・・・ それは、山に導かれていることに対する実感。そうした実感は山を始めたときからありましたが、改めて感じると、多少の驚きも感じます。

どの人も運命と言うものには導かれているものだと思います。出会う人、出会う場所、人が経験することには偶然という名ではあれ、大いなる存在によって、無意識や潜在意識の力が働いていると思います。ただ普通人はそうと思っていないでそうしているだけで。

直観力などを持ち出さずとも本来は人はみな導かれているのですが、そういう風に納得できる機会というのは、瞑想などで自分自身で作り出す他は、なかなか難しいものです。

私は自分の直観力に対して信頼があるほうですが、改めて実感すると、それは深い感動を伴います。

道を選んでいるのは自分でいるようでいて、自分ではないのだということ・・・。委ねるということ、ゆだねても大丈夫だということ、そういう感じです。

導かれているものが何であるにせよ、それは正解へ至る道を選んでいる。そのことに対して改めて信頼性を深めました。

行者小屋前から赤岳 うららかな冬の一日

山行報告は今から別途書きます☆

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