Monday, December 16, 2013

不幸な出会い、すれ違いの出会い、幸福な出会い

登山を趣味にしていると“出会い”というものが、一種独特な、その人の山ライフを決定するような、重要な要因となる…。

■ 山岳総合センターとの不幸な出会い

思えば、山岳総合センターのリーダー講習とは最初から不幸な出会いでした。

なぜなら、私は当時ほぼ東京にある山岳会への参加を秒待ちにしていて、センターでの講習会は偶然ネットで見かけ、目標到達点が八ヶ岳の全山縦走だったためにふと、気持ちが動いて応募したものでした。

ここは山行履歴を出させたりするので、誰でも入れる、という訳ではない。参加OKの連絡が来た時は、ちょっと”合格”の通知をもらったようでうれしいような気がしたのでした。良い子病の悪い発病事例かもしれません。

山岳会はいつでもだれでも入れるけれど、総合センターの研修は一生に一回しか出ることができない、と思い、リーダー講習へ。

この時私の頭にあったのはネットで見た(町内の山)国立登山研究所での講習です。体力的にしごかれ厳しいけれど、リスクにしっかり備えさせてくれることができる。そんな講習が頭にありました。

■ 女性用大型ザック・・・

初回、装備の説明があり、装備表が渡されました。そこには次回までに「70ℓ以上のザック」を購入するように、とありました。

私は当時雪山はテント泊は初めてやったくらいで、個人で行く限り装備はそう多くなく、70ℓもの大型ザックのニーズについて理解ができませんでした。そこで講習中は周囲に聞きまくっていました。何しろ37リットルのバリアントでテント泊も特に困っていなかったのです。

 ・共同装備と言うのはどれくらいの負担があるのか?
 ・身長180cmの男性も、150cmの私も同じ70リットルというのはおかしくないか?
 ・女性用の大型ザックでおススメは何か?

しかし、お風呂にゆく貸切バスの中では、大型ザックを持っていないことをクラスメートに散々笑われただけで、結局、3つの疑問に対する答えは得られなかったのでした。

実は昨日、アラスカのデナリ登山から帰ってきた女性登山家に同じ質問をしたところ、彼女は通常の冬山バリエーションは55ℓのバリアントだそうです。女性であれば、体格が小さいのでサイズは60ℓあれば十分だそうです。海外登山でさらに持ち物が増えそれで間に合わないときは、背面長などのフィット感はあきらめて痛くても重くても背負うしかないのだそうです。

今思えば、山岳総合センターでは、たぶん、女性の登山者が本格的な登山を始めようと言う場合に、戸惑いがちな問題点について的確に回答できる知識と経験がある人がいなかったのです。

■ ザック事件

このザックの件は後日さらに不幸な出会いを生むことになります。 

ザックを購入しようと大阪や東京の山道具屋で色々探しましたが女性用の大型ザックと言うのは、そもそも70Lなんて市場に出回っておらず、さらにSサイズはないし、高額なためどれも選べず(当然です、ニーズが絞られていないのですから)、結局、バリアントで初回は参加することにしました。一回目の雪上研修は小さい手持ちのザックで良いか?とセンターの先生に聞くと良いという答えだったので。

そこで37リットルのバリアントで臨んだわけですが…これがまた、共同装備の分担の時に散々バカにされました(汗)。

それは、ザックが小さい=重量を担ぐ気がない=パーティに貢献する気がない という図式だからです。

なので皆にゴマメ扱いされるのは、それは致し方ないのです。

が、結局のところ、4人の装備重量は、20kg、19kg、18kg、17kgでした。女性の私が17kgで、
男性の残り三人が20~18kgというのは、肉体がもつ筋肉量と比較して別に自慢になるような負担の増加ではないと思います。装備分担はテントやロープ(2本)、スノーバー各自1、などです。後はほとんどガチャ類です。

私のバリアントに入れると、当然外付けしないとヘルメットなどは入らないわけですが、「オレは外付けキライ」とは講師の弁。

私はチームに貢献する気がないと思われるのがとても嫌だったので、山岳総合センターで講習が終わり、後は夕食と飲み会だけとなったタイミングで、受付に「ザックを購入してくるので夕食のお弁当はどなたか食べてくださって結構です。飲み会時に戻ります」と言づけて、近所の安曇野のモンベルまでザックを購入に出かけたのでした。ちょうど運悪く、廻りに言づける人がだれもいなかったのです。

その時買ったのがモンベルのアルパインパック60のSです。すぐ使うからと背中のボーンも合わせてもらい、タグも取って、ザックをつかんでとんぼ返りでした。

帰ってみると、総合センターでは、私は「時の人」になっていました(汗) 飲み会の真っ最中でしたが、私がいなくなったのが上手く受付から先生たちに伝わっておらず、先方はびっくりしてしまったみたいです。リーダー格の先生に叱られるわ、で大変。(の割にはみんなお酒を飲んで盛り上がっていましたけど・・・)

この時は翌日テント泊一泊の講習の講師を務めてくれる先生との初の出会いになるわけですが、このザック事件が引き出したのは不幸な出会い、でした。

「こういうことをする奴は山でも同じような勝手な行動をする」と講師が言ったのです。

私は今でもザックを買いに出かけたことを”勝手な行動”とも、”無責任な行動”とも思っていません。拘束される時間は終わっていましたし、夕食の時間をザック購入に充てると言うくらいの自分の行動に対する自由は大人にはあって当然だと思いますし。

この発言は、今から山に一緒に入りましょう、というチームビルディングを目的にしている飲み会で発せられた言葉だったので、むしろ、この講師の資質を疑いました。なにしろ、受講生は世間を知らない高校生ではなく、一通り社会を知っている社会人ですから・・・

4月の扇沢 来年は一周しましょう
私は「そういう風に考えられるのならば、明日の参加は取りやめます。山に入る前から信頼がおけないと考えている人間と山に入るのはおかしなことです。明日は自宅に帰ります」と伝えました。

この講師は大急ぎで前言を撤回しましたが、すでに時遅しで、私のその講師に対する信頼は基本的に、この人、大丈夫?という疑問マークつきになっていました。スイマセン。

飲み会では私のおニューの60Lザックを背負ってみたり、とみんな大はしゃぎでフォローしてくれましたが、60のザックは大柄な男性の背中ではとっても小さく見えました・・・(汗)。

翌日、ザックに詰め直してみると60Lのザックに詰め直しても、そんなに変わるわけではなく、バリアントは拡張性の高いザックなのだということが確認できたくらいでした。

そこで個人装備で持って行こうとしていた嗜好品を減らしたくらいです。 




≪豆知識≫
 ・ザックには用途があります。アルパイン向け、バックパッキング向け、クライミング向け、ウルトラライトなど。
 ・バリアントは雪山をやりたい人に良いザックです。

≪関連記事≫
講習会に行ってきました http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/04/blog-post_29.html
針ノ木雪渓雪上訓練の反省 http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/04/blog-post_30.html


■ 罰ゲーム ラッセル

翌日、さらに講習会とは不幸な出会いが続きます… 快晴の扇沢は素晴らしい山日和でした。


スキーヤーがむしろ多いような登山客に交じって出発する私たちは、厳冬期と同じ完全雪山防備。ヘルメットもかぶり、ハーネスやスノーバーも持ち、一体どこのヒマラヤの山にアタックするのか?というような重装備です。

私はこの時はまだ無邪気に、「すごいなーみんな~。みんなに迷惑を掛けないように私も遅れずついていかなくっちゃ」と自分が足をひっぱることを心配していたのでした。何しろ、私はまだ雪山3年目、夏山は1年しか知らない山新参者ですから。ザックだって大型のは持っていなかったくらいなんですから。

何班かに分かれて出発しますが、テント泊予定地の大沢小屋までは1時間半の、谷間をゆく平坦な道のりです。そこでまた事件があったのでした。

というのは、同じ班になった人たちの足が遅かったのです…ザック重量は前述の通りです。私は弱い人の定位置でセカンドで、講師と歩いていくと、なぜか二人だけになってしまうのでした。みんな前日お酒を飲みすぎたのでしょうか。

私は振り返りつつ歩くことに…結局講師からトレースを外して歩くように指示されました。トレースを外して歩くと言うことは、ようするにラッセルしろということです。 

今思えば、講師からしてみれば、余裕がありそうだからラッセルの仕方も見てあげよう、という単純な好意だったと思うのですが、昨日のザック事件があった身からすると、不必要な場所でのラッセルは単純にに感じられました。大体ラッセルって登山の中では力仕事でみんなが、できればしたくない、と思うことなので…。

■ ずらりツールと体力・スキル不足

私はいまだに岩講習も受けたことがないです。

なので、当然4月当時は、エイトノットもムンターもクローブヒッチも、つい最近初めて習ったところでした。当然クライミングシステムや確保理論についても何も知りませんでした。今年の4月です。

懸垂下降はカラビナで一回だけしたことがあるだけ。確保器は装備の指定にあるから持ってはいるけれど使ったことがない状態でした。

講習は、そんな私を含む4人で、雪上で懸垂下降、フィックスロープの通過、などです。

クラスメートの男性たちは、ずらりと登攀具をたすき掛けにして、戦地に出向く勇者のようないでたち…私は最小限の指定されたスリングとカラビナしか持っていないのとは大違いでした。ずらりと胸の前にぶら下がるヌンチャク重そう。みんなこの講習以前に山岳総合センターの講習に通っているとのことでした。

クラスメートの足をひっぱらないか心配です…ところが、また事件が。講師がアンザイレンのためにエイトノットを結ばせようとすると、私以外の3人はエイトノットができなかったのです…

これには講師だけでなく私も面食らいました。というのは前回の講習で習ったのでそれくらいは確実にしようと私は家で復習して来たからです。それにズラリ登攀具をぶら下げた姿とはあまりに実質が違いすぎました。

ここでまた講師、爆弾発言。 「オレ、ヤダ。こんなやつらに教えるの。ロープワーク出来ないんだもん」

私もそう思うのは当然だとは思いましたが、思うのと、発言して良いのは別で、発言してはいけないシーンではなかったかと思います。

講習は一気にムードが下がり、結局、ほとんど休んでいる時間の方が長いような講習内容になってしまいました。

■ 重さの訳

夜のテント泊はさらに問題でした… というのは、クラスメートから出てきた装備が、厳冬期用の6cm厚のスリーピングマットや分厚いシュラフだったからです。つまり装備の重さはコレ…?

時はGW…雪上で寒いとはいえ、厳冬期用の装備がいる時期ではなく、軽量化が可能です。

6人用テントに5人で寝るのに狭いから自分だけ縦に寝る、と言い出す人までいて講師が「これで狭いって言われちゃあなぁ」というほど…

私がクラスメートたちに持っていた一種の尊敬、「私がいちばん経験も体力もなく足を引っ張るんじゃないか」という気持ちは連日の経験でガラガラと音を立てて崩れて行っていました。講師への尊敬の気持ちも一連の発言で持ちづらくなっていました。

そしてクラスメートが好意で持ち出してくれたのは…ガラスのワインボトルに入ったワインでした。それは私が前日の飲み会に提供しようと持ちこんだもので、山で使う予定ではなかったので当然コルク栓でガラス瓶。実はテント泊用には山崎のウイスキー白州を持っていたのですが、足を引っ張らないように軽量化で早く歩ける方が重要だと思って、装備から外したのでした。

■ 山岳会へのいざない

このテント泊の夜は、講師の先生たちが講習生のテントをそれぞれ回って、先生たちの山岳会の様子を楽しく話して聞かせてくれるのでしたが、それはやはり、今思えば、講習会だけでは体験ができるだけで何も学べない、ということを皆がわかっているから、ということだと思います。

立場を逆にすれば、山岳会への勧誘合戦ともとれるような感じでした。おそらく班分けも講習生の居住地に近い会に属す講師が選ばれていたのだと思います。

けれども話に聞く山岳会はどこも高齢化で、若い人に求められている役割は、高齢の山初心者の入会者をハイキングの山に安全に連れて行くということのようにも感じさせられました。

■ アイゼン歩行

翌日、雪の斜面でアイゼン歩行の練習、滑落停止の練習でした。

が、この時も講師はあえてゆっくり歩いてくれたと思うのですが、後ろに遅れず付けるのは私だけでした。ザックは降ろして歩いているので、そもそも、これは年齢や単純に体力が問題だったのかもしれません。

山では強いほうが当然エライです…が、ちなみに私は、親しくしている山の先輩(ガイド)からは、「40代女性の平均的な強さ」と言われていて、私が特別に他の人より強いことはありません。私のこれまでの人生を振り返っても体育が5なんてことはなかったわけで、体力自慢ができるような人では私はありません。

結局、私たちの班は、この時、「歩き方」に講習の的を絞りました。私は今でもこの絞り方はとても的を得ていて、的確な指導だったと思います。

何しろ雪山では滑ってから止める技術なんかより、そもそも転ばない技術の方が重要です。

この時、講師に上手にできている歩行とそうでない歩行を指示してもらったので、私はキックステップについてはできているものとできていないものを選り分けることができます。できていない人は見たら分かります。足を出すタイミングが早すぎるのです。

そういう感じで、この講習会では私は得るものと失うものがありました。

≪得たもの≫
・キックステップなどの雪上歩行スキル
・軽量化への確信
・モンベルアルパインパック60S

≪失ったもの≫
・ガチャ類への憧れ
・男性の強さへの信頼

ただキックステップについて教えてくれた講師には今でも本当に感謝しています。

■ 「知らないから教わろうと思ってきてるんです」

このようにして私の山岳総合センターリーダー講習は始まりました。このすれ違い… 

おそらく、主催者側からの都合からすると、ホントに班分けというのは難しいものなのだろうと思います。

そして、講師の方も、別にいじめようという訳ではなく、リーダー講習を受け持つわけですから、講習生に対する期待もあったでしょう。実際経歴などをみると遭対協などで隊長を務められている方でもありますし、立派な山ヤさんです。

お互いの期待が掛け違っていた、というだけなのではないでしょうか…

一方で、私は全くの未経験者という割には勉強熱心な登山者なので、知識と、知識でなんとかフォローできる部分では、登山歴の割にあまり後れを取っているわけではありません。

が、経験が必要なロープワークなどに習熟を求められても困ります…機会がないとできないことはやはりできません。

受講者それぞれは、何ができて何ができない状態なのか?キックオフの飲み会よりも、講習会ではそういう土台のところの情報をすり合わせした方が良いような気がします。

一般に登山者は、未組織である限り、ロープワークが出来る人はまずいません。例えジムでクライミングをやっていてグレードが高くても、エイトノットでアンザイレンする以外の必要がありません。

クローブヒッチも、ムンターもリーダーとして山行をひっぱり、弱い人を安全に通過させるためにフィックスロープを張ったり、懸垂のために支点を作ったり、弱い人をローワーダウンさせたりしない限り必要がないからです。

一般登山者と山やとの隔たりはまずはそこにあります。けれども逆に言えば、そういうことがすでにできる人は講習会に参加する必要はないわけなんですよね。

「知らないから教わろうと思ってきてるんです」というわけで・・・

■ すれ違いの出会い

昨日、私は富士山の講習会では初心者マークではありませんでした。

今更、最初のステップに戻るというのもまどろっこしい…というわけで、素晴らしい山の先輩たちがいるこの山の会とは擦れ違いの出会いになってしまいました。4月に入るべきでした。

それは要するにリーダー講習で初心者マークだったからです(笑) リーダーのための講習なのに(笑)

誰しもに初心者マークの時期があるのは当然であり、それをどういった環境で迎えるか?でその人の登山姿勢や登山ライフは決まってくるのかも知れません。

昨日はピッケルを持つのも初心者の人がいましたが、縦走用ではなくて、バリエーション用にシャフトが曲がったピッケルを持ってきており、それがずらりと登攀具をぶら下げていたけれど、一番たくさんの荷物を担いでくれたけれど歩くのが遅く、スリーピングマットが二重だったクラスメートと同じピッケルだったので、擬似登山者のように見えてしまいました・・・人の先入観とは恐ろしいものです。そのピッケルは今市場で人気なのだそうです。でもシャフトの曲がったピッケルは滑落停止にはむきません。

自分たちで登っている頃・・・石づきにプロテクターがついたまま(笑)
昨日講習を受けた山岳会は誰にでも門戸を開いており、講習会は何度でも参加できます。

つまり、入会基準が低く設定してある=誰でも入れる=下積み期間が長く設定してあります。

山田哲哉さんの本にありましたが、山登りは「歩けなくっちゃ話になんないんだよ」だからですね。

体格が大きくて、体力があることが明瞭な人はデカい態度をとります。でもその態度でその人の山理解度がイマヒトツだと言うことが分かります。

なぜなら、実をいうと、歩けるだけでもダメで、判断力が要るからです。体力だけでは遭難死してしまいます。山は賢くないと歩けないのです。

さらに、実は判断力だけでもダメで、判断力を研ぎ澄ますために豊富な経験が要ります。だから豊富な経験を積むには、安全の傘が必要で、山岳会に属して経験を積むわけですね。というわけで、年を取って体力が下がり若い人ほど歩けなくても、判断が的確なリーダーは非常に価値があるわけです。
体力がある若い人がラッセル頑張ってチームに貢献するのは、判断力がない代わりです。

さらにいうと、登山者として成功するためには、経験がただ長いだけでもダメで、人格が要ります。山は助け合いだからですね。リーダーって基本的に一方的に損をしている立場です。なので誰も苦労をわかってくれないのが結構普通だったりします・・・気の毒ですが、そこまで来てやっとスゴイ山やってわけなんですよね。

■ 幸福な出会い

私はその「まずはあるけなくっちゃね!」の初心者としての時期を特急モードで過ごしてしまったようで、去年の今ごろとの知識差には自分でも驚いてしまいます・・・先輩としみじみ、成長を感じていました(笑)。

なぜなら、私はホントに何もかも初めてだったからです。この山の先輩との出会いは、本当にありがたい出会いでした。私の山はこの先輩が作ってくれたきっかけで広がったともいえます。

ロープワークを始めたとき、先輩は古いHMS式の環つきビナをくれました。大事にしています。

■ 今の課題

今は私がしたいなと持っているのは、ごくごく易しいルートでのマルチピッチです。支点を作るためには色々な自然条件の中で経験してみないといけないので…

・・・というわけで、12月、一年を総括する時期の今、今年の出会いは色々であったなぁと振り返っています。

山を学ぶと言うことは、ある程度は運命の流れに身を任せる、そんな心づもりも必要かもしれません。

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