Monday, January 27, 2014

雪崩事故を防ぐための講習会 Day1

■ 週末は雪崩講習会でした

週末は雪崩の講習会に出ていたので、詳細をリポートします。

正確には、 

第21回関東ブロック 「雪崩事故を防ぐための講習会」 

が正式名称。  主催は日本勤労者山岳連盟 関東ブロック協議会です。 
こちらが去年のヤマレコ

山梨は関東にかろうじて入るのですが、谷川岳は遠い。”近くて良い山”、谷川岳は、”遠くて遠い山”…(汗)。朝は8:30集合でしたので、前夜泊で夜移動しました。

■アプローチ

Google先生によると、約250km、3時間17分で着くはずでした。
中央道から青梅経由で埼玉へ入り、関越道で行ったのですが、全部、高速道路でも、4時間17分かかりました…(汗)。朝は混むので、早朝移動はおススメできません。

前夜泊は土合の家でシュラフで寝せてもらいました(無料)。

■当日

朝は車窓から、日山協のほうの雪崩講習会が、駐車場わきの雪原でやっているのが見えました。


 我々は、谷川岳ロープウェーで天神平へ。

ロープウェーに乗車中も、雪崩の痕跡を目を皿のようにして探すべし!と講師の弁。

リスクマネジメント=

(リスクを認識する力) + (観察力) + (対応力)


(リスクは認識する力)がないと、対応力だけつけても、意味がない。

つまり、

(雪崩に遭ってからどうにかする力) < (雪崩れに合わない力)

ということです。予防が重要。


 天神平到着。

こんなお天気でした。高曇り。

時々日差しも出て、風はそよ風、平和な日です。

足元の雪もツボ足で。
 ビーコン、プローブはレンタルできます。無料。

私はピープスを借りました。

ビーコンを買う時の注意点:

① 手袋をした手で、ON、SEND、SEARCH に切り替えが楽にできるかどうかをチェックするのが重要です。

アンテナはトリプルアンテナ。

私は自動復帰モードはキライなタイプです。

機械系はおせっかいな機能は排し、シンプルが好みです。


 天神平からの眺め。

このようにのんびりしています。
 早速ですが、トマ耳、オキの耳直下の斜面は、岩が露出しています。

よく見ると破断面が出来ており、すでに雪崩があった痕跡があります。
 拡大しました。

ぼわーとした日だったので、写真だと見づらいですが、
肉眼だともっと顕著に破断面が見えます。

要するに、雪崩と無関係の山ではない、という意味です。

この山では、雪崩れは、すぐそこで、日常的に起こっているってことですね。

下が岩場になっているのは要注意です。

岩場=急斜面=雪がつきにくい=上部の雪の重さを支える支持力がない=雪崩れる

逆に、灌木や樹林だと、支えがあるので、雪が安定して、雪崩れにくいです。



気温は2度。あったかい・・・厳冬期とは思えません。

というわけで、体に着いた雪が水滴になってしまいます。
 まずは雪面観察に、ピットを掘ります。

掘る場所は、歩こうとする(滑ろうとする)斜面の代表となるのにふさわしい場所を選びます。

特殊な場所を選ばないように。

斜面の上部の平坦な場所が適地です。斜面に向かうように掘ります。(当然ですが・・・)

結構深く、180cmほど掘り下げましょう。3人で15分くらいかかりました。

この日はこの時点では顕著な層は出てきていません。

つまり、圧密がゆっくり進んで安定化へ向かっている状態。
斜度を図ります。 ここで13度ほど。私は5度くらいかと思いました・・・斜度の感覚はまだ育っていない・・・。

刷毛で雪面をきれいに整えていくと、層がより見やすくなります。
 10cmごとに割り箸を差し、食品用の精密な温度計で雪の温度を測ります。


大体40cmから下は、ー7度から0.1度下がっていくくらいで安定していました。

さらに雪面に、げんこつ、指5本、指一本、と刺してみて、

固さ

から、

弱層の存在

を探ります。 均一に見える雪にも層があることが分かります。 顕著な弱層はない、ということもすごく良い情報です。
 これは、CT(ショベルコンプレッション)テスト。

ショベルに切り出した雪の塊を乗せ、下から叩いて安定度を見ます。

崩れない安定した雪質。
 CTのための 雪柱を切り出し中。 30cm角で。

スノーソーがないとできませんので、スノーソーを買いましょう。

スコップの柄に内蔵できるものもあり、便利そうでした。

登山では、基本的な冬道は尾根なので、沢地形や斜面の下を歩くことはないし、雪洞泊もテントが軽い今、あまり利用されることはないと思いますが、弱層の判断のために、テストをするには必要です。


 これは、ショベルコンプレッションテストです。

スコップの面を斜面と同じ斜度で当て、上から荷重します。

1)そっと手首から下だけで10回たたいて荷重

2)肘から下で10回

3)方から下で10回


破断面が横につながって一気にはがれないか?がチェックポイント。

つながらず崩壊すれば、面発生にはならない。
 この日は非常に安定した雪でした。
 ああ~きれいだな~☆

谷川岳、普通に登山できそうでした。

人喰い山とか、魔の山とか言われますが・・・

谷川に通い詰める人は一ノ倉沢に通うクライマーさんたちなんでしょう。

それは海外の高い山を目指す人たちでしょう。

私たちはそういう山は目指しておらず、積雪期の雪山に快適に登りたいだけですが・・・

それでも、行き先は同じ山。同じ自然

クライマーか、ハイカーかで、天気が変わるわけではないので、知識としては同じものが必要です。

ただ、岩場に行く気はないだけで。

冬は尾根専門。(アイスクライミングも始めちゃったけど・・・(^^;) アイスは冬の沢登なので尾根よりさらに寒いし危険!)


 これは、簡易的な形式で、円柱テストです。

直径三十センチの円柱を手で掘ります。

手で掘れるところが優位性。

他の人がラッセルしていて、自分が暇な時などに、サッと掘ってみて、雪の安定性を見ます。
 背景が白なので見づらいですが、こんな感じ。

だっこするように抱えてみて、後ろからそっと叩き、ずれる面を発見します。

指の跡が付いてますが、雪の固さを観察した跡です。

ちなみに雪の結晶も、ルーペなどで観察すると良いのですが、この日は気温が高すぎ観察に不向きでした。

なにしろすぐ溶けちゃうので。それでも円柱テスト、CTなどでは、かなりただの白い塊って以外のことが分かる。
 これは雪庇の断面観察です。

奥に見えるのはガイドの雪山講習らしき一団。 こんな快適な雪面だと歩行練習にはイマイチだろうなぁと思いました。歩きやすすぎて、危機感ゼロになりそうです。

どれくらいフリクションが効くかというと、この2mほどの雪壁を高所恐怖症の夫が登れるくらいです(笑)。

この日は本当に安定していて雪庇が崩れる気配ゼロ。
 これは、最初に掘ったピットに戻り、プローブで人を探索した時の感触を知る体験。

刺しても、分からなかったら、意味がないので。

ヒットしたプローブは、残しておく。これ鉄則。

入ってくれているのは講師です。

肩とか、腰とか、ヘルメットとかで感触が違います。
 埋めちゃいます。
 救助犬ヒット君、雪崩れ埋没者を救助中!

3歳になるヒット君は去年より成長し、ちゃんと人を見つけたら、ワンワン!と吠えます。

けど、リーシュでつながれている間、通過する登山者に媚び売りまくり(笑)! 人間が大好きなヒット君でした☆

(実は人間を家来だと思っている模様・・・)

埋没者をプローブでヒットしたら、

スカッフ (左右 で雪を搔き)
コール  (おーい!と言う)
ヒアリング (耳を当てて聞く)

で号令で3名が同時に同じ動きをします。

基本的に3名でのコンパニオンレスキューのシチュエーションです。

 閉所恐怖症がない、それぞれの参加者が埋没体験をして、埋没したらどんなに暗いか、寒いか、怖いかを経験し、16時ごろ下山。


 帰ったら熱い風呂が待っていました。正直、熱すぎて湯船は10秒が限界。

夕飯は18時。なんとカニが出た!

カニ剥きスキルの差が出る瞬間でした・・・

美味しかったけど、ビールそっちのけでカニと格闘です!
19時からは、21時まで2時間みっちり復習です。

雪崩れのリスクマネジメントは

① 天候を2~3週間分把握し、天候から弱層の存在を予測する

② ルートの地形から、リスクを予測する

③ 弱層テスト結果から、リスクを予測する

の3つです。

まず

①で行くか行かないか判断し

②で行くか行かないか判断し

③で行くか行かないか判断し

さらに アバランチギア(三種の神器)を携帯する。

いくらアバランチギアが合っても、①~③で判断していなければ、リスクマネジメントしたことにはなりません。

そこのところが、アバランチギアがあるから大丈夫、などと勘違いしないことが重要です。

①は手間がかかり、めんどくさがりは省きがちですし、

②は地形図を読む力が必要で、勉強しない人は分からないですし、

③は教えてもらっていないとできません・・・

アバランチギアはお金がありさえすれば買えるけれど、重要な知識はお金では買えない価値、なのだ・・・と思った一日目でした。


≪関連記事≫

雪崩れ講習会のススメ

雪崩れ事故を防ぐための講習会 Day2

机上講習 感想

2 comments:

  1. そうですか、この日も訓練に励んでいたんですね。相変わらずの熱意と努力が凄いです!

    谷川岳から降りてきて、多くの方が訓練されているなあと見ていたんですが、あの中にいらっしゃったんですね。ヒット君というんでしょうか、とても人なつっこいワンちゃんもいました。

    微妙な天候でしたが、穏やかで暑いくらいでしたね。昨シーズンの何も見えなかった時(直ぐ横にある肩の小屋さえ見えませんでした)と較べれば、山並みを見ることができたのが良かったです。

    私は、早朝移動で関越道がかなり混んでましたが、双葉スマートICから3時間はかからなかったと思います。帰りは、2時間30分かかりませんでした。

    少し遠いかもしれませんが、谷川は、八ヶ岳あたりとは、また違ったいい山だと思います。

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    1. 谷川岳は3月に行きますが、ホント遠くて、一回でいいや~と思いました。 普通に登山だと、あっというまに終わってしまう山なので、クライマーさん向けの山ですね。私はクライマーではありません・・・(念のため!一ノ倉沢への憧れはありません。それってどこ?ってくらいのレベルですから~)

      帰り2時間半ですか!飛ばしたんですねぇ~。強風で50km規制でしたよ?どうぞお気を付けください・・・

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