Tuesday, December 17, 2013

2つの雪上訓練

私は今年、4月と12月の二つ、雪上訓練を受けています。

人生において一年に2度もセックンを受ける機会はそうないのではないか(笑)?ということで・・・・

内容について新鮮なうちに学んだことを書いておくべきだ!と思い立ち、まとめておくことにします。

雪上訓練は、未組織の一般登山者にも、とっても人気がある。やはり技術が身についていないことについては、登山者側には少し後ろめたい気持ちがあるのではないでしょうか。

■ 4月の雪訓

ロケーション: 扇沢 大沢の急斜面
日程: テント泊合宿と組み合わせた1泊二日
雪質: 多雪・軟雪・温暖(13度)
コンディション: 悪天候降雪の後のピーカン (つまり雪崩警戒あり)

講習内容:
扇沢 4月
・テント泊合宿: 適地を選ぶ、整地、設営、生活技術、
 ・食当: この時期に食べやすいものを揃える、軽量化など。

 ・雪上訓練:
  1日目 4人1チーム、講師一名 に分かれ、
 
  スタンディングアックスビレーのデモンストレーション
  フィックスロープ設置のデモンストレーション

  急斜面での懸垂下降 (支点は講師)演習
  フィックスロープの通過

  2日目
   ・急斜面に移動して歩行練習
   直登 (ハの字)
   直下降 (含: 駆け下りる)
   フラットフッティング(アイゼンの爪を全部かませる)
   キックステップ(つま先だけを使う)
   アイゼンあり、無し(軟雪のため)
   斜登降(クロスレッグ)
   トラバース(スリーオクロック)
   ターン(ピッケルで自己確保してから進行方向を変える)

    ※各自が出来るようになるまで。ただどれだけ指導してもできない人もいた。

   ・滑落停止技術

   尻もち態勢から(仰向け)
   うつ伏せから
   頭が下の仰向けから (スタートは補助で誰かに足を持ってもらう)

    ※各自が出来るようになるまで。ベントシャフトのピッケルの人はやりづらい。
    滑落停止ではつま先を蹴り込んではいけない。停止後立つときピッケルで自己確保してから。
  
   ・帰路はグリセード、またはシリセードで。各自。

感想
 4人の講習生を一人の講師が受け持つ少人数が良かった。軟雪のため、滑落しても自然停止する状態。 雪上の平でない場所にカッティングせずにザックを置かないなどの雪上での一般的な注意点。ザックが滑り出すため。休憩中の体制も斜面に体をどうおくべきか、など。とにかく斜面では滑り出さないよう細心の注意を払う。

 小規模な雪崩が多発したので、そのたびに行動を中止して、雪崩の経過を注視する。

■ 12月の雪訓

12月 富士山佐藤小屋付近
ロケーション: 富士山 5~6号目の緩斜面
日程: 登山口前泊つき1日 15時下山
雪質: 少雪・固雪(-10度)
コンディション: 寒冷・強風 

講習内容:
・雪山ウエアリング、装備一般知識: アイゼン、風対策、防御について。

・雪上訓練:
  佐藤小屋まで: 20人1チームで登る。
             早朝のヘッドライト歩行。
   途中でアイゼン装着。(安全なところでつける)
 
  佐藤小屋から: 2チームに分かれる。初心者チームとその他。10名前後で講師2名。メインとサブ。

  ・アイゼン歩行 
   斜面に移動して歩行練習。斜面は固く閉まった雪質。最中雪の表面の固いもの。
   
   直登 (ハの字)
   直下降 (アイゼンあり、なし)
   フラットフッティング(アイゼンの爪を全部かませる)
   フラットフッティング(アイゼンなしの場合を体験)
   アイゼンなしキックステップ(つま先だけを使う、かかとで降りる)
   フロントポインティング
   
   斜登降
   トラバース(スリーオクロック)
   ターン(ピッケルで自己確保してから進行方向を変える)

  ・滑落停止技術
   ピッケルの持ち方
   初動停止
   尻もち態勢から

  ・耐風姿勢

・感想
 アイゼン歩行に注力した印象だった。滑落停止は初動停止と尻もち体制からの2点。あとは自己判断で。 滑落してからのことより、滑落しない術が重要なので良いことだと思った。 固い斜面でアイゼンを外して歩く、アイゼンつけて歩くを歩き比べし、歩行スタイルが全く異なることを実感させるのが良かったと思う。 
装備についてのシビアさは、時期の関係上、4月より、よりリアリティのある設定でした。その分、装備から不備な初心者には向かないと思いました。

■ 初心者への対応がいちばん難しい

4月の講習会は山岳総合センターの講習会で、講習会に参加すること自体に山行履歴の提出が必要です。

12月の講習会は無名山塾の講習会に出たもので、山行履歴に関係なく誰でも参加できます。

4月:  選抜あり ・ 講師レシオ 4人:1
12月: 選抜なし ・ 講師レシオ 5人:1 (10人:メイン・サブ)

講習内容そのものには大きな差はありませんでしたし、受講生として身に付く内容にも差はないように思うのですが、講習の組み立てや方法論には差がありました。

12月の講習は、誰でも参加できるため、事前の案内が非常に丁寧でした。たとえば、「ピッケルバンドやアイゼンのサイズ調整、アイゼンの着脱方法は、事前に各自で、ご確認をお願いします」と事前に配布された案内に書いてありました。

しかし、これらはあまり効力はないようで(笑)、前を歩く「今日初めてピッケルを持ちました」という2人のゲスト参加者(中高年女性&男性)のアイゼンの紐が長すぎるのが、私は気になって仕方ありませんでした(笑)。(ちなみに私もゲスト参加者です)

紐を2人とも踏んでしまいそうでした。実際、アイゼンが緩んできてしまっていました。理由は、2人とも冬靴でないので、甲が低く、アイゼンのプラスチックバンドにゆとりがあるからです。夏の縦走用の靴との相性で、夏靴ではアイゼンの選択肢は狭く、プラバンド式のみになります。それだと、どうしても紐を引き締める力で靴とアイゼンを固定することになる。すると緩むリスクがあります。

一方、4月は気温が高く、こうした装備の不備については、許容範囲が広いと思いました。まぁ選抜されて参加している上、GWなのに厳冬期と同じ装備で来ている人が多く、装備過剰なくらいだったのです。

気温のことを考えると、誰でもOKのセックンは4月に行い、12月は少なくとも冬靴を購入している人のみに絞った方がよいのではないか?と思いました。実際、この会は6本爪軽アイゼンでのセックンの参加を断っていました。当然ですよね。

この面における私自身の意見は、少なくともセミワンタッチ程度がつく冬靴を用意しない受講生の富士山セックン参加禁止です。(そうするとローバータホにBDセラックをつけている夫は参加できなくなりますが(笑))

厳冬期以外のセックンでは、そう厳しくする必要はないと思います。(ロケーション的に安全地帯が近ければ、多少の失敗はさせる方が身に付くのかもしれません)

そう思う理由は、初心者は着脱に時間がかかりすぎ、アイゼンが外れるリスクが大きすぎるからです。講習中に外れれば、良い勉強になりますが、講習参加で自信をつけ、そのまま雪山に出かけて行き、外れてしまったら…と考えると怖いです(><)。自信が怖いのです。

■ 自覚力

初心者の参加者は、(行動からうかがえる身についている山スキル)と(自分が思っている登山者像の差)が大きすぎると思いました。(偉そうにすみません m_ _m)

自分が何ができて何ができていないか?それを客観視する精神的ゆとり、はなさそうでした。

ただ私も実は軽アイゼンで天狗岳に登った人ですので(笑)、人のことを言える立場ではありません。

一般的に、自分でリスクの低い低山から登ってきて、怖いと思ってから、参加する参加者のほうが同じ講習内容でも良く学べるのではないかと思いました。

たとえば、男性の初心者の方はアイゼンを脱ぐのに手間取っていたので、タブを引っ張ることを教えて差し上げました。この方はアプローチの登山道では左のアイゼンが靴にあっていませんでした。

装備の着脱は家でやれることですが、(それにやってこいと指示までされていましたが・・・笑)

 ・指示を受けても、やってこなくて、イキナリ本番となり、まごつく人が多い
 ・それが反省に結び付かないことが多い

という不思議な現象だと思いました。

それはやはり、雪山に行くのだ!という喜びの方が勝ってしまって、その喜びが反省の気持ちを打ち消すからではないかと… うれしいのは本当に良いことなのですが。

そう思うのは夫がそういうタイプだからです。うれしい!とか大きな感情の起伏があると、細部には目が行かなくなってしまいます。

こうした細かいことは初心者の人は怠惰でやってこないのではなく、大切さがよく分からない、認識できていないだけだと思います。手袋をしたまま、アイゼンを付けることができるか?などは念頭にないと思います。

初心者の時は(もちろん、私もその時期を過ごしたのですが、たぶん、はしゃいでしまって)、そうした細かな注意点は聞いても耳に入らないものなのではないでしょうか…

そうなると次にくるのは、意識を高めてもらうにはどうしたらよいか?ということになりますが・・・

■ ヤマレコは客観視の練習

その面で、私はヤマレコに初期のころから山行記録を残す癖をつけていてよかったなぁと思いました。

話は少しそれますが、ヤマレコなど”文章を書く”という敷居が低いメディアで、記録を残す癖をつけると記録をしたいがために、山行中に観察力が上がります。

観察するためには、自分にゆとりがなければなりません。実際、アップアップの山では、ヤマレコ書けません。

なのでヤマレコでは、登頂の喜びを書いても、やっぱり多少の反省にも気が付くようになるわけで、モノを書くということは、自己を客観的に見る、という練習になるのだと思います。
疲れると足を置く場所を選べなくなる

今回、女性の初心者の方と男性の初心者の方がいらっしゃいましたが、私は男性の初心者の方には、すこしアドバイスらしきものをしました。

私ごときがおこがましいのですが、分かることは教え合うのが良き登山仲間かな、と思ったので…。たとえば、かかととかかとが近いよ、などです。

女性の方にはしなかったのは、あまりにもすごくうれしそうだったからです。

たぶん言っても頭に入らないと思ったからです。嫌な奴と思われて、終わりでしょう…

今回は体調不良の人がいたので、2時間の道のりを3時間かけて歩いたので、アプローチでは少々誰もがゆとりがありました。

しかし、アプローチから歩き方の練習と思う人は少ないようでした。

じっくり歩ける良い機会だったのに。私はアプローチでも雪面を歩くことの練習になると思いました。

夏道が冬道の練習にならないと言うことはありません。それが分かるのに4年かかりました(汗)

要するに、アイゼンがあっても、なくても、要点はどこを踏めばブレーキが良く効くか、ということなのです。

■ 受講生の選抜はしてもしなくても同じかもしれません・・・

話は戻りますが、4月の講習ではさすがに着脱が問題になる段階の人はいなかったと思います。

4月に印象に残っているのは、雪の上で休憩するときにザックの向きや、カッティングして足場を作ってから、休んだり、ザックを置くことを口うるさく言われたことです。ザックが滑り出すからですね。

また確保を取らないで、ターンしたり、斜面に背を向けてターンすると注意を受けました。ただ富士山のように固い雪だと、ピッケルが刺さらないので、ピッケルが自己確保のツールだと言うことはちょっと認識しづらいかもしれません。

4月の講習はレシオが4:1だったので、ひとつひとつの練習が長い時間できた、というメリットがありました。

4月と12月の講習の差は大雑把にいってしまえば、

(誰でも受け入れることにして、オーバーオールな説明をする) 

vs

(ある程度選抜した相手に対して、ピンポイントな説明をする)

だと思います。

ただどちらにしても、受講生の質は選抜してもしなくても似たり寄ったりになっており、結局のところ、方法論に差をつけても、講師としては、やることは同じで、同じ手間がかかるのではないか?と思いました。

そうだとすると、少人数にした方が講師自身が楽かもしれません。

■ 雪山では滑落しないことが重要

年で2度もセックンを受けることは人生でそうないのではないか?と思います(笑)。

私がイメージする、ベストなセックンは、机上と実習の2本立てです。

まず机上講習は、実際の装備を持ってきてもらいます。

そこでディスカッション形式(ブレインストーミング形式)で、現在日本でもっとも厳しい冬山であると思われる厳冬期、雪と氷の富士山で滑落の原因になると思われることを上げてもらいます。

こんな感じです。

講師:「雪山における滑落・転倒の原因と思われることを各自挙げてみてください」

生徒:「転ぶ」

講師:「なぜ転ぶのですか?」

生徒:「えーと… アイゼンの爪を岩にひっかけたから」

生徒:「躓いたから」

講師:「何に?」

生徒:「うーん…アイゼンの紐とか?」

講師:「いいですね。ほかに転ぶ原因は?」

生徒:「アイゼンをつけていなかったから、とか(笑)」

講師:「いやあるんですよ~冗談ではなく。ではアイゼンつけていなかったのはなぜですか?」

生徒:「持ってくるの忘れた。」「めんどくさかった、とか?」

講師:「そうそう」

講師:「アイゼンの着脱はとてもめんどくさいものです。-20℃で風速8mだと体感じる温度は-28度ですよね。 ー28度で手袋なしでアイゼンつけることはなかなか難しいでしょうね。どうしますか?」

講師:「着脱がいい加減でアイゼンを落としてしまったと仮定しましょう。どうしますか?」

…などなど。基本的にピンチに陥るケースを生徒側には想像してもらう。

ここに滑落死した人の映像でもあれば、効果抜群。

私が思うには、「想像する」というプロセスをすっ飛ばしていきなり山に来てしまう人が多い

「想像」のプロセスがあれば、悪い想像には備えるし、良い想像にはもっと楽しみの要素を多くできます。

それに、「想像」の愉しみがあれば、登山がもっと楽しくなると思います。

装備も同じです。実際のウエアからギアまで持ち寄って、予想される環境にふさわしいか確認し合えば、アイゼンの紐が長いまま来てしまう人はいなくなると思います。

そして、実習では、「想像」と「実際」がどうだったのか?を学ぶ。

帰りは吉田うどんでも食べながら、最初の想像とどう違ったのか話し合っておしまい、です。

■ 今回の私自身の学び

今回は、やぶれても良いような安物ヤッケを着ていたのは私一人でした(^^;) 最近のセックンでは、ヤッケはやぶれないモノのようですね(笑)

みんなのウエアがスタイリッシュで素晴らしかったです。

私はバラクラバをつけるタイミングで悩みました。1合目でつけるのは樹林帯歩きで暑すぎるだろうと思って、つけませんでしたが、ベテランたちを見ていると、みんな1合目からつけていたので、つけていてもよかったのかも。

ウエアの調整は5合目の佐藤小屋でするつもりでしたが、佐藤小屋付近ではあまり休憩する場所がなかったです。

あとはウエアリングは正解でした。今回は滑落停止などする=動きが大きい=ソフトシェルということで(風にもソフトシェルの方が強いです)、さらに気温が高そうだったので、下は吸汗・発汗をメインに考えました。ウールのアンダー、夏のアンダー、R1、+ソフトシェルでおしまい。

前日生理が始まってしまい、血流量が減ると冷えると思ったので初めてズボンは最初からオーバーズボンをはいたハードシェルにしました。今までは冬ズボンの上にレインウェアを重ねていました。

オーバーパンツをはくと下に化繊フリースのタイツを重ねるのですが、これはあんまりあったかくない!別に寒くはなかったですが、このフリース系は沢向きだなと思いました。

反省はソックスで冬用の最厚手でしたが、実は沢で使うネオプレンの靴下を試してみたいとおもっていたのに、夏用は仕舞ってしまって探すのが面倒だったので使いませんでした。

懸案だったアイゼンの爪はけっきょく研ぐのが大変だと言うことがわかり、研がずに参加しましたが問題なし。

風が強そうなのでサングラスよりゴーグル。装備が軽くてゆとりがあったので、サーモス(お湯)は2本。+ペットボトルの真水とで1.5リットルはちょっと多かったので、結果ちょうど良いくらいでした。

行動食はメロンパンでしたが、これは普段食べているバームクーヘンのほうがよかったです。メロンパン、カサカサになってしまいました。

そんなこんなで、15時下山、帰りはゆとりがあり、吉田うどんで一人祝杯?を上げ、16時半には自宅に帰着していました。帰ると甲府でも木枯らしが吹き、家の前のイチョウの木の葉がすっかり落ちてしまっていました。

一日家にいた夫からみると、こんな寒い日によくやるね~という感じだったみたいで、ぬくぬくのソファでまったりしている彼は「昼ねしたら~」。 

そんな講習会の一日でした。

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