■ 地味で本格的な冬山、鳳凰三山
先ほど18時に、2年連続の年末の鳳凰三山、忘年山行から帰ってきました。
鳳凰三山は行程のほとんどが樹林帯です。雪崩の危険もほぼなく、体力は必要だけれど、危険の少ない雪山です。つまり、地味な山、ということですね。
たとえば、鋭いピークがカッコいい八ヶ岳の赤岳などと比べ、ピークを極める派手さがないのに、稜線で、ふきっさらしにさらされる時間が赤岳ならせいぜい2時間、それも山頂とほぼ同じ場所に小屋がある、という山とくらべ、鳳凰三山は、一番奥の地蔵岳まで足を延ばすと、開始点になる薬師小屋から最低でも往復3時間は稜線の風にさらされることになります。山としては派手さがないのに、内容が本格的なので凍傷などのリスクはより大きいです。
鳳凰三山に登るほとんどの人が、登山口から5時間の南御室小屋で初日の工程を終え、翌日薬師岳ピストンで下山します。薬師岳小屋に足を延ばす人も観音岳で下山が8割です。
≪年末鳳凰三山タイプ≫
・初級 南御室小屋泊 薬師岳ピストン
・初級 薬師岳小屋泊 薬師岳ピストン
・中級 観音岳ピストン
・上級 地蔵岳ピストン (地蔵まで行く人は2泊する人も多い)
・上級 縦走後、御座石または青木鉱泉側に下山 (テント泊ならなおエライ)
・エキスパート 縦走後、甲斐駒へ(当然テント泊)
■ ついに鳳凰三山
私は去年は観音岳のパターンだった(鳳凰2山(笑)!)ので、今年は本当の鳳凰三山、つまり地蔵岳ピストンで下山しました。結構くたびれました。初日二日目とも、行動時間が長いからです。
最近、アイスクライミングなどには行ってはいても、長い時間を歩く山をしていなかったからですね。観音岳までしかいなかった夫も地蔵まで行った私も結構くたびれて帰りました。
でも、しっかり、温泉は入って帰ってきました。
≪今回の行程≫
1日目: 夜叉神In薬師小屋 5時間(南御室小屋まで)+1時間(薬師岳小屋まで)
2日目: 地蔵ピストン 4時間 +下山3時間30分(夜叉神OUT)
温泉: 定番桃の木温泉
■ 体温が下がるとうまく行動できない
しかし、稜線の風は体力を奪いますね。今回初めて、行動が低温のため制限されるということを理解しました。
今までも八ヶ岳などで烈風は経験しています。でも、風にさらされるのが一瞬(1時間とか2時間)なのでそんなに深刻な影響を体に感じたことがなかったのです。
今回は、頭はクリアなのに、体が重く、ダルく、自分の思った通りに動けないということを理解しました。
つまり、低体温症に陥るのは、奪われる温度と、体熱を作る速度との、かけっこなのです。私はしっかり体力があるのに、風の中を歩いていると、のろのろとしか行動できず、非常にもどかしく感じました。
自分でも驚くほど緩慢にしか行動できないのです。特に登り。下りは体重を重力に任せるだけなので、そんなに差は感じませんが、登りでは出るべきパワーが出ない感じでした。
毎日体操などをする習慣がある人は、日々の体調差が分かると思いますが、その体調が悪いときみたいな感じです。
女性なら、生理が重くてなんだか運動する気にならないときみたいな感じです。
この感じは稜線の風から逃れると、まったく起こらなくなりました。なので、やっぱり風の強さで、体の表面の温度が奪われていたんだと思うんです。
私の腕時計は―15度まで計れ、ザックのストラップにぶら下げて、胸のあたりにありますが、今回は温度の表示ができないくらいにまで下がっていました・・・(汗)
鼻が凍傷にならないか心配でしたが、なっていなくて良かった。バラクラバをかぶっていましたが、鼻水でしっとりしたのを額のゴーグルの上に挙げたら、数分で凍結し、その後かぶりなおしたらちょうど良く固いバリヤーになってよかったです。あのまま体温を拾って水分が溶けたままだと鼻の温度を奪ういっぽうとなり、しないほうが良いくらいのバラクラバになりそうでした。
■ 大快晴=強烈な寒気+強烈な風
今回は強い冬型の低気圧が入っており、29日まで大荒れ情報が出ていました。
さすがに大荒れ情報の日は外したのですが、すこし寒気が緩んだと思われるタイミングを狙って山に出かけたはずでしたが・・・、寒かった~!
真冬の寒気はとても厳しい。 そのことが良く理解できた山行でした。
≪予報≫
30日:冬型の気圧配置が緩み、上空の強い寒気も弱まる見込み。このため、晴れる。
ただ、稜線では次第に西風が強まる見込みで、主脈では夜には暴風になる恐れも。
警戒事項:暴風による行動不能・テント倒壊(夜)、強風による転滑落、凍傷
31日:弱い冬型の気圧配置で、寒気を伴う上層の気圧の谷が通過する見込み。
このため、午前は晴れるが、午後は一時的に雲が広がりやすくなる見込み。
稜線では西風が強い状態が続く。
◇2013/12/31 06:00
天気:晴れときどき霧
気温:-14 ℃
風向:西
風速:13 m/s
◇2013/12/31 12:00
天気:晴れのち霧
気温:-7 ℃
風向:西
風速:11 m/s
31日:等圧線が東西に寝たかたちの弱い冬型の気圧配置で、日中に寒気を伴う上層の気圧の谷が通過する見込み。このため、概ね晴れるが、昼過ぎはやや雲が広がりやすくなる見込み。
稜線では西風が強く注意。
警戒事項:強風による転滑落、凍傷
◇2013/12/31 06:00
天気:霧のち晴れ
気温:-14 ℃
風向:西
風速:13 m/s
◇2013/12/31 12:00
天気:晴れ
気温:-8 ℃
風向:西
風速:11 m/s
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上ヤマテンより引用ーーーー
この風速の予報だと、まぁ大丈夫かな~という気がしますが、今回は今までの冬山で味わった中では一番の強烈な風でした。私は稜線で3、4回吹き飛ばされそうになり、何度も耐風姿勢を取って風に耐えました。ああ飛ばされなくて良かった。(飛ばされても樹林帯に引っかかるだけっぽいですが、
それでも見つけてもらえないと死んでしまいますよね)
薬師岳~観音岳の間は、同じ稜線でも、風が穏やかなようで(穏やかと言ってもゴーグルの霜が凍る風です)バラクラバなしでもまぁ耐えれる範囲です。
ところが、観音岳~地蔵岳の間は、同じ稜線とは思えないほど、風が強まり、観音岳までの困難度を1とすると、地蔵岳まで行くのは難易度が3くらい上がります。
観音岳までなら、ぶっちゃけ誰でも行けそうですが(もちろん冬山経験者)、地蔵岳までは、
1)強烈な風に負けない強い心
と、2)雪山作法
・手袋を飛ばさないとか(そのためには紐がつけてあり腕にあらかじめ通してある)、
・稜線に入る前にフードをしっかりかぶる、とか、
・フードのドローコードを手袋をした手でも引ける、とか、
・氷結してしまって視界がわるくなってしまったゴーグル越しに足元を見てもしっかり気にせず歩ける、とか、
・あるいは、少しでも風が緩むところに入るまで、装備の調整はしないでもなんとななるとか、
・濡れた手袋で強風にさらされないために雪を安直に触らない、とか、
・手袋したままカメラの操作ができるとか、
・髪の毛をはみ出したままバラクラバしない、とか…
まぁ要するに非常に強い風にさらされる環境下で長い時間我慢して過ごす、という場合の雪山作法ができている人でないと、あっという間に凍傷になる、と理解できました。ちょっとの油断で。おっちょこちょいの性格は平地なら笑って済ませられますが、稜線では笑えませんね・・・
今回一人で地蔵岳までピストンしたので、この日はどうもこの区間を歩いたのは私が初めての人か、あるいは風でかき消されたかのどちらかであり、さらに風が強すぎて、雪さえ飛ばされて無雪状態のところが半分くらいなので、アイゼンで岩稜帯を歩くことになり、まるでドライツーリングのようです。夏なら色々岩を歩くのは楽しいけれど、風下はトレースがないし、風上は岩ですし、岩場を動きづらい真冬のまるまるとした恰好で分厚い手袋をしてストックを持っての歩き・・・岩にアイゼンをひっかけないように気を使いました。
垢ぬけ沢の頭が危険個所と聞いていましたが、危険は感じませんでしたので、ピッケルは持って行きましたが使用しませんでした。が、風で飛ばされそうで、アイゼンはつけました。なんとなく、重いほうが良いような気がしたんです。
雪の稜線での行動は、風が体温を奪う速度より、自分が体熱を作る速度の方が早ければ、寒くないわけですが、今回は朝食後すぐの行動と言うこともあって(食べると血流が胃に行き、末端に血が行かなくなる…)つま先が感覚がなく、ちょっと心配しましたが、帰ってたしかめると大丈夫でした。
ただこの稜線は、アイゼン不要、ピッケル不要です。知ってはいましたが、登山口で指導されると嫌なので、とりあえず持参しました。
そんなものより重要なのは、バラクラバ、ゴーグル、毛糸の帽子、インナー手袋、ごっつい冬手袋、暖かいボトムス、です。
■ 凍傷
実は登りでカメラマンのおじさんに会い、おじさんは両手の指3本、合計6本を凍傷にしてしまっていました。
私たちが登った30日より、前29日はさらに強い寒気が居座っていたのです。稜線では-25度ですし、強い風が吹く中、シャッターチャンスを狙って待つと体感温度は風速10メートルでも-35度です…(汗) このオジサンはベテランのカメラマンだったので防寒対策はバッチリなのに、です。どれほど寒かったか分かるでしょう。
今日31日の朝は予報では風速13mですが、風速13mで体が浮くことはないと思うので、稜線ではもっとあったと思います。
予報で下界の風速が風速25mの日に八ヶ岳権現に行き、無風だったことがあり、稜線上の風速と言うのは予測が難しいのではないでしょうか…。
今回は、北岳方面、八ヶ岳方面、甲斐駒方面は朝から昼までの間、雪雲の中でした。30日、31日両日とも、午後の方が快晴で、稜線はくっきり青空の中に浮かび上がり、陽の光を受けてまぶしいほど光り輝いていました。
せっかく地蔵岳まで足を延ばしたのに、甲斐駒君を拝むことができず残念でした…
薬師岳です。小屋から10分くらい。
スリッパ、長靴でもいけるくらいです。
このようにコル(風が強い地形)では、風に雪が飛ばされて雪がありません。
砂も花崗岩なので、滑りにくく、登山靴で歩けます。
薬師岳小屋。 小さくて好みです♪
今回はお泊り20人もいて多かった。
その分寒くない。
富士山と砂払い岳。
北岳方面は30日午後は快晴だったのに、31日朝は雪雲の中です。
ご来光。
強風で雪雲が舞い上がります。
下界はクリアに晴れています。
夫を残し、一人地蔵岳まで・・・
20人も宿泊者がいたのに、同行の友は誰もおらず・・・
こんな稜線です。岩ゴロゴロ。
テクニカルなところはありません。
けど、そもそも岩稜帯が嫌いな人は来るべきところでもありません。
今回も八ヶ岳は雪雲の中。
今回もというのは去年の同じ日も悪かったからです。
やった!地蔵岳。
甲斐駒は雪雲の中でした。
というか、雪雲がこちらの稜線まで迫ってきていましたので、さっさと帰りました。
今年は晴天なので、樹氷はないなぁ・・・
悪天候の後の方がやっぱり景色はドラマティックです。
台風などの前後がよいそうです。
薬師岳小屋。水が貴重な小屋です。
午後は良く晴れて、雪雲も千切れ気味。
日焼けしました。
こういう山は、サングラスとゴーグルの二つが両方いりますね。
夜叉神峠小屋。県外の人にとても評判の良い小屋で、お土産も持たせてくれるそうです。
お餅でしたが、山梨の家庭でよく作る、青のりとピーナツの入った甘いお餅です。