Tuesday, October 8, 2013

アコンカグアの遭難事故訴訟


こんなニュースが入ってきて、びっくりしています・・・

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置き去りにされ凍傷 宮城の男性、ガイドを提訴

河北新報2013年10月8日(火)06:10
 南米最高峰のアルゼンチンのアコンカグア(6960メートル)から下山途中、壊れた小屋に置き去りにされるなどしたのは安全配慮義務違反だとして、宮城県内の男性が7日までに、甲信越地方の国際山岳ガイドに約7279万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。山岳ガイドによる海外での登山事故をめぐる訴訟は全国で初めてとみられる。
 訴えなどによると、ガイドは国際山岳ガイド連盟の認定を受け、公募登山隊を企画していた。ことし1月、アコンカグア山頂から下山中の午後6時ごろ、降雪の中、標高6500メートルの高所にある壊れた避難小屋に男性を置き去りにし、1人で下山したとされる。
 男性はリュックサックをガイドに預けており約18時間後に救助隊に救出されたが、凍傷で両手指が壊死(えし)し、全てを切断した。
 男性側は「悪天候なのに登頂を中止しなかった上、途中で引き返さず、直ちに救助しなかった」などと主張している。
 ガイドの代理人は争う姿勢を示し「事実関係や反論を整理している」と述べた。
 国際山岳ガイドを認定する日本山岳ガイド協会(東京)によると、現役で活動する同ガイドは30人程度いて、技能は国内最高レベルとされる。
 協会の担当者は「5月にガイドを呼んで再発防止に努めるよう厳重注意した」と話す。
ーーーーーーーーーーーーーhttp://t.news.goo.ne.jp/news/885024 より引用
太字は私が付けています。疑問な個所です。

高所登山・・・イモトが頑張っていますよね。登山とは本質的にどういうことなのか?ってホントに一般の人には知られていないんだなぁ・・・とこちらのサイトのコメント欄を見て思いました。

http://blog.livedoor.jp/gachi_aniki/archives/32910688.html

イモトのあれをみたら、簡単に思えてしまっても仕方がないなーと時々思うのですが・・・ 具体的なリスクは語られず、根性があれば、だれでも行けそうに思えてしまう反面、誰からも100%”すごい”と、一点の曇りもなく、褒めてもらえる・・・全肯定。

私が思うには、海外の登山は、日本の登山と違って、ハイキング、トレッキングと、登山(マウンテニアリング)がきっちり別れているんではないか?とおもいます。 日本だとトレッキングの延長線上に登山があるので、登山の価値観を理解しないまま、トレッキングの延長で登山に赴いてしまう・・・ 同じ感覚を海外の高所登山に持ち込むとダメなんだろうなぁと思いました。 登山の価値観と言うのは、リスクについての理解ですね。 

アコンカグアと言う山を知らないので、簡単に検索してみました。なんと無雪期では個人で登っている人がヤマレコに投稿しています。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-259774.html

季節も同じくらいなので、なんとなく山の様子が分かります。雪山遭難でイメージするような白い山じゃないんですね。南ア全山縦走とアコンカグアでは南ア全山縦走のほうが体力要りそうです。

しかし、安いなぁ。飛行機込40万円で行けるなら、大学山岳部のような若い人はどんどん行ったらいいですよね。私は個人的に南米は治安が怖いから海外旅行での行き先にそもそもならないですが。

ともかくこのヤマレコが示すような山ですね。 1月のアコンカグア。(正月の北アのほうがよっぽど怖いような・・・?)

海外登山はツアーも豊富なので、こちらに参考になります。

アコンカグアは易しい山か?
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/1674/nanbei/aconcaguaetc.html
http://www.patagonia-guide.com/acn/acn-info/acn-faq.html

要するに、アイゼン、ピッケル、体力は必要だが、アイスクライミングは必要ない山のようです。まぁ単独で登っているくらいだし。

ちょっと登山をかじる程度の私でも、アイゼン・ピッケル止まりの人と、冬壁までやる人との間に横たわる深くて大きな技術の壁は分かります・・・

いわゆる山ヤ道は、ロープが要る山に登るようになって始まります。クライミングしない限り、いらないんですよね、ロープワーク。そういう意味で、アコンカグアはロープワークが要らない、歩くだけで解決できる山のようです。

私はアイスクライミングは体験止まりですが、歩くだけで解決できる雪稜歩きとアイスクラミングでは、やっぱり相当に異なるスポーツでした。

そういう意味で、冬壁をやらない人にとっても、体力や高所への順応さえ怠らなければ、登頂できるかもしれない射程距離内に入る高所登山の山がアコンカグアみたいですね。

私も海外でも登山したいですが(普通のトレッキングの経験ならアリ)・・・、しかしなぁ・・・高所登山に向かうなら、もうそれなりの覚悟ですね。

≪疑問に思った箇所≫

・1月 
⇒ 夏ですよね?アルゼンチンは・・ http://latte.la/travel/place/argentina/weather

・下山中 6時頃 
⇒ 夏だから日照時間は長いのでしょうが・・・なんか一般的な登山では遅いのですが・・・ 

・6960mから下山中の6500mで 
⇒ たったの標高差460m?!・・・ほとんど降りていない。って、どういうことなんだろう? 

・悪天候なのに登頂を中止しなかった上、途中で引き返さず、直ちに救助しなかった
⇒ 登山者本人は「やめましょう」と言ったのかなぁ・・・大抵は逆でガイドが「辞めましょう」と言ってもお客さんの方が「行きたい」というケースが多いのですが。

・リュックサックをガイドに預けており 
⇒ ザックをガイドに持ってもらっていたというのは、通常はバテて歩けないような状態を意味しているんですが・・・どうなんだろう?なんでザックを置いていかないで持って降りたんだろう?

・18時間後救助 
⇒ 行動しないと冷えるので、保温や食料のことはどうしたんだろう?何も書いていないので分かりませんが、エライ時間がかかったんですね・・・悪天候だったからなのかな?晴天率の高い山のようなのですが・・・

・再発防止に努めるよう 
⇒ 意味ワカンねーって感じ。これでは、判断にミスがあったことを認めるようなものでは・・・ 遭難なんて、再発防止できないから遭難なんであって・・・ 最大限に考慮した結果ではないってことなのかしら?

でも”置き去り”かどうか?は主観の問題で、現に救助されているから置き去りではないのでは?

それにしても、楽しいはずの山で、両手の指が無くなってしまうなんて、本当に恐ろしいことですね。

登山は誰にでも始められ、日本では特にハイキングやトレッキングの延長にあり、リスクについて認識しないまま、ステップアップしていくことも可能になってします。特にガイド登山主体で、登山の判断を頼るままだとスキルがアップしているつもりで必要な登山判断力が付かないです。

なので、登山の価値観をしっかり教えてくれる人についたり、自分で勉強をかかさない、のが大事だと思います。

夏山の岩稜帯・・・たとえば不帰の嶮など、ちょっと怖いもの見たさくらいの気持ちで、「ツアーだから大丈夫」と出かける人が多いから、30人や40人のツアーが無くならないのだと思いますが、危険個所での転滑落で、遭難者を出しているのはむしろ団体ツアーです。団体だったり、ツアーでガイドがいると思うと甘えが出て、リスクの認識が、たぶん弱くなるから、だと思うんですね。

■ 悪天候と体力不足

このアコンカグアの遭難がリスクの認識が甘かったかどうか分かりませんが、この情報量の少ない記事からは少なくとも・・・

・悪天候の下で出かけたこと
・登山者の体力不足

の2点は伺われます・・・、それが今年夏山の小屋バイトで見た遭難と全く同じなんですよね。

・悪天候
・体力不足

遭難するのは団体ツアーが多い・・・標高2900mでも人は死にますからね・・・標高も、ガイドさんのスキルも遭難には関係ない。

うーん・・・ 天候は人間の力ではどうすることもできない事柄ですが、体力は・・・ガイド本人は生きて帰っていてなおかつ他人のザックまで背負っていることを考えると・・・いや何とも言えません。

ホントに山はなめてかかると怖いものですね。

まったく同じ条件の山でも、片方にとっては、余計な重さを持っても往復できる山なのに、他方にとっては両手の全指を犠牲にしなくてはいけない山・・・

≪役立つサイト≫
登山者はこうして遭難する~山岳遭難事例から学ぶ安全対策

私もそろころ、今年の冬山に向けて体力トレーニング開始しなくては・・・

4 comments:

  1. 昔ですが、アコンカグアに行ったことがあります。
    2月でしたが、当時の日記を読み返したところ、日没は9時とありました。
    ガイドはタイムリミットを決めて山頂に向かったと思いますが、18時に避難小屋というのは事情が解かりませんが、ギリギリでセーフというように思えます。
    「登山の法律学」を読むと、ツアー登山とガイド登山では同じような事例でも法律の判断はまったく違うとありました。
    ツアー登山の参加者はバスの乗客のように事故にあっても窓から首を出すとかしなければ落ち度がないと判断されるそうです。
    ガイド登山となると参加者は山の危険を知って参加したと判断され、ある程度の自己責任が科されると私は読み取りました。
    私の推測ですが、ガイドはこの客以外に何人かの客があったのではと思います。他の客の安全などを考えての判断だったと思いますが、事故者の危機対応力等を見誤ったようですね。
    18時間後の救出は夜に行動できないと考えると、遅いとは言えないと思います。

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  2. なるほど、夜9時が日没なんですね・・・

    日本では夜間救助はないですが、海外では異なると聞いています。 情報が少ないニュースですが、本当に両手の指を失うとはお気の毒な事件ですね。

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  3. 報道ですと置き去りになったから凍傷になったかのように書かれていますが、実際はすでに凍傷になっているので山小屋に避難させて他のお客をおろし、レスキューを呼びに行ったのでしょう。凍傷のリスクを見誤って登頂させたことが原因で全指切断の大けがになったのだと思います。7千メートル近い高所(低酸素)では同じ気温でも平地の数倍の凍傷リスクがあります。お客を凍傷にさせてしまうのはガイドの責任が大きいです。イモトアヤコは角谷ガイドが雪崩のリスクを考慮して中止させました。しかしこの判断が難しい。お客は高いお金を払って登る気満々ですからね。アコンカグアでの凍傷事故が多いのは低酸素での凍傷リスクに無知な登山者が多いからです。

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  4. 低酸素での凍傷リスク ですね。これは重要なポイントですね。低酸素状態に対する無知は、やはり日本の山にだけ行っていてはぬぐえないところでしょうから。

    それにしても、本当に遭難者はお気の毒ですね。 

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