■兜山・棚山南南西尾根
実施日:3月30日(月)
この山行は離山(はなれやま)が作ったご縁。離山は、山梨の中高年登山の頂点に鎮座する藪山だ。鳳凰三山の前衛の山だが登山道がなく、テントサイトもテント一張分しかない。登攀力とロープワークの素早さが必要であり、したがって山の総合力が試される。私自身は興味がないが、その離山の話題が出たとき、I川さんがちょっと行きたそうにしていたのと、行ったことがある人を私が知っていたので、二人をつないでみようと考えた。I下さんだ。
I下さんとお会いしたのは3年も前のツルネ東稜。私たちが天狗岳に登った時に、たまたまI下さんもいたらしい。すでに60代だったが強い人という印象。このツルネ東稜のとき、私と夫がラッセルで苦労している中、呑気に立ち話していたのが印象にあった。膝で固めるスタイルのラッセルもあるのよ、と教えてくれたり、つららアイスがあって、あれも登れるよ、と教えてくれたりした。私にとっては3年ぶりにお会いするI下さんだった。
連絡すると、ちょっと膝を悪くしているそうで、軽い山というリクエスト。それで、桃の花の季節だし、というので甲州高尾山はどうかとI川さんに打診したら、I川さんは兜山が展望が良いという。それで兜山。二人ともベテランなので、それ以上は詳細を詰めず、付近の地図だけ持って出かけた。当日は快晴で山日和だった。
1台の車に乗り合わせ、登山口へ。登山口についてから、「どこを歩く?」と相談する。兜山山頂を目指すと、あっという間に着いてしまうので、まずは太良峠へつながるコルを沢沿いにめざし、棚山を目指すことに。棚山から流れ出る長い尾根を南下し、夕狩沢に降り、再度少々の登りを経て、兜山の尾根に乗り直し、山頂へ。後は気分次第で、ということに意見がまとまった。全長12kmで一日にはちょうど良いかなというところ。軽い山だからか、I川さんはなんとアンクルウェイトつき!
歩き始めはだらだらとした林道。濁った沢沿い。例のコルまでは、前回の兜山に来た時は途中区間が逸れていたので、林道がつながっているはずで、今回はそれを確認できた。予想どおりの道だ。なだらかなので、自己紹介しながら歩くのにちょうど良かった。でも、みんなしゃべっているのに、ペースが落ちないのがすごい。
峠で一服。今日は暑い!みな暑いと言って、衣類をぬいだ。I川さんなんて半袖だ。そこから、棚山までは、登山道だし、あっという間だった。棚山で小1時間のランチ休憩をした。棚山からは勝沼方面が見下ろせた。I川さんが「もうちょっと先だったね…」と残念そうだ。翌週は勝沼はピンクになっていたので、ちょうど1週間早かったかな。
棚山からP1104までは登山道。私が先頭を歩いたら、うっかりほったらかし温泉への尾根に入ってしまった。これは、明らかな明瞭な踏み跡だった。踏み跡が方角を変え、下る一方になった時点でおかしいなと思い、引き返す。ピークと言っても、尾根の肩だから、見落とすこともある。5分ほどかな。
戻って、改めてコンパスを当ててみる。真南だ。ただP1104にはコブが二つあり、真南に出る尾根は2つ出ていた…P1104が縦に長い肩だったからだ。降りながら、左側をみると、もう一つ尾根があって、気が付く。先頭を行くI川さんに声を掛ける。「I川さーん、違った~、もいっこ隣でした~」「あと50m下れば、もう沢に付いちゃうなー」ま、どっちの尾根を使っても、現在地は分かっているので問題なし。この尾根は、明らかに使う”人間”はいない様子で、鹿の踏み跡一杯。何しろ急で、踏み跡がないので、立木につかまりながら、各自が適当なところを下る。「前に東北の人と藪山に行ったんだけど」「うん」「あっちの人の言う藪山って、本当に藪なんだよ、こんなもんじゃないんだよ」そんな話が出たような軽い藪山。
明るい南面の広い尾根で広葉樹だから葉が落ちていて、とっても明るい。気持ちがいいな~、けど、暑いな~と汗が噴き出る。尾根の最後の方は、植林になっていて、暗い影がとても涼しく、生き返った~という感じだった。まだ4月に入っていないのに。下から「沢あるよ~」の声。沢水が伏流から、水源になっている地点についた。ちょろちょろと細い水の流れ。飲めるのかなぁと言うと、飲めるでしょの返事。ちょっと飲んでみたかったけど、まだ水筒に一杯飲み物があったので辞めた。でも今日は冷たい飲み物の日だった。
地図では沢沿いに林道がある。それは確かにあったが、次は隣の尾根に出るための、はっきりした実線の林道があるはずなんだけど、これがないんだな(笑)。地図って、いい加減だなぁ。沢と沢の出会いになっている辺りに、古いジープが捨ててあった。「昔はここまで車で入ってこれたんだね~」今はとても車で入りたいような道には見えない。
そろそろ、徒渉して、あっちの尾根に乗りたいんだけどなぁ…。みなでウロウロとあるはずの道を探す。のは、実は半分で、道を探すの、めんどくさいから、地形を見て行っちゃえ~と思っているのは、三人とも同じみたいだった(笑)。ここで渡る? いやこっちで渡ろうよ。もうちょっと行って見る?相談しながら、歩く。そうこうしている間に、一人が徒渉完了、二人も完了。3人目も上がる。適当に土手を上がったら、これ道じゃない? 言われてみると、確かに踏み跡っぽい。けれど、地図の道は実線なので、踏み跡程度のことじゃないはずなんだけどなぁ。まぁいいか。使うか。
踏み跡は、尾根の末端を巻くように、北へ向かってから南に向かいなおす。ホントは、その南の尾根が乗りたい尾根だから、最初から尾根を目指して直登してもいいのだけど、傾斜を殺している方が歩きやすいのかもしれないし…仕事道があれば利用した方が早いし…と、とりあえず、道には添うてみる。が、だんだん枯れた沢になってきた。どうせ仕事道だから深入りする前に途中で尾根に乗る。・・・と、どんどん藪が出てきた。あら~?!また藪漕ぎ~?とりあえず、踏み跡らしきところを拾って、歩きやすいところを行く。けど、藪だし、足元は悪いし、こりゃ~大冒険だなあ…と思っていたら、I下さんが先頭に踊り出し、あれ~、若さの出番なし?なんか膝が痛いと言う話はどうなったんだろう?という活躍ぶりだ。I川さんはI川さんで、別の道を試してみている。I下さん、藪が終わったら、あっさり「道あったよ」。なんとなく"先頭どうぞ"って言葉に聞こえた。後はラクラクの縦走路を行く。ちょっとした岩稜的な味わいもあるが立派な登山道だ。私が先頭で、なんかスイマセンねぇ…歩きやすいところばかり先頭で。
途中で知り合いにあったりして、和やかな雰囲気で、兜山山頂に着く。展望台へ。「だいぶ木が伸びてきちゃったね~」「ホントね~。誰に言ったら切ってくれるのかな~」「中安さんに言えばいいんじゃない?」というような、他愛ない会話を交わしながら、長い休憩をする。I下さんは、20代のころから登山をしていたそうだ。バットレスの四尾根に話が及んで、「20代で行った時は全然怖いとは思わなかったけど、次に行ったらびっくり!よ~」「それくらい感じ方が違うってことよ」と教わる。確かにな~。私も何も知らない去年の今頃、三つ峠屏風岩、何も怖くなかったけど、瑞牆のカサメリ沢で滑落した後に、中央カンテをリードするのは、エライ怖かったもんなー。経験ってそういうことだよな~。
後は岩場コースで下山。岩場コースって、なんと鎖場が出ていた(笑)。ええ~?!今日の核心部?兜山の岩場って、こんな岩なんだな~と、半ば偵察もあって下山に使ってみたのだが、なかなか急で、ホントに岩場って感じ。岩を見ると、これってマジ登れるの~な感じだったが、終了点が付いていた。
最後に夕狩沢に降りたら、道がなく、右に行くか左に行くかで、右に行けば良かったのに、左にちょっと白いものが出口に見え、失敗。右には道はなかったのだ。それまで明らかな道だったのに。左に行き、どんどん駐車場から離れちゃうな~と気が付き、徒渉してガードレールを乗り越える。二人とも早ーい!私が一番徒渉に躊躇してモタモタしている…いや~経験ですね。徒渉点を見つけるのって。I下さんが「沢の位置を一つ向こうの沢と勘違いしてた、ごめん」だって…さすがベテランは言うことが違う、謙虚だ。こういうとき、間違ったと怒っちゃう人がいるんだよね。腹を立てても解決しないのに。
最後は5分ほど林道を歩き駐車場へ。さっき間違った道って、どれだったんだろうね~と言いながら、楽しく本日の山が終了した。ベテランと歩く山は楽しかった。私はこういう風に山を歩きたいんだよな~と思った。山をウロウロと徘徊しつつ、へぇ~、ここってこうなってるんだ~、へぇ~へぇ~と言いながら歩く。また楽しい仲間が増えて良かった。兜山は良い山だった。
≪記録≫
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2015/03/blog-post_81.html
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