Tuesday, January 12, 2021

どこからロープを出すべきか?甘い判断が失命につながった事例

■ヒヤリハットの具現化
 
九州の友人に、初めて行った北鎌尾根で、墜落で山仲間を亡くした人がいます。その人は大変つらかったようで、初めて会ったときに話をしてくれました。

今日は、散歩していたら、天啓のように、なぜ、彼女が死ななくてならなかったのか?が分かりました。

ハインリヒの法則は別名ヒヤリハットの法則。300件のヒヤリハットがあって、1件の重大事故が起きる、という法則です。(参考 https://blog.mcdata.plus/preparation/hiyari-hatto-guide/

九州の人は習慣として、易しいところでロープを出さない。

そして、それは、おそらく、いまだにヒマラヤ向けに山をしているからなのです。

日向神で簡単マルチに行ったとき、ここはどう見ても、0.1%の失敗も許されないところがありましたが、懸垂しないで、皆、リスクを冒して降りているようでした。私がロープを出して懸垂すると、え?こんなところで?という顔を古いほうの山ヤさんはされました。一方、新しい基準の方は、当然のようにロープで降りました。

登るほうは何ということのない、4級もないような尾根のルートです。ボルトもなくハーケンやリングボルトです。

こういう易しいところは、学習の狙い、としては、安全管理を学びに行くところ、ということで、私は初期に清高さんに阿弥陀中央稜や広河原沢左俣で教わったことでした。大事なことは、めんどくさがらずに出す、です。

山の会の人と行った比叡でも同様でした。これはロープを出すべきところ、と私が、客観的に判断できるところで、ロープを出さない。そして、私が拒むと意外な顔をする、ということがありました。

実は私の先輩も、一緒に行った大長征では、上部の2級トラバースでロープを外そうとしていました。が、それは、まぁ仕方ないかなと思いました。2級だからです。私はガイドとしての知識と見識がすでにある一方、彼は事故経験がなく、12まで登っていて、安全マージンの設定が1軍です。2級トラバースは、岩に引っ掛けてビレイ代わりにするのが定番ですが、そんなこと、ちゃんと教える会あるのかな?彼、山岳会で登った経験値も少ないですし…。

どこからロープを出すべきか?というのは、ある程度、合意したラインがあります。

どんなに簡単でも、失敗が一ミリも許されなければ、念のため出す、が鉄則。

易しいところは出さなくていい、とやっていると、本当に必要な時に素早く出せない…出せないロープは持っていても無駄、です。300:1の法則です。

とはいえ、山岳会でロープを出す基準と登山ガイドが出す基準では、2グレードくらい違います。山岳会だと4級は出さないです。具体的には、赤岳地蔵尾根では出さない。ガイドは出します。対象…登る人が4級がマスターできていないからです。私の九州久住での積雪期ガイド講習でも出しました。なんと3級程度のところでした。

九州の山ヤたちはロープを出す基準が、確実に簡単なところでは出さない系、です。

■ 原因

この原因は何か?と考えると、いまだにヒマラヤ時代を生きているから…のような気がします。時代遅れ、というと言いすぎでしょうか?現代の若い人が、エクストリームアルパインへ進む場合は、アラスカルース氷河などが定番で、ヒマラヤの時代はとうに終わっています。

ヒマラヤの偉大な歴史は、リスペクトするべきですが、現代のヒマラヤ初登ブームは、2番煎じです。ハイキングパーミットで登れるような山が初登されているだけですので、20代の若者が目指すべきチャレンジではなく、私のようなおばちゃんですら、ガイドと一緒なら登れるよ、って山です。

私は大した登山者でもクライマーでもありませんが、そんな私ですら、ロープが出ないなら面白くないな、と行く前から分かってしまって、つまんねーと判断してしまうような山です。なにしろ、K2ですら、エベレストのように高所遠足化しているそうです。もちろん、未知の喜びはあると思いますが…困難さが足りず、面白くないと感じさせられてしまいます。

ちなみに私が経験のある、ロープが出る山でもっとも困難な山は、GWの鹿島槍鎌尾根と黒部渓谷の横断がある、立山の真砂尾根です。この程度の山の経験しかなくても、2番目の師匠によると、デナリは、君には、たぶん退屈するよ、ってことでした。

一般ルートとそうでないバリエーションでは、それくらい違いがあるのです。言ってくれた当人も行ったものの、退屈したそうでした。(一緒に炬燵でNHKのデナリのスキー滑走の記録を見ながら、のことでした…)

ということで、一般に

  中高年登山の上がり、とされているのが北鎌尾根

ですが、ロープを出すか出さないか、ちょうど基準が図りにくい微妙な難易度のところです。

・登山者が4級も登れないような場合は出す
・念のため出す
・足が揃っていたら出さない

ヒマラヤに将来行く前提でトレーニングを積んできており、5.9ならどんなところでもオンサイトでき、40kgが担げる1軍レベルの人なら、北鎌尾根くらいノーロープでソロで行けないようでないとダメです。

しかし、高尾山すら一人で行けない山ガール(おばちゃん)を連れて行くのなら、当然ロープを出すべきです。

なにしろ、ヨーロッパからの登山者はジャンダルムですら、ロープがないと歩かないくらいです。その登山者はフリークライマーで、ロープを付けたら、華麗なムーブでスイスイ登って行ったそうです…。そんなところを、普段、クライミングに触れていない、中高年の運動能力も落ちた登山者が、いちかばちかで歩いている、というのが、日本の中高年登山者の、上がり、の姿です

No comments:

Post a Comment