■ 見聞の考察
私は夫と二人でハイキングの山から登山を開始しています。しかし、登山は教えてもらわないといけないこともありますので、ガイド登山を要所要所で入れて技術を補完しています。
そこで一般登山以後の、いわゆる”ロープが出る山”に関して、ガイド登山にまつわり、見聞きした経験談をまとめておきます。(地図読み&雪上講習は省く)
1)アイスクライミング
私はアイスクライミングはガイドさんの体験講習会に参加することで始めました。最初はアイスクライミングをしたいのか?もやってみないと分からないし、道具も持っていないからです。
何も知らないでネット検索で行っただけでしたが、この分野ではトップレベルの凄いガイドさんで、その後、登山の勉強をして、相手が超凄い人だと知りました(^^;)。
翌年、この講習会で会った人が、南沢小滝に誘ってくれました。とてもありがたいことで、感謝しています。しかし、作ってくれたトップロープ支点はプアなものでした。この時は他にもガイドさんがいて、監視してくれたので無事クライミングできました。
これらのことから、伺えることは何か?
どのような凄いガイドさんのガイド講習に出ても、支点作りは教わらない。したがって、いくらすごいガイドさんについて教わった人と一緒でも、ゲレンデクライミングも危ない、ということです。
誘ってくれて出かけたものの、登山計画書もなく、相手の住所や電話番号も知らず、誰が来るのか?も知りませんでした。
ということは、登山計画書の提出の重要性は認識していないということです。(でもガイドさんは出していると思います。それは裏方仕事なので、教えていないのでしょう。)
この時は、体重差がある人をビレイするので怖かったので、ビレイヤーの私のアンカーも取ってもらいましたが、位置が反対で、結局使わず、滝にだいぶ吸い寄せられてビレイしました。わたしにとっては、体重がある人のビレイは浮けばいいのだと分かって、結論的にはアンカーはイラナイと分かり、私のビレイについての知見が広まったので、経験値が上がり良かったですが、・・・
・・・誘ってくれた相手がアンカーのあるべき位置について知らない、ということは分かりました。
2)アイスクライミング・マルチ
同年、私はリードのビレイをマスターしなくてはならなくなったので(既にビレイ経験はありましたが)再度、同じガイドさんの、アイスクライミングマルチピッチ講習に出かけました。
すでに3度訪れたゲレンデだったので、クライミングそのものや残置支点位置も知っていて慣れっこでしたが、ガイドさんがどう支点構築するか?見たかったのです。このときは、講習生の華麗なクライミングにビックリしました。
一つビックリしたのは、マルチピッチ講習って言っても、つるべではなく、リード・フォローが固定だったこと。それと、PASのセルフはとるように指示されても、メインロープのセルフは取らないこと、でした。
支点の構築は大いに参考になり、大事にお手本として取ってあります。高いお手本代です(笑)
また、アンザイレンが、エイトノットをビレイループに結ぶのではなく、ラビット+安全環付ビナでした。それがビックリ。
・つるべはしない
・メインのセルフとらない
・アンザイレン方式が違う
3)アイスクライミングルート
アイスクライミングのルートに出ていると、よくガイドパーティと鉢合わせします…で、そのガイドパーティの中に友達がいました。
そのパーティは、滝上で支点に灌木が取れるところなのに、スタンディングアックスビレイをしていました。別にしっかりビレイできれば、どちらでもよいとは思いますが、私がセカンドで登る側だったら、通常の確保器によるビレイのほうがいいです…(--;) 選ぶ立場なら。 しかし、お客として連れて行ってもらっている友人たちにその選択権はありません。
・・・ということはどういうことか?というと、ガイド登山だと、安全確保について、嫌でも任せないといけない、ということです。
4)本チャンルート
本チャンに出かけたとき、一本のロープで三人のパーティが後続でした。ガイドパーティと思しき感じでした。トップは固定のようでした。
4峰のルーファイが間違っているようでした。しかし、連れられて行った後続の人は、そのことについて知ることがあるか?と想像するとないのではないか?と思います。
ということはどういうことか?というと、お客は、ミスから学ぶことができない、ということです。
5) リスク受容の差
例えば前穂北尾根の場合、山岳会だとアンザイレンは3峰からです。2級の場所は滑落リスクがあっても、アンザイレンしません。3級4級で、歩けるような所は、コンテ派の会もあるし、外す人もいます。どちらが安全と考えるかは、会の方針次第です。
しかし、ガイド登山だと、5・6のコルからずっとアンザイレンだそうです。これは別のガイドさんに聞きました。リスク受容の差です。
ですから、平坦なところで躓いて転ぶのも嫌な人は、ガイド登山か、そもそも山に行かないか、しかありません。
前穂の重太郎新道でもアンザイレンされて登っている人を見ました。安全な代わりに、4~5万円はかかると思われます。どちらがいいかは価値観の差です。
6)登山学校卒業の人
ちょうど登山学校で3か月の岩講習を終わったところ人と、いっしょに成長して行けるかな~と期待して、岩に行きました。
初めて一緒に行った三つ峠マルチで、リードのビレイで、リードクライマーを引っ張り落としそうになっていました…。ビックリ。怖くてビレイしてもらえません(汗)。著名なガイドさんの講習の卒業生です。
人は過ちを繰り返しながら成長するものなので、知らなかっただけ、と思いますが、指摘しても、ことの重要さが分からない様子でした。
・・・ということはどういうことか?というと、ガイドさんの岩講習に出たと言っても、安心できないと言うことです。それも3か月もの講習です。さらに大学山岳部出身です。
6)登山学校卒業の人
同じく有名なガイドさんのマルチピッチ講習を修了したばかり、ロープワーク覚えたて、という方と、易しい岩場で、マルチの練習をご一緒しました。
1回リードフォローして懸垂で降りただけですが、基本的な手順が分かっていません。でも、もしかして、初対面の人に対しては、気分が高揚して上がり症で、度忘れしちゃっただけかもしれません。そんな感じもしました。でも、山では冷静な人でないと困る…。
この時は、先輩たちが頼んでもないのに来てくれた・・・(汗)
・・・というのは、どういうことか? というと、初心者に教える目的で岩に行くときは、1対1では、命の危険があるくらい、危ない、マズイということです。例え知り合いのガイドさんの講習会受講済みの人でも・・・。
この方より、私の方が本当に勉強になりました。
・・・と、すぐさま理解したので、不安なマルチは辞めて、ずっと、完全に安全な、ショートのトップロープで、この日は遊びました。安全第一!
7)登山学校講習会の人
友人が都心の方の登山学校に行きました。岩講習が三つ峠。古タイヤを落としてビレイするなどしたそうです。
そこで、ジムへ一緒に行き、ボルダリングでウォームアップした後、リード壁で、5.7のリードをしてもらったら、1ピン目で落ちました。そこは落ちてはいけないところ。それも予告なし。もちろん止めました。
・・・ということはどういうことか?
と考えると・・・将来的に私のビレイも任せられないし、かといって、彼女がリードするのも、ありえない、ということです。
私はもちろん、一回の失敗だけで人を判断するような、狭量な人でありたくないので、別の機会にも、ご一緒しています。
・・・が、中間支点を安環付のビナでとるし、ビレイヤーのアンカーはとらないし・・・ビレイヤーのアンカーはパーティ全体の最後の砦です・・・。もしかして、教わっていないのかなぁ・・・。
・・・ということは、どういうことか?
というと、それらは私が教えることになりそうということです。が、ガイド登山歴が長い人だったのです。
・・・ということはどういうことか?
というと、私が言っても聞かないだろうということです。かといって、クライミングの本を読んで学ぶこともしなそう、とも聞かなくても分かります・・・。自ら学ぶではなく、教えてもらわないと教わらない、のが当然になっているだろう・・・と予測できるからです。
ということは、どういうことか?
・・・というと、この方に教える努力をしても、労多くして益無し、ということです。体力もあり、歩けて、年齢も近く、家も近いのになぁ・・・。テント泊縦走は一緒にしました。
■ まとめ
ガイド講習会等 山岳会
TR支点 ガイド任せ 自分たちで
アンカーなど ガイド任せ 自分たちで
スタイル リード固定 つるべ
メインのセルフ とらない 取る
アンザイレン ラビット+安環ビナ エイトノット直付け
ビレイポイント ガイド主導 自分たちで解決
ロープ構成 ガイド任せ 自分たちで解決
ルーファイ ガイド任せ 自分たちで解決
ビレイ力 期待されない 相手のビレイを確実にできないとどこへもいけない
常識 知らなくても死なない 知らないと命取り
常識と言うのは、1ピン目では落ちてはいけないとか、かぶっている壁で降りてくるときは下のピンから外して、2ピン目に登り返さないとグランドするとか、ビレイの立ち位置とか、ランナウトとは何か?とか、流して止めるべき時とは?などです。
これまで2年間に見聞きしたことで、総合して思うのは、ガイドさん主宰の岩講習会で教わることは、いわゆる山屋さんが新人に教えたいこととは、だいぶ、かい離しているのではないか?ということです。
登るのは当然ですが、みんなすごく上手です。山岳会の人は、よその会を見ていても、なんか下手くそが多いな~と思ったりします(笑)
ガイド登山では、お客さんが自立するとお客を失うことになります。
山岳会では新人が早く自立してくれないと、先輩も行きたいところに行けません。
ガイド講習の人は、エイトノットは知らないのに、ラビットは知っていたり、それがすごく上等のクライミングスキルのように鼻高々だったりします。ギアの知識もすごくて、最新ギアですし、丁寧に手入れしています。私もとても勉強になって感謝しています。
もちろんガイドさんは、最新のクライミング技術を教えてくれていると思います。が、ビレイや支点は教えないようです。守りの技術は含まれていないのでは?
一方、ガイドさんは結びの種類などは最新かつ細心です。
端的な例は、懸垂時のロープ連結です。オーバーハンドノット2個の連結、エイトノットの連結、ダブルフィッシャーマンの連結の順に古いです。
ガイド登山の人は、この辺を見て、「古い山やだな~ケッ!」と思っている節があります。
が、逆に、本人はとんでもないビレイ位置に立っていたりします。ガイドさんは落ちないから、墜落を止める経験は積めないからです。他のゲストのビレイをすることも、トップロープ程度です。
技術の古い新しいは、本質的な議論ではないです。古いのが不安な技術ではなく、新しいから良い技術ともいえない。
ですが、ビレイの位置は重要です。
新しいほうがより優れているのはロープでしょう。ガイドさんの講習会ではロープがいつも新品で感心します。
登山で危ない人は、攻撃力(登る力)はあって、防御力(安全を守る力)はない人です。車輪の両輪の片方だけがいびつに成長すると危ないです。
■ ガイドを判断する基準で先輩を判断してはいけない
懸念される問題は、山岳会がガイド登山風になってきていることです。
入会してくる新人の期待も、「連れて行ってくれる」ガイド登山的期待を山岳会に持って入ってきています。
山岳会の先輩側も、「どれだけすごいルートに連れて行けるかが、俺の実力さ~」とガイド登山的になってしまっているような気もします。
山岳会の新人に与えるべき、一番重要な心得は、一緒に成長して行くのだ、お客さんではないのだ、ということなのかも?
本来の山岳会のあるべき姿にふさわしいマインドセット、心得、というものを与えるのが、1年目の新人の仕上げ、成否のような気がします。連れて行ってくれない・・・と思っている人は山岳会は欲しくないのかも?
その意味でも、”連れて行く”のは、百害あって一利なし!ですねぇ・・・。ただ、初心者の場合、1対1では岩に行けないので、経験者が、一人監督でついてきてくれるのは、正しいあり方です。次回から二人で行きなさいって意味です。
大抵の先輩は、ついてきたいと言った後輩を自分が連れて行ける最高難度の場所に一度は連れて行ってくれると思います。
連れて行ってもらった場所に、自分の力で行けるようになるにはどうしたらいいか?と考えるのが正しい新人の思考のあり方ではないか?と思います。
≪追記≫
元相方から 「行きたい所に連れて行ってくれるから」 などと言った覚えは有りません。 幾つかある会の中から選んだ理由は 「僕が行きたいと思う所に行っているから」 とは答えたかもしれません。 誤解を与えたくないので,即時訂正して頂いて宜しいでしょうか? また、訂正した旨も記載して頂きたいです。 と言う指摘が有ったので一部削除しました。
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