今日はシャクナゲ尾根に挑戦していました。
シャクナゲ尾根…去年の1月、思い立って出かけたソロの天狗岳~北八つ周回の旅で、下山に使いたいと思いつつ、水を持っていなかったり、携帯が電池切れだったり、ワカンがなかったりで、使えなかったのがシャクナゲ尾根でした。
ここを歩けなかったことで、「誰かに山を教えてもらわなくっちゃ!」と思ったので、今年の課題を整理するのに、再チャレンジ。
結果的には、ここを歩けるためには、地図読み力やラッセル力とは、また別の要素も必要になりそうでした。
去年の記録
■ 出だしから、つまづく
実は、今朝は、起きたら睡眠不足で頭痛がしていた。
昨日の夜は、入ろうとしている山岳会の例会に出ていて、夜が遅かった。本来は仕事の日なのだが、入会を決める大事な日になりそうだったので、特別に代行を依頼した。
山岳会の入会は悩みが多い。
けれど、どこかには属さないと、これ以上は、登山を一人で成長していくのは難しい。ザイルパートナーもいた方がいいし、ラッセルがある山にいくなら仲間が欲しい。
山岳会は、どこであれ、何か一つでも得るものがあるなら入ったほうが良い、というのが師匠の考えだ。「もう入ったら」としょっちゅう言われていた。踏ん切りがつかなかったのは経済的なことではなく、私が拘束を嫌うからだ。いったいどんな見返りを要求されるのか?それが怖かったのだ。
入会を昨夜決めた会の例会は、場所が遠い。片道1時間。帰りは11時半になってしまう。山に翌日行くことは決まっていたことだったので、すぐに寝ればよかったのだが、思うところあってメールを2、3打ったら、結局床に就いたのは1時だった。今日は山だということは分かっていたのに…。でも、遅かったのは自分のせいなので、文句は言えない。
起きたら5時半起床のつもりが6時。8時前には家を出たいと思っていたものの、節約で素泊まりにしたいと思って、夕飯に生の野菜などを詰めていたら、なんだかんだと時間を取り、家を出たのがジャスト8時。道路は朝の出勤ラッシュで案の定混んでいて、給油したり、行動食の買い足しとトイレでコンビニに寄ったりで、登山口に10時だった。
前日が遅かったとはいえ、稲子湯から黒百合ヒュッテへの道は3時間しかかからない。少々遅出でもなんとなかる、と思っていたのが甘かった。
登りでこの辺のマイナールートで、誰も歩いていないであろう、シャクナゲ尾根を使うつもりだったので、この尾根を使うなら、登りだし、この尾根だけで3時間くらいだろうと考えていた。ニュウまで3時間。そこからは一般道で迷うところもないので、1時間で黒百合ヒュッテ。スピード次第では、黒百合ヒュッテではなく、白駒池を突っ切って、こちらも1時間の麦草ヒュッテでもよいと思っていた。
今日は大体4~5時間。それは相当甘い考えのようだった。
■ 営業小屋があるラッセルルート
北八つはどちらを向いても、2時間歩けば小屋がある。それが良さだ。
シャクナゲ尾根は営業小屋が開始点・終了点にあり、かつ、ラッセルがある道というのが理由だ。
やっぱり女性だと単独で、人目につかない藪ルートは怖い。藪ルートでも人目に付きたい。
たとえば、そこに行っていることさえ誰にも分からないようなルート。生きていても死んでいても分からないのは困る。
そういう意味では、里山の藪ルートは林業の人が入っているような道なら、いいかもしれないが、それでもちょっと、冬は人が入らないし難がある。林業の人がいい人だって、どうやってわかるんだ?
登山道ではだれにも会いたくないが、登山口では誰かに確実に会いたい。下にも上にも小屋がなければ、結局、誰も自分がそこを歩いているということを自体を知らない、なんてことになってしまう。例え登山計画書を出しても、それどこ?な場所はやはり歩けない。少なくとも私にはできない。
私は一人でアメリカに行ったり、親からの自立が早かったりで、冒険好きに思われることが多い。けれども、決して無鉄砲はしない。確信が持てない場合、危険は冒さない。確かにアメリカに行った時は、財布に2万円の現金しかなかったけれど(笑)、住む場所も仕事も決まっていたから、現金がないことは、リスクにはならなかった。要するにリスクを自分なりに評価している。あまり常識では判断しない。
同じことで、避難小屋泊も、人が複数入っていれば、大丈夫だと思うけれど、もし平日などで、人が入らず、男性の登山者と一対一になってしまったら・・・と考えると、恐ろしくて避難小屋は利用できない。用心棒が必要だ、と思う。
男性登山者から見たら、ビビりすぎだと思えるだろうが、それは男性が日本社会では強者だからだ、と思う。
稲子湯という営業小屋が始点にあり、そして、また営業小屋で終わることができるけれども、一応ルートとして地図に載っている道、踏み跡薄く、限りなく非一般道に近そうな、つまりラッセルもありそうな尾根、がシャクナゲ尾根だ。
人が歩かない道。でも、素っ頓狂なそこらへんの藪尾根ではなく…。藪尾根なんて歩けない。警察にも、登山者にも、その存在自体を知られていないようなルートには一人ではいけない。そういうのこそ、徒党を組んで行くべきだと思う。
長い説明になったが、そういうわけでシャクナゲ尾根は候補になった。
ラッセルがある八ヶ岳というと、西岳も候補になるが、西岳は上にも下にも小屋がない。
他には箕冠山という選択肢がある。ここも行ってもいいなと思っているが、アプローチで、だいぶ歩かされる。下からだと夏沢鉱泉分岐から、林道歩きだ。
そういう意味では、退屈な林道歩きを省いて、すぐ尾根に取り付け、結構、長くてガッツリ歩くことができそうで、それでいて、下にも上にも小屋があるシャクナゲ尾根はもっと利用されて良いと思う。
けれど、到達するピークがニュウという…マイナーな道なので、誰も使わないんだな。白駒池に行きたいという人も、今では山ガールばかりになってしまったようだし。
私がこの尾根に気が付いたのは、山口輝久さんの北八つ彷徨に記述があるからだ。
ただ、今回の尾根は完全に読み間違っていた。
■ サットバな山
実は今年はもう2度、冬山ソロを未遂に終わっている。
1回目は2月初旬で、思い立ってテント泊装備をまとめていたのだが、アプローチの道路状況が見通しが立たなかった。
渋の湯の道はアプローチで失敗しそうな気配だった。アプローチの面で除雪が一番安心そう、ということで選ぶと、人気がある赤岳鉱泉へ続く美濃戸口だった。でも、色々考えて、どうしても一人でぶらっと行く一人旅に赤岳周辺の空気感が合わない…。
八ヶ岳西面はどうも人が多くて苦手だ。
ヨガでは、物の性質を、ラジャス=劇性、サットバ=純粋性、タマス=停滞性、と呼ぶ。激情の様式、とヨガで言えば、大都会の喧騒、競争社会などを指す。人間関係も、愛憎の応酬があるものは、激情の様式だ。サットバ、純粋性を代表するものは、無償の愛、赤ん坊、無邪気さ、クラシック音楽。そして、タマスは、停滞、不純なものを表す。
ヨギーはタマシックなものを食べない。一番分かりやすいものは腐ったもの。腐ったと言うと、誰だってそんなものは食べない、と思うだろうが、タマシックなもの、腐敗をしたものには、クサヤやモツも入るんだな。衣類で言えば、レザーや毛皮も入る。それらは動物の死の気が込められている、死体を着ていることと同じ、とみなす。たとえば風水で、ドライフラワーを死んだ気、とみなすのと似ている。
ちょっと話がずれたが、ともかく、私がその時山に行きたかったのは、サットバを求めていたから、だった。聖なる空気。神々しい景色。
決して、軽薄短小な八ヶ岳登ったぜイェイみたいな山じゃなかった。ワイワイ登る山も、そんなに好きじゃない。私は別に孤独を愛しているわけじゃないが、それでも落ち着いた空気というか、宴会好きとは程遠いかもしれない。酒は飲めるが、酒に飲まれるのは好きじゃない。まぁ社会人生活も長いし、夜の接待が本業というような仕事も経験があるので、こなせるが、わざわざ場を作りたいとは思わない。
そうやって、山の空気感なんかをアレコレ考えて山を選んでいると、どうしても、いくらアプローチが良くても、ラジャスの気の多い赤岳周辺は気分に合わなかった。
色々と電話で聞くと、アプローチの関係で八ヶ岳の東面はNG。登山道も誰も歩いていないから、使うなと、小屋がいう…。小屋の人はトレースがある山だけを歩いて欲しいんだろうな。トレースがある山しか歩かないなんて、登山と言えるのだろうかと思うので、なんちゃって登山を小屋番が推奨するような流れはどうかと思うけれど、山域の特徴から、北八つは基本的に登山初心者の山なので、そうなってしまうのだ。
それで、結局、その山行は、なんとなく気分が乗らず、行かず終いになってしまった。基本的にノートレースを歩きたいが、それ以前のアプローチ敗退は避けたかった。何しろ東面では鏡面のようになった林道で、脱出が核心という山もあったし…。
2度目は月曜・火曜で企画した山だった。ところがそれも前日になんやかやとゴタゴタし、出かけそびれてしまった。
その後は天候が悪化し、素晴らしい晴天の山を逃した格好になった。山は逃げる。それは本当だ。山は、いつ出かけても山だが、その年の晴天を捕まえようと思えば、チャンスは一瞬だ。今年は二月は里の大雪で缶詰だったので、その後のチャンスはそれだけで、その後は雨が降って、雪が締まってしまった。
・・・というような事情で、結局2度の試みは、考えただけに終わってしまった…。
■ 一人冬テント
考えてみると、心理的な後ろ向きな部分もあった。
テント泊だ。冬のテント泊…。もう今年はアイス用のアックスやら講習費用やらで総額50万円近くの出費があり、山費用はもう底を着いた…ので、小屋代を節約したいのだが、一人のテント泊が一歩が出ない。
・・・というより、歩き終わってから寝るまでにテント内で過ごす時間が、冬の場合は、無限に長く思われるのだった…(汗)。
まぁ、寒いのは容易に想像できるので、突き詰めると、一人でテン泊する気になれない、ってだけなんだった。同じ苦を分かち合う相手がいれば、というところ。やってみたら、沢で浸水しながら寝るのと同じで、そう悲壮感はないのかもしれない。
けれど去年テント泊の跡を白駒池から高見石に上がる間に発見し、羨ましかった。羨ましいという感情は、それを自分もやりなさい、という意味だと思う。だから、一人ではなく仲間とやりたいって意味なんだな。
別の部分では、このところアイスクライミングばかりしていて、-25度とかいう、キリリと冷えた朝に山を歩いていないから、心身が甘えてきているに違いない。
ホントに甲斐駒の黒戸尾根や地蔵岳に登ったのかどうか、自分でも怪しい。寒かったはずなのに、寒さの記憶がない。
という、諸々の心情がないまぜになり、行きたい⇔行けないを揺れ動いた結果、今年の二月は状況に押し流されるままに、雪稜が充実していない。
キリッと寒い朝を味わい尽くしていない。
■ 稲子湯
今日は、稲子湯までの道は除雪されていたが、無料駐車場までの道は除雪されていなかった。本沢ゲート前の無料駐車スペースには数台の車があった。みな本沢方面に歩いて行ったようだ。稲子湯には私の他は一台だけだった。
稲子湯から先は除雪がなかったので、駐車料金を払いに行くと、おばあちゃんが色々と心配してくれた。今年の雪は、それはすごく、たくさんの登山者が追い返されたそうだ。その上、雨が降り、硬く締って、ツンツルテンなのだと…。それを聞いて、はっとする。アイゼンを忘れてきたのだ。
おばあちゃんに、一泊二日分の駐車料金600円を払って、そそくさと出る。心配はうれしいのだけど、もう10時15分で、私は早く出たいのだった。
それにしても、冬山でアイゼンを忘れるとは…どうしたことだろう?どうするか?登山口敗退か?
でも、大概の冬山は、樹林帯ではアイゼン要らない。それで行くことにする。今回の山は、山頂が目的でないので、山頂付近の稜線歩きを省けば、アイゼンは要らない場合が多い。要る時に、敗退決定しても遅くない。
今日は去年の課題で、地図読みと言うか、ルートファインディングしながらこの尾根を歩けるのかどうかを試しに来たのだ。地図読みに、少し自信をつけたので、それを試してみるのが課題だ。
今年の目標設定のための課題整理。
稲子湯から登山口まで歩いていくと、途中で登山者3人とすれ違った。相手が、私を値踏みしているのが分かる。3人はアイゼンをつけていた。たしかに一雨後の雪は、軽くクラストしていてクランポンがよく噛みそうな雪面だった。けれど、よく踏まれた道なので、別にアイゼンは要らない。値踏みしている視線が背中のザックとピッケルと、ぶら下げているカラビナ、それにワカンに注がれたのが分かり、まぁいいや・・・という心の動きが読める。
10分ほどでシャクナゲ尾根登山口。普段はここまで車で入れ、駐車料金は無料だ。みどり池までの道もここが始点だ。
シャクナゲ尾根に取り付くが、まったくどこが登山道か分からない。最初から急登だけど、雪面は、全然沈まない。フリクションも良く効く。結局、ツボ足で大丈夫なようだ。沈み込みは、南面で5センチ~10cm程度。 な~んだ。ラッセルっていうほどのラッセルじゃない。こんなのラッセルには全然入らない。
稲子湯のおばあさんは、大変大変って言っていたけど、たぶん3週間前の情報なんだろうな。
■ ルートファインディングに時間がかかる
だが…テープがほとんど整備されていない。入り口に一つ二つ見つけたが、どうせ尾根伝いだ、と高をくくって、最初からテープは探さない。
というのは、最近尾根を歩いていて、分かってきたことは、取り付きが一番分かりにくいってことだ。でも取り付きで正解を求めて、時間を取るのは、時間の無駄だ。
尾根に載ってしまえば、じきにテープの方が追いかけてくる。それは何か、新しいことを始めるのと似ているかもしれない。どうやろうか、と正しい道を探して、アレコレ悩むより、取り掛かってしまった方が良い。ちょっと先へ進めば、どうせ正しい道に出るのだ。
そういう気分で、適当に歩いていたのだが、1メートル幅くらいで、樹木が生えておらず、明瞭に道だと分かる部分に突き当たったので、それに沿ってしばらく進んだ。
しかし、様子がおかしい。尾根に乗らなければならないはずだが、一向に尾根に乗らない。
巨岩が頭上には一杯。本来は、これらの巨岩が足元にあるべきではないかと思うのだが…尾根を巻いているのかと、しばらく進んでみたが、道は続けど、尾根と高低差が出るばかりのようだ。
現在地を確認する… ゲっ!これどうも沢伝いに行く作業道のようだ。
まあ、この先に行っても無理くり尾根にのれないことはないような地形図だが… 取り付きで失敗か…と、結局、元来た道を少し戻る。10分ほどのロス。
易きに流れては行けないってことだな…と思う。つまり、私は歩きやすそうな道を選んだのだ。そうすると、違う道に来てしまった。
そうではなくて、最初の急登で苦労しても、できるだけ早く、尾根に乗れってこと。 尾根に乗りやすそうな地点まで戻り、改めて、尾根の南斜面を直登。
一気に汗が出る。山肌の斜面でリッジではないので、結構、吹き溜まりもあり、急で、キックステップを確実に決めながら登る。全然アイゼンは要らない感じ。まだクラストした雪が、しっかり足を守ってくれる。
しかし、ホントにテープがないなぁ。本来だったら、登っていれば、出てくるものなのに…。
不安になりながらも、とにもかくも、上に上にと足を運ぶ。すると、分岐を示す道標が出てきた。この時は、ホントにうれしかった。ビンゴ!な場所に出たから。自分が間違っているのかと不安だったのだ。
登山は、こういう不安と一緒になって、面白いものになると思う。人生だって同じだ。分かっていることだけやっているから、退屈なのだ。
どういう結果になるか、分からないことや新しいことを試すのは、誰だって不安だ。だけど、不安を避けてばかりいたら、人生は超退屈になるだろう。
快適な尾根です |
しかし、時間が…まだ行程の8分の1くらいなのに、すでに11時になってしまった。やたら喉が渇いて、たくさん雪を食べた。
この道はずっと尾根伝いだが、途中で2回尾根を乗り換える。その一回目が終わり、終点は林道。林道の端から、また尾根の終点で尾根に乗り、ずっと尾根伝いのはずだ。どっちの尾根も、南面は岩がちで、北面はなだらかだ。雪の浸食で、そうなるのだろう。
とりあえず、二つ目の尾根は楽勝で尾根に上がれた。道標も入口にあり、すぐ横にテープがあった。すぐに巨岩が出てきたが、またテープがない。
この巨岩、右に巻けば北面。左に巻けば南面。どっちに巻いていいか分からない。
とりあえず、距離が短そうな南面に巻いたが、巻いた先にもテープがない。けれど、とりあえず尾根に乗っかってしまえば安心と直登…でもねぇ。やっぱりテープが追いかけてこない・・・。
と思ったら、はるか後方にあった。どうも、私は近道をしたらしい。まあ、いいや、と尾根を歩いていると、前方にテープが出てくるようになった。
が、それも、かなりまばらだ。間隔が遠い。 尾根が山の高速道路であることを知らない人は歩けないだろうな。
尾根に乗ったら、なんとも快適な尾根だった。今日は遠くから八ヶ岳を見たときはかすんでいたけれど、山に入ってしまえばゴキゲンなお天気だった。気温が高い。8度は下であっただろうか。稜線の風は強そうだが、樹林帯なので関係がない。暑くて、衣類はさっさと下で脱いでしまった。
お日様の日差しは温かく、雪面は快適で、ツボ足でもほとんど問題がない。時折ズボッとハマる。のは倒木が隠れていたところを踏んだりした場合だ。一人だと腰まで埋まってしまうと脱出が困難になるので、できるだけハマることのない場所を選んでいるつもりだが、どうしようもない場合があって2、3回腰ラッセル近い場所を歩いたけれど、一瞬だ。
今日の収穫は、裏山で遊んだ経験が本番の山でも生きる、ということだ。裏山の腰ラッセルと、やっていることも雪の質も変わらない。
ただ人里から離れていて、それで標高が高いと言うだけだ。ぶどう畑の裏山で、ルートファインディングをして夫と遊びに出かけたことは、この山でも生きている。
山が遠いか、近いかだけで、全く同じだな、それが感想だった。
快適な森をお日様を満喫しながら歩いていると、シジュウカラがやってきた。とっても人懐こい。シジュウカラなんて、裏山でもいつでも見ているけど、こうした誰も歩いていない山で近づいてきてくれると、歓迎されているようでうれしい。
快適な森の中の道を順調に進むんだが…それにしても本当の登山道はどこなんだろう?またテープが出てこない。ただテープが見つからない不安には、もう慣れてきた。尾根は明瞭だ。
ただ問題がある…シャクナゲ尾根というだけにシャクナゲのブッシュが濃い。尾根の真ん中、どうみても歩けるブッシュじゃなさそうなんだけど…。そのたびに南面に巻こうか、北面に巻こうか悩む。一度、南面に巻いてみたら、結構下が急な斜面だった。雪が緩んで、丹沢の湿雪のように、雪団子になって靴にくっつき、足が重い。
カモシカ君が大急ぎで通り過ぎる。なんでこんなところに人間がいるの?と背中が言っている。カモシカが、苦労した跡を私も歩いているようで、カモシカ君の道を拝借しているのは私の側だ。
北面に巻いてみた。雪が深い。サラサラで一度囚われると、脱出に時間がかかる。そうこうしているうちに、大した距離を歩いていないのに12時。 ちょっと休憩をする。ワカン装着。まだ、お日様はうららかで明るい。
岩峰から景色がきれいでした。ここらは巨岩だらけ |
うーん… 何に時間がかかっているのか?というと、ラッセルは、全然大変ではないんだが、ルートファインディングに時間がかかっているんだな。
時折でてくる巨岩を右に巻くべきか左に巻くべきか…夏道を知らないので、尾根を外す気になれないから、出来るだけ尾根に乗ったまま、行こうとすると、障害物が多い。
ああテントがあればなぁ!今日はテントもシュラフも持ってこなかった。ツエルトは、もちろん入っているが、雪中ツエルト泊かぁ…(--;)
あれこれ考えて、どう考えても、このままこのペースで尾根を進んでも、日暮れ前に一番近い小屋につけそうにないので、敗退を決定する。が、問題は何時まで遊ぶか?だ。 とりあえずここまで2時間として、13時までは進むことを決める。
13時。まだ行けそう、あと30分。 小さな岩峰にぶち当たった。展望が良かった。前方は濃いシャクナゲのブッシュ。こういうブッシュの場合、一体どう巻くのが正解なんだろう?ベテランは、こういう場所で、どういう風に地形を見て判断するんだろう?
少しブッシュを進んでみるが、この尾根最初から、しょっちゅうピッケルが引っかかって思うように進めない。この先もずっと、シャクナゲブッシュになりそうだし、陽の光も午後っぽくなり、気持ちも萎えて、13時半敗退決定。
うーん、これじゃ裏山に遊びにいっているのと同じだな…(笑)。運転2時間の遠い裏山(笑)2時間も運転したんだから、ちゃんと一泊くらいしていきたかったなー。
師匠は今頃、丹沢だ。丹沢に一泊で誘ってもらったのに、一人で歩きたいと断って、この山に来ていてテントがないから、敗退と言ったら、あきれるだろうなぁ(笑)
でもまぁ、今日はとても勉強になった。時間を食うのは、ルートファインディングであってラッセルそのものではないこととか。
引き返すことにしたら、帰りは尾根が見やすいので、赤テープが一杯見えた。だいぶ尾根を外してテープは存在していたようだ。でも一度でも歩いたところの方が歩きやすいので、自分のトレースに忠実に歩く。
最初に南面に巻いた巨岩は、北面に巻く方向にテープが付いていた。 私が尾根に乗り上げた地点は、全然登山道ではないらしかった。
登りはタイヘンでも、下りはラクラクの法則通り、下山はあっという間で14:00に登山口についてしまった。
どうみても、とうせんぼしてるとしか思えないのですが・・・ |
10時半から13時半の3時間かかった道、下りは30分(汗)
こんなことなら…と一瞬、14時登山口で黒百合ヒュッテに登り返そうかと思う…14プラス三時間で17時、ギリギリ。叱られつつ小屋に入る…? うーん。
その下のシラビソ小屋までなら1時間しかかからないが、明日が雪の予報なので、早出して早朝に稜線に乗り、中山展望台などの、周辺を周回して帰るという案は、魅力的ではない。明日は下山が向いている日だ。今日中に稜線付近の小屋まで入らないなら…歩く甲斐もないかもしれない・・・どうせ、アイゼンを忘れたから、山頂は踏めないのだったら、雪の中、中山峠を越えて小屋に行っても、小屋から、ピストンで下山するだけになってしまう・・・、と思い、今日は敗退、というか、偵察の日とすることにする。
結局、裏山散策と同じような山になってしまった・・・(汗)どんな場所かな~と探検気分は満点だったけれど、ルートファインディングに時間を取られ、大した距離をラッセルもしていないのに時間切れ…今日は4時間しかまだ歩いていない…全然歩き足りない。
とはいえ、そのまま歩き続けても、小屋につく前に日暮れになりそうなペースだったし、テント泊装備は持っていない。出直すべきだ。
そうだ、稲子湯に入って帰ろう!と思うも…大雪で稲子湯の湯には入れなくなってしまったそうだった。悔しいので、笹源という入浴剤650円を買う。
帰りに女性の単独の人とすれ違う…今日降りてきたようだった。いいなぁ…昨日今日が良い天気で、明日から下り坂。真冬の良い時期は駆け足に去る。
私も去年は単独で結構長い距離を歩いた。女性でも小屋があれば、単独でも歩ける。それが北八つのいいところだと思う。
まぁ色々書いたけど、今日はとても疲れた…朝から睡眠不足特有の頭痛が取れない。運転中も眠くて参った。
途中海ノ口の温泉に立ち寄り(ハズレ)、帰ってきたら、ちょうど17時。歩いていたら、黒百合平についたかもしれない時刻だ。
≪反省点≫
・ラッセルありの道には宿泊装備必携
・ラッセルよりルートファインディングに時間がかかる。
≪学んだこと≫
・裏山遊びと北八つ彷徨はたぶん同じ
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